夜想曲

オープニング、完結編、外伝:part29-177~179

完結編と外伝の間に入る第1話~第3話:part53-262~271,303~312,405~413、part54-17~27,46~53


177 :夜想曲:2007/03/05(月) 16:48:56 ID:EYAayYi10
OP
オープニング

大学生活最後の夏休み、都心から電車で2時間あまりの場所にある奥音里へアルバイトに来た主人公
主人公は授業をサボリ続け、法学の小田先生から「単位はあげられない」と通告され留年の危機に陥る
主人公は必死に懇願し、ある条件を飲むことで単位を貰える事になった
条件とは、図書館の管理人のアルバイトであった
この図書館は野々宮財団が管理する図書館で、野々宮財団の会長、野々宮清二の遺言で財団が管理している
その図書館は、奥音里でも人後山奥にある古びた洋館で、そこで主人公を待っていた田所という弁護士と出会う
主人公は館の中を案内される。玄関には女性の肖像画が飾っており、野々宮の妹、真沙子であると知らされる
(真沙子は四十数年前に病死している)
アルバイトの内容は、館内の清掃や管理だが、メインとなるのは地下にある書庫の整理
書庫にはジャンルも種類分けもされていない多種多様な本が乱雑に詰まれており、リスト順に収納するのが主人公の仕事となる
田所の話によれば、「野々宮氏は死にとても興味を持っており、死と関わった本を集めた結果図書館のようになってしまった」そうだ
その日の夜に不気味な夢を見た主人公、思わず飛び起きる。
不意に妙な物音を聞いてしまった主人公は何者かが侵入したと思い、バットを片手に1階へと降りる
が、その時、玄関を荒々しく叩く人物が現れる
パトロール中の警官、鬼村巡査が図書館の不審な明かりを見つけ、ここへやってきたらしい
主人公を尋問するがすぐに疑いは晴れる
鬼村巡査は去り際に「この屋敷には幽霊が出るらしい」と言い残して去ってしまう

178 :夜想曲:2007/03/05(月) 16:49:35 ID:EYAayYi10
完結編

台風が直撃したことにより、夜の図書館に取り残されてしまった主人公と恋人
なぜか電話線も繋がらず、恋人は仕方なく館に泊まる事に
もうすぐ終わるであろう、書庫の整理をしているとき、恋人はノクターンのレコードを見つける
早速蓄音機にセットする恋人、しかしなぜか逆回転をしてしまい曲が聞こえてこない
不審に思った恋人が色々と試していると、突然書庫の置くから壁が崩れる音が聞こえる
そこには書庫の奥へと続く隠し通路があった。
好奇心で中へと進入する主人公たち、そこで見たのは無数の白骨だった。
悲鳴を上げて飛び出した二人に、タイミングよく田所が現れ、今までの経緯を説明する。
田所は豪雨の中、鬼村巡査を呼びに出かけ、二人は談話室で待つことになる
そして、時計の針が11時を指す頃、突然電気が消える。
ブレーカーの様子を見に玄関へ向った主人公は、そこで何者かに襲われる
間一髪逃げ出した主人公は、恋人に「誰かがこの館に居る」と説明し、なんとかやり過ごそうと考える
しかし、唯一の光であった懐中電灯を落としてしまい、仕方なく何者かが潜む玄関まで戻ることになる
戻った玄関には、人の気配は無く、主人公を襲った人物は居ないようだった。
そこで懐中電灯を発見するも、壊れてしまっていた。恋人が「ここまで来たのならブレーカーを上げれば」と言う
しかし、ブレーカーは無残にも破壊されてしまっていた。
途方に暮れていた主人公達、その時2階から物音が聞こえた。暫く考えた後2階へ上がり調べるて見ることに
しかし、2階にも主人公を襲った人物は発見出来なかった。
2階の一室に隠れていた二人に、1階から玄関を叩く音が聞こえる
鬼村巡査が電話が繋がらないことを不審に思い助けに来てくれたのだ
巡査に経緯を説明し終えると、地下書庫から光が漏れていた(地下の電気は館内とは別)
主人公を襲った人物が地下にいると踏んだ3人は、犯人を捕まえるために地下書庫へと降りる
犯人を追い詰めようと追いかける3人だが、不意に書庫内の電気が消え巡査と分断される主人公達
さらには、頭上から分厚い本を落とされ、負傷してしまう恋人
なんとか巡査と合流しようと、負傷した恋人を担ぎながら彷徨う主人公
突然巡査の「動くな!」という声、「私は銃口をあなた(犯人)に向けている」と言いながら姿の見えない主人公に「早く電気を付けるんだ!」と言う
主人公は急いで入り口にあった電気をスイッチを押した
瞬間、鳴り響く銃声。「後少し遅かったら撃たれていた」と語る巡査。
撃たれた人物は、主人公を図書館へ送り込んだ張本人、小田先生であった。
小田先生は「私はアイツの病気が移ってしまっただけなんだ…」と言いながら息を引き取った
暫くすると、応援を呼んで駆けつけてくれた田所も現れ、事件は幕を閉じる
後日、田所に事の真相を聞かされる
野々宮は妹の死後、旧友の小田と共に、年端も行かない少女を誘拐しては殺害し、地下の隠し部屋に隠していたらしい
本来、図書館は取り壊されるはずだったが、事件の発覚を恐れた小田が遺言書を改ざんし、死後も管理するように仕向けた
夜な夜な聞こえる物音は、遺言書を不審に思った田所がこっそり浸入し色々と調べていたからだそうだ

179 :夜想曲:2007/03/05(月) 16:50:07 ID:EYAayYi10
外伝

48年前の夏、汽車に乗り、奥音里に向う男がいた。彼の名は天方哲夫。天方は一冊の本を手に、5年前の出来事を思い出す
若き日の野々宮清二。天方と野々宮は親友だった。天方が野々宮の妹、真沙子と出会うまでは
すぐに二人は愛し合うようになった。だが、野々宮は異常なほど妹を溺愛していた。
最愛の妹を親友に奪われた野々宮は、天方を殺すために金の力で激戦の戦地へと送り込む
出征の直前、森の中で密会する天方と真沙子。
彼女から天方へ、再会の誓いを託した「約束の本」を手渡される。
やがて戦争は終わり、奇跡的に生き残った天方。だが彼は真沙子に会うことをやめ、ひっそり暮らしていた
そこへ野々宮からの手紙。真沙子に会いにやってきて欲しいと。
何故、今頃。野々宮の狙いは?疑念と真沙子への想いの間で揺れながらも、野々宮の洋館を尋ねる天方。
館には野々宮と小田が待っていた。館は野々宮が真沙子を療養させるために作らせたものだと語る
館の中を順番に案内する野々宮、それを不審に想いながらも、それについていく天方
一通り案内し終わったところで、天方が切り出す「真沙子に会わせてほしい」と
野々宮は少しの沈黙のあと、ある部屋へと天方を通す
そこには寝たきりとなった真沙子がいた
天方はすぐに真沙子へ近づき話しかけるが、まったくの無反応である
野々宮は病気が進行し、今では満足に話すことも出来なくなったと説明する。お前に会えばもしかしたら…と思い呼び寄せたと話す
野々宮の話を聞いた天方は、約束の本を読み聞かせることで何か変わるかも知れないと考え、本を読み聞かせるようになる
朝から晩までそれを繰り返す天方、それを見ながら時折不気味な笑みを浮かべる野々宮にさえ気付かないほどに
それから数日がたった頃、天方は不意に野々宮がある部屋へと入っていくのを目撃する
そこは、野々宮には案内されなかった部屋である。中からは「真沙子…」という野々宮の声が聞こえた
不審に思った天方が中を覗くと、鏡向って真沙子の名前を呼び続ける野々宮が見えた
暫く名前を呼び続けていると、鏡の中から真沙子が現れたではないか
それをみた天方は思わず中へと飛び込む。天方に気付いた野々宮は、真沙子について語り始めた
真沙子は天方が戦争へ行ってからも野々宮に心を開くことは無かった
野々宮は真沙子に色々な贈り物や医者を紹介するも、まったく効果をなさなかった
戦争が終わり、天方が死んだと伝えても真沙子は天方が帰ってくると信じていた
そして、病状が悪化し数年前に死亡した
真沙子が死亡したあと、野々宮は人の死に異常な執着を持ち、財産の半分以上を使い古今東西の曰くつきの道具を買い漁っていた
殆どが偽者だったが、その中に一つでけ本物が混ざっていた。それは人の魂を現世に呼び戻すとされる鏡であった
野々宮はこの鏡を使い、死ぬまで天方を欺き続けるつもりだったらしい。だがそれを発見されてしまったので天方を殺そうとする野々宮
天方は身を交わしながら逃げるも追い詰められてしまう。間一髪でそれを交わす天方。野々宮の凶刃はそのまま鏡を破壊してしまう
鏡を破壊した野々宮は怒り狂い暴れ始める。
野々宮は近くにあったランプを破壊してしまい、ランプの火が一気に燃え上がる
燃え上がった火の中で天方一人取り残されてしまう。そして火の中で腕を広げる真沙子の幻影を見た

火事は野々宮の集めた道具が収められた部屋だけを焼きつくした。野々宮自身は軽い火傷で済んだ

十数年後、当時メイドしていた人物は天方という男をこう語った
「いつもダレも居ない部屋で本を読んで、時折真沙子と呼びかけていました。気味が悪くて私は殆どお話しませんでしたが…」



262 :夜想曲:2010/08/29(日) 20:54:20 ID:SzWXzgQx0
以前『夜想曲2』を投稿した者です。
『夜想曲』1~3話を投稿します。

263 :夜想曲(第1話):2010/08/29(日) 20:57:56 ID:SzWXzgQx0
「……ニ…ゲ………ニ……ゲ…ロ……………ニゲロ!!」

 主人公は絶叫しながらベッドから飛び出した。

 野々宮図書館に来て1週間が経った。
 毎晩肖像画の女性が出て来る悪夢を見たり、故障しているためか柱時計が鳴り出して止まらなくなったり

で、不気味な雰囲気が漂うこの図書館に早くも気が滅入り始めていた。
 しかし仕事が終らないと図書館を去る事はできないし、何より単位がもらえない。
 あきらめて本日の作業に入るために地下書庫に向かった。

 書庫の整理は思ったより大変だった。
 量が膨大で蔵書録を見て本の所在を確認するだけの作業で4日もかかった。
 その上、大きさも並びも系統も滅茶苦茶なのだ。
 本の整理だけでもうんざりなのに、薄暗い地下で一人でいると一層気分が滅入ってしまう。
 パートナーや田所が時々様子を見にきてくれるが、普段は一人ぼっちで外出でもしない限り、一日誰とも

口をきかないなんてことだってある。
 気を取り直し、壁に掛かっている鏡の前で気合を入れてから本日の作業に入る事にした。
 手始めに手近にある本を片付けることにし、鏡の側にあった一冊の本を拾う。
 随分汚れた本で、埃にまみれて題名が見えない。
 埃を払ってよく見ると、どうやら子供の童話集のようだ。
 かなり昔のものらしく、今時のセンスとはずいぶんかけ離れている。
 何気なくその本を読んでみると玄関から呼び声がした。
 本を置いて玄関に行くと、30歳ぐらいの女性が立っていた。
 やけに色白で、透き通るような肌が印象的な女性だ。
 かなりやつれており、目は虚ろで瞳に生気がなく、今にも倒れしまいそうな雰囲気である。
 不安を抱きながら用件を尋ねると、女性は薫という10歳の男の子を探しているのと言う。
 男の子が来た様子はなんてないし、ましてやここは山奥の図書館。
 そう正直に答えると、女性は図書館という言葉に反応し、薫がここにいると確信し出した。
「薫をよろしくお願いします」
 女性のその言葉に思わず振り返り図書館の中を見渡すが、やはり子供がいる気配はしない。
 からかわないでほしいと言おうと振り返ると……そこには誰もいなかった。

264 :夜想曲(第1話):2010/08/29(日) 21:02:40 ID:SzWXzgQx0
 気味が悪くなった主人公はパートナーに連絡し、図書館を飛び出して郊外の喫茶店へと向った。
 喫茶店でパートナーと落ち合った主人公は今朝の出来事をパートナーに話した。
 主人公はあの女性は幽霊ではないかと思っていたが、パートナーはあまり信用してくれない。
 すると主人公は女性が訪ねて来た直前まで読んでいた童話集を取り出した。
 その表紙の裏には『木谷薫』という、あの女性が言っていた子供と同じ名前が記されていた。
 これにはさすがにパートナーも驚く。
 おそらく死んだ後も子供が心配になり幽霊になって様子を見に来たのではないのか、と主人公は考えていた。
 するとパートナーは本当に幽霊なのか調べてみようと言い出す。
 気は進まないが、その一方で気になっていることは確かだし、このまま放っておくのも落ち着かない。
 主人公はパートナーの提案に同意する。
 今のところ手がかりとなるのは、ここに来る前に調べた蔵書録だ。
 蔵書録には図書館に納められている全ての本の寄贈者や購入者、入手の経緯が記録されている。
 主人公は念のためにとあらかじめ童話集について調べていた。
 寄贈されたのは10年前で、元の持ち主は木谷薫、寄贈者は成瀬智恵子。

 主人公は寄贈した成瀬智恵子に会うため、蔵書録に書かれていた住所を訪ねた。
 成瀬智恵子は小さなクリーニング店『成瀬クリーニング』を経営していた。
 智恵子に会い、童話集を見せると懐かしみながら寄贈の経緯を話してくれた。

 童話集の元の持ち主は木谷ハナエといい、木谷薫の母親だという。
 智恵子がハナエと会ったのは、智恵子が結婚する前に看護婦として働いていた時だった。
 ハナエの家は母一人子一人で、薫はハナエと不倫相手の男性との間にできた子だった。
 ハナエが入院するようになってから薫はずっと施設に預けられていたが、ハナエの病気が酷くなると不倫相手は薫を強引に施設から引き取った。
 ハナエは薫に会う事も許されず、薫の事を心配しながら病でこの世を去った。
 ハナエの世話をしていた智恵子はハナエが亡くなった後遺品整理をした時に童話集を発見し、何気なく引き取った。
 そして10年前、童話集の事をすっかり忘れていた頃になってから野々宮財団の者が現れ、本を引き取りたいと申し出てきた。
 一度は断ったものの、どうしてもと引き下がらなかったので、仕方なく童話集を寄贈した。
 持ち主と寄贈者が違うのは、そんな事情があったからだった。

 ハナエが亡くなってからすでに20年、薫はもう30歳ぐらいになっているらしい。
 他に知っている事はないかと聞くと、智恵子は薫が預けられていた施設の事を知っていた。
 薫が引き取られた時の事を知った方がいいと思い、施設の名前を聞く。

265 :夜想曲(第1話):2010/08/29(日) 21:05:48 ID:SzWXzgQx0
 智恵子から聞いた施設の名前を頼りに、主人公とパートナーは苦心の末に施設へとやって来た。
 園長の早乙女鏡子に会い薫の事を聞いてみると、早乙女先生は薫の事を覚えていた。
 薫は『本の虫』と言われるほど本が好きで、いつも同じ本を繰り返し繰り返し読んでいたという。
 早乙女先生に童話集を見せると、薫が何度も読んでいたのはその童話集という事が判明する。
 薫が引き取られていった翌日にハナエが現れ、残していった童話集をハナエに渡した。
 それ以来、薫にもハナエにも会っていないのだと言う。
 その時、施設の先生である森川美奈が駆け込んできて、たった今、望月という人が亡くなったという報せがあったと伝える。
「運命の不思議ね…。この本をお持ちいただいた日に、望月さんが亡くなった知らせを聞くなんて」
 早乙女先生は童話集を両手でつかんだまま目を閉じて何かに想いを馳せながら語る。

 薫が施設にいた同じ頃に望月俊夫という子がおり、亡くなったのはその母親である。
 薫と俊夫は見た目や体格がよく似ており、その縁なのかよく一緒にいたらしい。
 しかし性格は正反対で、薫はおとなしい子だったが、俊夫はズルくて物事を損得で考えるような子だった。
 その俊夫は10歳の時、薫が父親に引き取られていった当日に突然姿を消し、そのまま行方不明なのだという。
 必死で探したが、その行方は今でもつかめていない。
 それから20年以上、早乙女先生は毎年俊夫がいなくなった日に望月に手紙を出したり、電話を入れたりしていた。
 薫のように本当の親に引き取られていくのは稀な事で、しかもそんな日に子供がいなくなったので、早乙女先生はあの日の事を今でもよく覚えていた。
 その日は大雨で、薫は風邪をひいて大きなマスクをしており、口もきけずに半分眠ったまま引き取られていったという。

 ここから先は薫から直接話を聞くために、主人公は薫が今住んでいる所の住所を尋ねた。

 早乙女先生から教えてもらった住所をもとに、主人公とパートナーは薫の住む家の前までやって来た。
 話によると、薫は引き取られてから姓が木谷から三田村に変わっており、三田村薫というのが今の本名だという。
 パートナーはやる気満々で家を訪ねようとするが、主人公は気が進まなかった。
 図書館に現れたあの女性の事を調べていたはずなのに、いつの間にか事態は思わぬ展開になってきた。
 あの女性はおそらく木谷ハナエだろう。
 あとは薫に直接会って確認するだけなのだが、ここから先は薫のプライバシーに関わる問題だ。
 いくら真相を知るためとはいえ、このままでは知らなくていい事にまで首をつっこんでしまうのかもしれない。
 そんな考えがよぎり、主人公は家の前で躊躇していた。
 しかしパートナーからの励ましを受け、主人公は真実を聞く意志を取り戻した。
 意を決して家のインターホンを鳴らすと、家から薫の妻である三田村文江が出てきた。
 文江に童話集を見せ事情を話すと、丁度薫が仕事から帰って来た。
 自己紹介をした後、薫に童話集を見せるが、薫は見覚えがないと言う。
 主人公が童話集に書かれている『木谷薫』のサインの見せる。
 すると、薫の様子が一変。
 顔を青ざめ、うろたえながら「本は自分のものじゃない」と言い張り、ついには声を荒げて主人公を頭ごなしに怒鳴り始めた。

266 :夜想曲(第1話):2010/08/29(日) 21:11:54 ID:SzWXzgQx0
 追い返される形で薫の家から去った主人公とパートナーは、それ以上調べる気は起こらず図書館に戻る事にした。
 奥音里行きの電車でパートナーと今までの出来事を話し合う。
 なぜ薫は本を見せた途端に態度が豹変したのだろうか? 
 昔の事を思い出したくないのだろうか?
 薫の様子を思い返すと、あの怒り方は何だかショックから立ち直ろうとする強がりみたいな感じもする。
 あの童話集は間違いなく薫のもののはずなのに、なぜあそこまで頑なに否定したのだろうか?
 結局、答えは出ずに図書館に帰ってゆっくり考える事にした。
 
 図書館に帰り着いた時は、すでに夜の闇があたりに広がっていた。
 ハナエの事を思い出すと、図書館がいつにも増して恐ろしい場所に思えてならない。
 不気味な雰囲気に物怖じしながらも玄関に向かう。
 主人公が鍵を取り出す前にパートナーはドアのノブに手をかけると、ドアが開いた。
 鍵をかけて出かけたはずなのに、なぜドアが開いたのだろう?
 田所が中にいるにしても、窓からは明かりが見えないのはおかしい。
 思い切って中に入ると、やはり電気はついておらずホールは暗闇に包まれていた。
 電気のスイッチを入れてみるが、なぜか照明がつかない。
 その時、廊下の奥から何かを倒したような物音がかすかに聞こえてきた。
 続いてはっきりとした物音が響く。
 何かがいる!
 この音といい、停電といい、ただ事じゃない!
 怖がりながらも様子を見に行こうとする主人公だが、パートナーは怯えてその場から動こうとしない。
 覚悟を決めてパートナーをその場に残し、真っ暗な廊下を奥へと向って歩き出した。
 廊下の奥へ進んだ主人公は息を呑んだ。
 地下書庫の扉が開いている!
 主人公はゆっくりと地下書庫に足を踏み入れた。
 書庫の中は暗闇と静寂に包まれている。
 まずは電気をつけようとするが、やはりスイッチを入れても反応がない。
 明かりもない状態で書庫を調べ回ると、どこからか足音が聞こえてきた。
 やはり誰かがいるようだ。
 主人公は姿の見えない侵入者に叫ぶ。
 すると、突然書庫中に音楽が響き渡った。
 誰かが書庫の隅にある蓄音機のスイッチを入れ、レコードの音楽を鳴らしたようだ。
 主人公は蓄音機の方に向かい、針を上げて音楽を止める。
 そして、奥の方から物音がした。
 主人公は慌てて物音がした方に向かった………つもりだったが何かにつまづいて転んでしまう。
 その倒れ込んだ主人公の目の前には………白目の不気味な顔が!!
 ついに幽霊が現れた!!
 ………と思いきや、冷静になってよく見ると、それは田所だった。
 田所は仰向けに倒れ、白目をむき気絶している。
 田所を揺さぶるり起こそうとした時、玄関からパートナーの悲鳴が聞こえてきた。
 玄関に駆けつけると、パートナーが腰を抜かしている。
 何者かがパートナーを突き飛ばし、そのまま外へ走り去って行ったのだと言う。
 すぐに外を見渡すが、すでに走り去ったようで誰もいなかった。

267 :夜想曲(第1話):2010/08/29(日) 21:15:22 ID:SzWXzgQx0
 意識を取り戻した田所の元に集まる。
 電気がつかなかったのはブレーカーが落ちていたためだった。
 幽霊がブレーカーに細工をするのは妙な話なので、侵入者は生きてる人間だろう。
 それにもう1つ気になる事がある。
 あの蓄音機が鳴ったのは、ひょっとしたら田所の方へ誘導させようとしていたような気がしてならないのだ。
 田所は書庫で仕事をしていたらいきなり殴られたとの事で、残念ながら顔は見ていない。
 幽霊と思わしき謎の女性の次は侵入者……この図書館は普通じゃない。
 主人公は、この図書館は一体何なのかを田所に問い詰める。
 田所は黙秘するが、引き下がらずになおも問い詰めると、観念して図書館の事を話し始めた。

 この図書館にある本は、どれも普通に集められた本ではない。
 殺人鬼が愛読していた本、心中の際に踏み台として用いられた本……全て死に関わった本だった!
 ここを建てた野々宮は人の死に異常なほどの興味をもっており、そのような本を集めていくうちにいつの間にか図書館ができるほどの量になったという。
 薫の童話集……これもハナエの今際を看取った本だ。死に関わっていると言っていい。
 どうやらあの女性は木谷ハナエの幽霊で間違いないようだ。
 そんな幽霊の巣のような場所で整理が終わるまで暮らさなければならない事を思い知らされた主人公は放心状態だった。

 パートナーと田所は帰った後、主人公は談話室でこれまでの事を考えていた。
 ハナエの幽霊、智恵子から聞いた童話集の寄贈の経緯、施設であった出来事、薫の様子……気になることだらけである。
 特に気になるのは薫が引き取られた日、俊夫が行方不明になり今でも見つかっていない点だ。
 しかも薫が引き取られたその日にである。
 いくらなんでもタイミングが良すぎではないだろうか?
 その日の薫の様子、風邪をひいて大きなマスクをしていたというのも気になる。
 これらの点から導き出した仮説は……

268 :夜想曲(第1話 真相編):2010/08/29(日) 21:22:53 ID:SzWXzgQx0
(談話室での推理で「少年が一人消えている事だ」→「行方不明のままという点だ」→「俊夫くんが、薫くんと入れかわったのではないか?」を選ぶ)
 俊夫が薫と入れ替わったのではないだろうか!?
 俊夫は物事を損得で考えるような子だった。
 そんな子が薫が施設から引き取られていくのを素直に祝福するだろうか?
 ひょっとしたら、俊夫は薫の幸せを横取りしてやろうと考えたのかもしれない。
 背格好も似ていたし、大きなマスクをつけていたのも入れ替わったのを気付かれないためと考えれば合点がいく。
 という事は、俊夫は薫を殺したのではないのだろうか?
 それならばあの童話集のサインを見て動揺したのも頷ける。
 薫の事を思い出させるものだから。
 この仮説に自信を持った主人公は薫にもう一度会って確かめてみようと考える。

 翌日、喫茶店でパートナーと合流し昨日考えた仮説を説明すると、パートナーも主人公の考えに賛同してくれた。
 あとはもう少し情報を集めて、この仮説を確実なものにするだけだ。
 その時、主人公は今日は俊夫の母親の葬式の日だと思い出す。
 何か手がかりをつかめるかもと考え、葬式の会場へ向かうことにした。

 俊夫の母、望月祐子の葬式は小さなお寺で行われていた。
 会場を見て回ると、早乙女先生の姿が見える。
 早乙女先生からはすでに話を聞いているし、他に話を聞くようなめぼしい相手はいないので、しばらく様子を見ることにした。
 しばらくして葬式が終わりを迎えようとした時、薫が会場に現れる。
 薫がここに来たことを疑問に思うが、真相を問いただすチャンスでもある。
 薫に声を掛けるが、相変わらず邪険に扱われ話に応じようともしない。
 主人公は順を追って自分の推理を話していく。
 核心に近づいていくごとに、薫の様子から見る見る動揺が見られる。
「あなたの正体は木谷薫を殺して入れ代わった望月薫だ!」
 主人公は核心を突いた。
 必死に否定する薫は、証拠を出せと言い返す。
 予想だにしない反撃に主人公は咄嗟に今すぐ探すと啖呵を切った。
 何か証拠となるもの……。
 昔の出来事なので物的証拠を得るのは無理だ。
 あるとしたら……薫や俊夫の顔を知っている早乙女先生だ!
 ちょうどその時、帰ろうとしている早乙女先生の姿が映った。
 早乙女先生を呼び止め薫と引き合わせると、早乙女先生は薫が来ていたことを驚いていた。
 主人公はここにいるのは望月俊夫ではないのかと聞くと、早乙女先生は三田村薫本人だと答える。
 そんなバカな!
 主人公は、仮説が外れた事にショックを受けた。
 だが薫は早乙女先生と目を合わせようとせず、急にガタガタと震え出した。
 ようやく早乙女先生と目を合わせた薫の顔には涙が溢れていた。
 薫は早乙女先生に言わなくてはならない事があると、膝を突きながら話し始めた。

「ぼ、僕が…僕が、望月俊夫を殺したんです!」

269 :夜想曲(第1話 真相編):2010/08/29(日) 21:28:50 ID:SzWXzgQx0
 あの日の朝、俊夫は引き取られる薫を妬んで近くの川に呼び出し、突き落とそうとした。
 そしてもみ合っているうちに……思わず俊夫を突き飛ばして川に落としてしまった。
 その時、顔に傷がついてしまったので、それを隠すためにマスクをつけた。
 ずっと後になって自分が人殺しをしてしまった事に気付いたが、事が露見してしまうと家を追い出されるかもしれない。
 それを恐れて黙っていたのだった。

 殺されたのは薫ではなく俊夫の方だった。
 正当防衛とはいえ友達を殺してしまった事を、その後もずっと苦しんでいたのだ。
 悲しみに暮れる薫に早乙女先生は優しくなだめる。
「あなたは間違いは犯したかもしれないけれど、もう十分に苦しみました。そうでしょ?」
 あたりに、薫の泣き声が静かに流れていた。

 しばらくして落ち着きを取り戻した薫に主人公は謝る。
 自分の行動が思い出したくない過去を掘り起こしてしまったのだ。
 しかし薫はこれでよかったと言った。
 その表情は、長年胸につかえていたものがはずれたように清々しいものだった。
 その時、主人公はあの幽霊――ハナエは、息子が苦しんでいるのを心配して現れたのではないかと思った。
 主人公は、童話集を薫に渡した。
 薫はあの時以来、自分を忘れ去りたくて今まで持っていた本を全て処分し、それ以来本を読むことを止めていた。
 早乙女先生は、これからは読むべきだと言う。
 その中に薫の求めている答えがあると信じて……。

 主人公とパートナーはその場を後にした。
 童話集を勝手に渡して大丈夫なのかとパートナーは意地悪に聞いてくる。
 後の田所の事を考え冷や汗を流すも、間違った事はしていないと確信はある。
 それに今はそんな事などどうでもいいくらいすっきりした気分なのだ。
 主人公達は図書館に帰るために歩き出した。


1巻 「真実の行方」  続

270 :夜想曲(第1話 愛の絆編):2010/08/29(日) 21:31:50 ID:SzWXzgQx0
(談話室での推理で「少年が一人消えている事だ」→「薫くんが引き取られた日に、少年が行方不明になったという点だ」→「薫くんが、俊夫くんを殺したのではないか?」を選ぶ)
 薫が俊夫を殺したのではないのか!?
 俊夫は物事を損得で考えるような子だった。
 そんな子が薫が施設から引き取られていくのを素直に祝福するだろうか?
 ひょっとしたら、俊夫は薫に嫉妬して何度か嫌がらせをしたのかもしれない。
 そして我慢の限界を越えた薫は、俊夫を手にかけて……。
 マスクをつけていたのは動揺を隠すためじゃないのか?
 それならばあの童話集のサインを見て動揺したのも頷ける。
 忘れかけていた忌まわしい記憶を呼び覚ます事になったのだから。
 そして、あの幽霊――ハナエは、息子が苦しんでいるのを知って現れたのかもしれない。
 この仮説に自信を持った主人公は薫にもう一度会って確かめてみようと考える。

(望月祐子の葬式の会場に行き、薫を問いただすところまで<真相編>と同じなので省略)

「あなたは望月俊夫を殺した!」
 主人公は核心を突いた。
 そこへ文江が現れ、「私も真実を知りたい」と薫に問いただす。
 薫と文江が結婚してから間もなく、文江の元に祐子が訪ねて来た。
 祐子は俊夫が薫と入れ代って三田村家に引き取られたのかと思っていたのだ。
 それから文江は自分の夫を疑いながら苦しみの日々を送っていた。
 文江は真実を話してほしいと問い詰める。
 そして、薫はその目から涙を流し、膝をつきながら話し始めた。

「そうだ。私が殺した…」

 あの日、俊夫は引き取られる薫を妬んで近くの川に呼び出し、突き落とそうとした。
 そしてもみ合っているうちに……思わず俊夫を突き飛ばして川に落としてしまった。
 大雨で増水した川に溺れた俊夫を助ける事もできず、俊夫はそのまま流されていった。
 すぐに告白するつもりだったが、事が露見してしまうと引き取りの話がパアになってしまう。
 それを恐れて黙っていたのだ。

 自分の幸せのために俊夫を殺してしまった事の罪悪感に押し潰されそうな薫を文江は慰める。
 薫の罪を半分背負って共に生きていくと、優しく言った…。

 その後、薫は抱えていた苦悩を全て話したことで軽やかになったのか、その表情は晴れ晴れとして見えた。
 薫と文江がお寺の中に消えるのを見送って、主人公達はその場から立ち去る。
 あの夫婦の本当の人生はこれから始まる。
 主人公とパートナーは夫婦の絆の強さを垣間見た。


6巻 「愛の絆」  続

271 :夜想曲:2010/08/29(日) 21:33:36 ID:SzWXzgQx0
一旦ここまでにしておきます。

その他のエンディングは入れるかどうかは検討中です。
一応、前回の反省点からかなり簡潔にまとめています。それでも少々長いですが…。
入れる必要ないと言うのでしたら、本筋で明らかにされない部分は余談のところに書きます。

303 :夜想曲:2010/09/04(土) 21:41:30 ID:JNb6CSC20
その他のエンディングは入れると長くなりそうなので入れない事にしました。
本筋で判明しない部分は余談部分に書いておきます。
 
例によって誤字を発見しました。
>>267
 × パートナーと田所は帰った後
 ○ パートナーと田所が帰った後

あと>>263はメモ帳に書いたものをコピペし、確認しないまま投稿してしまったので不自然な改行が残ってしまいました。

第2話は明日投稿します。

304 :夜想曲(第1話 余談):2010/09/04(土) 21:46:53 ID:JNb6CSC20
<木谷ハナエの幽霊>
 地下書庫の鏡の力で現れたもの。
 鏡の力については外伝を参照。

<図書館の侵入者>
 三田村文江。5巻で判明する。
 主人公達が薫を訪ねた後、薫を不安にする本を密かに処分しようと先回りして図書館に侵入。
 その時、書庫にいた田所を殴って気絶させたが、その後はもう本の処分どころではなくなってしまい、主人公が地下書庫に降りてきたところで田所の居場所を伝えるために蓄音機を鳴らし、その隙に脱出した。
 ちなみに8巻では主人公が侵入者に撲殺されるという展開になるが、これは多分彼女の仕業ではない。
 主人公は死に際に身に憶えのある人物と感じ取ったが、8巻では主人公と文江は顔を合わせていない。
 多分、小田教授?

<野々宮図書館の噂>
 8巻でバスの運転手の氷川小咲夜から聞ける。
 内容は
  ・野々宮図書館には鬼村の言った通り幽霊が出るらしい。
  ・以前にも何人もの人間が管理人としてやって来たが、誰もが3日ももたずにやめていった。
  ・そして誰もが口を揃えて幽霊が出たと言っていた。
  ・野々宮は幽霊だの化け物だのに凝っており、そのせいか野々宮の友人が1人生贄になったらしい。

<野人>
 赤川次郎シリーズおなじみの隠しキャラ。8巻である事をすると登場する。
 隠しキャラと言うだけあって会うのが非常に難しいが、全てのシナリオを見るためには会わなければならない。

<原作>
 原作の第1話に当たる話。

305 :夜想曲(第2話):2010/09/06(月) 01:31:59 ID:otI4sXBn0
 日曜日……
 本日は仕事は休みなのだが、主人公は早起きして上機嫌で書庫の整理をしていた。

 図書館に来てもう随分経つ。
 毎日のように図書館内で鳴り響く物音も、ここに来てから1週間ぐらいは悩まされたが、今ではもうすっかり慣れてしまった。
 死に関わった本が集まったところだから幽霊が現れてもおかしくない環境だし、別にこちらに危害を加えるわけでもない。
 主人公は半ばあきらめでもあるのだが彼ら(?)を同居人として扱う事にしたのだ。

 そんな主人公が本日上機嫌なのは、3日前に届いたパートナーからの書中見舞いの手紙だった。
 手紙には子供じみた挨拶とデートの誘いが書かれていた。
 待ち合わせは本日の1時で、場所はいつもの本屋。
 本を整理しながら主人公は昨夜、興奮と緊張でよく眠れなかった事を思い出す。
 デートの誘いということでパートナーの事を異性として強く意識していた。

 ふと腕時計を見ると、時間は午前8時。
 待ち合わせの場所まではどんなに長く見積もっても3時間でつくので、まだまだ余裕がある。
 とりあえずもう少し本の整理を続ける事にした。
 2時間後……午前10時になり、そろそろ切り上げ時かと考えるが、その前に昨日見つけた目録が見当たらない本を改めて確認することにした。
 本のタイトルは『太陽の少女たち』。
 内容は、なんてことのない少女向けの小説だった。
 蔵書目録を改めて確認するが、やはり載っていない。
 何度も目録を見直してみると、1ページだけ目録が折れているのを発見する。
 そのページを開いてみると、『太陽の少女たち』のタイトルが書かれていた。
 ページを見ようとした時、バスの時間が迫っている事を思い出した。
 慌てて蔵書目録を置き、図書館の戸締りをしてから待ち合わせ場所へと出発した。

 都会に向かう列車に揺られる主人公。
 目的の駅に着くまでの間、少し仮眠を取ろうと目をつぶる。
 そこへ10人ぐらいのお年寄りの団体が主人公のいる車両に入ってきて騒ぎ始めた。
 続いて引率の女性、片桐遥がやって来て、車両から出ないようにと注意する。
 遥は主人公に気づくと、車両を移る事を薦める。
 こんな状況じゃゆっくり眠れないので素直に車両を移り、別の車両で仮眠する事にした。

 主人公は余裕を持って待ち合わせ場所の本屋にたどり着いた。
 パートナーはすでに到着しており、時間つぶしに本を立ち読みしていた。
 声をかけると、パートナーは主人公に気づく。
 お互いの格好を誉め合い、いい雰囲気なったところでデートを始めることにし、本屋を出ようとした。
 しかし入り口で突然、店員の田代紀之に呼び止められる。
 田代は有無を言わさずパートナーのカバンを引ったくって中を開く。
 すると中から直木さをりの写真集が出てきた。

306 :夜想曲(第2話):2010/09/06(月) 01:35:23 ID:otI4sXBn0
 直木さをりと言えば、歌やお芝居にマルチな才能を発揮している最近売り出し中の女性アイドルである。
 飾らない雰囲気、そして何よりそのかわいさで男女を問わず若い人たちの人気を得ている。
 なぜ直木さをりの写真集がパートナーのカバンの中に?
 身に覚えのないパートナーだが、田代は問答無用でパートナーを万引き犯として連行しようとする。
 主人公はパートナーが万引きなどありえないと田代に猛然と抗議する。
 すると周りの客達も主人公達の味方をし、田代に野次を飛ばす。
 立場が逆転した田代は焦り出す。
 主人公は写真集を田代に突き返して、本屋を後にした。

 本屋を後にした主人公とパートナーは、いつもの喫茶店に来た。
 コーヒーを飲んでいると、ようやく気分も落ち着いてくる。
 自分を信頼し、抗議してくれた主人公にパートナーは深く感謝した。
 しかし、パートナーのカバンに直木さをりの写真集があった事は謎のままだ。
 誰かが入れたのだろうか? それとも本が勝手にカバンの中に?
 それから話題を切り替えてお茶を飲みながら会話を楽しんでいると、店の中に4人組の男女が入ってきて、主人公達からパーテーションひとつ隔てた席に座った。
 そのうちの1人、太った男が大声を撒き散らして騒ぎ始めたので嫌が応にも気になってしまう。
 他はやせた若い男、モデルみたいにハンサムな男、高校生ぐらいの女の子という何とも奇妙な組み合わせだ。
 太った男はやせた男に怒鳴り散らしている。

「こっちがさをりを出さなければ、何も始まらんだろうが! 強気で行け、強気で!」

 さをり!?
 その名前を聞いて同席している女の子をよく見てみると……あの直木さをりだった!
 テレビなどで見る感じとは違い随分と小柄な印象だが、それでもその存在感は大きい。
 主人公は4人の会話に聞き耳を立てる。
 どうやら仕事上の契約がうまくいってないことと、ある本を探しているが一向に見つからないことで、太った男は終始不機嫌のようだ。
 その本のタイトルは……『太陽の少女たち』
 それを聞いて主人公は驚く。
 今朝、ようやく目録を見つけたあの本だ!
 主人公は、さっそくさをり達に声をかける。
 やせた男はうんざりとした目で主人公を邪険に扱うが、さをりは丁寧に対応する。
 主人公が図書館に『太陽の少女たち』があることを伝えた途端、さをり達の顔が輝く。
 主人公は自分の名刺(田所が「必要な事もあるだろう」と作ってくれたもの)を渡して自己紹介をした。
 本があると判明した途端、やせた男の態度は一変し、主人公に敬語を使い出した。
 太った男も上機嫌になり、場を治める事ができたようだ。
 主人公とさをり達は一息ついて名刺を交換した。
 太った男は、さをりの所属する事務所『桂木プロダクション』の桂木社長。
 やせた男は、さをりのチーフマネージャーの小池浩三。心臓が悪いようで、社長が不機嫌で話していた時に薬ビンから取り出した錠剤を飲んでいた。
 ハンサムな男は、さをりのサブマネージャーの佐川勇一。本が見つかったと聞いたときも、あまり大きな反応を見せなかった。
 結局、明日の午後に桂木プロダクションの人間が図書館にコピーを取るために本を借りに来るということで話はまとまり、主人公達とさをり達はそこで別れた。

 なおデートはというと、万引き騒ぎとさをりとの出会いが尾を引きずり、これといった事もなく終わった。

307 :夜想曲(第2話):2010/09/06(月) 01:41:50 ID:otI4sXBn0
 次の日
 主人公はパートナーと一緒に昨日の出来事を田所に話していた。
 まもなく事務所の人間が受け取りに来るだろうという時間になったところで、田所から図書館の本は全て禁帯出(図書館外への持ち出しや貸し出しは禁止という意味)と聞かされる。
 図書館なのに全て禁帯出というのはおかしな話だが、規則である以上、本の貸し出しを田所は賛成してくれない。
 ここにはコピー機がないので、コピーをとる事はできないのだ。
 昨日の本が見つかったと聞いた時のさをりの笑顔を思うと、なんとしても許可を取り付けなくてはならない!
 必死で説得するが、やはり田所は賛成してくれない。
 そうこうしているうちに玄関から車の音が聞こえてきた。
 どうやら事務所の人間が到着したようだ。
 玄関に向かうと、そこにはなぜか鬼村が立っていた。
 鬼村はアルバイト初日に図書館に訪れて来て以来、時折ここへ様子を見に来てくれるようになっていた。
 鬼村は戸惑ったような顔をしており、どこか落ち着かない様子だ。
 その時、鬼村の巨体の陰からさをりが顔をのぞかせた。
 てっきり事務所の人間が来ると思っていたのに、さをり本人が来たことに驚く主人公。
 さをり曰く、「『太陽の少女たち』の内容を知っているのは私しかいないので、私が確認するしかない」と事務所の人間を説得し、少しでも早く本に会いたいためにやって来たという。

 さをりを談話室に招き入れ、お茶を出す主人公。
 パートナーと田所は主人公に雑用を押し付け、ここぞと言わんばかりにさをりと談笑していた。
 鬼村はちゃっかりとさをりの隣に座っている。
 その表情はあまりにも締りがなく、自然とほころぶ顔を引き締めようとしているが口が不自然に曲がって目はデレデレで、世にも奇妙な表情だ。
 さをりが鬼村と一緒に現れたわけは、駅でバスが来なくて困っていたところをパトカーで送ってもらったからだった。
 さをりが改めて鬼村にお礼を言うと、鬼村は顔を真っ赤にする。
 どうやら鬼村はさをりのファンのようだ。
 さをりは1年ぶりのオフで本を取りに来たという。
 テーブルの上に置かれた『太陽の少女たち』を、さをりは食い入るように見つめた。
 その顔にはうれしいとも悲しいともつかない複雑な表情が浮かんでいた。
 主人公が声をかけるとさをりは我に返る。
 さをりはこの本に特別な思い入れがあり、ドラマの主役をするのは初めてなので思い出になる仕事になるのだから、どうしても『太陽の少女たち』をやってみたいと言う。
 ここで田所は、この本が禁帯出の本である事を説明する。
 さをりは必死で懇願するが、田所はさをりに背を向けて「自分の見ている前では貸し出しを許すわけにはいかない」と返す。
 主人公も必死で抗議するが、田所は背を向けて黙ったままだった。
 なおも抗議しようとする主人公を鬼村が止め、「田所は自分の見ている前では本を貸し出せないと言った。自分の“見ている前”では」と静かに目配せした。
 その言葉を反芻してハッとする。
 田所は背を向けたまま、こちらを見ようとしていない。
 わざと無視しているのだ。
 主人公は田所の心遣いに感謝し、本をさをりに渡した。
 感極まったさをりはボロボロと涙を流しながら主人公にお礼を言った。

308 :夜想曲(第2話):2010/09/06(月) 01:48:16 ID:otI4sXBn0
 3日後。
 午前中、主人公は図書館内を掃除していた。
 主人公は、お礼として貰ったさをり直筆のサイン入り写真集を見ながらさをりの事を思い出す。
 今日は本の返却予定日。
 さすがに本人が返しに来る事はないだろう。
 そう思っていると、さをりからの電話がかかってきた。
 さをりは先日のお礼を言った後、本が届いたのかを聞いてきた。
 すでに本のコピーは終わっており、本は佐川が今日の朝一番で返しに行く手筈になっていたらしい。
 しかし、佐川はまだ図書館に尋ねてきていない。
 その事を伝えるとさをりは不思議がる。
 佐川は昨日事務所に泊まったはずなのだが、つい先程事務所に連絡した時は誰も出なかったとの事だ。
 ということは本はまだ事務所にあるようだ。
 さをりは何とか時間を作って自分が届けると言うが、主人公はさをりを気遣って貸し出し期限を延長する事にした。
 しかしさをりはそれでは田所に申し訳ないと、やっぱり今日は自分が届けると言う。
 ただこれからPBSテレビで遅くまで仕事があるので、図書館に行くのは深夜になってしまうらしい。
 それならばと、主人公は自分が事務所まで取りに行くと申し出た。
 さをりはその好意に甘えることにし、仕事を抜けられるようだったら事務所に行くと言い残した。
 さをりに会えるとなれば俄然行く気が出る。
 主人公はさをりと約束すると電話を切った。

 その夜、主人公は桂木プロダクションがあるビルまでやって来た。
 8階建てのビルで、桂木プロダクションの事務所はこの7階にある。
 主人公はエレベーターに乗り、事務所の前まで来た。
 ドアを何度もノックするが、何の応答もない。
 誰もいないのだろうか?
 思わずドアノブをひねると、ドアが開く。
 ドアが開いたのならば誰かがいるはずなのだが、室内に電灯はついておらず真っ暗だ。
 事務所の奥に呼びかけても返事はない。
 ここまで来て手ぶらで返るわけにはいかないと、主人公は意を決して中に入ってみた。
 暗くてよくわからないが、事務所の中は割合に広いようだった。
 電灯のスイッチを探そうと壁をまさぐったが、一向に手にさわらない。
 あきらめて部屋の奥へと足を踏み入れてみる。
 徐々に暗闇に慣れて視界が開けてきた。
 パーテーションで区切られた短い廊下を抜けると、少し開けた応接スペースに出た。
 観葉植物と窓際に立派な応接セットが置かれている。
 応接セットに目を移すと、ソファーに毛布が掛けられおり、その中に誰かがくるまって寝ているのか厚みがある。
 主人公は毛布越しにソファーで眠る人物の体を揺すった。
 すると……毛布の中からダラリと垂れた血まみれの手が覗いた!

309 :夜想曲(第2話):2010/09/06(月) 01:52:05 ID:otI4sXBn0
 誰かが死んでいる!!
 主人公はその場から逃げ出したいと思う反面、どこかで冷静な自分がいて、これが誰なのかを確かめなければならないという思いにかられた。
 おそるおそる毛布をはがしてその顔を見ると……佐川勇一だった!
 左胸には深々とナイフが刺さっている。
 死体はまだほのかに温もりがあり、死んで間もないようだ。
 その時、テーブルの上の電話が鳴り出した。
 主人公は思わず受話器をつかんで電話に出る。
 電話の主は小池で、今テレビ局にいると言う。
 主人公が出た事を不思議に思う小池に、主人公は佐川が死んでいる事を伝えた。
 小池は、その言葉を聞いて驚く。
 直後、電話の向こうから椅子が倒れるような音がし、続いて小池がさをりを止めるような声がした。
 小池によると佐川が死んだという言葉を聞いたさをりが飛び出して行ったとの事だ。
 小池は自分がさをりを追いかけるから、主人公に今すぐその場から離れて管理人室から警察に通報するよう指示して電話を切った。
 死体に温かみがあると言う事は、まだ犯人は近くにいる!
 身の危険を感じた主人公は、小池の指示に従って部屋を離れた。

 管理人室に駆け込んだ主人公は、管理人の奥津正平に事情を話し、警察に通報させた。
 警察に通報した後、主人公は奥津に不審な人物の出入りがなかったかを聞いてみる。
 奥津は、特にそれらしい人物が出入りした様子はないが、階段の陰に裏のゴミ捨て場に通じる通用口があるので、そこから出入りされるとわからないと答える。

 警察が到着したのは、それからすぐ後だった。
 警察が来た安堵感でへたり込む主人公の目の前を、何人もの警察官が往来して行った。
 しばらくして、警視庁捜査一課の村枝警部と諸橋刑事が声をかけてきた。
 村枝警部は事情を聞くために署に同行するように言う。
 主人公は承諾して、村枝警部と諸橋刑事にうながされるがままに1台のパトカーに乗り込んだ…。

 長い取調べの後、主人公はようやく開放され迎えに来たパートナーと田所と共に警察署を後にした。
 村枝警部の話によると、さをりは現場に現れず、そのまま行方不明らしい。
 主人公は、さをりは絶対に現れると必死に言い聞かせた。

 夜11時。
 3人は地下駐車場に止めてある田所の車で図書館に帰ろうとしていた。
 車に乗り込もうとしたその時、1人の男が主人公を呼び止める。
 男は大脇康雄と名乗り、主人公達がさをりの事件の関係者なのかと聞いてきた。
 いかにも怪しい男だが、一応事情を聞いてみることにし、大脇の問いかけに頷く。
 大脇は直木さをり私設親衛隊長というらしい。早い話、直木さをりのファンクラブである。
 大脇ら親衛隊は捜索隊を結成してさをりの行方を追っており、主人公に声をかけたのは手がかりを得るためだった。
 お互い情報交換を約束して、その場を別れることにした。

310 :夜想曲(第2話):2010/09/06(月) 01:58:24 ID:otI4sXBn0
 一夜明けて……
 主人公とパートナーと田所は、朝のワイドショーにクギ付けになっていた。
 どのワイドショーも佐川の殺害事件のことが取り沙汰され、いろいろ新しい情報が入ってきた。

  ・佐川は桂木社長がどこからか連れてきて社員になった。
  ・桂木社長は男色の気があり、佐川とも関係があっとかなかったとか…。
  ・凶器は桂木社長のナイフコレクションの中の1本。
  ・その桂木社長は、さをりと同じく事件の日から行方がわからなくなっている。
  ・ただ1人残された小池に取材が殺到している。

 いろいろ入ってくる驚愕の事実。
 今現在の状況は桂木に不利だ。
 個人的関係があるとしたら動機も発生しやすい。
 事実、どの局のワイドショーも桂木を犯人扱いしている。
 桂木の失踪は気になるが、やはり一番心配なのはさをりの行方だ。
 再びワイドショーを注目すると、さをりは自宅マンションを出た後に行方不明になり、またそのマンションには佐川も住んでいる、という新たな報道があった。
 それを聞いたパートナーはさをりと佐川が恋人同士ではないのかと考えた。
 主人公は初めて会った時の様子を思い出してみるが、そんな雰囲気ではなかったような気がした。
 あれこれ考えても埒が明かず、いても経ってもいられなくなった主人公は、自分達も何かしようと言い出す。
 止めるパートナーだが、田所はお手並み拝見と賛成してくれた。
 まずは、さをりの行方。
 さをりが行きそうなところというと……両親のところなのかもしれない。
 さをりは15才の少女だし、こんな時は両親を頼るのが妥当なところだろう。
 主人公はテーブルに置かれた写真集を手にとってページを開いた。
 プロフィールの欄を見ると、さをりはアメリカのサンフランシスコ生まれで、帰国子女という事がわかった。
 ワイドショーも丁度その事に触れていたが、さをりが国外に出た形跡はないという。
 仕方なく視点を変えて、桂木の行方を探すことにした。
 桂木の行きそうなを場所というと……。

 主人公とパートナーは、男色家が集う町へと足を踏み入れた。
 田所は猛烈な拒否反応を示したので図書館でお留守番となった。
 町独特の空気に気押されしながら、主人公達はとりあえず適当な店で情報を得ようと考え、近くにある『マナティ』という店に入る。
 入った途端、店のママ・ブルータス愛(オカマ)に声をかけられる。
 とりあえず桂木の事を聞こうとするが、ブルータス愛は教える事は何もないと返した。
 その時、客の男が主人公達に声をかけてきた。
 男はPBSテレビジョン第3制作部ディレクター・北川京介。

311 :夜想曲(第2話):2010/09/06(月) 02:03:40 ID:otI4sXBn0
 主人公がこれまでの事を北川に説明すると、北川は桂木の事を話してくれた。

  ・桂木が男色家なのは業界では有名な話。
  ・前に会ったとき、事務所に美少年が入った事を喜んでいたらしい。
   おそらく佐川の事で、やはり佐川に思い入れがある模様。
  ・さをりは北川のテレビのオーディション番組出身で、トップで合格し、
   大きな事務所からも誘いがある等引く手あまたの状態だった。
  ・だが、さをりはなぜか桂木プロダクションを選んだ。
   桂木プロダクションは有名な所属タレントが1人もいない事務所にも関わらず。
  ・インタビューでいろいろ理由を述べていたが、本心は不明。

 北川からいろいろな情報を聞くことができたが、肝心の桂木はここ1ヶ月、この界隈に姿を見せていないらしい。
 主人公とパートナーは北川に礼を言い『マナティ』を後にした。

 翌日――事件発生から3日目。
 警察は桂木を重要参考人として指名手配し、行方を追い始めた。
 さをりは相変わらず行方不明。
 3日目となると、主人公の心配はピークに達していた。
 さをりの身を心配しながら地下書庫の整理をする主人公の元に、パートナーが警視庁から届いた小包を持ってきた。
 開封すると、中身は『太陽の少女たち』だった。
 本を抱きながら、さをりを心配する気持ちが改めて沸き上がる。
 そういえばこの本も、この図書館にあった以上何か事情があるのかもしれない。
 蔵書目録を調べると、この本の寄贈の経緯は以下の通りだった。

 本の持ち主は、とある市役所に勤める根本という男で、市長の右腕と呼ばるやり手の公務員だった。
 ある日、根本は本屋を出ようとしたところを店員に呼び止められ、店員に言われるがままにカバンを調べると入れた覚えのないこの本が出てきたという。
 つい最近パートナーが同じ目にあったが、その後はパートナーの時より遥かに深刻だった。
 万引きの疑いをかけられた根本は騒ぎになるのを防ぐために仕方なく謝罪して代金を払ったが、運悪くこの出来事が反市長派の耳に入ってしまった。
 折りしも選挙戦真っ只中で、「市長は万引きするような男を側近にしてる」と反市長派の市長攻撃の格好の材料になってしまった。
 結局、根本は市長を守るために辞職に追い込まれた。
 万引きの噂はここだけに留まらず子供達の間にも飛び火して広がり、根本の子供達はいじめに遭い学校に行けなくなってしまった。
 根本の奥さんは世間の風評に精神的に追い詰めらてノイローゼになってしまい、そしてとうとう……電車に飛び込んで自殺してしまった。
 その時、止めようとした根本自身も巻き添えになって亡くなった。
 
 あまりにも悲惨な話に気が沈む主人公。
 根本の子供達がその後どうなったのかは蔵書録に一切書かれていないので、何もわかっていない。
 一家離散に追いやった本。
 そしてこの本が関わったために、桂木プロダクションも離散状態になってしまった。

405 :夜想曲:2010/09/18(土) 00:55:05 ID:FMDbgBt10
 仕事を休憩し、談話室でさをりの事件について話し合う。
 テレビのワイドショーでは桂木の生臭い話が次々と報じられていた。
 田所は事件について主人公の考えを聞いてきた。
 佐川殺害事件について事件の鍵を握る人間、それは………芸能リポーターだ。
 それを聞いたパートナーと田所は笑い出す。
 気を悪くした主人公はへそを曲げてしまい、それ以上話す気を失せてしまった。
 パートナーと田所は主人公をおだてて推理の続きを促すと、その気になった主人公は自分の推理を披露する。

 主人公が目をつけたのは、さをりが失踪した時のワイドショーのリポート内容だった。
 ワイドショーのリポートでは、さをりは自宅マンションから失踪したと言っていた。
 しかし、主人公が佐川の遺体を発見した直後にかかってきた小池からの電話はPBSテレビ局からかけたと言っていた。
 主人公が桂木プロダクションに行く前のさをりとの電話のやり取りで夜からPBSテレビで仕事があると聞いていた。
 だからテレビ局にいたというあの時の小池の言葉に疑いもしなかった。
 そのPBSのワイドショーも、さをりはマンションから行方不明になったと言っている。
 つまり、実際にはテレビ局入りしていなかった?

 どちらかが嘘をついている。
 田所は「本人に確認してみる?」と聞くが、今は様子を見る事にした。
 真実はいずれ必ず明かされる、そう信じて……。
 主人公達の行く末を暗示するかのように、窓からの陽差しがゆっくりと薄らいでいった。

 その後……
 夕食を終えた主人公は早々とベッドにもぐりこんだ。
 パートナーと田所は、明日また来ると言って2日ぶりに家に帰って行った。

 その夜……
 1階から鳴り響く物音に驚いて主人公はベッドから飛び起きた。
 いつもの幽霊の仕業なのか、それとも別の……。
 正体を確かめるべく護身用の金属バットを握って1階に降りると、物音は地下書庫から聞こえてきた。
 地下書庫に降りると、暗闇に動く影が見えた。
 聞こえてくる息づかいからして間違いなく人間だ。
 電気をつけると、そこに夏には似つかわしくないニットの日出し帽をすっぽりをかぶった男が立っていた。
 男は、主人公を見て今にも襲い掛かろうとする。
 主人公は優しくなだめて男を説得すると、男は敵意をなくして謝り出す。
 男が日出し帽を脱ぐと……その顔は桂木だった!

406 :夜想曲:2010/09/18(土) 01:02:27 ID:FMDbgBt10
 主人公は桂木を談話室に案内し、おにぎりを握って差し出した。
 おにぎりをほおばった後、桂木は主人公の質問に答える。
 ここにやって来たのは、たまたま服のポケットに初めて会った時に渡した主人公の名刺があったからだった。
 先日北川から聞いた話を持ち出すと、桂木もなぜさをりが自分の事務所を選んだのかは不思議に思っていた。
 さをりが入る前の桂木プロダクションは所属モデルをイベントなどに派遣するようなケチな事務所で、その所属モデルさえ数人しかないほどの有様だった。
 オーディション番組の指名プロダクションに名を挙げることができたのも北川のコネがあってのもので、桂木自身も駄目元だった。
 そのさをりが桂木プロダクションを選んでくれた時は、金の卵を手にしたと天にも昇る気持ちだった。
 その後、所属モデルを全員整理し借金をしてさをりを売り出した結果、わずか1年で大スターになったのだ。
 主人公は本題に入り佐川を殺したのかと聞くと、桂木は必死で否定する。
 佐川に関係を迫ったのは確かだが、何度迫っても応じてくれなかったので結局あきらめざるを得なかったという。
 ならばなぜ警察に事情を話さずに逃げ回るのかと聞くと、連行されるとこちらの事情も全く聞く耳持たずで犯人扱いされるからと答える。
 かなり警察に偏見を持っている事からして、何か後ろめたい事があるのか、過去に厄介になった事があるのだろう。
 結局、肝心のさをりの行方は桂木も知らなかった。
 これからどうする気なのかと聞くと、一晩だけ泊めてほしいと頼んできた。
 佐川を殺していないというのが本当だとしても、警察に重要参考人として追われている人間を匿うのはまずいのではないか?
 結論を先送りにし、ここに泊まったとしても明日はどうするのかと聞いてみると、犯人が捕まってくれるように願いながら逃げ続けると答える。
 こうして逃げ回っている限り警察が別の犯人を捜そうという気は起きないんじゃないかと指摘しても、桂木は警察に出頭するという考えは全く持たない。
 3日間も逃げ回って疲れ切っている桂木をこのまま放り出す気になれなかった主人公は、仕方なく一晩だけ泊めることにした。

407 :夜想曲:2010/09/18(土) 01:06:56 ID:FMDbgBt10
 2階の客間に案内すると、桂木はベッドに入り、あっという間に眠ってしまった。
 これからどうしようかと考えながら客間から出ると、玄関から物々しい音が聞こえ、続いて何人もの人間が階段を駆け上がってくる音が聞こえてくる。
 階段を上がってきたのは、村枝警部と諸橋刑事率いる警官隊だった。
 村枝警部は主人公に桂木の居場所を怒鳴りながら聞いてきた。
 その剣幕に気圧されした主人公は桂木のいる客間を指差す。
 村枝警部達が桂木のいる客間へと突入すると、桂木は豪快にイビキをかきながら熟睡していた。
 村枝警部はあきれながら、このまま桂木を連行するよう指示する。
 警官隊に連れ出されていく間も桂木が起きる事はなかった……。

 警視庁は桂木の目撃証言を元に、急遽この地域へとやって来た。
 そしてこの地域に桂木に縁のある人物は住んでいないため、真っ先に図書館を探索に来たというのだ。
 幸いな事に、警察は主人公と桂木の関係は喫茶店で偶然出会って本を貸し出しただけという事を調べていたため、主人公に疑いを持っていなかった。
 1時間後、事情聴取を終えた村枝警部達は帰っていき、主人公は寝室に戻って眠りについた。
 
 翌日……主人公は地下書庫の整理に専念していた。
 その間、ワイドショーから新しく入った情報によると、案の定桂木は佐川殺害を全面的に否認し続けているという。

 その夜…。
 仕事を切り上げて夕食を終えた後、談話室でパートナーと田所で事件の事を話し合う。
 桂木は本当に犯人じゃないのか?
 主人公はいろいろ考えた末に、桂木は犯人ではないと断定した。
 では、誰が佐川殺害のキーパーソンなのか?
 主人公は、すでにその答えを導き出していた。
 それは小池浩三だ!
 桂木が警察に拘束された以上、今すぐ小池をどうにかしないと大胆な行動に出る可能性もある。

408 :夜想曲(第2話 真相編):2010/09/18(土) 01:51:43 ID:FMDbgBt10
(小池が事件のキーパーソンと断定した後、「鬼村巡査に相談してみよう」→「小池のマンションに張り込もう」を選ぶ)
 主人公は鬼村に相談する事にした。
 鬼村に電話をかけて自分の考えを述べるが、すでに警察は桂木を重要参考人から容疑者へと切り替える段階なので、それくらいの情報で考えを曲げたり動いたりはしないだろうと指摘される。
 最後に「くれぐれも変な気を起こすなよ」と釘を刺された。
 主人公は電話を切り、こうなったら小池のマンションを張り込むしかないと最終手段に出る事にした。

 翌日……
 主人公は小池のマンションを張り込んでいた。
 しかし夜になっても目立った動きはない。
 午後11時になり、もう引き上げようかと考えたその時、小池の部屋付近の窓から何か白い物が投げ出されたのが見えた。
 それは長い事ヒラヒラと宙を舞うとマンションの植え込みに落ちた。
 慌てて拾い上げると、それは白い布だった。
 そこには……『たすけて さをり』という血文字が!
 さをりは小池に監禁されているのか!
 警察に連絡する猶予がないと判断した主人公は、思い切って小池の部屋に侵入することにした。
 その時、小池がマンションから出て行ったのを目撃する。
 そのチャンスを逃さず、主人公は小池の部屋の前まで来た。
 ドアをひねると、鍵はかかっていない。
 不法侵入であることは百も承知だが躊躇している暇はない。
 主人公は部屋に忍び込んだ。
 次々と部屋を見て回るが、さをりの姿は見当たらない。
 主人公に焦りの色が見え始める。
 その時、後頭部に激しい衝撃を受け、主人公は両膝を落とした。
 朦朧とする意識の中で背後から気配を感じて振り返ると、そこには小池が鈍器を握って立っていた。
 小池は薄ら笑いを浮かべながら、さをりはここにいないと答える。
 さをりの居場所を聞く主人公だが、小池は答えず鈍器を握り直す。
 そして主人公を殺そうと鈍器を振り下ろそうとした。
 だが突然、小池の体は高々と宙を舞い、そのまま地面に激しく叩きつけられて気を失った。
 駆けつけた鬼村が小池を投げ飛ばしたのだった。
 鬼村は主人公を叱り付けながら、気絶している小池を後ろ手にしてプラスチック製の特殊なコードで手首を縛る。
 主人公は再びさをりを捜そうとするが、もう部屋は残っていない。
 すると鬼村は壁掛けを指差した。
 そこには大きなタペストリーが部屋の入り口を隠すようにかけられていた。
 タペストリーをまくり上げ、ドアを開けて部屋に入ると、そこにさをりが拘束された状態で倒れていた。
 急いでさをりを揺さぶり起こそうとする。
 触れたその顔には体温が感じられた。
 生きている!
 鬼村が救急車を呼びに行っている間に、さをりはわずかに意識を取り戻した。

409 :夜想曲(第2話 真相編):2010/09/18(土) 02:00:19 ID:FMDbgBt10
 あれから数日の時が流れた。
 小池が逮捕され、さをりが救出されてから事件の真相と共にいろいろな事が明らかになった。

 佐川の本名は直木勇一……さをりの実の兄だった!
 そして2人の直木という姓は養子に行った先の親類の姓であり、元の姓は根本。
 そう、あの『太陽の少女たち』の目録に載っていた根本一家は、さをり達の事だった!
 さをりが桂木プロダクションに入ったのも、この出来事が関連していた。
 さをりの父親の万引きは、当時書店の店員だった桂木によってすべて仕組まれた事だった。
 桂木は、その時の激しい市長選挙を利用して一儲けしようと企み、市長の側近であったさをりの父親をはめる計画を反市長派に持ちかけた。
 そして自らその企みを実行した。
 反市長派から報酬を得た桂木は、その金を元手に桂木プロダクションを設立。
 さをりはそれを知って、桂木プロダクションに入った。
 桂木は美しく成長したさをりを根本の娘と気付くことなく迎え入れた。
 程なく兄の佐川も、桂木が美少年好きというのを利用して妹をバックアップするために偽名を使って事務所入りした。
 2人の目的は復讐。
 桂木に一旦はいい思いをさせておいて、一気に絶望へ蹴落とそうとした。
 そして思うように人気が出てそろそろ頃合かと思っていた矢先に、あの事件が起こってしまった。

 あの日……さをりは仕事の待ち時間を利用して小池と共に事務所に帰ってきた。
 そこで小池が凶行に走り、さをりを自分のものにしようと襲いかかった。
 そこへ佐川が帰って来て、佐川はさをりを助けるために小林に掴みかかり、もみ合いになった。
 その末で小池は近くにあったナイフで佐川を刺し殺してしまった。
 小池はさをりを拘束し、佐川の死体を後で処分するために毛布で包んだ。
 さをりを別室に運んで改めて自分のものにしようとした時、主人公が本を取りに事務所を訪ねてきた。
 小池は主人公をやり過ごすために、携帯電話でさもテレビ局にいるかのように装って電話かけ、出口を確保するために主人公に管理人室から警察に連絡するように指示した。
 その指示通り主人公は管理人室から警察に通報。
 その隙に小池はさをりを連れて事務所を抜け出し、ゴミ捨て場に通じる裏の通用口から逃走した。
 しかし主人公が死体を目撃した以上、死体の処分をあきらめざるを得なかった。
 さをりをマンションに連れて行った小池は、そこでさをりに自分が普段から常用している麻薬を投与した。
 しかし量が多すぎたために、さをりは昏睡状態になった。
 そのため、さをりを自分のものにするのをあきらめた。
 そうこうしているうちに佐川殺害の容疑は桂木にかかり、小池としては幸運な展開となった。
 しかし、主人公の活躍でその悪運も尽きてしまう事となった。

 小池によってさをり達の計画は狂ってしまったが、皮肉な事にこの事件で結果的に復讐は成し遂げられた。
 さをりは事件の後、芸能界の引退を表明。
 桂木は容疑が晴れて釈放されたものの、その後に待っているのはさをりを売り出すために背負った億単位の借金である。
 さをりを失った今、借金を返すあてはなくなってしまったので、どの道破滅しかなかった…。

410 :夜想曲(第2話 真相編):2010/09/18(土) 02:04:58 ID:FMDbgBt10
 パートナーがさをりが到着した事を知らせる。
 今日は図書館でさをりの送別会が行われる。
 さをりは桂木の目をごまかすために、自分は帰国子女だと偽った。
 これを本当にするために、来週留学のためにアメリカへと旅立つ事になっていた。

 事件はこうして幕を閉じたが、1つだけ謎が残っている。
 あの血文字の手紙だ。
 あの状態で発見されたさをりにあんな物が書けるはずがないし、もちろん小池が書いたわけでもない。
 しかも、あの手紙はいつの間にか主人公の手元から消えてしまったのだ。
 不思議な出来事だが、主人公の心は暖かな気持ちでいっぱいになっていた。
 奇跡なんてものは、本当は珍しい事ではないのかも知れない…。

 主人公の耳に心待ちにしていたさをりの声が届いた。
 主人公は笑って振り向く。

 そこには、本から抜け出した本当の太陽の少女が立っていた…。


1巻 「太陽の少女」  続

411 :夜想曲(第2話 復讐の結末編):2010/09/18(土) 02:09:08 ID:FMDbgBt10
(小池が事件のキーパーソンと断定した後、「小池のマンションに張り込もう」を選ぶ)
 主人公は、こうなったら小池のマンションを張り込むしかないと最終手段に出る事にした。

 翌日…。
 主人公は小池のマンションを張り込んでいた。

(小池の部屋で小池に襲われるまで1巻と展開は同じなので省略)

 小池は薄ら笑いを浮かべながら、さをりはここにいないと答える。
 さをりの居場所を聞く主人公だが、小池は答えず鈍器を握り直す。
 そして主人公を殺そうと鈍器を振り下ろそうとした時…

「やめなさい!」

 小池の背後から声が響いてきた。
 小池がゆっくりと後ろを振り向くと……さをりが静かに立っていた。
 さをりの無事を喜ぶ主人公。
 だが小池の方は、さをりの姿を見て尋常じゃないほどの驚きを見せる。
 そして驚きのあまり心臓発作を起こして、床に倒れてのたうち回り……そのままショック死してしまった。
 後頭部を殴られた主人公は、その光景をただ見守るだけしかできなかった。
 さをりは表情一つ変えることなく小池の様子を眺めていた。
 やがてさをりは静かに事件の真相と自分の事を語り始めた。

(事件の真相とさをりの事は1巻と同じなので省略)

 小池によってさをり達の計画は狂ってしまったが、皮肉な事にこの事件で結果的に復讐は成し遂げられた。
 桂木はやってもいない罪を問われ、かつてのさをりの父親と同じ苦しみを味わう事になった。
 たとえ無罪になっても桂木はもう終わりだろう…。
 全てを話し終えた後、主人公は警察に連絡するべく電話に手を伸ばした。
 電話をかける前に、さをりの無事を改めて喜びながら言葉をかける。
 しかし何の返事も返ってこない。
 不審に思ってさをりの方を振り返ると……そこには誰もいなかった。

 さをりの姿を見たのは、それが最後だった…。

 2日後、警察は桂木を重要参考人から容疑者へと切り替え逮捕した。  
 さをりの話を聞いた主人公は、これに物申す気にはなれなかった。
 あの後、警察に連絡したものの、血染めの手紙はいつの間にか跡形もなく消えてしまっていたため、小池の部屋での出来事を警察に説明するのは困難を極めた。
 結局、小池は単なる心臓発作の死として処理された。
 一体なぜ、小池はさをりの姿を見て心臓発作を起こすほど驚いたのだろうか?
 事件の真相はわかったが新たな謎が残り、今となってはこの本だけがさをりの思い出だった…。

 その日の午後、さをりの遺体が郊外の森林で発見された……。


9巻 「復讐の結末」  続

412 :夜想曲(第2話 余談):2010/09/18(土) 02:13:53 ID:FMDbgBt10
<写真集をパートナーのカバンに入れたり、血のメッセージを書いた存在>
 不明。
 おそらく鏡の力で現れた根本の幽霊が、子供達の復讐劇を止めて欲しかったのか、あるいは見届けてほしかったのか、どちらにせよ主人公達に関わってほしかったためにあれこれしたのかと思われる。

<野々宮図書館の噂>
 『万国百貨店』の店長の花房小百合、またはその孫の花房静代から聞ける。
 内容は
  ・昔、あの図書館(当時は屋敷)で火事が起こり、野々宮が大火傷した。
  ・世間の発表では普通の火事だという事になっているが、
   実は気が触れた野々宮の友人が屋敷で焼身自殺を図ったという。
  ・その友人は自殺する前に野々宮の妹を殺したと告白したらしい。
  ・この事は、当時屋敷で働いていた照子という使用人から聞いた。
 なお、花房小百合は外伝にも登場する。

<原作>
 原作の第3話に当たる話。

17 :夜想曲(第3話):2010/09/23(木) 00:25:29 ID:pV5StsOC0
 今日も主人公は本の整理に追われていた。
 傍らではパートナーと田所が主人公の仕事に茶々を入れてくる。
 まるで手伝う気のない2人を無視して主人公は黙々と作業を続ける。
 
 ここに来て3週間……
 いろいろな事件に巻き込まれて遅れ気味だった本の整理は努力の甲斐あって大体3分の2くらい終えていた。
 このまま行けばなんとか夏休み中には終わりそうだ。
 しかし、幽霊の物音や肖像画の女性が出てくる夢は相変わらず続いている。
 田所に聞いても、あの肖像画の女性については心当たりがないらしい。

 そろそろ休憩しようかと思った矢先に玄関から声が聞こえてきた。
 玄関に行くと見知らぬ少女が立っていた。
 18歳くらいで、色白で何となく影が薄い感じの子だ。
 少女は沢田知江と名乗り、持ってきた本を預かってほしいと言った。
 怪しげな女性がある日突然図書館にやって来る……
 木谷ハナエの事が脳裏によぎった主人公は知江が幽霊じゃないかと思い始めた。

 当たり前だが知江は幽霊ではなかった。
 本の預かりは自分の一存では決められないので、談話室で田所と引き合わせる。
 知江は事情を話し始める。

 知江の実家は小さな本屋を営んでおり、この本は先日、畑山知治という人に売った本だった。
 畑山知治は最近亡くなった日本でも指折りの資産家である。
 畑山からの注文で本を届けに屋敷に赴いたのだが、その時畑山は臨終間際で、知江は畑山の臨終に立ち会ってしまった。
 秘書の案内で畑山の部屋まで通されると、そこには親戚の人間や医者、そして畑山の3人の子供――といっても中年だが――がいた。
 畑山の子供達は、なぜか知江を恐い顔で睨んでいたという。
 帰りたい思いをこらえながら、亡くなるまでの短い時間に本を見せたり話をした。
 そして畑山が亡くなった後、この本が知江の元に届いた。
 畑山が遺言で「本を知江に残す」と言ったそうだ。
 知江の母は詳しい理由を説明せず、本を持ってなさいと言った。
 なぜ自分に本を残したのか思い当たる節はなく、徐々に気味の悪さを感じるようになった知江はこうした本を専門で扱う野々宮図書館の噂を聞いて、やって来たというわけだった。

18 :夜想曲(第3話):2010/09/23(木) 00:27:42 ID:pV5StsOC0
 本を改めて見てみると、かなり分厚く大きな本で外国語の辞書のようだった。
 袋丁は最近では珍しい革張で、金文字が刻まれている。
 売ったばかりの本にしては随分古そうだが…。
 本を預かってほしいと頼む知江だが、田所は「死に関わったといっても殺人や犯罪に絡んだものじゃないから難しいかもしれないし、財団の理事会とも相談しなければならない」と渋る。
 知江に同情した主人公とパートナーは田所を必死に説得する。
 結局、理事会の承認が降りるまで預かるという形で譲歩してくれた。
 知江は感謝し、深々と頭を下げた。

 主人公はバス停まで知江を送る事になり、2人で会話しながら林道を歩いていた。
 知江とその母親の本屋は、知江の代で4代目である。
 父親は生まれる前に亡くなったと母親から聞かされた。
 知江と話すうちにその人柄に好意を持った主人公は知江を励ますために何としても本を引き取ってもらえる様にすると決意をあらわした。
 その言葉を聞き知江は笑顔を浮かべた。
 そうして主人公と親しくなった知江は今度一緒に映画にいこうかと誘ってきた。
 日にちを打ち合わせようとしたその時、突然主人公は後頭部に衝撃を感じ地面に倒れこんだ。
 続いて知江の悲鳴が響き渡る。
 何事かと思ってよろよろと起き上がってみると……そこには覆面をかぶった3人組の男が知江を連れ去ろうとしていた!
 主人公は知江を救出しようと近づくと、そのうちの1人がナイフを構える。
 状況が全くつかめないが、今は知江を救う事が先決だ!

19 :夜想曲(第3話 誘拐編):2010/09/23(木) 00:32:47 ID:pV5StsOC0
 主人公は知江を連れて行こうとしている男に体当たりした。
 男は主人公の行動を予想していなかったのか、あっさりと突き飛ばされた。
 残りの2人がとっさに反応できずにいる隙をついて、知江の手を取り図書館へと走り出そうとした。
 だが、混乱から立ち直った2人が行く手に立ちふさがる。
 そして主人公は男に殴られ気を失ってしまった。

 主人公は図書館の談話室で目を覚ました。
 帰りが遅いから様子を見に行ったパートナーと田所が倒れている主人公を発見し、図書館に運んで手当てをしてくれたのだった。
 幸いケガは軽く打撲くらいで済んだが、包帯でグルグル巻きの有様だった。
 主人公は林道であった事をパートナーと田所に話す。
 知江が何者かに誘拐された。
 小さな本屋の娘なので身代金目的とは考えなれないし、誰かに恨みを買うような人間とも思えない。
 とにかく警察に連絡する事にした。
 知江が誘拐された事に責任を感じた主人公は、自分達も調べようとした。
 だが田所は「今回はおとなしくしてほしい」と反対する。
 主人公はどうしても調べると引き下がらない。
 パートナーが図書館の留守番を引き受け田所を説得すると、結局田所の方が折れる事になった。
 まず主人公と田所は知江の家に向かうことにした。
 
 図書館を出て数時間後……主人公と田所は知江の家である『沢田書店』にやって来た。
 知江から聞いた通り、本屋は本当に小さな店で間口は2間ほどしかなく、店に表には古い雑誌立てが置かれている。
 事前に連絡を入れており、店の中に入ると知江の母・沢田和子が出迎え、主人公達を奥の居間へと招き入れた。
 和子は知江の安否を心配している。
 田所は知江誘拐の手がかりをつかむため和子に質問し始めた。
 畑山との関係を問うと和子はお客様としか答えなかったが、田所は和子が何かを隠している事を見破り問い詰める。
 観念した和子は話し始めた。
 知江は畑山の子供である事を!

20 :夜想曲(第3話 誘拐編):2010/09/23(木) 00:38:02 ID:pV5StsOC0
 畑山がまだ貧しかった頃、どうしても欲しかったが買えなかった本があった。
 畑山はいつか必ずその本を買うために沢田書店で注文し、取り置かせるよう頼んだ。
 その取り置きを受けもったのが和子の母であった。
 そして20年ほど前……畑山は店に現れ、注文した本を買いに来た。
 その頃には和子の母はすでに亡くなっていたが、和子は母から「本を買いに来る客は必ず現れるので返品せずに取って置くように」と言われていた。
 それをはじめに何度か会っていくうちに和子と畑山は付き合い始め、やがて知江を妊娠した。
 しかし畑山にはすでに奥さんがいたため、和子は知江を身ごもると同時に畑山から身を引いた。
 畑山に責任を負わせるのが嫌だった和子は、知江に父親は死んだと偽った。
 だが畑山は知江の事を誰かに調べさせ、自分の子供だと知ったようだ。
 本の注文を秘書から受けた際、畑山は「必ず知江に本を届けさせて欲しい」と言ったという。
 そして、畑山は臨終間際にようやくその本を手に入れたというわけだった。

 本を知江に届けさせた理由は、おそらく死ぬ間際に一目だけでも会いたかったのかもしれない。
 ひょっとしたら、せめてもの罪滅ぼしに遺産を残そうともしたのかも?
 知江が誘拐された原因が何となく見えてきた。
 その時、宅配便の制服を着た男が部屋に入ってきた。
 男は制服を脱ぎ捨てると、特捜班の草薙と名乗る。
 宅配便を装って来たのは、犯人が家を見張っている可能性があったからだった。
 警察が到着し、捜査のための機材が次々と居間の中に運び込まれていく。
 その直後、電話が鳴り始めた。
 草薙警部の合図で和子は受話器を取る。
 電話の主は誘拐犯からだった。
 話が終わると、和子は受話器を置く。
 逆探知によると、公衆電話からかけてきたようだ。
 犯人からの要求は「畑山が残した本を今夜12時に港の第3倉庫まで持って来い」との事だった。
 犯人はなぜ金ではなく本を要求してきたのだろう? 
 田所に本の値打ちを見てもらうが、古い本で作りも立派なのでそれなりの値打ちはあるものの、その気になれば主人公でも買える程度の値段でしかないらしい。
 草薙警部は本を見せてもらうように頼むが、主人公は「本は野々宮図書館に寄贈されたので所有権はこちらにある。渡して欲しかったら自分達も取引現場に連れて行って欲しい」と訴えた。
 草薙警部は反対するが、知江の事を必死で心配している主人公に感激した和子は連れて行ってあげて下さいと草薙警部に頼んだ。

 和子の要望は通り、主人公は取引現場に行く事を許可され、時間がきたら草薙警部が図書館まで迎えに来るということになった。
 約束の時間までまだ十分に時間があるので、主人公は田所と別れ畑山家に行ってみる事にした。

21 :夜想曲(第3話 誘拐編):2010/09/23(木) 00:42:45 ID:pV5StsOC0
 閑静な高級住宅地の一角に畑山家の屋敷は存在していた。
 主人公はその風格に気圧されし、畑山家の前で呆然と立ち尽くした。
 気合を入れ直して呼び鈴を鳴らすと、執事の中尾正義が現れた。
 事情を話すと、中尾はすぐに主人公を屋敷の中へと招き入れた。
 庭園の中を歩いていると、家の中から中年の男女が現れた。
 男の方は畑山の長男・畑山正治、女の方は長女・西谷桂子。
 2人とも金持ちらしく、偉そうな態度で中尾を睨み付ける。
 中尾が2人に知江が誘拐された事を伝えるが、2人から心配している様子は全く見られず、むしろせいぜいしているようだった。
 その時、畑山の次男・畑山範夫が慌ててやって来た。
 範夫は特捜班の刑事・肥後刑事から知江が誘拐された事をたった今聞いたと言う。
 主人公はしばらくの間、肥後刑事の事情聴取に耳を傾けていたが目新しい情報はなく、これ以上ここにいても仕方ないと判断し、野々宮図書館に引き上げる事にした。
 帰る事を伝えるが、中尾が軽く頭を下げただけで、あとの3人は気にも止めていなかった。

 その夜。
 主人公とパートナーは図書館で取引の時間が来るのを談話室で待っていた。
 テーブルの上には、犯人が要求した本が置かれている。
 なぜ犯人がこの本を欲しがるのだろうか?
 逆さにしたり叩いたりして本を調べてみるが、変わったところはない。 
 その時、玄関から声が聞こえてきた。
 草薙警部との約束にはまだ早いし、声からして鬼村でもなさそうだ。
 玄関まで行くと、扉の向こうに誰かが立っていた。
 ドア越しに尋ねると、畑山範夫だと答える。
 あんまりいい印象のない男だが無下に追い返すわけにもいかないので、とりあえずドアを開けた。
 用件を聞くと、知江がここに来たことを聞いてやって来たと言う。
 話を一方的にまくし立てたり、感じの悪いところは正治や桂子にそっくりで、不快に感じた主人公が追い出そうとすると、範夫は「俺は知江を助けに来た」と言った。

 談話室に範夫を案内すると、範夫は知江が誘拐された理由を知っていると言い出す。
 畑山が亡くなり遺産を整理していると、ある土地を処分して入ったはずの金がどこにもなかった。
 金額にして、ざっと3億円。
 桂子は、その金は畑山が知江に残したと思っているようだ。
 しかし、畑山が知江に渡したものはあの本しかない。
 範夫は本にそれ相応の値打ちがあるんじゃないかと思っていたが、本にはさっき調べた限りでは変わったところはないので田所が言った通りの値打ちしかないはずである。
 そして範夫は正治と桂子がその本を狙っていると言う。
 その態度に主人公はわざとらしさを感じ、「あなただって金が欲しいんじゃないのか?」と聞く。
 すると範夫は「確かに遺産は欲しいが知江のことだって心配だ。正治と桂子は歳が10歳も離れているので全然相手にしてくれず、ずっとさびしい思いをしていた。だから妹である知江には同じ思いをさせたくない」と答える。
 範夫は警察から主人公が取引現場に行く事を聞いており、自分もそこへ連れて行って欲しいと懇願した。
 いまいち信用できないが、必死で頼み込んでくる範夫を見て、連れて行ってもいいかなと考える。
 主人公は範夫の同行を了承した。

22 :夜想曲(第3話 誘拐編):2010/09/23(木) 00:47:34 ID:pV5StsOC0
 港の第3倉庫……
 主人公達、和子、草薙警部率いる警官隊、そして範夫は第3倉庫付近の物陰に隠れていた。
 犯人が指定した時間が迫っている。
 港は大量のコンテナが無造作に積まれ辺りは薄暗く、第3倉庫の前だけが外灯で明るく照らされている。
 第3倉庫の前には隠れるところはなく明るい方からは暗い方は見えにくいし、コンテナの位置によっては死角もできる。
 犯人とって都合のいい場所だと田所は指摘する。
 警官隊の配置を終えた草薙警部が主人公達の前にやって来た。
 主人公達だけでも気に入らないのに、範夫まで連れてきたことは相当不服のようで愚痴を漏らしていた。
 その時、あたりに汽笛が鳴り響いた。
 約束の時間の5分前…
 主人公は和子に本を渡した。
 和子は震えながら、本を持って第3倉庫前の外灯の下に立った。
 そして約束の12時になった時、ヘッドライトの強い光とともに1台の車が現れ、一直線に和子の方へ走ってきた。
 和子の前で止まると、中にいた人間が素早く和子から本を奪い車で逃走し始めた。
 しかし知江の姿はなく、解放されなかったようだ。
 車は激しく蛇行しながら主人公達の方へ向かって走ってきた。
 その時、範夫が飛び出し車の前に立ち塞がる。
 犯人の車は突然の範夫の出現に驚いたのか、慌てて急ハンドルを切り範夫のすぐ横を走りぬけ、バランスを崩しスリップしながらコンテナに激突した。
 車の中から2つの影が飛び出し、暗い方へと逃げて行く。
 田所と範夫と草薙警部は人影を追い、主人公とパートナーと和子は知江を探した。
 犯人が乗ってきた車の車内を調べるが、知江の姿はない。
 その時、トランクの中から鈍い音が聞こえてきた。
 急いでトランクを開けると……中に手足を縛られた知江がいた。
 和子が知江をトランクの中から抱き起こし縄を解く。
 その時、人影が逃げていった方向から銃声が聞こえてきた。
 主人公とパートナーは銃声が響いた方へと急いだ。
 銃声がしたのはコンテナが積み上げられた一角だった。
 その隅の方で範夫達が立ち尽くしていた。
 そして範夫達が向く方に……頭を撃ち抜かれた桂子の血まみれの死体があった!
 範夫の話によると、ここに駆けつけた時、正治と桂子が言い争っており、そして正治が銃を抜いて桂子を射殺し、そのまま逃走。
 いきなりの事で止める暇もなかったと言う。
 なぜ正治が桂子を殺したのだろう? 仲間割れ?

 数日後……
 あれから主人公達は警察の事情聴取という事で警察に連れて行かれた。
 本は奪われたものの知江が無事救出された事は不幸中の幸いだった。
 警察は正治が行方不明という事実と範夫の証言から、正治と桂子が犯人であると断定し、正治を知江誘拐と桂子殺害の容疑の重要参考人として全国に指名手配した。
 事件も落ち着いたので主人公とパートナーは気分転換に遊びに出かけたが、誘拐事件の詳細がはっきりしなかった事が気になってあまり盛り上がらず早々に引き上げる事にした。
 正治と桂子はなぜ本を求めたのか?
 そもそもあの本はなんだったのか?

23 :夜想曲(第3話 誘拐編):2010/09/23(木) 00:52:58 ID:pV5StsOC0
 図書館にたどり着いたのは、日がちょうど沈んだ時だった。
 玄関前に立つと、主人公が鍵を取り出す前にパートナーはドアのノブに手をかける。
 するとドアが開いた。
 鍵をかけて出かけたはずなのに、なぜドアが開いたのだろう?
 以前忍び込んだ三田村文江の事が脳裏によぎる。
 ドアを開けて中に入ると、ホールは見るも無残に荒らされていた。
 パートナーが談話室を覗き込むと、そこも荒らされた。
 嫌な予感がした主人公は地下書庫へと飛んでいった。
 その予感は的中し、書庫の中も滅茶苦茶に荒らされていた。

 数時間後……
 今までの苦労が水の泡となった精神的ダメージは大きく、主人公は魂が抜かれたかのように呆然としていた。
 連絡を受けた田所が警察官を連れてきてくれて、現場検証と手続きをすませていった。
 ようやく落ち着きを取り戻した主人公は奇妙な点に気付く。
 書庫はひどく荒らされていたのに、なくなった本が1つもなかった。
 しかも書庫が一番荒らされていたような気がする。
 一体何が目的でこんな事を?
 物好きな人間の犯行?
 しかしこんな死に関わる本を盗んでまで欲しがるような人間なんているのだろうか。
 本が1冊もなくなっていなかった点もおかしい。
 ということは、何か特定の本を狙っていた?
 まさか、あの知江の本!
 という事は誘拐事件と図書館荒らしは関係がある。
 しかし誘拐事件の犯人はとっくに本を手に入れてるはず。
 だとすると、遺産と本の関係がわからなかったのかもしれない。
 犯人は本に遺産が隠されていると思った。
 だが主人公達があの本を調べても特に変わったところは見つからなかったし、おそらく犯人が調べた時もそうだったのだろう。
 そして犯人は偽物をつかまされたと思い込み、本物がここに隠されているのではないかと考えて探しに来たのだ。
 知江を誘拐した場所はこの付近だから、図書館の事も知っていたはずである。
 という事は、図書館を荒らしたのは正治?
 その時、書庫を整理していたパートナーが談話室に入ってきた。
 主人公は今の考えをパートナーに話す。
 それを聞いたパートナーは、本を発見できなかった正治は再び知江を狙うかもしれないと言い出した。
 本物がありそうなのはここか知江の場所と考えるのが自然だし、ここになかった以上知江が持っていると思うはずである。
 主人公はパートナーを知江の家に向かわせた。
 
 パートナーを知江の家に向かわせてもう随分時間が経過した。
 連絡がない事に徐々に焦りの色が見え始める。
 その時、玄関から物音がした。
 田所かと思って玄関に行くと、そこには範夫が立っていた。
 範夫は警察に正治が図書館を荒らしたと聞かされ、ここに行くように言われたからやって来たと言う。

24 :夜想曲(第3話 誘拐編):2010/09/23(木) 01:01:36 ID:pV5StsOC0
 範夫を図書館の中に招き入れて1時間後…
 相変わらずパートナーと田所から連絡がない。
 範夫は図々しく図書館に居座りながら、正治の事を話したり本の価値を聞いたりしてくる。 
 なんだか正治の事よりも本の方が気になっているような気がする。
 その時、電話が鳴り出した。
 電話に出ると、田所からだった。
 田所は警察におり、未だ図書館荒らしの証拠品採取に立ちあっている。
 図書館の本からは犯人の指紋が一切出なかったらしい。
 田所は主人公に気を付けるように言うと電話を切った。
 受話器を置いた主人公は田所の言葉の意味を考えた。
 指紋が出なかったという事は、犯人が身元を知られないために故意に消したという事になる。
 しかしこれが正治の仕業だとしたら、すでに指名手配されている身なので今更そんな事に気を使う必要はないはず。
 ということは、図書館荒らしの犯人は正治ではない?
 だとしたら、他に犯人の可能性のある人物は……
 
 主人公は突然範夫に「書庫に隠し金庫があり、田所が自分達にも知らせずそこに本物の本を隠して、偽物の本を渡したのかもしれない」と言った。
 それを聞いた範夫はすぐに探してみようと言う。
 主人公は金庫の鍵を取りに行くから先に行くように言った。
 範夫は承諾し、談話室から出て行った。
 主人公は……鍵を探さず、こっそりと範夫の後をつけた。
 そして範夫が地下書庫に入ったのを見届けると主人公は確信する。 
 犯人は畑山範夫だ!

 隠し金庫の話はデタラメである。
 範夫には“地下書庫”の場所はもちろん、その存在を教えた事はない。
 それなのに範夫は一切迷う事なく階段のそばにあるドアを開けた。
 あそこが書庫の入り口だとわかっていた理由……つまり範夫が図書館荒らしだという事だ!
 主人公は範夫を閉じ込めるべく書庫の扉に向かって走り出した。
 ちょうど扉の前に立ったとき、範夫がドアから出ようとしていた。
 主人公はドアに飛びついて力一杯おさえつけ、範夫を地下書庫に閉じ込める。
 はめられた事を悟った範夫は、怒りのままにドアに思い切り体当たりした。
 主人公は必死にドアを押さえ、開けまいとしながら犯行の動機を聞いた。

 範夫の目的は畑山の遺産だった。
 正治や桂子よりも取り分が少ない事に不満を持っていたところで、いきなり現れた知江に3億円も持っていかれることに腹を立てた範夫は計画を立てた。
 知江を誘拐し、その罪を正治や桂子にその罪をなすりつければ遺産は全て自分のものになる。
 しかしいざ仲間を使って知江を誘拐したのはいいが、知江は本を持っていなかった。
 そこで予定を変更し、誘拐事件にして本を要求したのだった。

25 :夜想曲(第3話 誘拐編):2010/09/23(木) 01:04:32 ID:pV5StsOC0
 急に範夫の体当たりが止む。
 あきらめたのかと思ったその時、主人公の顔のすぐ横を銃弾がかすめた。
 範夫が拳銃を取り出し、中から発砲したのだ。
 次々と拳銃から弾丸が放たれ、ドアが壊れていく。
 そして、ドアが蹴破られ範夫が中から姿を現した。
 主人公はその勢いで吹き飛ばされた。
 範夫は銃口を主人公に向ける。
 これまでかと思い、目を閉じると同時に銃声が響いた。
 だが痛みはない。
 恐る恐る目を開いてみると、目の前で範夫が手から血を流しうめき声を上げながら膝をついていた。
 そして主人公の後ろには、銃を構えた鬼村が立っていた。
 鬼村が主人公を助けるために範夫に発砲したようだ。

 翌日……
 主人公は電車に揺られながら、今までの事を思い返していた。

 範夫は鬼村に逮捕され、図書館から連行されていった。
 パートナーは警察と一緒に沢田書店で待ち構えていると範夫に雇われた男がやって来た。
 男はその場で逮捕されたが、その口から範夫が犯人である事と、範夫が図書館に向かった事を聞かされた。
 パートナーはすぐに鬼村に連絡した。
 連絡を受けた鬼村が図書館に様子を見に行くと、そこで範夫が主人公に襲い掛かっているところを目撃し、慌てて拳銃を発砲したというわけだった。
 その後、夜中にもかかわらずパートナーは図書館へと駆けつけてくれた。
 無事だと分かった時にはあたりかまわず抱きついてきたので、主人公は少し照れてしまった。

 警察の取調べで範夫は犯行を自供した。
 やはり畑山の遺産を手に入れるために共犯者を使って知江を誘拐したのだ。
 残念な事に正治はすでに殺されてしまったらしい。
 最終的に逃げられないと判断した正治が自殺する……そんなシナリオに沿って殺された。
 範夫の供述を元に警察は山奥へ死体を探しに行くらしい。
 正治は気に入らない人間ではあったけど、殺されるほど悪い人でもなかった……。

 何はともあれ事件は解決した。
 今、主人公は最後の謎である本の事を聞くために畑山家に向かっていた。
 そもそも本はずっと知江の本屋にあった。
 もし本に何らかの細工があるというのなら、それができたのは知江が本を畑山家に届けた後ということになる。
 畑山の死後、それを実行できたのはただ1人――執事の中尾だけだ。

26 :夜想曲(第3話 誘拐編):2010/09/23(木) 01:05:54 ID:pV5StsOC0
 畑山家に辿り着いた主人公を中尾が玄関まで出迎えてくれた。
 畑山家の人間は1人もいなくなってしまったが、それでも中尾は主無きこの家を守っている。
 中尾は全ての事情を話し始めた。

 主人公の考えていた通り、中尾は畑山の指示で本に細工をした。
 知江にその事を話さなかったのは畑山の遺言で、もしすぐに知らせれば金目当ての者達によって知江が不幸な目に遭うだろうから、書店を継ぐまでは秘密にしておくようにとの事だった。
 結局、畑山の不安は的中してしまった。
 そして肝心の遺産は……本の検印紙(昔の本に張られてある切手のようなもの)の裏にある切手だった。

 主人公は畑山家を後にし、中尾から聞いた事を伝えるためにその足で知江の家に向かう。

 せっかくあと少しまで片付いた書庫は、範夫の図書館荒らしのおかげで滅茶苦茶になってしまった。
 そして田所から笑顔でやり直しを宣告された。
 どうやら自分の夏はまだまだ続きそうだ……。 


5巻 「隠されていた想い」  続

46 :夜想曲(第3話 真相編):2010/09/30(木) 23:23:17 ID:2cxZTuiR0
(一度でもエンディングを見るとこのルートに行ける。<誘拐編>の第3倉庫前にて、犯人が本を奪って車で逃走しようとしているところの選択肢で「車を止めよう!」を選ぶ)
 車は激しく蛇行しながら主人公達の方へ向かって走ってきた。
 主人公は思わず車の前に立ち塞がる。
 車は構わず主人公の方へとスピードを上げた。
 田所が主人公の腕をつかみ地面に引きずり倒すと、犯人の車は慌てて急ハンドルを切り主人公のすぐ横を走りぬけ、バランスを崩しスリップしながらコンテナに激突した。
 車の中から2つの影が飛び出し暗いほうへと逃げて行く。
 範夫と草薙警部がその後を追っていった。
 主人公は田所に叱責され、反省した後、すぐに範夫達を追ってコンテナの方へと向かった。
 犯人が逃げたところは大きなコンテナが山積みにされ、迷路を形成していた。
 パートナーと田所は別の方から入る事にし、主人公はそのままコンテナ郡の中へと入っていく。 
 奥に進もうとすると草薙警部が姿を現した。
 主人公は犯人の心当たりを聞くと、草薙警部は正治と桂子が犯人ではないかと答えた。
 犯人が第三者で畑山家の遺産が狙いだとすると、知江に渡った遺産は畑山家からすればはした金なので、知江よりも正治や桂子や範夫の方を狙うはずである。
 動機は断定できないが、おそらく少しでもお金を渡るのが許せなかったのではないかと草薙警部は述べた。
 ともかく、今は犯人を追うことが先決として、主人公は草薙警部と行動を共にする事にした。
 その時、辺りに銃声が響き渡った。
 主人公と草薙警部は外側から回りこんで銃声が鳴った方へと急いだ。
 銃声がしたのはコンテナが積み上げられた一角だった。
 その隅の方で範夫達が立ち尽くしていた。
 そして範夫達が向く方に……頭を撃ち抜かれた桂子の血まみれの死体があった!
 範夫の話によると、ここに駆けつけた時、正治と桂子が言い争っており、そして正治が銃を抜いて桂子を射殺し、そのまま逃走。
 いきなりの事で止める暇もなかったと言う。
 そこへ和子が知江に肩を貸して歩いてきた。
 草薙警部は「犯人が分かった訳だから後は警察が捜査する」と現場を着々と取り仕切っていく。
 主人公はどこか気に入らなかった。
 それに1つ気になる事がある。
 あの林道で知江が誘拐された時、犯人は3人いた。
 ここで殺された桂子、桂子を殺して逃げたという正治……1人足りない!
 つまり共犯がいる!
 それに、あの正治と桂子は性格は悪いけど犯罪に関しては素人にしか見えないので、プロを雇ったとしても主導権を奪われるのは目に見えている。
 もしかしたら正治と桂子は利用されていただけで、主犯は別にいる可能性がある!
 しかし草薙警部は、「もし自分が犯人だとしたら知江をトランクに押し込んでまで取引現場に来ない。面倒な事にならないよう殺しておく」と反論する。
 互いの持論をぶつけ合う主人公と草薙警部。
 その時、突然和子が口を挟んだ。

「どうしてあなたがその事を知っているの? 逃げた人をすぐに追いかけていったあなたが、どうして知江がトランクに閉じ込められていた事を知ってるんですか?」

 !! まさか!!
 草薙警部は大きく目を見開いて立ち尽くしていた。

47 :夜想曲(第3話 真相編):2010/09/30(木) 23:25:28 ID:2cxZTuiR0
 数日後…

 あれから主人公達は警察の事情聴取という事で警察に連れて行かれ、一晩中取調べを受けた。
 解放された時には、もう午後も遅くなっていた。
 草薙警部はあの後、駆けつけた警官達に逮捕された。
 事件の真相はまだはっきりしていない。
 おぼろげながらわかっている事は、自分達が知らない共犯者がいた。
 遺産はともかく、畑山が知江に本を残したのを知っていたのは畑山に近い人間だったはず。
 それを知っているという事は、その中に犯行グループに情報を与えた人間がいたのかもしれない。
 草薙警部はその情報を元に裏で糸を引いていたらしい。
 どうりで知江の家での逆探知が失敗したり、警察に見張られた港に犯人の車が入って来たりする訳だ。
 なぜ草薙警部がこんな事をしたのかは謎だ。
 
 主人公は電車に揺られながら知江の家に向かっていた。
 今日は知江と映画を見に行くのだ。
 ウキウキする主人公を乗せて、電車は快調に走り続けていた…。


1巻 「意外な人」  続

48 :夜想曲(第3話 対決編):2010/09/30(木) 23:29:33 ID:2cxZTuiR0
(5巻を見るとこのルートに行ける。林道にて、知江が覆面の3人組に連れ去られようとしているところの選択肢で「一番近くの男を何とかしようと思った」を選ぶ)
 主人公は勇気を出してナイフを構えている男に飛び掛って攻撃した。
 主人公の攻撃は男を捉え、男はうめき声を上げてよろめいた。
 続けて攻撃しようとするが、別の男に殴られ気を失ってしまう。
 
(知江の家に連絡するまで<誘拐編>と展開は同じなので省略)

 知江が何者かに誘拐されてしまった……。
 この事を知江の家に連絡して、訪問の約束を取り付けた。
 早速知江の家に向かおうとするが、パートナーと田所に怪我を理由に留守番を頼まれる。
 納得がいかない主人公だが、結局パートナーと田所が出て行くのを見送るしかなかった。

 2人が出かけて数時間後…
 そろそろ昼になりそうな時間になったところで電話がかかってきた。
 パートナー達からと思い電話に出ると、受話器の向こうから聞き覚えのない男の声がした。
 男は「お前にやられた傷がうずくよう」と言い出す。
 主人公はその言葉と声を聞いて思い出した。
 林道で知江を誘拐した男だ!
 男は興奮して声がうわずっているので、下手に刺激するのは得策ではないと判断し冷静に問いかけた。
 男は林道でやられた借りを返すと言い、要求を述べてきた。
「主人公1人で知江が持ってきた本を持って2時間以内に反橋駅の公衆トイレに行け。遅れたり警察に通報したりしたら知江を殺す」
 反橋駅はここから2時間以上もかかり、うまくいったとしてもギリギリの距離だ。
 しかし男は主人公の言い訳を全く聞かない。
 その前に本当に知江をさらった男なのかと聞くと、受話器の向こうから知江の声が聞こえてきた。
 男からの電話はここで切れた。
 知江をさらった犯人は想像以上に危険な男らしい。
 しかし、迷っている時間はない。
 主人公は犯人の言う通りにすることし、すぐに本を持って図書館を飛び出し反橋駅に向かった。

 2分前になんとか反橋駅の公衆トイレに辿り着くことができた。
 辺りを伺いながらトイレに入ろうとすると、清掃員の梅原寅吉に掃除中だと止められる。
 その時、あたりに電話の音が鳴り響いた。
 慌てて辺りを見回すと、手洗い場の下に紙袋があり、その中から電話の音が聞こえてくる。
 紙袋を取ろうとする梅原を、それは自分のものだと制止して紙袋を開ける。
 中には携帯電話が入っていた。
 携帯電話に出ると、あの男の声がした。
 男は「紙袋の中に赤い液体が入ったビンがある。それを頭からかぶれ」と要求した。
 紙袋を調べると確かに男の言った液体が入ったビンがあった。
 蓋を開けると、吐き気のする生臭いが漂う。
 吐き気を堪えながら、主人公は液体を頭からかぶった。
 主人公の体はたちまち血で染まったようになる。
 続いて男は「紙袋の中に紙で包まれた固まりを取って中に入っているものを出せ」と言った。
 言われるがまま紙袋にあった物体取り出し、包み紙を取り去ると……なんとそれは拳銃だった!
 銃身の短い回転式のリボルバーで、にぎりの所に紐がついている。
 その紐は途中でちぎられて中途半端に短くなっていた。
 男は「その電話をつないだままにして、拳銃を持って第一ビルの地下駐車場に10分以内に来い」と言った。

49 :夜想曲(第3話 対決編):2010/09/30(木) 23:36:33 ID:2cxZTuiR0
 男に第一ビルの場所を聞くが、男は答えず残り時間をカウントし始める。
 その時、赤い液体で血まみれのようになり拳銃を持っている主人公を見て梅原が悲鳴を上げる。
 梅原に第一ビルの場所を聞くと、梅原は怯えながら場所を教える。
 駅前を東の方に15分くらい歩いたとこにあるらしい。
 15分! 今すぐ出発しないと間に合わない!!
 主人公は街中を必死に走った。
 主人公の姿を見た道行く人々が悲鳴を上げて逃げ回る。
 このままでは警察に通報されてしまう。
 もし捕まってしまえば一貫の終わりだ。
 主人公は必死に走り続けた。
 
 何とか2分前に第一ビルの地下駐車場に辿り着くことができた。
 男は次に「南部川警察署に10分以内に行け」と言う。
 こんな格好で警察署なんかに行ったら即逮捕だ。
 しかし男は全く聞く耳持たない。
 すぐに出発しようとするが、警察署の場所を知らなかった。
 その時、グッドタイミングで買い物帰りの女性・中川美奈子が歩いてきた。
 美奈子に警察署の場所を聞こうとすると、主人公の姿を見た美奈子は悲鳴を上げる。
 怯える美奈子から何とか警察署の場所を聞き出し、主人公は慌ててその場から駆け出した。
 再び街中を通り抜け、警察署へと向かう。
 道行く人々が主人公の姿を見て騒ぎ始める。
 主人公は人々を押しのけて警察署へと向かった。
 
 そして10秒前に警察署にたどり着いた。
 だが次の瞬間、主人公は警官達に囲まれてしまう。
 警官達は、主人公を警官殺しの犯人と決め付け投降を促してきた。
 警官殺し? 一体どういうことなのだろうか!?
 警官達の後ろにパートナーと田所がおり、主人公を説得する。
 ニュースを見て飛んできたらしい。
 事情を説明しようとする主人公だが、男が携帯電話から「事情を話すと知江を殺す」と脅してきた。
 続いて男は「その拳銃には1発だけ弾が入っている。そいつで10秒以内にその場にいる誰かを撃て」と言った。
 無茶な指示だが、男は構わず残り時間をカウントする。
 残り5秒!
 しかしやはり人を撃つことはできない。
 からかいながら残り時間をカウントする男の声がする。
 追いつめられた主人公は、いきなりある事をひらめいた。
 そして拳銃を構えて……自分の左手を撃ち抜いた!
 激痛に襲われ左手が見る見るうちに血で染まっていく。
 警官達は主人公の突然の行動に呆気に取られていた。
 撃つには撃ったが男は不服そうだった。
 主人公は「もう十分復讐したんだし、後は本を渡して終わりにしよう」と説得した。
 男はそれに承諾し、「近くのハナマル公園まで本を持って来い。警官を1人でも連れてきたらアウトだ」と言った。
 ハナマル公園はすぐ近くだ。
 その前に包囲している警官達を振り切る必要がある。
 主人公は自分に銃を突きつけ、「近づいたら自殺する」と脅した。
 オロオロする警官達からゆっくりと遠ざかり、一気に走り出した。
 警官達が後を追い始める。

50 :夜想曲(第3話 対決編):2010/09/30(木) 23:42:47 ID:2cxZTuiR0
 とりあえず警官達を振り切ってハナマル公園にたどり着いた。
 男は最後の指令として「本を下水溝に落とせ」と言った。
 足元には金網で覆われた一角があり、そこから地下の下水溝へと通じているようだ。
 だがそこへパトカーのサイレンの音が飛び込んできて、程なく再び警官達に包囲されてしまう。
 主人公は男の要求を拒み、本を落とさなかった。
 男の急かす声が響くが、それでも本を落とさなかった。
 その前に知江の声を聞く事が先決だ。
 しかし男はしきりに本を要求する。
 知江の声を聞かせる方が脅迫としては有効のはずなのに、なぜ声を聞かせられないのか?
 すると男は痺れを切らし、「今から知江を殺す」と言い残して携帯電話を切った。
 主人公は焦りながら知江がいる場所を必死で考えた。
 その時、男はこれまで何度も知江を殺すと脅していた事を思い出した。
 つまり男は知江と一緒におり、知江は男のいた下水溝にいる可能性が高い。
 そうしている間にも警官達がじりじりと主人公に迫ってくる。
 主人公は携帯電話を使って助けを求める事にした。
 どこにかければいいのか?
 辺りを見渡すと、公園管理事務所の電話番号が書かれている看板が見えた。
 主人公は公園管理事務所に電話をかけ、下水溝に人が落ちたと偽って助けを求めた。
 すると地下にある下水溝を管理する機械室で火災が発生したという警報が鳴っていると言う。
 知江がそこにいる事を確信した主人公は携帯電話を切った。
 知江のいる場所は分かったが、そこに行くには警官達を振り切る必要がある。
 主人公はいきなり叫び、警官達がひるんだ隙に一気に建物の中に飛び込んだ。

 建物の中は真っ暗だった。
 内鍵をかけ、しばらく追ってこれないようにしてから奥へと足を進める。
 その時、火災報知器の警報音が聞こえてきた。
 警報音が鳴る方に行くと、機械室への扉を発見する。
 だが、扉の前に張られてある『危険! 火災時に二酸化炭素消火装置が作動します。中に入らない事』の注意書きが目に入り、身の毛がよだつのを感じた。
 急いで救出しないと二酸化炭素中毒で知江が死んでしまう!
 扉に駆け寄ろうとしたその時、1人の男が主人公の前に立ち塞がった。
 主人公が林道で殴った男・鮫島元次だ!
 鮫島は主人公の復讐するべく襲い掛かってきた。
 成す術なく主人公は鮫島の攻撃を受ける。
 ここで諦めたら知江が死んでしまう。
 その一心で、主人公は武器になるものを必死で探すも、それらしきものは見つからない。
 そんな必死な様子の主人公を鮫島は余裕の態度で見下ろしている。
 主人子は一か八かの捨て身の体当たりを仕掛けるが、あっさりとかわされ足払いをかけられる。
 足と取られて倒れる寸前に、咄嗟に体を支えようと腕を突き出した。
 そして転ぶまいとして突き出した手が、鮫島の目に突き刺さった。
 鮫島は悲鳴をあげ、目を押さえて転がり回り、やがてショックで気を失った。
 主人公はふらつく足で機械室の扉を開けた。

51 :夜想曲(第3話 対決編):2010/09/30(木) 23:45:15 ID:2cxZTuiR0
 4日後……
 病院を退院した主人公は図書館に戻る事ができた。
 あの後、警察からたっぷりとしぼられるはめになった。
 警察に連絡せず走り回っていたから当然の事だ。
 無事釈放されたのは田所の計らいがあったからだ。
 鮫島は警察に逮捕され、知江は無事救出する事ができた。
 機械室に入った時、かなり危険な状態で発見されたが、今は順調に回復しているという。
 
 主人公はパートナーと田所と一連の事件を話し合う。

 鮫島は知江の誘拐が本来の目的だったが、林道で主人公にやられた事に腹を立て、復讐心であんな事をしたのだ。
 鮫島以外の残りの2人ははっきりとは不明だが、未確認の情報によると畑山家につながった警官がそのうちの1人ではないかと言われており、その警官は仲間割れの末に殺されたという。
 南部警察官で聞いた警官殺しとはこれの事だった。

 何はともあれ鮫島が逮捕された事で事件の真相は徐々に明らかになっていくだろう。
 そうなれば知江が狙われる事もなくなる。

 いつの間にか、日がかなり傾いている。
 夏の終わりは少しずつ近づいていた……。
  

13巻 「安堵」  続

52 :夜想曲(第3話 余談):2010/09/30(木) 23:48:41 ID:2cxZTuiR0
<野々宮図書館の噂>
 奥音里の中華料理店『満腹軒』の店長・珍満足から聞ける。
 内容は
  ・終戦から4、5年ほど経った頃、野々宮図書館で火事があった。
  ・満足の父・満腹は火事のあった日、怪しげな男を駅で見かけた。
  ・その男は1冊の古ぼけた本を大事そうに抱えて、図書館のある山の方に歩いていった。
  ・その男がどうなったのかはわからない。
 なお珍満腹は外伝や『月の光』にも登場する。

<原作>
 原作の第5話(最終話)に当たる話。


その後、ストーリーは<完結編><外伝>へと続きます。
あと<質問編><あとがき><○○○編>もありますが、どれもストーリーとは関係ないので割愛します。

53 :夜想曲:2010/09/30(木) 23:49:50 ID:2cxZTuiR0
これで『夜想曲』の補完を終わります。
長々と付き合っていただき、ありがとうございました。






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