■■■クロス探偵物語第二話
西山美麗(にしやまみれい):友子の姉。売れっ子モデル。21歳。
高松洋子(たかまつようこ):第2話の依頼人。60歳。
高松春彦(たかまつはるひこ):依頼人の息子。35歳で亡くなる。
田中貞男(たなかさだお):信用金庫支店長。55歳。
山本章(やまもとあきら):滝沢の同期で春彦の後輩。26歳。
滝沢一好(たきざわかずよし):山本の同期で春彦の後輩。26歳。
江角彩子(えすみあやこ):24歳。
大橋ゆり(おおはしゆり):24歳。

第2話 疑惑

 剣が出勤すると
冴木に昼出勤の友子に至急やってもらいたい経理の仕事ができたので呼びに行ってほしいと頼まれる。
ネットでもしているのか電話がつながらないのだ。
 剣が言われたマンションに行くとそこは結構な高級マンションだった。
インターホンを鳴らし冴木探偵事務所から来たと告げるとドアの向こうからはとても美しい女性が現れた。
「ちょっと待っててね。友ちゃん 今お風呂だから」
その女性は剣を部屋に通した。
そこに事情を知らなかった友子がバスタオルを巻きつけただけの姿で髪を拭きながら現れる。
剣を見て固まる友子。
そしてお約束どおり身体からバスタオルが外れる。思いもがけない光景に目玉が飛び出さんばかりの剣。
しかし次の瞬間、彼の顔面にはバイクのヘルメットがめり込んでいた。
着替えた友子が鼻に詰め物をした剣を怒鳴り散らす。
「何であんたがここにいんのよ!鼻血なんか出しちゃって いやらしいわね!!」
「お前があんなもん投げつけるからだろ!!」
 先の女性は美麗といい友子の姉だった。
そんな美麗が出してくれたコーヒーを飲む暇も無く事務所に引き返すことに。

 事務所に向かって公園を通過中の二人は他愛ない話をしていた。
 あのマンションは売れっ子モデルの美麗が借りているものであり、友子は居候なのだという。
彼女等の実家は北海道だそうだ。
 剣の生活にも話が及ぶ。
剣の身の上を知りデリカシーに欠けていたと謝る友子だが、剣は別に親が恋しい歳でもないと気にはしなかった。
それならばと友子は突っ込んだことを知りたがった。
ドラマのように親戚をたらい回しにされなかったのかと。オバサンのように野次馬根性まるだしだ。
呆れたが、友子がねだるため話すことにした。
剣は確かに親戚に厄介者扱いされたが、アパートの大家さんが親切に面倒を見てくれ、
父の死後もそこで暮らしてきた彼にとってその大家さんこそが親のようなものだった。
 と、二人の近くでちんぴら三人にからまれている少女の姿を発見する。
「女の子が からまれてるわ。剣ちゃん助けてあげて」
「よっしゃ まかしとけ。もしもし警察ですか 女の子が不良にからまれてます すぐ来てください。
 公園のボート乗り場の前です」
「何やってんのよ そんなんじゃ間に合わないでしょ」
 剣は当てにしないと友子が勇んで入っていく。
連中を挑発して矛先を向けさせるとあっさり剣にタッチした。
仕方が無いので剣は三人を離れたところへ連れ出す。
剣「いいことを教えてやろう。オレはお前らの学校の先生を知ってるぜ!」
B「俺たちゃ 学校退学になってんだよ!!」
剣「うっ・・・そうかわかった!お前ら このオレを怒らすと後が怖いぜ。
  そこの!オレは お前の兄貴と仲がいいんだぜ!」
A「俺は1人っ子だ!!!」
剣「じゃ じゃあ これならどうだ!オレは今 ヒロスエのパンティーを持ってるんだぜ」
A「うっ」
剣「どうだ、見たいか?」
A「ううっ」
剣「見たいかって聞いてんだよおっ!?」
A「・・・・・・見てえ」
剣「ちょっと待ってね 今脱ぐから(ハート)」
ズボンを下ろす剣。
A「はいとんかあ!!!!!」
B「もうガマンならねえ!このフカシ野郎!!」
剣「あっ おまわりさーん。ここでーす こっちこっち」
A「へっ そんな手に引っかかるかよ!!」
が、本当に警官がきていたりする。
剣「こいつらが女の子をおそってたんです」
A「やべえ」
警察「おい ちょっと待て!!」
警官に追われてちんぴら達は逃げていった。
剣「さっき110番しといて良かった・・・」
制服姿の少女にお礼を言われるが、仕事がある二人は急ぎ足でその場を去っていった。

―――事務所
剣「いやあ いい事した後は気持ちがいいなあ」
友子「剣ちゃんて強いのね」
剣「まあね。友子ちゃんにも見せたかったなあ オレの大活躍」
友子「私 もっと見せてもらいたい物があるわ」
剣「何?」
友子「ヒロスエのパンツ」
剣「ゲッ、聞いてたのね・・・」
そこに着物を着た老年の女性が現れた。
「ここ冴木探偵事務所ですよね」
友子「はい そうですが・・・」
「春彦ちゃんを・・・春彦ちゃんを殺した犯人を捕まえて!!」
友子「は?」
「春彦ちゃんは自殺なんかしないわ、誰かに殺されたのよ!そうに違いないわ!!」
 女性をなだめて落ち着かせ話を整理する。
 彼女の名前は高松洋子(たかまつようこ)。
彼女の長男の春彦(はるひこ)が3日前の月曜日に首つり死体で発見され警察の検死の結果
死亡推定時刻は発見前夜の日曜 午後6時。
死因は首つりによる窒息死。発見当時 部屋には全て鍵がかかっていてドアにはチェーンもかかっていた。
室内に争った形跡はなく 盗まれた物もない。これらの状況から 警察は自殺と断定。
 普通に考えれば自殺である。しかし彼女はそれを否定した。
その根拠は自分に黙って自殺するような子ではないという母の信頼だけであった。
どうせ彼女の勘違いだろうとは思ったが、とりあえず現場を見せてもらうことにする。

 ・春彦は35歳。仙台の大学を卒業後東京の信用金庫で働いていた。独身で一人暮らし。
 ・このマンションは彼女が3年前に彼に買い与えたものだという。
 ・第一発見者は同僚の山本。
連絡もなしに欠勤した彼を心配し様子を見にきたら、
レースのカーテン越しに中の様子が見えたのであわてて警察を呼んだのだという。
警察は管理人に借りた鍵でドアを開けドアチェーンを切って入ったとのこと。
 ・窓は二重ロックで外からかけることは不可能。
 「ドアに鍵はかかっているしガラスを外した形跡もない。
  2枚一緒に外すのも不可能・・・ベランダからの出入りはあり得ないな」
 『こりゃ 自殺じゃないとしたらやっかいだぞ。
  こんな普通のマンションに隠し通路なんてあるハズないし 完全な密室殺人だ・・・』
 どう見ても自殺を疑う余地はなさそうだった。しかし彼女は彼が自殺をしていないと固く信じていた。
剣は彼女に正式な依頼をするように促しその依頼を受けることにした。
 警察で話が聞けるように話を通してもらい、剣を彼女の親戚ということにした。

 警察署で斉藤という警官を呼んでもらい話を聞く。
伯母は気が動転しているので剣がクッションになろうというふれこみだ。
 検死結果について聞けたのは同じことだけだった。
他殺の疑いについても完全な密室ということで余地は無かった。
ここまでは同じだが、自殺について動機となりうるものがあったことが判明する。
それは春彦が勤め先の信用金庫で横領をしていたというものだった。しかも金額は3000万円。
一年ほど前から初め、最初は小さな金額だったものが大きくなっっていったのだという。
 春彦が競馬にハマっていたためというお決まりのものだった。
 そのやり口は巧妙で、Aという口座から100万円を引き出し、
Aの口座の支払いの直前にBの口座から200万円を引き出してAの口座に100万円を戻すという手口だった。
そして差額の100万円は自分で使いBの口座にはCの口座から…といった具合で金額を増やし続けていった。
しかも同時にいくつもの口座でやっており、最後には1つの口座から1000万円以上もおろしていたそうだという。
 伝聞調にひっかかった剣が質問をするとなんと証拠が無いのだという。
要は状況証拠だがそれで間違いないという。
 春彦が自殺した翌日に横領が発覚した。自殺の2日前に他人の口座から3000万円を引きおろしていた。
その口座というのは週明けの月曜日に社員に給料を支払うものだった。
春彦は月曜日には支払いがあることを知っていたはずだ。
それを日曜日の府中ダービーで勝って戻しておくつもりだった、
しかし勝てなければ発覚してしまうため自殺をするつもりだったというのが警察の推論だ。
 彼は日曜日の5時頃、レースが終わった後 駅前のベティーという店で手錠を買っていた。
自殺した春彦は後ろ手に手錠をつけていた。
そして机の上には自殺のやり方を書いた本が開いて置いてあった。
そのページには首つり自殺のやり方に赤ペンでラインが引いてあった。
 実物を見せられると、たしかにそこには赤ペンでラインが引いてあった。
「首つり自殺をするときは必ず手を使えないように固定しておくこと。
そうしなければ苦しさのあまり自分でロープをつかんでしまい失敗するケースが多い。
しかし自分の腕をロープで縛るのは難しいので手錠等で 後ろ手に固定しておくとよいだろう」
この本が机においてあり、日曜日の5時に彼が手錠を買ったのを複数の店員が目撃していた。
 以上のことから彼の自殺は明白だという。遺留品からも指紋などの疑わしいものは出なかったそうだ。

 ――事務所に戻る。
 友子に経過を話すと彼女も自殺で間違いないだろうと言い、剣も同じ考えをもったことを述べる。
 しかし完璧すぎて臭いという気もしていたのだ。まるで仕組まれたような完璧さにひっかかりも覚えていた。
 悪趣味な本に引かれたマーカー。まるで印象付けようとしたみたいだ。
「考え過ぎじゃない?」そうかもしれない。
剣「それと・・・・・あのおばさんがかわいそうでさ、何とか真実を突き止めてやりたいんだ」
友子「剣ちゃん・・・・・」
冴木「好きにしたらいい」
剣「先生!」
冴木「お前の気の済むまでやってみろ!」
剣は真実を突き止めることを決意して出かけていった。
そんな剣を見て常人とは違う考えのできる彼には素質があるのかもしれないと冴木が言う。

 再び春彦のマンション。
 洋子に話を聞く。
 ・春彦はとくに趣味をもっておらず、ギャンブルをとても嫌っていた。
 ・彼の貯金が全ておろされていた。
1000万円あった貯金が半年ほど前から100万円くらいずつおろされて2週間前に全てなくなっていたのだという。
1000万円も貯金のあった人間が一年前から横領にはしるだろうか?
 ・マンションの名義は春彦になっており、彼は几帳面に毎月10万円ずつ彼女の口座に振り込んでいた。
彼女はそのようなことをしなくてもよいと言っていたが、彼がけじめだといって一度も欠かさなかったという。
 ・マンションの資産価値は3~4千万円位と思われる。
 自分名義なのだからこのマンションを売って補填することもできたはずである。
春彦の死が疑わしいと思った剣は真犯人を捕まえることを約束する。
そして春彦が横領をしていたという話を聞くかもしれないが決して信用しないように忠告した。
 だから決して隠し事をしないで春彦を信用するように自分も信用するように頼み込んだ。
自殺の手引書のことを彼女は隠していた。それを認めると本当に自殺をしたと認めてしまう気がしたからだという。
 春彦の写真を入手した剣は信用金庫に向かうことにした。
彼女は犯人が捕まるまでいつまでもここにいるとつもりだという。

 支店長は非協力的だったが、調査したことを公表するつもりがあると言うと渋々話をしてくれることになった。
 ・春彦は仕事熱心だった。
 ・特に友人はいなかった。
 そこに外回りから第一発見者の山本が帰ってきた。
 ・午後に例の事件が発覚し何か知っているかと30分おきくらいに電話をしたが誰もでなかった。
それで営業時間終了後に見に行くと彼が首を吊っていた。
 ・例の口座というのは滝沢という同僚の担当だった。
口座の管理はコンピュータの端末から行われるのでIDさえ知っていれば誰でも可能であり、
滝沢は自分のIDを紙に書いて机の上に貼っていた。
 ・山本は床から20cmばかり高いところに入る橋本を発見して支店長に電話をし、
支店長はすぐに警察を呼ぶように指示して滝沢を連れて部屋に向かった。
二人が到着する頃に警察も到着し、マンションの管理人に部屋の鍵を借りてドアを開けチェーンを切って入った。
三人は玄関で待っているように言われていて中には入っていなかった。
 剣が春彦の私物を回収しに行くと手帳を発見する。そこに滝沢が現れた。
 ・春彦は上司というより先輩である。
 ・春彦は競馬にハマって大変で自分も5万円貸したらしい。
 そこで目に付いた女性にも話を聞いてみる。
すると10日位前に春彦にお茶を出したら首筋から背中にかけてミミズばれのようになっており、
春彦はアトピー持ちだからとうろたえて答えたそうだ。

 ベティーは護身用の品を扱っている店だった。
 何か買ったら思い出すという店員から盗聴器とスタンガンを買う。
 ・手錠を買い求められたので見せたら一万円を出された。
 ・財布から金を出す際に本の紙袋をカウンターの上に置いた。
 ・つり銭を渡す歳に小銭が下に落ち、小銭を拾うと茶色いサンダルを履いていたのが見えた。
 ・写真を見せると春彦で間違いない。
 ・連れはいなかった

 翌日の事務所。
 友子に前日の成果を話す。
 自殺の手引書を見て死のうとしたはずなら、その後に他に本を買うだろうか。
 それに競馬場の帰りになら靴を履いていたはずだから家から出かけた可能性が高い。
しかしそれについては
「競馬場から一度家に帰ってそれから手錠を買いに行ったってことは?」
それはありそうだ。
 競馬ですったのなら手錠を買った一万円が残っていたのは?
手錠用にそれだけ残しておいたのかもしれない。
だから一度家に帰ってサンダルに履き替えて手錠を買いに行った可能性もある。
 マンションを売らなかったのは?
母親が怖かったからかもしれない。
 やはり自殺の線が色濃く残っていた。

 剣は応接室で手帳を調べてみる。
手がかりらしきものが書かれているページには10件の電話番号が書かれていた。
試しに10件に電話をかけてみるがどこも手帳に書かれた通りの相手に繋がることはなかった。
これは意図的に間違った番号が書かれており、どれか一つの番号を隠すためのものだろう。
そういえばこの中に一つだけ女性が出たものがあった。彼女はジュンと名乗っていた。
そして手帳の表記は水無月。
水無月=6月=June。この手帳に書かれた番号は彼女の番号を隠すためのものだったのだ。
 しかし何故ジュンという名前で出たのだろうか。考えられるとすれば水商売だ。
 何か聞き出せないかとアンケートを装ってかけてみるがあっさりと切られた。
もし春彦と関係があれば警戒される可能性もあるのでうかつに名前は出せない。
そういえば彼女の声の後ろでは歓声があがっていた。今日は土曜日。おそらく彼女は競馬場にいたのだ。
一計を案じた剣は夜に彼女の携帯電話の伝言サービスにメッセージを入れた。
明日の中山のレースでイカサマが行われるので当たり馬券の情報を喫茶店で教えると。

 喫茶店で彼女の携帯電話にかけると案の定一人の女が電話に出た。
その後剣は彼女の後をつけ彼女のマンションを突き止める。
 ポストに書かれた名前は江角(えすみ)。
 しばらく張ってみると彼女は再び出かけ、他のアパートに行った。
ポストの中の請求書から住人の名は大橋ゆり(おおはしゆり)、電気代から一人暮らしと推察された。
ジュンの友人のようだ。
 夕方にそこを出た彼女を尾行するとあの信用金庫の側まで歩いていく。
そこで滝沢に出会ってしまいジュンを見失ってしまった挙句、強引に喫茶店に連れ込まれてしまう。
 滝沢が言うには支店長が剣には協力するなと命令していたらしい。
そして滝沢は尊敬していた春彦の死の真相を解明してほしいと剣に頼み込む。

 翌日、江角のマンションの前で彼女を張ってみる。
 中々動かないので部屋の前まで行き水道メーターを確認する。
30秒ほど動いたのでおそらくトイレを使用したのだろう。
 剣はベティーで買った盗聴器をインターホンの下にしかけマンション前に戻る。
 するとしばらくして平田(ひらた)と名乗る男が江角の部屋を訪ねた。
急に仕事を休んだ彼女を呼びにきたのだという。
クビになるのも仕方が無いという彼女に手ぶらで帰っては店長にしかられると言う平田。
そこで江角は自分が変な奴に狙われていることを伝え、平田に勧誘員の真似をさせて帰させる。

 剣は車で帰る平田をスクーターで尾行し黒の館という江角の勤め先を突き止める。
 中に入ってみると受付にいたのはいかにもなハードな格好の女性。ここはSMクラブだった。
ジュンを指名すると彼女は休みだという返答が返ってきた。やはり彼女はここで働いていたのだ。
春彦はここの常連だったのかもしれない。
 他の相手にして入店すると鞭を振り回す女王様が出てきた。
そんな趣味は無いという剣に
「何言ってんのよ。ジュンのお客なんでしょ。だったらMよね」
江角は女王様役だったようだ。
 拒み続ける剣に江角への敵愾心を燃やす女王様。剣は彼女を宥めすかし彼女と落ち着いて話をする。
 彼女の名前はミミ。彼女によると江角は口がうまく(※注:話術の方)、
心にもないことを言って客を褒めちぎるため、真に受けた客が次からもジュンを指名するのだという。
 中には貢ぐものもいるそうで、この前は10年間かかって貯めた金を貢がせたと自慢していたらしい。
貢ぐ人間には真面目な人が多いとのこと。例えばこの間は金融関係の人間がハマっていたそうだ。
 そこまで聞いてもしやと春彦の写真を見せると、彼女は剣の素性を問う。
剣が探偵であることを告げると、彼女は江角を逮捕させたいらしく非常に協力的になった。
間違いなく春彦が先の金融関係の男だという。
半年ほど前に誰かの紹介で来たようで、おそらくジュンの知り合いの紹介だろうとのこと。
最初は週に一度くらいの割合で来ていたがここ2、3ヶ月はほとんど来ていなかったらしい。
おそらく店を通さずに直接会って金をもらっていたのだろう。
 ジュンの本名は江角彩子といい電話番号も教えてもらった。
江角は大阪出身らしく、関西なまりのある友人からよく電話がかかってくるのだという。
その友人はこの仕事をやめさせたがっている様子。
『なるほど だいたい見えてきたぞ。後はジュン こと江角彩子とあいつの関係が明らかになれば・・・』

 翌日、剣は信用金庫にデジカメを持っていって、田中、山本、滝沢の三人を写した。
不意をついて写したのだが、田中は不審に思うだけ、
山本は特に何も思わずデジカメを持っていることをうらやましがるだけだったが、
写真嫌いという滝沢は激昂し剣にデジカメの中のデータまで消させようとした。
さいわい電池を抜いただけで納得してくれたのでデータは残ったままだ。

 次いで剣は大橋の部屋に行き彼女に4枚の写真を見せた。
興信所の者を名乗り結婚調査ということで協力を依頼する。
 写真の中に依頼者がおり、
もし大橋が依頼者一人だけを知っているのなら江角と依頼者が真剣に付き合っているということになる、
もし親友の大橋が指す相手が違えば依頼者はたいした相手ではないということになるという触れ込みだ。
 そして彼女が指した相手は滝沢だった。会ったことはないが遠目に見させてもらったことがあるという。

 事務所で友子と話をする。
剣が滝沢を怪しいと思った理由、それはこの間、彼に声をかけられ江角を見失ったことだ。
江角と待ち合わせをしていた彼が剣に気付いたので、剣に声をかけてその隙に江角を逃がし、
後で連絡をとって剣につけられていることを話したのだろう。
おそらく平田に他の住人に声をかけるふりをさせたのも滝沢の指示なのだろう。
江角の店がバレると困るからだ。
 たしかに滝沢や江角は怪しかった。しかし密室であったことを考えると自殺の線が残ったままになる。

 再び春彦の部屋へ。やはりベランダからの脱出は不可能だ。となると玄関からだ。
 しばし玄関を眺めるがおかしい。警察が入った時のままのはずだが。
剣は何かしなかったかと高松洋子に声をかける。
すると彼女は変な金具が落ちていて危なかったので拾っていたといい剣に見せた。
これが剣の探していたもの、警察がこの部屋に入る際に切ったドアチェーンの鎖だ。
 剣が残っていたドアチェーンと繋ぎ合わせてみるが、チェーンの長さが足りず届かなかった。
 しばし考え込み、剣は一つの答えにたどり着いた。
それを裏付けるためのある物を土間で探すのだがなかなか見つからない。
 そこで部屋のカーテンを全開にさせて照明をつけさせる。すると反射する非情に小さなものを発見した。
これこそが密室トリックを解く鍵だった。
 剣はそのまま警察に行く。

 警察で先日の斉藤に当日チェーンカッターを使った鈴木を呼んでもらい話を聞く。
 明らかに手遅れな場合はわざわざガラスを割らずにチェーンを切るということになっているそうだ。
その方が安上がりだし現場を荒らさなくてすむし怪我の心配も無いのだ。
 鈴木は当日一回だけチェーンを切ったのだという。
 それだけ聞いて辞退しようとした剣に大川が声をかけてきた。
父のことを聞こうとも思ったが、
父の名を出すと大川が何か隠したいことがあるという顔をしたのでまたの機会にする。
 そして大川にある頼みごとをした。出来ないと断る大川だったが、
剣が懸命に頼み込むと今回だけだと協力してくれることになった。
 そして現場に集められる信用金庫の三人。そこに大川が江角を連れてやってきた。

 剣は犯人を告げる前に皆にこの事件のあらましを解説し始める。
 春彦は自殺ではなく殺され、横領の罪を着せられたのだ。
犯人は金に困り自分の職場の金に手をつけた。
しかし横領を続けていくうちに金額が大きくなりどうしようもなくなった。
そこで同僚の春彦の預金に目をつけた。信用金庫に預けているのだからそこの従業員なら調べるのは簡単だ。
そして知り合いである江角と共謀してその預金を奪うことを計画した。
犯人は春彦をSMクラブに連れて行った。
真面目だった春彦はSMの世界にのめり込んでしまい、江角に自分の金をどんどん貢いでいった。
とうとう春彦に全ての預金をつぎ込ませたのだが、一行に横領した穴は埋まらなかった。
そこで春彦を殺害し横領の罪を着せることにした。
 犯人は誰か?それは滝沢だ。
 しらばっくれ証拠を求める滝沢。
 剣はミミが"春彦が江角の客であり滝沢が江角の知り合いだということを証言した"と告げる。
江角「ウソよ!ミミは滝沢さんのことは知らないわ!!あっ・・・」
滝沢「バカ野郎!お前は黙ってろ!!
   か 仮に俺とこの女が知り合いだったとしても、どうやって高松さんを殺せるっていうんだ!」
 剣は続ける。
 犯行当日、江角は春彦にSMの道具にするからと手錠を買ってくるように命じ、
店を指定し時間も競馬が終わった後位に指示した。
後ろ手に手錠をかけ目隠しをした春彦を滝沢がつるし上げる。
その後用意しておいた自殺マニュアルを机の上に置く。
 ではどうやって部屋を出たか?
 当然江角はここの鍵を持っていただろう。
問題のドアチェーンだが、合わせると長さが足りず、警察は一回しか切っていないと証言している。
そこで剣が発見した金属片だ。
 滝沢は春彦を殺した後細工をした。まずチェーンカッターで鎖にカットを入れる。
金属片はその時にできたのだ。
自分達は春彦殺害後外に出てドアのすき間から左右のチェーン同士を
コマ(※この場合はチェーンカッターで切込みを入れた鎖のこと)に引っ掛ける。
そして合い鍵でドアに鍵をかけたのだ。
 しかし警察が細工したコマじゃない部分を切ったので計算が狂った。
そのため細工したコマを回収していかねばならなくなった。おそらく玄関で待たされているときだ。
 警察もあわてていただろうし、
もしかしたら同色の粘土のようなもので切れ目を塞いでいたかもしれないので気付かなかったのだ。
滝沢「冗談じゃない!何で 俺がやる必要がある。その女が 1人でやったかもしれないだろ!」
江角「そんな・・・」
 だが吊るすには被害者よりも重い必要があった。江角では無理だろう。
滝沢「どこに証拠があるんだ!おい彩子 黙秘だ 一言もしゃべるな!弁護士を呼んでくれ!!」
 そこに剣に呼ばれていた大橋が来た。
大橋「彩子!あんた 騙されてるんや!滝沢さんは あんたとは結婚せえへんよ」
 戸籍を調べた結果、滝沢は2年前に結婚していた。田中が仲人をつとめたという。
江角「ウソよ ウソよね 滝沢さん」
滝沢「・・・・・」
 大橋は本当のことを言って罪を償うのだと江角を説得する。
大橋「彩子 ほんまのことを言うんや!そして罪をつぐなうんや。
   うち 待ってるからいつまでも友達やから・・・」
江角「うううっ・・・」
 泣き崩れる江角。滝沢に掴みかかる高松洋子。
高松「・・・・あなたが あなたが春彦を殺したのね。春彦を 春彦を返してえええ。春彦おお 春彦おおおおお」

 後日の公園。
 剣は大川から捜査結果を聞いていた。江角が自供しほぼ剣の推理どおりだったという。
滝沢は自分自身が競馬にハマっていて、
彼の自宅からは馬券や新聞が相当出てきておりチェーンカッターも見つかったそうだ。
 高橋洋子は仙台に帰っていた。立派な墓をたてるつもりだそうで剣によろしく伝えてくれと言っていたという。
 大川は父のことで何を聞きたかったのかを剣に訊ねるが、剣はそんな気分ではないとまたの機会にする。

 ――事務所
 先の事件の話をしている二人。
友子「それにしても ヒドいことするわね。横領の罪を着せる為に女を使って殺すなんて」
剣「そうだね・・・」
友子「でもさあSMクラブって どんなことするのかしら。最近ソフトSMとかいって流行ってるらしいのよね。
   SかMかの診断テストもあるそうよ。私どっちかしら。
剣「さあ・・・」
友子「剣ちゃん どうしたのよ。ボケーッ としゃちゃって。シン気くさい顔やめてよ」
剣「・・・・・・・・・・。・・・母親ってすげえよなあ。
  オレにも母さんがいたらあんな風に心配してくれるのかなあ」
友子「・・・剣ちゃん。お母さんが恋しくなったのね・・・。
   いいわ。私が お母さんになってあげる。さあ 甘えていいのよ」
剣を抱きしめる。が、剣の手が胸に。
友子「きゃあ 何すんのよ!」
剣「どうせなら もっと豊かな胸の方がいいなあ。美麗さんみたいな・・・」
またしても剣の顔面にヘルメットがめり込んだ。それも亀裂が入るくらい。ヘルメットと共に床に崩れ落ちる剣。
友子「フンだ 失礼しちゃうわ!!」
剣「お お前は・・・ま 間違いなく・・・Sだ・・・。グフッ・・・」





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