バイオハザード 2


632バイオハザード2sage04/09/28 02:17:48 ID:il3C5sXd

 

■要約版
新人警官のレオンは、兄を訪ねてきたというクレアと共に、ゾンビに占領されたラクーンシティの脱出を試みるため、警察署を目指す。
そこの留置場で生き残っていた記者から、この騒動の原因となったアンブレラ社の実態を知る。
レオンとクレアは生き残りの少女シェリーと出会い、ゾンビ化するウィルスを作り出したアンブレラ社員に遭遇する。彼は研究成果を独占すべく、自身の体にウィルスを投与し、怪物へと変貌していた。さらに娘であるシェリーの体に子孫繁栄のため胚を埋め込んでしまう。一行はシェリーの治療方法と脱出経路を求め、アンブレラ研究所へ向かう。
研究所でウィルスワクチンを作り、シェリーは無事回復。
しつこく追いかけて来ていた怪物も倒し脱出。一行はアンブレラを潰すと誓う。

 

※それぞれの主人公に表編・裏編が存在するが、ストーリー上の大きな違いはない
ここではクレア表、レオン裏で進める

 

■プロローグ

恋人との大喧嘩が原因で、出発が遅れた新人警察官のレオン
彼がラクーンシティに着く頃には、とうに日が落ち、あたりは闇に染まっていた
一方、クレアは突然連絡が途絶えた兄クリスを探す為、単身ラクーンシティに訪れる
大型バイクを駆る彼女が街の食堂前に愛車を止めた頃、やはり辺りは真っ暗闇になっていた

人気のない大通りを走っていたレオンは、女性の死体を発見する
死体を調べていると、あちこちの路地から住民が現れ、こちらへ向かって歩み寄ろうとしていた
ふらついた足取りに異様さを覚えたレオンは銃を向けるが誰も反応しない
ふと足元を見ると確実に死んでいたはずの女性が彼の足を捕らえ、今にも噛み付こうとしていた
レオンは彼女を撃ち、周りの住民たちにも銃撃を加えたが、誰一人として倒れない
路地裏に追い込まれたレオンは物音を聞いて咄嗟に銃口を向けたが、
そこにいたのは本物の生きた女性、クレアがいた
レオンとクレアは路地裏を抜け、放置されたパトカーに乗り込み猛スタートを切った
混乱する頭を落ち着かせながらも、自己紹介をする二人
その背後には大型のトレーラーが迫っていた
 
突然、後部座席から青白い手がクレアに掴みかかった
ゾンビ化した男が車内に潜んでいたのだった
ハンドル操作を誤った車は街灯に激突し、
ゾンビはフロントガラスを破って車外に飛び出された
一息つく間もなく、背後から放置車両を弾き飛ばしながらトレーラーが迫る
二人が車外の右と左に飛び出した直後、トレーラーが突っ込み大爆発が起こった
炎上する車に道を分けられたレオンとクレア
2人は警察署で合流することを決め、長い夜の一歩を踏み出した

 
634バイオハザード2sage04/09/28 02:21:50 ID:il3C5sXd
 
■ゲーム本編
警察署へ辿り着いたクレアは、重傷を負った警察官に出会う。男はこの騒動の原因となったアンブレラの報復を恐れ、正体を暴こうと呼び掛ける洋館事件(バイオ1)の生き残りの言葉を無視してしまったことを後悔していた。男は治療を拒み、クレアに生き残りを探すよう依頼した。

一方、レオンは警察署の裏にあるヘリポートに到着していた。ふと見上げるとアンブレラのヘリが飛んでおり、警察署に謎のタンクを落下させ、夜空に消えて行った。建物に入ると、タンク内部からコートに身を包んだ2mをこえる大男が現れ、レオンに襲いかかった。レオンの反撃に一切の感情を見せない大男の正体は、アンブレラの新生物兵器「改良型タイラント」だった。無法地帯と化したラクーンシティを絶好の実験場と見た、アンブレラによる企てだった。レオンは何とかこれを倒すが、部屋を移動した際、地に伏していた筈の巨人が姿を消していることに気づく。

・備考
以降、裏編の主人公はたびたびタイラントに襲われることになる
 
 
635バイオハザード2sage04/09/28 02:23:18 ID:il3C5sXd
 
 
捜索の中、クレアはゾンビに追われる少女を発見する。彼女の後を追うと、レオンと再会。少女は見失ってしまった。警察署内も安全な場所ではないと悟ったクレアは脱出ルートの発見をレオンに頼み、クレアは少女の捜索を行うことにする。レオンはクレアに通信機を渡し、再び二手に分かれた。
 
クレアは墜落したヘリに遮られた扉の前で、不審な悲鳴を聞く。押収物倉庫で入手したプラスチック爆弾でヘリを爆破すると、奥には豪奢な署長室があった。悠々と椅子に腰掛ける警察署長の前には、先刻の悲鳴の主である美女が横たわっていた。署長は彼女の死を悼みながらも「どうせ皆こうなる」と自暴自棄な様子だった。
 
クレアは奥へ進むと、隠し倉庫で少女シェリーを見つけ出す。シェリーは相手がゾンビでないとわかり、安心して泣いてしまった。街よりは安全だという親の忠告で、警察署に訪れていたのだった。クレアは一緒に行こうと促すが、少女はゾンビよりも大きな化け物が自分を探していると言って怯えている。その言葉に応じるかのように謎の咆哮が響き渡り、驚いたシェリーは走り去ってしまった。

道を引き返すと署長の姿はなく、代わりに彼の手記を発見する。密かにアンブレラと繋がりのあった署長は、この現状に絶望し、署員の脱出経路を断った上で人間狩りに興じていたのだった。

 
637バイオハザード2sage04/09/28 02:25:43 ID:il3C5sXd
 
 
警察署の地下を捜索するレオンは、謎の女性エイダと出会う。とある記者を探しているという彼女に協力し、留置場で記者を発見する。彼はこの騒動について何やら知っているらしいが、真面目に答えようとしない。レオンは外に出ろ、と気色ばむが記者はそれに応じず、外に居るのはゾンビだけではないと意味深な言葉を返す。同時に何処からか謎の雄叫びが響き渡った。
 
2人は記者から聞いた下水処理場への抜け道に向かう。レオンの協力で下水処理場通路へ侵入したエイダは、ばったりとシェリーに出くわす。驚いたシェリーは慌てて逃げ去り、ペンダントを落としていった。エイダは別ルートを探すと言って姿を消し、レオンは単独行動に戻った。

 
638バイオハザード2sage04/09/28 02:27:41 ID:il3C5sXd
 
 
クレアは署長室の隠し通路を進むと、署長に銃を突きつけられる。鬼気迫る表情でにじり寄る彼は、何故か苦しげに胸元を押さえていた。クレアは、アンブレラの研究員ウィリアム=バーキンが署長に宛てたメールについて問うと、署長は洋館事件を起こしたTウィルスとは比べ物にならない究極の生物兵器、シェリーの父であるウィリアムが開発した「Gウィルス」のことを語る。それにより生み出された怪物が既に署内にいるのだと言う。来るべき破滅にクレア巻き込もうとした署長だったが、突如として苦しみ始める。署長は怪物によってG増殖の為の寄生体を植え付けられていた。もがく彼の体内から、肉を食い破りながら甲殻類を思わせる奇妙な生き物が現れ、署長は無惨な死を遂げる。

地下へと逃げた寄生体の後を追って下水道へ向かう。姿を現したGが襲い掛かってくるが、何とかこれを倒し署長室でシェリーと再会。新たな道を求めて下水処理場へと向かった。

一方、捜索を続けるレオンの耳に突然の悲鳴が届いた。声の元へ駆けつけると、深手を負った記者が格子の前に倒れている。署長を襲ったGが記者の前にも現れていたのだ。息も絶え絶えの記者は、ウィリアムと署長の癒着の証であるメールの写しをレオンに渡し、彼らの悪事を暴いてくれと言い残して絶命する。遅れて現われたエイダはメールに記されていた薬品工場へ去り、直後に無線を寄越してきたクレアも警察署を離れ下水道へ向かうという。引き止めるレオンを女性陣は完全に無視。
「全く女って奴は!」
レオンは沈黙する無線機に怒りをぼやいた。

 
415バイオハザード2sage05/01/24 03:21:42 ID:zjeCdF0i
 
 
レオンは先行するクレア達を追い、警察署地下の浄水室にたどり着く。しかし、おぼつかない足取りで金髪の男が立ち塞がり、聞き覚えのある咆哮を発する。同時にめきめきと異音を上げ、男の体が数倍にも膨れ上がり、右肩に開いた亀裂から彼を印象付ける巨大な目が現れる。これこそが記者を引き裂き、署長の体内に寄生体を埋め込んだ怪物、"G"だった。

レオンはこれを倒すと、Gは自ら欄干を乗り越え、底知れぬ暗がりへ落ちていった。奥へ進むと、排水構内を滑り降りてきたエイダと再会する。レオンは声を荒げて彼女の軽率な独断先行を責めたが、彼女は全く動じていない様子だった。

一方、下水道南口。
通路への扉を開こうとしたクレアとシェリーの前に、レオンとの戦いで姿を消したGが現れる。怯えるシェリーを励まし、一瞬を狙って通路内へと駆け込んだ。ほっと息をついた瞬間、シェリーは排水溝の隙間から水路へと引き込まれ、二人は離れ離れになってしまった。

ひとり通路内をさまようシェリーは、誤ってダストシュートに落ちる。シェリーはゴミの山に叩きつけられ、気を失ってしまう。力なく呻きながら横たわる少女の体に、ふと影が差した。その後姿は、紛れもなく先刻逃れきった筈のGだった。

シェリーを探して通路を急ぐクレアの目前に、突如現れた金髪の女性が銃を突きつける。彼女はクレアをアンブレラのスパイと思い込み、夫のGウィルスが目当てだろうと憎々しげに吐き捨てる。彼女はシェリーの母親アネット=バーキンだった。クレアはシェリーがこの下水道ではぐれたことを知らせると、アネットは見る見るうちに蒼白になった。
「なぜこんなところへ?ウィリアムが狙っているのよ!?」

 
416バイオハザード2sage05/01/24 03:23:25 ID:zjeCdF0i
 
 
アネットはこの街が地獄と化した理由を語った。
ウィリアムはアンブレラの思惑に背きウィルスの独占を図ったが、アンブレラが仕向けた特殊部隊の強襲を受け、ウィルスは奪われてしまう。瀕死のウィリアムは隠していたGウィルスで怪物に変貌してしまい、下水道を駆ける特殊部隊を皆殺しにする。アタッシュケースから漏れたウィルスは下水道のネズミに感染し、街を侵食していったのだった。
 
出所を語ったアネットは、Gと化したウィリアムは理性や記憶を失い、遺伝情報の近いシェリーに、子孫を残す為の
最適の宿主として狙っていることを告げる。そこにシェリーの悲鳴が響き渡り、はっと顔を上げた二人は左右に別れ、それぞれシェリーを探して駆け出した。
 
下水処理場を進むレオン達は、アネットとはち合わせる。レオンはエイダに向けられた銃撃をかばい、傷を負って気絶してしまう。怒りに燃えるエイダは反撃をするが、不意を突かれ、銃を弾き飛ばされてしまう。エイダがアンブレラシカゴ支部のジョンの恋人だと知ったアネットは、彼はゾンビになって死んだと言い、Gウィルスを狙う者は皆死ぬのだと笑う。その直後、アネットは先程エイダが拾ったシェリーのペンダントに気がつく。動揺した彼女の隙を突き、エイダは彼女を処理プールへ転落させた。ペンダントを開くと、二重底の仕掛けの下には、Gウィルスのアンブルが隠されていた。

 
417バイオハザード2sage05/01/24 03:28:44 ID:zjeCdF0i
 
 
シェリーを探すクレアは、集積プールのゴミ山で彼女を見つける。しかし突如として黒い水面が泡立ち、ウィルスによって変異した巨大ワニが襲いかかる。怪物を退けシェリーを介抱すると、彼女のそばから、あの甲殻を持つ生き物が逃げ去る。目を覚ましたシェリーは謎の腹痛を訴え、悪い予感を覚えつつも彼女を励まし、その場を後にした。

気絶していたレオンは目を覚まし、エイダを探して集積プールにたどり着く。対岸にいるエイダに呼びかけた直後、先程クレアを襲った巨大ワニが現れる。道幅一杯に迫る巨体に押され防戦一方に追い込まれるが、高圧ボンベを利用して巨大ワニを爆死させる。

エイダはケガを負ったレオンを手当てし終わると、恋人のジョンが死んだと呟いた。聞き返すレオンに対し、エイダはただ静かに首を振り、先を急ぐよう彼を促した。

 
18 :大神 ◆l1l6Ur354A2006/11/30(木)08:44:21ID:oUPYDT8b0
 

クレア達はロープウェイで廃工場にたどり着き、巨大なエレベーターに乗り換え、アンブレラの秘密研究所を目指す。エレベーター上の電気機関車内で待っていると、シェリーの腹痛が悪化し、高熱を出して倒れてしまう。アネットが恐れていたとおり、Gによって胚を植えつけられるという最悪の事態が起こってしまっていた。クレアは脱出手段だけでなく、彼女の体内に巣食う破滅の芽生えを防ぐ方法も探さねばならなくなった。

遅れて来たレオン達はロープウェイを呼び戻し、廃工場を目指す。発車して間もなく招かれざる同乗者が天井に取り付いている事に気づかされる。天井を突き破って何度も繰り出される巨大な爪に銃撃を加え続け、何とか撃退に成功する。姿を消した怪物の不気味な影を感じながらも、二人は先へ進んだ。

 
19 :バイオハザード2:2006/11/30(木) 08:47:26 ID:oUPYDT8b0
 

突如、クレア達が乗ったエレベーターは音と共に揺れ、獣のような唸り声がとどろいた。車外へ飛び出し振り仰ぐと奇妙な化物が電気機関車の天井に陣取り、彼女を見下ろしていた。恐らくかつては人間であっただろうと分かる怪生物は変形を始めた。辛うじて人の形をしていた頭部が左胸の中に沈みこみ、代わりに右肩の肉がめりめりと音を立てながら盛り上がって新しい頭となる。右腕に比べて不釣合いに太い左腕を掲げると、その先端から巨大な爪が肉を割って飛び出した。次の瞬間、化物はクレア目掛けて飛び降りてくる。レオン達が乗ったロープウェイと共に、娘の後を追いかけてきたウィリアム=バーキンとの初めての対決が幕を開けた。

なんとかこれを撃退したクレアは、秘密研究所に到着する。クレアは警備室のベッドにシェリーを横たえ、お守りだと言って、自分ベストをシェリーに着せた。両親に遊んでもらえず、ずっと一人ぼっちだったがもう寂しくないと言うシェリーは、その言葉とは裏腹に泣き出してしまう。そんな姿に、クレアは何としても彼女を救いだそうと、硬く決意した。
 
 
20 :バイオハザード2:2006/11/30(木) 08:50:10 ID:oUPYDT8b0
 
 
タイラントの追跡から逃げながら、レオンは達は研究所へ向かう。彼らが乗るエレベーターの電気機関車に何物かが襲い掛かる。唸り声と共に、エイダの背後から巨大な爪が飛び出し、彼女の背中を引き裂いた。クレアの攻撃から復活したGは、腹部から二本の副碗を生やし、一回り近くも巨大化して、更に人の姿からかけ離れた怪物に成り果てていた。激闘の末、全身から血を滴らせたGは、驚異的な跳躍力で上空へと姿を消した。激しい戦いの影響か、エレベーターはオーバーヒートを起こし、緊急停止した。

意識を取り戻したエイダは、足手まといの自分を置いて一人で逃げろと呟く。レオンは「生きてここを出るんだ、待っててくれ」と力強く励まし、電気機関車を出て行った。
 
 
347 :バイオハザード2:2007/01/01(月) 10:43:47 ID:czljH99k0
 

低温実験室で作ったヒューズにより、途断していた研究所の電力を復活させた後、
いよいよ本格的な探索に乗り出したクレアの前に新たな生物兵器が現れる。
洋館事件の「プラント42」をベースに作り出された「イビー」と名付けられたこの怪物は、
人間大の「歩く植物」で、彼らに半ば支配された研究所内部は
放棄された植物園のような有様となっていた。
化物たちを葬りつつ階下のCエリアへ達したクレアは,
そこで地下ホーム直通ゲートと記された通路を発見するが、頑丈なシャッターで塞がれていた。
シャッターを開く為のMOディスクを探してクレアは更に内部へと侵入する。

緊急停止したターンテーブル上からダクトを伝い、研究所内通路へと着地したレオンの背後で
モーター音が響いた。
動力が回復して、テーブルが再下降を始めたらしい。
突き当たりのエレベータを使い、後を追おうとするが電源が入っていない。
溶鉄プールで電源を入れ、道を戻ってエレベータに乗り込むと、反対側にも扉がある。
マスターキーを使う事により非常ルートを開けるようだ。
エレベータを使って到着した降車場はゾンビの巣窟となっていた。
群がる敵をなぎ払い、電気機関車にたどり着く。
だが、重傷を負って座席に横たわっていたはずのエイダは車内から忽然と姿を消していた。
 
348 :バイオハザード2:2007/01/01(月) 10:44:36 ID:czljH99k0
エイダの姿を探し、また脱出方法を探して研究所内を奔走するレオン。
P-4レベル実験室で動力室のカギを発見したレオンは動力室へ向かう。
先刻進入してきたダクトがある通路を駆け抜けようとしたその時、足元に銃弾が跳ね、火花を散らした。
振り返ると先刻下水道で遭遇したあの金髪の女性が、怒りに燃える目でこちらを睨みつけている。
「よくも夫を!分かってるわよ、G-ウイルスが目当てね」
エイダに貯水プールに落とされた後、いかなる手段を使ってか、彼らの後を追ってきたアネット=バーキンだった。

夫の遺産を簡単には渡さない、とアネットは何かのアンプルを握った指をレオンに向かって突きつけたが、
所で一緒にいた女は?お仕事中かしら?と何故か急にエイダの行方を聞いてくる。
急に現れた素性もよく分からない女性に、敵意もあからさまに訳の分からない事を言われて
面食らうばかりのレオンだったが、彼女の言葉に不穏なものを覚えて問い返すと、アネットは
「あんた、何も知らないの?おめでたいわね!」
いかにもひとを小バカにした風に笑い声を上げた。

つづくアネットの言葉にレオンは耳を疑った。
アネットがこの研究所から引き出したデータによると、エイダはG―ウイルスを奪う為にどこかの組織が送り込んだ工作員で、
エイダが恋人だと言っていた研究員のジョンも、アンブレラの情報を盗むための足がかりだったというのだ。
彼女はそんな女じゃない、と信じようとしないレオンに向けてアネットは銃の狙いを定めた。
「そんな事はどっちでもいいわ。お前はもう死ぬんだから!」
しかしすんでの所でその撃鉄が引かれる事はなかった。
やはりレオン達の後を追っていた不死身の追跡者、あの禿頭の大男が突如として天井から現れたのだ。

アネットは驚き、逃げ去った。
ある意味で彼はレオンの恩人であるが実際は単に死神がもっとタチの悪い死神に摩り替わったに過ぎない。
新たに現れた死の運命に対抗する為、レオンは武器を構えるのだった。
 
349 :バイオハザード2:2007/01/01(月) 10:46:27 ID:czljH99k0
大男を倒し、動力室へ至ったレオン。通路を進む彼の背後に不気味な影が地響きを立てて降ってくる。
先刻倒したばかりのあの大男が、例にもまして異様な回復を見せて彼を追ってきたのだ。
通路を後じさり、奥に向かって駆け出したがその先には壁しかない。
追い詰められたレオンが腹をくくって振り返った時、大男が突然響いた銃声と共に、わずかに前につんのめった。

「逃げて!」ゆっくりと振り返る大男の巨体の陰から見えたのは、赤い服をなお赤く血に染めたエイダの姿だ。
のしのしと歩み寄ってくる男にエイダは立て続けに銃撃を見舞ったが、
その歩みの速度すら緩めさせる事が出来ない。
あえなく弾切れになったのにも気付かず更に数度引鉄を引いてから、予備のカートリッジを取り出そうとした所で
首根っこを掴まれて、エイダは高々と宙吊りにされた。

しかし照準と身体の自由をほぼ奪われて、それでも彼女はあきらめなかった。
手早くリロードを済ませると、敵の顔面目掛けて弾丸の連打を浴びせかける。
この攻撃は少なからず大男にダメージを与えたようだったが、その代償として彼女はメインシャフトに叩きつけられた。
顔を覆い、ふらつきながら歩きだした直後、大男はバランスを崩し、遥か階下の溶鉄プールへと落ちて行った。

血の池の中にうずくまるエイダの肩を駆け寄ったレオンが抱くと、そんな状態になってさえ、エイダは彼に逃げるよう促した。
「俺たちはチームだ。一緒に行こう」
声を詰まらせたレオンの言葉にエイダは首を振り、とぎれとぎれに呟いた。
「私はただの女よ。あなたを愛した女……」
二つの視線が絡み合う。
ひしゃげたメインシャフトがショートする火花を浴びながら、二人はそっとくちづけを交わした。

けれども過酷な状況を共に駆け抜けた彼らの間に急激に燃え上がった愛情は、
しかとそのぬくもりを確かめる間もないまま、むなしく断ち切られた。
レオンの二の腕に添えられていたエイダの指が滑り落ち、ぱたりと床を叩く。
はっとして身を起こしたレオンに溜息のような声だけを残して、更に大量に出血したエイダの体から全ての力が失われた。
「エイダ……嫌だ……エイダ―――!!」
レオンの上げた絶叫を、破壊されたメインシャフトが起こす地鳴りが飲み込んでいく……
 
350 :バイオハザード2:2007/01/01(月) 10:48:48 ID:czljH99k0
最奥のP-4レベル実験室でラボのカードキーを発見、戻ろうと部屋を出たクレアの鼻先に、突然銃口が突きつけられた。
「よくもウィリアムを…許さない!」
ウィリアムの人としての最後の場所からクレアが現れたせいで
(アンブレラの強襲部隊がウィリアムを射殺した部屋がP-4レベル実験室)
その時の記憶がフラッシュバックしたのか、自らが新たに作り上げた"G"ウィルスのサンプルを手に
「夫の残した偉大な研究を今から私が受け継ぐ」
と歯をきしらせるアネットだったが、シェリーが宿主にされて殆んど意識が無い現状をクレアから聞かされ、激しく動揺する。
その時、もう今夜何度聞いたか分からない程に聞き慣れた咆哮が二人の耳を打った。

凍りついたようになったのも束の間、
「ウィリアム…」
呟いて、駆け出したアネットの眼前に、"G"が天井のダクトを破り、飛び降りてきた。
「ウィリアム。生きてたのね…」
呆然と呟く彼女は正気をなくした彼女の夫に取って最早ウィルスを持つものでしかなく、
彼はアネットに無感情に鉤爪を振り下ろした。
悲鳴にクレアが駆けつけると「ウィリアムが生きてる。彼は更に強く成長してるわ」
全身を血に染めたアネットは息も絶え絶えに語り、娘の名を呼んだ。
シェリーを救う方法を必死で問うクレアに、アネットは震える手で数枚の紙からなるファイルを差し出した。
「娘を助けて…そして悪いママだったけど―――愛していたと伝えて」
最後にもう一度、シェリーと言いかけて果たせず彼女は動かなくなった。

エイダを床に横たえ、レオンはゆっくりと立ち上がった。
頭上では無機質なコンピュータ音声が研究所爆破装置の作動を繰り返し告げ、無情に彼を急きたてている。
愛した人の死を嘆くため、立ち止まる事は今の彼には許されない。
今は逃げ延び生きるため、ひたすら走り続けなければならない。
それが、彼女が最後に望んだ事だったから。
「君を忘れない……さよなら、エイダ」
固い決意を込めた別れの言葉を呟くと、レオンはエイダが叩きつけられたせいで
メインシャフトのコンソールから床に跳ね飛んでいたマスターキーを拾い上げ、まっしぐらに駆け出した。

彼が部屋を出たその直後、煮えたぎる鉄の中から巨大な爪が飛び出すと、
炎を発するほど熱された鉄の熱さをものともせずに、溶鉄プールの縁をがっしりと引っ掴んだ。
 
 
483 :バイオハザード2:2007/01/09(火) 20:42:47 ID:n03vPJF20


「……爆破装置が作動しました。繰り返します。爆破装置が作動しました。
停止することはできません。研究員は最下層のプラットフォームから非常車両で脱出してください……」
その緊急放送はアネットの亡骸の側から立ち上がったクレアの耳にも届いていた。
モニター室まで引き返したクレアをビープ音が引き止める。
見上げると居並んだモニターの一つにレオンの姿が映し出されていた。
トランシーバーを取り出したクレアは回線を開いて呼びかけ、モニターの中のレオンが慌てて無線機を取り出した。

「クレアか?今どこに?」レオンの質問にモニター室よ、と答えた後
クレアは警備室のシェリーを連れて先に逃げるよう、レオンに言った。当然レオンはクレアはどうするのかと聞いたが
「私はまだやる事があるの。頼んだわよ!」
早口に言って、クレアはさっさと通信を切ってしまい、それっきりうんともすんとも応答しない。
仕方なくレオンは警備室を目指し、走り出した。

警備室の簡素なベッドに横たえられていた少女は具合が悪いのか辛そうな様子だったが、
クレアが待ってる、と言うレオンの声に顔をこちらへ向けた。
「クレアが?」
乱れがちの息の下から苦しげに問う少女にレオンは頷き、彼女をそっと抱き上げてエレベーターへと向かった。

入ってきた扉とは反対側の扉の操作盤にマスターキーを差し込むと、モニターに新しいルートが示される。
通路を切り替えているらしい幾度かの振動の後、エレベーターは最下層のプラットホームに到着した。
扉を出ると目の前に、頑丈そうな貨物列車が発車の時を待っている。
シェリーを乗務員室の長椅子に横たえ、レオンは運転室に入った。
運転室は薄暗く、作動レバーは動く気配もない。動力が供給されていないためこのままでは動かせないようだ。
手段を探してホーム脇のゲートを潜ると地響きが起こり、爆発五分前のアナウンスが流れた。
いよいよぐずぐずしてはいられない。レオンは歩道橋を駆け抜け、反対側のホームへ向かう。
 
484 :バイオハザード2:2007/01/09(火) 20:44:05 ID:n03vPJF20
階段を下りた所に頑丈そうなバーに守られた大容量プラグの収納庫があり、そこでジョイントプラグを手に入れた。
奥の突き当たりに扉がある。開くと再び地響きがレオンを襲った。爆発が近いのかもしれない。
部屋の両脇にある溶鉄プールからも不穏な火柱が上がっている。
部屋の奥に列車への電力供給用らしい装置を見つけたレオンは差込口にプラグを差して、レバーを倒した。
警告音と共にモニターにメッセージが出る。
非常モード起動の為電力供給が一時ストップし、その後電力回復と同時に非常列車が起動されるようだ。
かしゃん、と何かが切り替わる音がしてライトが消える。
残った非常灯の心許なげな光を押しのけ、室内は両脇のプールで溶ける鉄が発する不気味な仄明かりに支配された。
と、そのオレンジに光る海の中から何かが飛び出し、ずしりと重い音をさせて床の上に降り立った。

巨大な爪、しかしそれはあの"G"ではない。
度重なる戦闘によって幾度も傷付けられ、そのたびに立ち上がり、
それゆえ更に与えられ続けたダメージは、全身を灼熱の海に沈められるまでに至って遂に彼の戒めを解いた。
身に付けていたコートは燃え尽き、隆々とした上半身は炎に包まれているというのにその無表情は小揺るぎもしない。
両腕に備えた巨大な爪を高々と振りかざし、大男は、いやアンブレラの生物兵器、
量産型タイラントは耳が割れるほどの雄叫びを上げた。

避難していた研究員達の末路だろうか、白衣を着たゾンビで一杯のラボの奥にMOディスクを見つけたクレアは
それにより、脱出用の通路へ至っていた。通路を過ぎたカーゴルームの突き当りには巨大なリフトがあり、
これを使えば通常は資材搬入出用、緊急時は脱出用となる特殊高速車両が停車しているプラットホームに
抜ける事が出来る。
リフトに近づくと床が激しく揺れて、緊急アナウンスが聞こえてきた。
爆破五分前だという。急いでリフトの呼び出しボタンを押し、到着を待つ。
階数表示が点灯する。しかし、ランプが三つも点かないうちに、頭の上でイヤな音がした。
そう、何かが天井の鉄板を殴りつけているような……

二歩、三歩、後退した所で鉄板が折れ曲がり、"G"が姿を現した。
前見たときよりも更に猛々しい姿に変形している。元が人間だったとは思えないくらいだ。

悪趣味な天使のように広がった背後の副腕をかわし、与えたクレアの攻撃に悲鳴じみた声をあげ、
"G"は床にくず折れた。だが安堵したのもつかの間、一声高く雄叫びを上げると"G"は更なる変形を始めた。
上半身が膨れ上がり、無数の牙がたてがみのように首周りを覆う。
体型は最早二足歩行の為のものではなく、四足獣、さながらライオンかイノシシのようだった。
それはつまり、小回りを捨て、強力な突進力を得た事を意味していた。
だが、資材の間を跳ね回る敵に照準を狂わされ、時には突進で壁に叩きつけられてもなお、
クレアは立ち上がり攻撃を続けた。
彼女には、シェリーがいた。背中に守る者を庇ったクレアの前に遂に巨大な怪物は横たわり、クレアは最後の戦いを制した。
 
485 :バイオハザード2:2007/01/09(火) 20:46:19 ID:n03vPJF20
両腕の爪により攻撃力が格段に上がり、更にスキを見せれば一瞬で距離を縮めてくる、
これまでにないタイラントの素早さにレオンは苦戦を強いられていた。
その上今回は時間というもう一つの敵がいる。
一向に膝をつく様子のないタイラントに焦る内にもタイムリミットは刻々と迫ってくる。
もう駄目かと思われたその時、頭上の通路に人影が差した。

「これを使って!」
確かに聞き覚えのある声が投げ落としたのは、戦車でも吹っ飛びそうなロケットランチャーだ。
「エイダ、君か!?」
わが耳を疑いながらもレオンは問いかけたが、胸元に金のペンダントを光らせた影は彼に応える事もなく
そのまま姿を消してしまった。
後ろ髪を引かれる思いでレオンはしかし彼女の物騒な置き土産に駆け寄り、担ぎ上げた。

「これで終わりだ!」
狙いを付けたレオンの叫びと共に引き金は引かれ、白煙を上げて飛び出したロケット弾が
タイラントに向かって一直線に飛んでいく。
その威力は凄まじく、轟音と共に不死身の追跡者の体は四散し、二度と立ち上がることのない肉片となった。

レオンが構えた武器を下ろすのと同時に電源が回復し、列車への電力供給が始まった。
道を後戻って列車を動かさなければならない。
ホームにはどこから迷い込んだのか、恐らく実験用サンプルだろう、全裸のゾンビ達が緊急放送も知らぬげにさまよっている。
勿論感傷など感じよう筈もない。
レオンは掴みかかってくる彼らを掻き分けて非常トンネルへ続くゲートを開くと、列車の中へ駆け込んだ。

もう待っている時間も通信をする時間もない。クレアが来る事をただ信じて、レオンは重い発車レバーを押し上げた。
まるで眠りから醒めるように運転室の全てのモニターに色とりどりの明かりが点り、列車がゆっくりと動き出す。

崩壊の前兆か、天井から大量の砂埃が降ってきた。
祈る思いで待つレオンの眼に、砂塵舞う通路の奥のクレアの姿が映る。
「クレア、こっちだ!」
思わず扉から身を乗り出し、必死で叫んだ。
気付いたクレアが脱兎の勢いで駆け寄ってくる。
片手をドアのふちに掛け、もう片手はクレアを引っ掴まえんばかりに振り回してレオンは尚も叫び続けたが、
先頭車両がトンネルに入り、危うく乗り出した体ごと両断されそうになってすんでの所で身をかわした。
目を白黒させ、息をついた所で後続の貨物室のドアが開き、クレアが客室に入ってくる。
大きく開け放たれた貨物室の荷物積み込み口から車内に飛び込んだのだ。

再会を喜ぶ間もなく列車が激しい揺れに襲われ、座席のシェリーが床に放り出される。
「シェリー!」叫んでクレアは駆け寄ろうとしたが、
「伏せろ!」レオンに怒鳴られ反射的に身を伏せる。
遂に爆破装置が作動して、爆発が始まったのだ。
「シェリーの意識が……!」
シェリーを庇ったレオンが身を起こし、顔色を変える。先程のひどい揺れにも最早シェリーは眼を閉じたまま反応しなくなっていた。
絶体絶命かと思われたその時、クレアが懐から緑色の液体を封じ込めたアンプルを取り出す。
「ワクチンがあるわ。これを打てば……」
彼女が通信で言った「やる事」とはこれだった。
アネットの残したGに対する抗体の製法を元にクレアは研究所内を駆け巡り、ワクチンを作り出していたのだ。
 
486 :バイオハザード2:2007/01/09(火) 20:47:32 ID:n03vPJF20
暗いトンネルの中を、猛スピードで列車が駆け抜けていく。
「クレア、どうなんだ」
目を閉じたままのシェリーを覗き込んで、焦りの色を見せつつ尋ねるレオンを制し、クレアはシェリーに呼びかけた。
「さあシェリー、起きて。お願い、目を開けるのよ!」
言葉そのものがシェリーに命を与えると信じているかのように、クレアは強い口調で少女に呼びかけた。
一拍の間、その後唐突にクレアの願いが通じた。
「クレア……ここは?」
戸惑って視線を左右にやるシェリーに「やったぞ!」「シェリー……」レオンとクレアは明るい笑顔を見合わせる。
そんな二人に状況を悟ったのか、
「ありがとう……」
シェリーははにかんだような微笑を見せた。

「終わったな」
立ち上がったレオンが息をつくと、「まだよ」その背に向けてクレアはきっぱりと首を振る。
「兄を、探さなきゃ」
レオンは
「そうだな。まだ始まったばかりだ」
頷いて、運転室の扉を開けた。
列車のヘッドライトが照らし出す、来るべき未来に向かって語りかける。
強い決意を秘めた、別れの言葉を。
「さよなら、エイダ」

「お守り、効いたわね」
クレアに言われてシェリーは背中を振り返った。
クレアのベスト、その背中には今正に爆弾を落とさんとする物騒な天使、そして「Made in Heaven」の文字がある。
「これからずっと一緒よ」
クレアは温かく微笑んでウインクを投げ、シェリーは彼女の優しい守り手に抱きついた。
 
487 :バイオハザード2:2007/01/09(火) 20:49:11 ID:n03vPJF20
だが、その瞬間。
突如緊急列車は激しい揺れに襲われる。
ビープ音が鳴り響く中、レオンは慌てて運転室を飛び出し、クレアに状況を尋ねるが当惑した様子で首を振るばかりだ。
取り敢えず車内の様子を確かめようとレオンが客室を出ると、コンピュータ音声の緊急放送が入った。
バイオハザード発生の危険があるためこの列車は強制処理モードに入り、爆破されるというのだ。
余りの事に驚く内に、背後でドアがロックされてしまう。車内のクレアにもどうしようもないようだ。
結局前に進むしか取る手がなく、後続の貨物車両へと向かう。

最初の車両には何もない。通り過ぎ、二番目の車両に足を踏み入れた所で天板をブチ抜いて太い鞭が降ってきた。
否、太い鞭と見えたのは長くぬめった奇妙な触手だ。
大慌てで身を翻し、一番目の貨物車両まで駆け戻った所で更に二本の触手が伸びてきて出口のヘリに自らを引っ掛け、
それに引っ張られて巨大な本体が現れた。
赤と緑のグロテスクなイソギンチャクの中央に長い首、
両脇に異様に充血した赤い両眼を埋め込んだとしか形容しようのない怪生物。
それが幾体ものゾンビやその他の化物たちを飲み込み再生進化を繰り返した結果暴走し、
肉体を保つ事が出来なくなったウィリアム=バーキンの哀れな姿だった。

レオンは残された僅かな気力体力、そして武器弾薬の全てを振り絞り、この最後の敵と戦った。
巨大化しすぎた為に敵の動きは鈍く、長い四本の触手角以外脅威らしいものはなかったが、一晩中
(そう、この悪夢のような出来事は正しく悪夢の名の通り、たった一晩の出来事なのだ!)
戦い続けた彼の体は限界と言うのもおこがましいほど限界を通り越してしまっていた。
迫る刻限を示すかのようにじりじりと迫ってくる巨大な肉塊に長い長い夜を断ち切るとどめの一撃が吸い込まれ、
長い首がぐったりと倒れ伏した時には、レオンはもうほとんど貨物車の壁に背を付けんばかりになっていた。

軟体状の体がしゅうしゅうと音を立てながら液状化していく。
レオンは汗まみれの顔を拭い、振り向きもせずに貨物車両を後にした。

アナウンスが爆破装置の作動を告げている。
「各車両は順次、爆破されます。繰り返します……」「……そんな!」
理不尽な現実に抗議の声を上げてもどうにもならない。ドアを叩いてレオンが列車を止めるようわめいている。
「だめよ、運転室もロックされてるわ!」
クレアの絶望的な叫びにレオンは焦りの色を濃くしたが、
背後から響いてきたごぼごぼとした唸り声に気付いて息を呑み、身を翻した。
あの化物は一体何をどうすれば死んでくれるのか。
またぞろ復活した"G"が背後の車両を一杯に埋め、触手を伸ばすのももどかしいと言わんばかりに
ずらりと牙が並んだ丸い口を開き、ぬるぬる迫ってきていた。

「クレア、どうしたの?」
不安そうに問いかけるシェリーに「下がってなさい」ぴしゃりとクレアは言った。
硬い表情に怯えながらもシェリーはこくんと頷いて部屋の端まで走り、運転室のドアに背中を押し付ける。
途端に轟音を上げてドアがひしゃげ、少女は悲鳴を上げて座り込んだ。
拍子に足元の排気口が目に映る。大人は潜れないが、子供になら通れる幅だ。だったら……!

二度目の打撃は怪物からの攻撃を想定して設計されていない貨物列車のドアには荷が重すぎた。
あっさりと吹き飛んだ扉の向こうには牙だらけの肉の塊がみっちりと詰まっている。
「何て事……」思わず低く呟いて、クレアはそこにいる筈の若者の名を呼んだ。
「レオン、どこなの!?」

 
488 :バイオハザード2:2007/01/09(火) 20:51:17 ID:n03vPJF20
その叫びはレオンの耳に届かなかった。
もちろん死んだわけではない。これまでの地獄を駆け抜けてきた彼は、こんな所で死んでやるほど諦めがよくない。
彼の耳にあるのはただ轟々たる風の音。
列車の屋根に張り付いたレオンは背後を眺めやり、なおも追いすがろうとする触手達にうんざりとした薄笑いを向けた。
「……最高!」

背中で上がった金属音に、クレアは首を振り向けた。
「シェリー、何を?」慌てて制止しようとするがその時には開いた穴にごそごそと這いこむ後ろ姿が見えるばかりだ。
「電車を止めればいいんでしょ?」
できるもん!とでもいいたげな声にクレアは一瞬動揺するが、他に手立てがあるわけでもなし、
第一こういう時の彼女がガンとして聞かないのはとっくの昔に証明済みだ。
覚悟を決めたクレアは目の前一杯に迫る化物に振り返り、手を差し招いた。
「さあおいで、私が相手よ」

とは言うものの、このままでは一分も持たない間に追い詰められてしまう。
室内のあちこちに走らせたクレアの視線が床の一隅、金網になっている部分に止まる。
それを暫く眺めた後、クレアはタイミングを計るべく、睨むような視線を怪物に向けた。

運転室に入ったシェリーはコンソールの上を見回し、首を傾げていた。
「たくさんスイッチがあるわ。どれかしら?」
しかし彼女が考えても分かるわけがない。
適当な一つを押そうとしたところで間一髪、「シェリー!」天井が開いてレオンが現れた。
少女が顔を輝かせた次の瞬間、"G"が列車に新たな一撃を加え、シェリーはよろめいて尻餅をつき、
その下では「もうダメ!」さかさまに列車の床にしがみ付いたクレアが珍しく弱音を吐いている。

「そこのスイッチだ!」
レオンが示す指の先、黄色と黒のエマージェンシーカラーで囲まれた赤いボタンをシェリーが掌でぱちんと叩く。
すると列車は火花を散らしながら緊急減速を始め、甲高い悲鳴の残響を残してほどなく停車した。
「出口だわ……!」
彼方に漏れる光を目にして、クレアは安堵の息を吐く。
シェリーの無事を確認するレオン。間もなくクレアも合流を果たした。
「みんな無事ね」
クレアの言葉に頷くのと同時に、窓ガラスが割れて触手が這い出してくる。
余計な相手の無事に、「しつこい奴だわ!」
舌打ちしたクレアの合図で全員が出口に向かって一斉に駆け出した。

車内から姿を消した獲物たちをまだ探しているのか、運転席に達した触手がフロントガラスを突き破る。
その瞬間。
爆破カウントがゼロを差し、タイムリミットを告げる、長く緒を引く電子音が鳴り響いた。
それに引き伸ばされたかのように"G"の不気味な瞳孔が細長くなって―――列車が次々に大爆発を起こした。
 
489 :バイオハザード2:2007/01/09(火) 20:52:52 ID:n03vPJF20
 
「もう大丈夫よね……」
トンネル内をロケット砲さながらに駆け抜けた爆炎の残滓が、夜明けの空に黒々と上がるのを眺めつつ、
クレアは首をこきこき鳴らした。ふと傍らを見下ろして片頬を歪める。
「シェリー、ひどい顔だわ」
言われたほうはけろりとして「クレアだって」と応じ、二人は笑みをかわし合う。
その輪に混じる事もなく、レオンは厳しい表情でやおら立ち上がった。
「さあ……立つんだ」
「どうしたのよ。まだ何かいるの?」
不思議そうにクレアが問うが彼は答えず、「行こう。遊んでる時間はない」とただ促すばかりだ。
「行くって、どこへ?」
訳も分からず立ち上がったクレアが、遥か向こうに並ぶ町並みに向かって歩き出した背中に再度問いかける。
冗談とも本気ともつかぬ口調、しかしその瞳には強い意思を光らせレオンは相棒を振り返った。
「アンブレラをブッ潰すのさ!」

 
最終更新:2022年10月13日 15:47