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part28-156~170


156 :Elebits:2007/02/05(月) 19:53:31 ID:BUpESzXh0
・エレビッツ世界の特徴
 遥か昔、巨大な雷と共に現れた不思議な生き物、
 エレビッツが全てのエネルギーを賄っている為、
 化石燃料や核に依存しない文明社会となっている。

・エレビッツとは
 形状や色、特性などによって数種に分類されるが、
 共通の性質として実体化したマテリアル体、
 形状に囚われず機器に同化して動かす事の出来る
 エネルギー体、そしてその中間である発電体に変化し、
 生活の様々に利用されつつ人類と共存している生命体。
 ちなみに単体を指す場合は「エレビット」と呼称する。

・キャプチャーガン
 キャプチャーレーザーという光線を発する銃器の形をした道具。
 主な用途はエレビッツの捕獲だが、
 レーザーを当て続けた物体を「つかむ」事が可能。
 またエレビッツを捕獲しエネルギーを蓄えると
 動かせる重量が大きくなったり、機器に電力を与え稼動させたり
 もできる。精密機器らしく、壊れ易いのが欠点。

・登場人物

【カイ】
 主人公。エレビッツ研究者を両親に持つ10歳の少年。
 研究に明け暮れる両親に余り構ってもらえず、
 寂しさを募らせる内、いつしか両親を自分から
 引き離す元凶としてエレビッツを嫌うようになった。

【エド】
 カイの父親。世界的なエレビッツ研究者として有名。
 キャプチャーガンを発明したのも彼である。
 かなりのエレビッツ愛好家でもある。

【アナ】
 カイの母親。エドと共にキャプチャーガンを製品化させ、
 やはり世界的に高い評価を受けるエレビッツ研究者。
 絵本を書く事が趣味。カイの相手をしてやれない事を
 気に病んではいるらしい。



ある嵐の夜、空を引き裂くような落雷が起きた。
それと同時に停電で部屋が真っ暗になり、
街中に何か異変が起きているようだ。
エドとアナは異変の原因を探る為に出かけてしまい、
取り残されたカイは不機嫌になる。

気晴らしに好きなテレビ番組を見ようとするが、テレビもつかない。
カイはそこで、テレビを見られるのもエレビッツのおかげだという
エドの言葉を思い出し、今テレビが見られないのは
落雷後様子のおかしいエレビッツのせいだと決め付けてしまう。

そしてカイはエドに内緒でキャプチャーガンを持ち出し、
今までの恨みを晴らすべく、家にいるエレビッツを一匹残らず
捕まえてやろうと行動を開始するのだった。

157 :Elebits:2007/02/05(月) 19:54:09 ID:BUpESzXh0
まず手始めに、自らの城である子供部屋を一掃しようとするカイ。
机や棚の上で大人しく眠っているエレビッツ達を容赦なく
光線で捕らえていくカイ。次第にキャプチャーガンのパワーも増し、
テレビやパソコン、玩具などを起動させ、中に潜むエレビッツ(※)を
追い出しまた捕らえる。
この繰り返しにより、ただでさえ余りきちんと片付いているとは
言えない子供部屋に、混沌の嵐が吹き荒れる事になったのであった。

子供部屋のある二階の廊下や物入れ、トイレの便器から吹き出した
エレビッツも律儀にキャプチャーしつつ、カイが狙いを付けたのは、
両親の部屋であった。エレビッツ研究者にエレビッツが沢山いると
思ったのか、何か大人の世界を垣間見られるのを期待したのかは
知る所ではないが、ずかずかと寝室に踏み込むカイ。

ベッドをひっくり返しても、一般的な家具調度品しか見当たらないのだが、
確かにエレビッツは沢山いた。主にエドの趣味であろうプレイヤーや
ラジオなどの電化製品が多い為だ。更に寝室からドア一つ開ければ
そこは書斎。エドとアナの研究資料が色々とある、
まあ言わば聖域とも言える部屋なのだが、今のカイにそのような事を
慮る余裕などあるはずも無い。今、この時から惨劇は起こる…。


※電化製品を稼動させると、エレビッツが大量に出てくるという
 ゲームシステムになっているのです。

158 :Elebits:2007/02/05(月) 19:55:04 ID:BUpESzXh0
眼前には夢のような光景が繰り広げられていた。但し悪夢だが。
ガラスの像が砕け散り、トロフィーが舞い上がる。
棚にある全ての資料や本ばかりか、壁に掛けられた絵や
怪しげな仮面までもが床に散乱し、机でパイ生地のように潰された
エレビッツに放たれるキャプチャーガンの閃光が空を裂く。

最早カイはエレビッツを狩り出す為に手段を選ばなくなっていた。
普段は怒られるので触らない仕事用PCを勝手に起動させ、
何のデータが入っているのかも分からないディスクを
躊躇いも無くシュレッダーに投入する。
それらも用済み次第投げ捨てられ、部屋の隅で無残な姿を晒している。

部屋の中で竜巻が舞い踊ったが如き惨状の中、エレビッツの姿も
殆ど無くなった事で、ふと我に返ったカイ。
「ずいぶん散らかしちゃった」などとのん気に考えていると、
エドから電話がかかってきた。

話の内容は、世界で何かが起こっていて、そのせいでエレビッツに
異変が起きているらしいという、意味があるのか無いのか分からない
ものだったが、それよりもカイを落胆させたのは、念の為キャプチャーガンを
携帯するようにと告げた直後、エドが一方的に電話を切ってしまった事だった。
自分が心配ではないのか、やはりエレビッツの方が大事なのか。
嬉しいはずの父親からの電話で、逆に憂鬱な気分になったカイの耳に
階下からの物音が響いてきた。

「一階にもエレビッツがいるんだな?」

エレビッツへの恨みを増したカイは家中のエレビッツを根絶やしにすべく、
階段を下るのだった。

159 :Elebits:2007/02/05(月) 19:55:36 ID:BUpESzXh0
一息ついて気が静まったのか(※)、キッチンとリビングでは
なるべく物を壊さず静かにエレビッツを捕まえるカイ。
さすがに一階には家電製品が多く、その分エレビッツも沢山いるが、
慣れてきたのかキッチンでは捕獲の片手間にトーストを焼きコーヒーを入れ、
チキンをオーブンで程よく調理した上、おやつのポップコーンまで作って、
今後の夜間活動に対する準備もばっちりである。

ただ気になるのは、リビングに変な気配が漂っている事だ。
エレビッツの様子も今までとは違う感じだ。
カイが自分の事を棚に上げ、何かに怯えているみたいだ、
などと考えていると、突然これまでに見た事も無いエレビットが現れた。

ガラス質の蒼い体色と、目にも止まらぬ素早い動き。
敏捷さで知られるブルーエレビッツを髣髴とさせるが、
体も大きく能力は桁違いだ。その上分身までして、
カイを挑発するように、それぞれが疾風の如く飛び回る。
ブルーとは違うのだよ、ブルーとは!

こんな代物を放ってはおけない。
カイはこれまでに蓄えたキャプチャーガンのエネルギーを開放し、
未知のエレビットに立ち向かう!後の事など考えない!それが男の子だ!


※本当は「物を壊すな」「大きな音を立てるな」などの
 ゲーム的な制限がかかっているだけだったりする。

160 :Elebits:2007/02/05(月) 19:56:07 ID:BUpESzXh0
蒼いエレビットとカイの闘いは熾烈を極めた。
何しろ相手は俊敏だ。瞬きする間に位置を変え、物陰に潜む。
対抗するカイはキャプチャーガンのパワーを全開、
ピアノすら紙屑の如く宙に舞わせる威力をもって、
障害物(一般的に言う所の家具)を蹴散らし、蒼いエレビットを追う。
さっきまでの静けさはどこへやら。端から見れば凄まじい破壊行為
としか思えない光景がリビングに展開されていた。

蒼いエレビットの分身体は、キャプチャーレーザーを浴びると
外装がパリンと割れて半透明の中身(?)が露出する。
非常に視認し難いそれに再度レーザーを当ててやっと消滅されられるのだが、
最後の一体になると繰り返し分身し、しかも分身体の数がその度に増す。
但し分身する毎に体が小さくなる為、内包するエネルギーの減少は明らかだ。
つまり、いつかは分身する事ができなくなる。

死闘を繰り広げる事数分、最後の一体をレーザーが捉えた時、
もう分身は起こらなかった。カイの勝利である。
光の泡が散るように姿を消していくエレビット…
そして蒼い光がキャプチャーガンに吸い込まれた後に残ったのは、
ごく普通の、一体のブルーエレビットだった。
脚が速く、人間が自分を探すのを楽しむという、ちょっと趣味の悪い
エレビッツではあるものの、こんな風になってしまうなんて…

世界を包む異変を、漠然とではあるが感じ始めたカイであった。

161 :Elebits:2007/02/05(月) 19:56:38 ID:BUpESzXh0
ブルーエレビット変異体の出現後、微妙に攻撃的になったエレビッツ達。
オモチャとは言え、大砲や戦車の中に入り込み、カイに対して反撃に
出るようになった。異変のせいなのか、カイの所業が腹に据えかねたのか…。
それはともかく、大事なキャプチャーガンを壊されてはたまらないので、
カイも負けじと次々にエレビッツを捕まえまくる。
そしていつしか、戦場(?)は戸外へ。更に街中へ…。

街へ出てみると、そこは人影も無く全ての建物が停電している為
暗く静まり返っている。自動車や信号、建設現場の重機なども
エレビッツを動力源としているので、やはり状況は同じだ。

人目が無いのをいい事に、信号を勝手に点灯させたり
ショップの看板を点けてみたり、消火栓を引っこ抜いてみたりするカイ。
そうして集めたエレビッツのパワーを使い、しまいには
組み上げたばかりの鉄骨を崩し、重機をひっくり返し、パトカーを放り投げる。
気が付けば、広場の時計台もどこかへ消えてしまっている。
見られていなければ、何をしてもいいという法は無い。
これはやはり、両親の放任教育がいけないのであろう。
カイはある意味被害者なのだ。

「その他の被害者」の事はこの際忘れるとして、
カイ自身はなんだか怖くなり、家に帰る事にした。
と言っても自らの行いに恐怖した訳ではなく、
単に嫌な予感がするというだけの話ではあるが。
だがその時、これまでに無かった大きな異変を、カイは目にする事になる。

162 :Elebits:2007/02/05(月) 19:57:28 ID:BUpESzXh0
様々な物が浮いていた。地面に固定されている物以外は全て。
別にカイが先程放り投げた分がまだ落ちて来ていないとか、
そういう話ではなく、文字通り地球の重力から解き放たれているのだ。
チョコマカと走り回っていたエレビッツ達も、所在なさげにふわふわとしている。

これまでエレビッツへの恨みから周囲が見えなくなっていた(という問題だろうか…)
カイだが、この異常現象を見てしまった今、自らが思っていたよりも
遥かに事態は大きなものだと感じていた。全部エレビッツのせいだという
見解自体は変わらないのだが、どうしたら良いものか…

「そうだ!パパの秘密のお部屋に行けば何かわかるかも!」

カイは書斎にエドの隠し部屋があるのを知っていた。
そこに行けば、エレビッツに関する秘密の情報が手に入ると考えたのだ。
意外と、子供に隠し事をするのは難しいものである。

…ところでカイ君、この無重力状態の中、平然と歩き回っているキミは一体…


書斎の隠し部屋は至極簡単に見付かった。何せ本棚のその部分だけに
「ここは開きますよ」と言わんばかりに段差が付いているからだ。
隠しているつもりなのか、そもそも隠す気があったのか、
単に扉に本を収納してデッドスペースを活用しているだけなのではないか。
などと色々考えてしまうが、ともかく隠し部屋の中に入ってみる。

そこでカイが目にしたのは、何に使うのか分からない怪しげな機械と
壁に貼られたエレビッツに関する資料だった。
機械の事は全く分からないので、せいぜい通電してエレビッツを
吐き出させるぐらいだが、資料の方はどうにか読める。

それによると、エドは最近発見された特殊なエレビットを研究していたようだ。
空を飛ぶエレビッツとして一般に知られるオレンジエレビッツ。
実はオレンジエレビッツは空気力学とは無関係に重力を
操って飛んでいるらしい、というのは研究によって分かっているが、
稀に力が暴走して変異し、周辺の重力にも影響を及ぼす程の能力を得る事があるという。
エドとアナは、この特殊なエレビットにスカイエレビットと言う呼び名を付けた。
ならば、この異常現象はそのスカイエレビットとやらの仕業だろう。
そう断定したカイは、さっさと捕まえて事態の収集を図ろうとするが、
肝心の相手がどこにいるかがさっぱり分からない。

結局もう一度、物が浮いている自宅から、物が浮いている街中へ
スカイエレビットを探しに出て行かざるを得ないカイなのだった。

163 :Elebits:2007/02/05(月) 19:58:08 ID:BUpESzXh0
スカイエレビットを求めて、「エレビッツ御殿」と呼ばれる
自宅を出て住宅地を進むカイ。相変わらず無重力状態が続いている。
浮いている物については、繁華街と比較して大物が少なく、
目立つのは乗用車ぐらいだが、その分エレビッツは捕まえ易い。

それよりもカイに取って幸運だったのは、この無重力状態が、
カイが暴れ回った痕跡を全て消してくれる事だった。
家中の物が散乱していても、トレーラーがひっくり返っていても、
建設中の鉄骨が倒壊していても、みんなエレビッツのせいなんだ!

…という訳で、これまで同様に消火栓を抜きまくり、電話ボックスを
放り投げながら掃討を進めていくと、遠くに何やら羽ばたく物が見える。
前回行った、時計台のある公園の辺りだ。これはもしや…?

公園へ駆けつけると、そこには大きな耳を羽ばたかせ、
四つに分かれた尻尾をプロペラのようにクルクル回して飛ぶ
オレンジ色のエレビットがいた。これがスカイエレビットに違いない。
さあ、物体を操るエキスパートはどちらなのか、対決だ!


ふわふわ漂うスカイエレビットは、光るバリアでキャプチャーレーザーを
跳ね返し、周辺からオレンジエレビッツを吸い寄せ、そのエネルギーを黒い球体に
変えて飛ばし、攻撃してくる。先に闘った蒼いエレビットのような敏捷性は無いが、
このままでは手出しが出来ない。

と、良く見るとスカイエレビットには小型の分身体(?)が二体付いていて、
どうやらそれがバリアを形成しているようだ。ならば、とレーザーを分身体に
当てて掴み、地面にぶつけてみる。…効いている。これでバリアを消せれば!

カイの思惑通り、二体の分身体を消滅させられたスカイエレビットは
バリアを形成できなくなり、直接レーザーを当てる事が可能になった。
だが、これでカイが一方的に有利になった訳ではない。
追い詰められたスカイエレビットは頻繁に瞬間移動を行うようになり、
更に重力を操る力を利用して小型の竜巻を発生させ、
より激しい攻撃を仕掛けてくる。

こうなったらカイも必死だ。二連発、三連発と放たれる竜巻を
かいくぐりながら、レーザーで掴んだスカイエレビットを振り回し、
公園の石畳へ力任せに叩き付ける。絵的には結構酷いが気にしてはいられない。
何度かばちんばちんやっている内に、さしものスカイエレビットも
限界に達したのだろう。蒼いエレビットと同様に幾筋かの光に分解され、
キャプチャーガンに吸収されていった。

…そしてまた、ありふれた一匹のオレンジエレビットが残った。

164 :Elebits:2007/02/05(月) 19:58:53 ID:BUpESzXh0
家で遭遇した蒼いエレビットも、今回のスカイエレビットも、
正体は普通に人間と暮らしていたエレビッツだった。
それがどうして、姿形が変わるまでに暴走してしまったのか。
しかも、元に戻ったエレビットのキョトンとした様子から見て、
暴走中の記憶は無いのだろう。一体何が起こっているのか。

考え込んでいるカイの耳に、奇妙な声が響いてきた。
まるで誰かが泣いているような、そんな声。
と同時に、カイが散々苦労して灯して来た街の灯りが次々に消える。
更に、眼前に大量の、これまで見た事もない数のエレビッツが現れ、
一つの場所に向けて移動を始めた。もう大行進と言っていい程だ。
異変は、まだ終わっていなかったのだ。

カイは、エレビッツ達が向かっている方向に覚えがあった。
いつも窓から見ていた。家族三人で行きたかった。
でも、行けなかった場所…。

大きな観覧車が目印の、遊園地。
無数のエレビッツは、そこを目指して大行進をしていのだった。


集結するエレビッツを追って、とうとう遊園地に来てしまったカイ。
昼間は賑わい、人々の笑顔が絶えないであろうその場所も、
今は人の気配も無く、灯りも落ちて何やら不気味さを醸し出している。
カイに取っては、空からほの蒼く照らす月の光だけが頼りだ。
何気なくキャプチャーガンを月(※)に向けて撃ってみると…

…掴めた。取りあえず忘れる事にしよう。

さて、遊園地には続々とエレビッツが集まっているようで、
自宅の周辺では見かけなかったイエローエレビッツも混じっている。
こいつらは普段大人しいものの、時折周囲のエレビッツを
取り込んでクマのような姿に巨大化する。そうなると性格が豹変し、
辺りの物を手当たり次第に投げ付けてくる。
その中にはベンチやコーヒーカップ(遊園地サイズ)も含まれており、
危険極まりない。

そんな巨大で重たい代物をバラ撒くばかりか、あまつさえ命ある者を狙って
投げ付けるとは、何と言う凶悪な所業!親の顔が見たい!
まあ、彼らに取っては遊びの一環なのかも知れないが、
猛獣にじゃれ付かれる様なもので、迷惑な話である。

…そんなこんなで、深夜の遊園地を混沌に巻き込みつつ
物語は佳境に入ろうとしていたのであった。


※作り物だと思いたいが…750tという数字が微妙。
 ちなみにビューワで見ると球体なので、書き割りでない事は確か。

165 :Elebits:2007/02/05(月) 19:59:35 ID:BUpESzXh0
望まぬ形で来てしまったとは言うものの、来る事は望んでいた遊園地である。
園内には夢の国に相応しい、数々のアトラクションが用意されている。
異変によって動力は落ちているものの、キャプチャーガンを使えば
それらを稼動させる事も充分に可能である。
幸いエレビッツが大集結している為に、エネルギーには事欠かない。

やはりこうなるとカイも10歳の子供である。
エレビッツ捕獲よりも様々に用意された仕掛けで遊ぶ方に
気が行ってしまうのは仕方が無い。
スーパーライドやメリーゴーランドなどの乗り物系を
動かしてみたり、輪投げ、ボウリング、巨大スロット諸々を
堪能してしまった。

しかし、これはカイが子供だから許される(倫理的に、ではない)行為だろう。
夜中、誰も居ない遊園地で、一人アトラクションで遊ぶ姿…
10歳の少年ならばイタズラと冒険心で片付けられるが、
もしもカイが10年早く生まれていたら、それはそれは痛々しい…

いや、そんな事はこの際どうでもよろしい。
問題は、巨大ツリーの辺りに漂う、圧倒的に妙な気配だ。
そろそろ現れるタイミングだとは思っていたが、三体目の変異体に違いない。
カイ君、遊んでいる場合ではないですぞ。


どこから湧いたか黄色い悪魔。
上から地響きを立てて落ちてきたそれは、色といい姿といい、
明らかにイエローエレビッツ…略してエロビッツが暴走したものだろう。
それと同時に巨大ツリー(勿論作り物)に実った卵だか果実だかが落ちて、
中から殻を被ったエロビッツが現れた。変異体はそれを吸収して
更に身体を巨大化させている。

…樹に生る?気にはなるが、もうエレビッツの理不尽な生態に
構っている暇は無い。今まさに変異体がクマまっしぐらに突進して来るからだ。
愛い奴だ。しっかと受け止めてしんぜよう…という訳にもいかない。
なんせカイは10歳の華奢な少年であり、何よりキャプチャーガンを
壊されてはたまったものではない。

ひらりと身をかわすと、変異体は勢い余って壁に激突して自爆。
脳震盪でも起こしたのかフラフラとしている。
こうなると、反射的にトリガーを引いてしまうのは戦場に生きてきた者の定めか。
キャプチャーレーザーで抱え上げた巨体を、どべしゃと地面に叩き付けると、
衝撃で、吸収されたエロビッツが数体バラバラと変異体から分離される。

…べ、別にアンタに敵意があった訳じゃないんだからね!
ただ単に条件反射でやっちゃっただけなんだから!

と言っても相手は敵意剥き出しで頭上にエネルギー弾とか溜めているし、
もう後の祭りである。所詮は修羅の道行きか……。

166 :Elebits:2007/02/05(月) 20:00:06 ID:BUpESzXh0
例によってショワショワと縮んだ変異体は、これまで通り普通の
イエローエレビッツに戻り、チョコチョコと四方に散っていった。
見事な大勝利であるが、カイの心は晴れやかにはならなかった。

これまでを見た限り、少なくともエレビッツ達に悪意は無い。
暴走してしまったエレビッツも、何か理由があって暴走したのかも知れない。
そう考えると、あれほど憎んでいたはずのエレビッツも何だか可哀想だ。
そんな感傷に浸っていると、突如カイの携帯電話が鳴り出した。

電話は両親からだった。家に戻ってみるとカイがいなくなっていたので、
慌てて電話をかけてきたらしい。まあ、家の中がアレだし心配しなかったら
本当の人非人なのだが、それは置いといて今のカイに取っては喜ばしい。

アナによると、先程の巨大な落雷から何者かが生まれ、
それがエレビッツの異変の原因になっている可能性があるという。
そう、まさに今カイがいるこの遊園地が落雷の場所にして、
異常の発生地点という事になるのだ。

何故家で待っていなかったのか、カイが今夜の出来事を頑張って
(都合の悪い所はかいつまんで)説明すると、エドは叱りもせずに、
キャプチャーガンの横に付いているボタンを押してみろと言う。
言われるままにボタンを押すと、キャプチャーガンが眩い光を放つ。

なんと キャプチャーガンが パワーアップした!

これで身を守れという事なのだろう。アナも二人ですぐに迎えに行くから
無理せずそこで待っていなさいと言う。その声は、とても優しく、とても嬉しかった。
涙が出そうになったが、カイは舌の先を噛んでそれを我慢した。

今泣いてはいられない。もう決めたのだ。待っていたら遅すぎる。
キャプチャーガンに宿った新たな力。
両親からの贈り物を手に、そして決意を胸に、カイは遊園地の奥へと走り出す。
エレビッツを捕まえる為ではなく、助け出す為に。


※これ以降、ステージクリア条件の表記が、「つかまえろ!」から
 「助けろ!」に変わります。芸コマですね。

167 :Elebits:2007/02/05(月) 20:00:54 ID:BUpESzXh0
決意を新たにしたカイは、エレビッツを助けるべく、
物をひっくり返し投げ飛ばし、アトラクションや自販機を勝手に作動させ…
…あれ? なんか今までとやっている事が変わらないような。
いや、そうではないのだ。今はもう、エレビッツを捕まえている訳ではない。
彼らをおかしくしている悪い奴の影響を受けないように、
「強制的に保護」しているのだ。そこら辺、お間違いの無い様に。

ところが、そんな親切も中々伝わらないようで、
エレビッツの抵抗も激しくなるばかりだ。
バリアを張って高速移動し、自ら光弾を撃って攻撃してくる
グレイエレビッツの姿もグンと増え、それどころか生意気にも
狭い場所に砲台陣地を構築して、うっかり踏み込んだカイに
集中砲火を浴びせてくるなど、小癪な真似が目立つ。

しかし、それも既にカイに取っては僅かな足止めに過ぎない。
エドの助言によりこれまでに比べて強化されたキャプチャーガンを
もってすれば、砲台を引っこ抜いて無力化するなど容易い事だ。
目指すは遊園地の中でも一際目立つ観覧車。
さっきから聞こえる鳴き声からして、そこに全ての元凶が
存在するのは間違いないだろう。もう一息だ。

それにしても、背後に広がる惨状はどうしたものか。
F5クラスの竜巻が直撃しても、これほどの被害をもたらすかどうか。
キャプチャーガンは研究機材としては、余りにも過剰な能力を持つ。
エドアナ夫妻は裏で軍需産【検閲により削除】

168 :Elebits:2007/02/05(月) 20:01:25 ID:BUpESzXh0
遂にたどり着いた観覧車の下で、それは待っていた。
まぶしく光るオバケ(カイ曰く)が集まってきたエレビッツを
次々に吸い込んで巨大化していく。このまま放ってはおけない。
ただでさえ街中の機能が停止している今、何とかしなくては。
恐ろしげな声を上げるオバケ。カイにはそれがどこか悲しげにも聞こえる。
しかし躊躇っている暇は無い。これが最後の決戦だ!

オバケ(仮)はどうやら吸い込んだエレビッツの能力を使えるようで、
ブルーのスピード、オレンジの飛行能力、グレイの攻撃能力…
…レッドの気弱さは無いようだが、ともかく様々な戦法でカイを翻弄する。
当然レーザーを直接当てても効果が無いので、どうにかして隙を作らねば。
ところが待っていても一向に隙を見せてくれない。さあどうしよう。

と、周囲に何個か置かれている青銅製の花籠が目に留まった。
子供一人ではとても持ち上がりそうもない重量感ある一品だ。
しかし、カイの手にはパワーアップしたキャプチャーガンがある。
物は試しだ。花籠を掴んで、勢い良くオバケ(仮)をしばき倒す。
衝撃で吸収されたエレビッツがバラバラと飛び散った。

こうなれば、もうこちらのものだ。いくら相手が複数の力を使えるとは言え、
所詮は一度撃破してきた能力だ。…ふっ、所詮人真似では私は倒せんよ!
という事でガンガンとオバケ(仮)を追い詰めていくカイだが、
最後の最後で思いもよらぬ事態が待ち構えていたのだった。

169 :Elebits:2007/02/05(月) 20:02:06 ID:BUpESzXh0
カイの猛攻で後が無くなったオバケ(仮)は空中に浮かぶと、輝く光球と化した。
こうしたエネルギー体になる事で、エレビッツは機械と同化して操れるのだが…
まさか観覧車を回してどうにかなるものでもあるまい、と思っていたら、
なんと柵で囲われた地面が二つに割れて、下から巨大な人型ロボットが
せりあがって来た。これは遊園地のアトラクションなのだが、
強大なエネルギーを持つオバケ(仮)が同化したら…

と思っている間に光球はロボットの胸部に吸い込まれてしまった。
そして…巨大ロボがずんずんとこちらに迫り始めた。
まさか、巨大ロボ戦う事になるとは。このシチュエーションにも驚きだが、
一体どうやってこんな代物を退治したものだろうか。
あれではレーザーは勿論、たかだか花籠をぶつけた程度では無力だろう。

何らかの手段を使い、オバケ(仮)とロボを切り離せば…。
考えろ。これまでの経験から、必ず答えは導き出せるはずだ。
その前にロボにやられなければ。

レーザーを直接当てても駄目。物をぶつけても駄目。
巨大ロボという強固な鎧の防御は、完璧に思えるが…
…ん?確かに相手は巨大で頑丈かも知れないが、
所詮は遊園地のアトラクションでしかない。
よく見ると胸部のカバーは何本かのネジで固定されているに過ぎない。
もしかして…!

ロボの右フックをかいくぐって、ネジの一本に狙いを定めトリガーを引く。
放たれたレーザーはカイの狙い通り、ネジの先端を掴む事ができた。
そこですかさず手首をぐりぐりっと捻ると、狙い通りネジの頭が飛び出してきた。
やった!キャプチャーガンの特性を見事に活用した超戦術だ!

最終決戦がネジ回しという、冗談のような絵面はともかく、
カバー周縁部の四本を引っこ抜いて、とうとう最後に残った真ん中の大きなネジを

         ……ぐるぐるぐるぐるぐる……

ばかんとカバーが外れると同時に、ロボが力無く膝を付き、
胸部から光球が吐き出された。遂に勝った。カイはエレビッツ達を助けたのだ。

170 :Elebits:2007/02/05(月) 20:02:38 ID:BUpESzXh0
光球が弾け、無数の光の粒が舞い散る。その一つ一つが吸収されていたエレビッツ達だ。
そして…最後に残ったのは、たった一匹のエレビットだった。
これが、雷から生まれ、街全体を巻き込んだ大きな異変の原因だと言うのだろうか。

震えている、ただの小さなエレビット。
カイには理解できた。こいつは自分と同じなのだと。
生まれたばかりで仲間もおらず、たった一人で寂しくて怖くて…
カイはもう、エレビッツを嫌いではなかった。
必要なくなったキャプチャーガンを置くと、カイは震えるエレビットを
そっと手の平に乗せた。エレビットは何だか嬉しそうな様子を見せた。

そこへ大慌てで両親が駆けつけた。心配そうに声をかけるエドと、
一人にした事を謝りつつカイを抱きしめるアナ。
ちょっと痛かったが、それも今のカイにとっては優しく暖かいものだった。

元オバケのエレビットを見せると、二人は突如として研究者の顔に戻り、
あーだこーだと驚くやら専門用語を連発するやら、すっかり新種の
エレビットに夢中になってしまった。
しかし、そんな両親を見てもカイは以前のような寂しさを全く感じなかった。

だって、もう一人ではないのだから。

気が付けば、もう夜が明けていた。
一夜の冒険ももう終わりだ。さあ家に帰ろう。家族“四人”で。



---後日---
エドとアナによって「ゼロ・エレビット」と名付けられたエレビットは、
ゼロと呼ばれ、カイと仲良く暮らしている。
しかし、研究を申し出てもカイに断られてしまう為、
詳しい事はまだまだ不明だそうな…。


                      お し ま い






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