バテン・カイトスII 始まりの翼と神々の嗣子

 

・要約版:要約スレpart2-807

 

・詳細版:part30-499~506、psrt31-13~48・50


807 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/18(月) 06:50:46 ID:LBlUB3De0
バテン・カイトスII 始まりの翼と神々の嗣子

舞台はバテンカイトス1の20年前。主人公のサギは15才の男の子。
そしてプレイヤーは彼に憑依する精霊。精霊とは主人公を見守って導く存在。
サギはロボットのギロと一緒に、帝国のエリート部隊「暗黒部隊」に入隊した。
真夜中にミッションを受けるけど皇帝暗殺の濡れ衣を着せられて逃げ出す
途中で異形の巨大な怪物に出会う。怪物に向き合うと、サギは頭が痛くなる。
気が付くとタイムスリップして1000年前の世界に。
1000年前の世界でサギは「マーノ」という名前で呼ばれる。
マーノっていうのはレジスタンスを結成している5人兄弟の末っ子らしい。
帰る方法が見つからないから、マーノとして5兄弟の一員として行動する。
そのうち突然頭痛がして元の世界に帰ってきた。
帝国から逃げ出す途中でミリィという16歳くらいの女の子がパーティに加入する
それから三人でサギの故郷に脱出
そこでまた異形の怪物に出会ってタイムスリップ。マーノの行動を追体験して、そしてまた戻る。
落ち着いた頃だろうと思ってサギたちは帝国に戻る。
皇帝候補のネロっつーオッサンとバアルハイトっつーオッサンが演説してる。
ネロはサギと同じで精霊が憑いているらしい。サギはネロの部下として働くことになる。
世界各地の大陸を回りながらお使いイベントをこなす。行く先々で異形の怪物と会って、
そのたびにタイムスリップする。
1000年前の世界では、ワイズマンという独裁者が支配しようと企んでいた。
5兄弟は最終手段の、闇の力を手に入れて、ワイズマンに最終決戦を挑んだ。
だが5兄弟は負けてしまう。闇の力が暴走して、5兄弟は邪神になってしまう。
賢者たちがギロそっくりのロボットで兄弟たちを殺して、エンド・マグナスというカードに封じ込められる。
もちろん、マーノも。賢者たちは「マーノ=シュ=○○」と邪神としてのフルネームを読み上げる。
マーノっつーのは通り名で、○○っつーのが本名で、ゲーム開始時に入力したプレイヤー(精霊)の名前。
マーノは「兄弟神シュ(手)」となった。
プレイヤーは実は精霊じゃなくて、兄弟神シュだった。そして、ギロはマーノを殺したロボットだった。
異形の怪物はすべて元人間だった。15年前、皇帝が、人口的に精霊を憑依させるという計画があった。
それはうまくいかなかったので、邪神のかけらを人間に埋め込んでみた。
でもうまくいかない。怪物になっちゃったりする。唯一の成功例がサギだった。
プレイヤーはサギととことん話し合い、こころを合わせて新たなパワーを得る事に成功する。
バアルハイトは世界をマキナ化(機械化)しようと企んでいたけど、パワーアップしたサギが計画を潰していく。
ミリィは実は、バアルハイトの娘で、サギの様子を逐一バアルハイトに報告していた。
サギに邪神が憑依しているようなら殺すようにとも言われていた。謝るミリィを許し、
あろうことか好きだと告白するサギ。
プレイヤーの意志でサギたちは1000年前にタイムスリップしてワイズマンを倒す(真エンドを見るのに必要)
バアルハイトはついにラストダンジョンである巨大な空中要塞を打ち上げ、全世界の人に従うよう命令する。
空中要塞に乗り込んでバアルハイトに会う。実はバアルハイトには精霊が憑いていた。
サギは一騎打ちでバアルハイトに勝つ。バアルハイトが死にそうになっているところに、ネロが登場。
ネロの人が良さそうな態度は実は全て演技。精霊が憑いているのも実は嘘だった。
騙されたと知ってショックを受けるサギ。悪者っぽいバアルハイトの方が実は人々の事を考えていた。
バアルハイトは死んだ。逃げたネロを追いかけて倒す。
ワイズマンを倒していると、ここでいきなりワイズマンが現れてネロを取り込み、ネロ=ワイズマンになる。
プレイヤーとサギの元にお兄さんお姉さんが現れて、励ましてくれるイベントがある。
ネロ=ワイズマンを倒すと空中要塞が崩壊し始めるので急いで逃げる。途中でサギがトラップにかかってしまう。
ミリィは自分が犠牲になってサギを助けようとするけど、それを止めて、ギロが犠牲になってサギは助かった。
ギロの体はばらばらになったけど、残った頭部だけを持って脱出することに成功する。
そしてサギとミリィはミラに行って平和に暮らす。
バテンカイトス1に続く。

サギとミリィがミローディアの父親と母親。20年後には出てこない。二人は病死したらしい。
1のミローディアの家に両親の肖像画がかかっててそれも泣かせる。
これでわけがわからなかったら、何でも質問してくれ。


499 :バテン・カイトスII 始まりの翼と神々の嗣子:2007/05/24(木) 20:59:57 ID:Bj5EdsKM0


1.赤い服の少年と共に

キミは夢を見ている。なぜ夢かというと、現実感が無いから。
ここは、戦場?いろいろなものが入り乱れている。
天使のように背中に翼をつけた人、仮面をつけた人、異形の怪物。
そしてその中心に、刀を振りまわす人がいる。そいつの目が爛々と光る。
「・・・・・・っ!!」
押し殺したような叫び声が聞こえてきて、キミは夢から覚める。ゆっくりと目を開く。
キミは薄暗い部屋を見下ろしている。
今、そこのベッドから赤い服を着た中学生くらいの少年が身を起こした。
あれが主人公のサギだ。
「また・・・同じ夢。なんだろ・・・不思議な夢」
サギはこちらに顔を向け、キミに向かって話しかけてきた。
「キミも、見た?」
”見たよ”とキミは答えた。

バテン・カイトスIIの世界へようこそ。
キミは前作のバテン・カイトスはプレイしたか?それともまだ?
・・・さっきから”キミ”ってうるせーな、誰だよ?と思ったかも知れない。
”キミ”とは他でもない、この文章を読んでいるあなた自身、ゲームをプレイしているあなた自身だ。
あなた自身だと思えなくても、そのような人物がいると思って読んでほしい。
キミは前作バテン・カイトスにおいて、精霊としてゲームの世界に登場し、
そしてまた、このバテン・カイトスIIの世界にやってきた。
キミは「精霊憑き」と呼ばれる主人公に憑いている。
キミも主人公に憑依しているという設定でゲームに参加するのだ。(本当の意味のRPGである)
キミの喜怒哀楽さえもゲームの一部である。
精霊とはゲームの世界を見守り、「精霊憑き」を導く存在。
導くと言っても、「精霊憑き」が問い掛けてきた時だけ答えることが出来るだけだが。
精霊の声は「精霊憑き」にしか聞こえず、そして、ゲームの中の人は全てこちらを見る事は出来ない。
それでは話を戻そう。

-暗黒部隊本部-
キミが見下ろしている部屋は、帝国の暗黒部隊本部の個室だ。
まだ起きる時間ではないのでもう一眠りしようと思っているところへ、とつぜん召集がかかる。
「こんな夜中に召集なんてね。給料分は働けってことか」
サギは背中の翼を広げる。表は青っぽい色、裏は白だ。翼の力で宙返りしながらベッドから降りる。
「よし、こころの翼の調子もいい。行こう!」
この世界の人間は「こころの翼」を持っている。こころの力を実体化したようなもので、自由に出し入れできる。
ただし翼といっても空を飛びまわれるほどではなく、ジャンプ力が増したり早く走ったりできる程度だ。
作戦室に入る。皆お仕着せの黒っぽい軍服を着ていて、既に整列している。
「遅いぞ、新入り!さっさと位置につけ!」
隊長に怒られた。急いで整列する。いくら主人公とはいえ赤の上下を着ていたら目立ちすぎだろ、とキミは思う。
「今回の任務は暗殺。ターゲットは、帝国皇帝オーガンだ。
 ・・・すべての部隊員に、マキナウィルの使用を許可する。ロッカーを解除しろ」
サギが呟く。
「さすが、暗黒部隊。汚い仕事をさせる。皇帝の腹心であるバアルハイト、その私兵である暗黒部隊を使って主人を暗殺。
 ・・・でも、僕たちついてるよ。皇帝暗殺がこんな形で実現するなんてさ。おまけにお金も稼げるしね。
 このチャンス、絶対モノにする」
”それでいいの?”とキミは聞いてみる。
「もちろんさ。迷う必要はないよ」
廊下を歩いていると、長い銀髪の怖そうなお姉さんに呼び止められた。暗黒部隊エリートのヴァララだ。
「ちょいと、口には気をつけな、精霊憑きのボクちゃん。さっき、汚い仕事とか言ってただろう?
 長生きしたかったら、目立たないようにすることだね」
サギは精霊憑きだからいろいろと目を付けられてるらしい。
ロッカー室に入る。壁にかけられた透明のケースに、それぞれマキナウィルと呼ばれる自動人形が入っている。
サギはその中でも。他のマキナウィルとは雰囲気の違う人形の入ったケースを開ける。
出てきた人形は身を伸ばし、屈伸運動を始める。サギよりだいぶ背が高い。黒っぽい金属質の細身のボディに、
紫色の布で出来た忍者のような覆面をしている。覆面の奥で目が青く輝く。
キミはなぜか恐怖を感じる。サギが人形に言う。
「窮屈だったろ、ギロ」
『窮屈?そんな感覚、わしには解らん。それより、ようやく出番か?』
「うん。でももう少し我慢してよ。マキナウィルってのは、普通、喋ったりしないんだ」
ギロと呼ばれた人形は、不思議な声で話す。男の人と女の人が声を合わせて同時に喋っているみたいだ。
「さあ、僕たちの初陣だ。準備はいいかい?」
サギがキミに訊ねる。キミは”ばっちり!”と答える。
「それなら安心だよ。わかってると思うけど、僕たちの息を合わせなきゃね。
 僕とキミの息が合っていれば、戦闘でピンチのときにいいことが起きて、助けられたりするんだ」
そろそろ出発しようとロッカー室を出て出口へ向かう途中の廊下で、先輩部隊員たちに呼び止められる。
「お前、さっき汚い仕事とかいってたよな?」
「こんなやつが精霊憑きだなんてなぁ?」などと言いがかりをつけられ、戦闘になってしまう。
サギは戦闘用の刀を取り出し、こころの翼を広げ、構える。チビのくせに、長い刀を使うんだな。
そのせいか、少々間抜けな構え方だ。間抜けだなぁ。自分なら、もっと――。
ギロは人形だからもちろん翼は無い。戦闘用の爪を構える。
爪の先から魔法が弾丸のように飛び出す仕組みになっている。
戦闘はギロの活躍でなんとか勝てた。本部を出て、集合場所へ向かう。

皇帝の館の裏口に部隊員が集合している。隊長が指示を出す。
「ヴァララは表からの陽動だ。サギ、貴様は裏口から侵入しろ。
 世界の命運を左右するという精霊憑きの力、期待してるぞ」
『精霊か。伝説にある半分でも、”あの人”に力があればな』
ギロに言われた一言が、胸に突き刺さる。自分が気にしていることを・・・。
「その話はするなって」
サギが気をつかってくれた。
裏口から進入し、兵士たちを走って振り切り、皇帝の執務室の扉までやってきた。扉の向こうで話し声が聞こえる。
「ごきげんよう、皇帝閣下。ご無沙汰しておりました」
「貴様、そうか、外の騒ぎ、貴様の仕業だな」
皇帝の他に誰かいるようだが、有無を言わせず突入する。
皇帝と話していたのは三白眼の男だ。サギを見て言う。
「精霊憑きの少年か。思ったより早かったな。・・・皇帝閣下、マルペルシュロのリスト、頂いていきますよ」
男は部屋を出ていこうとするが追わないことにする。皇帝の方が優先だ。皇帝を取り囲むが・・・。
「・・・死んでる。さっきのあの人の仕業だ!」
急いであの男を追おうとするが、隊長たちが部屋に入ってきて、銃を構える。
「そこまでだ!貴様ら、皇帝閣下の暗殺とは、暗黒部隊に泥を塗ってくれたな。即刻射殺する!」
ハメられた!?とにかく、部屋の横にある扉から逃げ出すサギたち。
広間を抜け、狭い廊下を走る。と、横の壁が突然破壊された。
10メートルはあろうかと思われる黒い怪物がそこにいた。
人型ではあるが、手足が長すぎるし、頭には角も生えていたりと異様なものを感じる。
怪物はサギたちに襲い掛かってきた。なんとか応戦しようとするサギとギロ。だが・・・。
「つ、強い・・・ぜんぜん効いてないよ」
もう、八方塞りだ。と、突然、ギロの全身が青白く輝きだす。
ギロはもの凄い勢いで怪物に飛びかかり、次々に攻撃を繰り出す。ついに怪物は倒れた。
ギロは怪物に止めを刺そうと腕を振り上げる。
「もういい、ギロ!」サギは止めたが、ギロは容赦なく最後の一撃を振り下ろす。吼える怪物。
「ぐ、うあああああああ!!」
サギは頭を抱えて苦しみだす。目の前が真っ暗になる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「おい、大丈夫か?」
「誰かが呼んでる・・・僕を・・・?」
気がつくと、辺りの景色は一変していた。見慣れない景色だ。土の上に寝ている。サギは身を起こす。
「ここは?僕は、いったい・・・?」
「いきなり倒れたから心配したぞ」
利発そうな金髪の男と、それとは対照的な筋肉バカっぽい赤毛の男がサギを心配そうに見ている。
「あの、ここは?あなたたち、誰です?」
「はは、こいつめ、いつからこんな面白いことを言うようになったんだ?」
「倒れたとき、頭を打ったのかも」
「い、いや、頭は大丈夫です。でも、本当にわからないんです」
サギはおそるおそる聞いてみたが、男たちにはぐらかされた。金髪の男はティスタ、赤毛はペッツというらしい。
”サギ、大丈夫?”キミは声をかける。
「ああ、キミ、いたんだね、よかった。僕は大丈夫。キミは、なんともない?」
”ええ”
「ひとりでぶつぶつ言っちゃってよぉ、大丈夫か?歩けるか?昔みたいにおぶってやろうか?」
ペッツにそう提案されるが固辞するサギ。
「早くラサラスへ行こう。村が消されてしまう。ピエーデとポルコも待っている」
「マーノ!こっちだぞ、早く来い!」
もう大丈夫だと思ったのか、ティスタとペッツは先に行ってしまう。
サギをマーノという人と間違っているらしい。しかしこんな見知らぬ土地に放り出されてはどうしようもない。
サギとキミは男たちについていくことにした。そういえば、ギロがいない。

-砂の谷アルバリ-
いたるところに流れ落ちる砂鉄と、あちこちにある磁場。磁場を操り、砂鉄の流れを変えながら進む。
谷を抜けた見晴らしのいい所に、色っぽいボインなお姉さんと恰幅のいい(要するにデブ)少年が待っていた。
お姉さんはピエーデ、少年はポルコと呼ばれている。
「遅かったわ。もう消されてる・・・」
ピエーデが口惜しそうに言う。とにかく、村へ向かうことにした。

-赤苔の村ラサラス-
白い火の玉のようなものが無数に浮遊していて幻想的なところだ。
赤苔のむした岩に横穴を掘って人々が暮らしている・・・暮らしていた、というべきか。
生き残った人がいないか探してみようというティスタたち4人。サギも手伝うことに。
村の人々は、影のような、幽霊のような姿になっていた。鏡には映らず、触ろうとしてもすり抜ける。
これが消されるということなのか?皆、生前と同じ生活をしていて、消されたことに気付いていないようだ。
「さっきから、これ、どういうことなんだ?光からこころが伝わってくる・・・」
サギがつぶやく。そして突然、頭痛に襲われる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
気がつくと、皇帝の館の廊下に戻っていた。怪物の遺体が横たわっている。
「どうした、サギ?しばしぼーっとしておったようだが」
ギロがいた。怪物はギロが倒したらしい。
「あいつの殺し方が次々と頭の中に浮かんできてな」
ともかく、皇帝暗殺の容疑がかかっているのだ。今は逃げなくては。
残された怪物の遺体のところにヴァララがやってくる。
「もしかして、これが遺児ってやつかい?フフフ、あたしにも運が回ってきたよ」
ヴァララは部下に遺体の回収を命じる。
廊下を走るサギとギロ。と、部屋のひとつから二人を呼び止める声がする。二人はその部屋に入る。
呼んだのは派手な格好をした、なかなかいい男なおじさんだ。この部屋は機関室。
「私はゲルドブレイム。君と同じ精霊憑きである軍務官ネロ様に仕えている」
キミが前作を知っているならひどく驚いただろう。あの、悪役で出てきたゲルドブレイムが、
今こんなふうに出てくるなんて。外見もだいぶ違う。そう、今は、あれから、前作から20年前なのだ。
「僕が精霊憑きだって知ってるんですか?」
「少なくとも、街ではそういう噂になっているね。心配するな。私は味方だ。
 ・・・そこからミンタカの地下道に行ける。しばらくそこに隠れているといい。
 ほとぼりが冷めたらネロ様のところにおいで。歓迎するよ」
二人はゲルドブレイムに礼を言い、ミンタカの地下道へ向かう。

-帝都ミンタカ-
地下道を抜けてミンタカへ出る。もう夜が明けている。
街のいたるところに真鍮製のパイプやらバルブやらが張りめぐらされており、金管楽器のようだ。
真鍮製のパイプがときおりキラキラ輝き、とても豪華に見える。
街は今、厳戒態勢がひかれていて、いたるところ通行止めだ。
サギは、もうすぐハッサレー行きの定期便の時間だから、港まで行けばなんとかなると言う。
ハッサレーはサギの故郷だ。
サギとギロは、帝国の兵士を振り切り、あるいは戦い、屋根の上を走ったりしながら港を目指す。
途中で、スキードとカミラというふたりの子供が熱心に勉強している家に入ったりもする。
もうすぐ港に着くというところで、サギを呼び止める声がする。
13歳にして暗黒部隊のエリートになった、ジャコモという少年が部下を引きつれやってきた。
黒い帽子に黒い服、それに長い鎌のような武器を持ち、その姿はさながら死神のようだ。
「逃がさないぞ、サギ!」
ジャコモは精霊憑きということでちやほやされているサギを一方的にライバル視している。
ジャコモと戦闘になるが、彼は強く、サギたちは負けそうになる。
そのとき、白い蝶のような翼が目に飛び込んできた。上空から飛んできたそれは地面に着地すると、
あざやかな身のこなし(連続バック転)でジャコモに近づき、一撃を加えた。
両手にそれぞれ、トゲが付いた棍棒を持っている。
栗色の髪を束ね、ヒラヒラが沢山付いた高そうな服を着た、お転婆お嬢様という感じの少女が現れた。
サギより2、3歳くらい年上かな。サギより身長が高い。
ともかく三人で力を合わせてジャコモを退け、港に着く。
少女は自己紹介する。
「わたしはミリィ。ミリィアルデよ」
ハッサレーに行くのだとサギが言うと、それなら一緒に行きましょうと言うミリィ。
なし崩し的に、三人はハッサレー行き定期便に乗り込む。
この世界の船は魚の形をしているが、泳ぐのは空だ。
大陸や島が、浮島となって空中に点在している。
大昔にはちゃんと海の上に大陸や島が浮いていたらしいが、そんなのはもうおとぎ話の中のことだ。
魚型の船がフワフワ飛んで港を離れていく、そんな光景をキミは見ている。
ふと、その同じ光景を見ている人がいることに気付く。その人にキミは意識を向けてみる。
豪華で大きい窓のある部屋。その窓から定期便を見ている男。
男がこちらを向く。ロン毛の怖そうなおじさん、バアルハイトだ。
「シャナト様がお見えになりました」
見覚えある三白眼の男が入ってくる。何故か鞠つきをしている少女を連れている。
シャナトはバアルハイトに、例のリストがどうのと報告した後、少女を連れて部屋を出て行った。
残されたバアルハイトはひとり、つぶやく。
「精霊憑きか。厄介なものに憑かれたものだな」
 
2.近くて遠い故郷 -産土の里ハッサレー-

キミは定期便に乗っている三人に意識を戻す。
「空を飛ぶってこういう感覚なのね。わたし、大陸から出たことないの」
はしゃいでいるミリィ。ギロは彼女が気に入らないらしく、帰れと言う。
サギは一緒に来てもらってもいいじゃないと言う。意見を求められたキミは、サギに同意する。
「はい、決まり」ミリィに勝手に仕切られた。
「ポンコツ人形」『意地悪小娘』と互いにいがみ合うミリィとギロ。
そんな二人を「まぁまぁ」となだめるサギ。
ハッサレーが見えてきた。浮島全体が茨に覆われていて、無数の青い花が咲いている。
港に着き、ヌサカンへと向かう。

-茨のヌサカン-
ヌサカンは茨の森だ。
『ヌサカンか。わしはここは好かぬ』ギロはなんだかイヤそうに歩く。
一緒についていくことになったミリィに、改めてギロを紹介するサギ。
そしてキミの紹介もする。
「そしてもう一人、僕のこころのなかに精霊がいるんだよ」
”よろしくね”とキミは言う。
「よろしくねって言ってるよ」キミの言葉をミリィに伝えるサギ。
「そんな話し方をするのね。こちらこそよろしく」
「信じてくれてありがとう、ミリィ」
ミリィは自分の身の上を話す。ミリィは帝国の金持ちの一人娘で、家出してきたとのこと。
しばらく茨の森の中を歩くと、開けた場所に出た。
「子供のころ、ここでギロを掘り出したんだ」
サギはうれしそうに話す。ギロは、サギに会うまでのことは何も覚えていないが、辛い気持ちになると言う。
キミもなぜか、その場所に不快なものを感じた。

-久遠の村シェラタン-
シェラタンに着いた三人。
シェラタンは古い石造りの村だ。やはり茨が建物を覆っている。
子供が泣いている。赤いバンダナの女性が子供を追いかけてくる。
「ねぇ、ジーナの翼見せて!そうしたら泣き止むから」
ジーナと呼ばれた女性は青白く輝く美しい翼を出してみせる。
三人はもちろん、村中の人もその美しさにしばし見とれている。
「あれが僕の母さんだよ。母さんの翼は世界一だ」サギが誇らしげに言う。
孤児院を開いているというジーナのもとへ向かう。
孤児院の前で親子の感動の再会。ジーナに抱きつくサギ。まだまだおこちゃまだねとキミは思う。
サギはなぜ暗黒部隊なんかに入って、皇帝オーガンを殺そうとしてたのか?
それはみんなの仇を討つためだ。
有名なハッサレーの強制徴集、そのせいで孤児となった子供たちがたくさんいる。
そして、出稼ぎのためでもある。孤児院の財政は苦しい。ジーナに稼いだお金を渡すサギ。
次の日の朝。孤児院の二段ベッドでサギは寝ている。ジーナの声が聞こえる。
「サギ、起きなさい。お友達が待っていますよ」
「・・・。あと30数えたら起きるよ・・・」そんなことを言いつつ、やっと起き上がるサギ。
「ふふ。甘えん坊なのね」ミリィに笑われた。
それから、サギとギロはミリィに村を案内して回る。
時計台のところまで三人はやってきた。5階建ての建物ぐらいの高さがある塔だ。やはり茨が覆っている。
古くてぼろっぼろねとミリィは言う。ここは茨の時計台と呼ばれていて、一説によると神の時代からここにあるそうだ。
「子供の頃はよくのぼってたな。ここにいるとなぜか落ち着くんだ」サギが懐かしそうに言う。
『そう、サギが泣くときはいつものぼっておったなあ』
ギロがからかうように言う。泣いてなんかないよと慌てて否定するサギ。
そして数日間、サギたちは孤児院に寝泊りし、のんびりと過ごす。
ある夜、皆が寝静まった頃、キミは外で話し声がしているのに気がつく。キミは外に視線を移す。
姿は見えないがミリィの声だ。なんだか通信機か何かで誰かと話してるようだ。
「うん。ハッサレーのシェラタンという村。わかってる。・・・でも、本当にサギが?」
そこへサギが起きてきた。サギはキミを見上げる。
「ねぇ、キミ、これからどうしよう?
 僕は、ギロと、出来ればミリィとも、ずっと一緒にいたい。みんなで孤児院を手伝うのも悪くないかもね」
ミリィがそ知らぬ顔でサギの方へやってくる。
「なんだか眠れなくて」などとヘタな嘘をつくがサギは気付いていない。
次の朝、孤児院の子供たちが大騒ぎでやってくる。
湖の方へ行ってみたら、デッカイ怪物が現れたとのこと。
そう言えば最近、湖へ行った人が行方不明になるという怪事件が頻発していたっけ。
それと関連がありそうなので三人は湖へ向かう。

-遺跡のボテン湖-
湖は遺跡になっていて、ややこしい仕掛けが施されているがそれを解き、ついに再奥部へ到達。
そこへ巨大な怪物が現れる。そう、皇帝の館で見たのと似たような怪物。
三人はなんとか倒そうと頑張るが、やはり怪物のほうが圧倒的に強い。
そしてまたギロが青白く光りながら暴走し、怪物を倒す。
『わしは、あやつを倒すために生まれてきたのかもしれぬな・・・』
とにかく、行方不明だった人は、帝国から来たという謎の男以外、全員助かった。
三人はシェラタンへ帰る。

シェラタンはヴァララが率いる暗黒部隊に制圧されていた。
「目立たないようにって言ったのに・・・目立ちすぎたんだよ、精霊憑きのボクちゃん!」
マキナアルマという4、5メートルほどのロボットに乗っているヴァララ。
マキナアルマに戦いを挑むも、蹴散らされてしまう。
と、そのとき、ヴァララの前に、湖で倒した怪物が現れた。
「マルペルシュロの遺児がこんな所に!」
ヴァララはマキナアルマのビームを発射し、怪物を倒そうとする。
当たり損ねたビームが大陸の一部を削り取るのをキミは見る。凄まじいパワーだ。
「うあああああっ」
またあのときのように頭痛を催すサギ。そして・・・。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
サギたち三人はラサラスにいた。
「生き残った人はいなかったね」
「とにかくナオスへ戻ろう。・・・マーノ、遅れるなよ」
ティスタたちは先に行ってしまう。
目の前にミリィやギロがいるのに見えていないようだ。そして相変わらず、サギのことをマーノと呼ぶ。
どうやらこれは三人で共通の夢を見ているようだ。そうとしか考えられない。
ともかく4人の後を追う。

-砂喰いの巣-
砂喰いという巨大なイモ虫が棲んでいる谷だ。
こころの翼を使い、着地の衝撃を弱めながら、下へ下へと飛び降りていく。
砂喰いを眠らせたりしながら進んでいくが、もう少しで出られるというところで、砂喰いに襲われるティスタたち。
ティスタたちは魔法が得意らしい。砂喰いに魔法を浴びせかける。
「すごい威力・・・魔法学校でも、こんなすごい魔法があるなんて教わらなかったわ」
ミリィが感心した様子で言う。だが、砂喰いには効いていない。
「わたしたちの魔法はあいつには効かないわ!」
ピエーデが絶望的に言う。そこでサギたち三人が砂喰いに挑む。
サギの刀もミリィの技もギロの魔法もちゃんと効いているようだ。ついに砂喰いは倒れる。
サギは「砂喰い殺しのマーノ」とか言われて4人から賞賛の言葉を浴びせられる。
4人と、そしてサギと勘違いしているマーノは兄弟らしいことが話し言葉から推理される。
上から、長男のティスタ、次男のペッツ、長女のピエーデ、三男のポルコ、そして末っ子のマーノ。
夢とはいえ、兄弟か・・・そんなことを思っていると、また頭が痛くなる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
シェラタンに戻ったサギたち。怪物がどんどん蒸発するように消えていく。
「ちっ、力を使い切ったか」
ヴァララたちは撤退した。
三人とキミとの相談の結果、もう一度帝国へ行こうと決める。
サギは目を付けられてはいるが、今帝国は皇帝の葬儀で混乱しているのでチャンスだ。
ミリィはもう一人の精霊憑き、軍務官のネロと会ってみようと言う。
港に見送りに来てくれている村の人々。ジーナはミリィを密かに呼び出して言う。
「あなた、何か隠していること、無い?」
ビックリするミリィ。
「そんなことはどうでもいいわ。あの子、友達がいないの。ギロと、精霊の"あの人"ぐらいしかいないの。
だから、あなたのような友達が出来てとっても嬉しいのよ。サギをよろしくね」
自分がサギの友達?っていうか、ジーナにまで自分の存在が知られているとは思わなかった・・・とキミは思う。
定期便に乗り込み、帝国アルファルドへ向かう。
 
3.もう一人の精霊憑き -帝国アルファルド-

混乱に乗じて、ネロの屋敷があるというミンタカの郊外へやってきたサギたち。
亡き皇帝の葬列が大通りを過ぎる。だがこんなときでもなんだか浮かれたような市民たち。
「皇帝が亡くなったってことは、新しい皇帝が生まれるってことでしょ。帝国の人って新しいモノ好きだから」
とミリィが言う。
しばらくして、次期皇帝候補の演説が始まるというのでサギたちは広場へ向かう。
広場に面した、高い所にあるバルコニーに皇帝候補たちが立っている。
まずはバアルハイトの演説だ。バアルハイトはマキナ化を推し進めること、
そしてこころの翼に頼ることを止め、代わりに飛翔器を配布することを訴える。
「マキナ化って?」
「マキナって機械のことでしょ。つまり、機械化するってことね」
ミリィは解説してくれた。
次は軍務官ネロの演説。ネロはひげを生やした、人が良さそうなおじさんだ。
ネロは、最近、世界各地で異形の怪物が猛威を振るっているということを話す。そして、その驚異を取り除くと約束する。
「私と共にあるこの精霊にかけて!!」そんな言葉で演説は終わった。
ネロを指し、サギが聞く。
「あの人も精霊憑きなんだって。キミは何か感じた?」
キミが”わからない”と答えると、サギは少し残念なようすを見せる。
そのとき、とつぜん爆発音がして、広場に止めてあった自動車みたいなものが爆発、炎上する。
最近頻発しているという無差別テロだ。広場はパニックに襲われ、逃げる人々。
サギたちは怪我人を助けるべく奔走する。どうやらたいした被害はなさそうだ。
救助活動が済んだ後、いよいよネロの屋敷に向かう。
ゲルドブレイムに案内され、ネロ屋敷の広間を通り抜け、執務室へと向かう。
途中に、他とは違う装飾の扉があった。その前で兵士が警備している。なんだか気になった。
執務室に入る。
「私はネロ。軍務官を務めるものだ。・・・まぁ、そう固くならないでくれ。同じ精霊憑き同士だ」
ネロがそう言うのに緊張を解かないサギ。ミリィとギロが自己紹介する。そしてサギはキミをネロに紹介する。
ネロはよろしく頼む、とキミに言う。
「皇帝の館での一件、あれはバアルハイトの仕業だ。彼は、こころの翼や精霊というものを嫌っていて、
 根絶やしにしようとしている。皇帝を暗殺し、罪を精霊憑きに着せて一度に片付ける・・・彼のやりそうなことだ」
「・・・・・・」
「私と取り引きをしないか?私ならサギの容疑を晴らすことができる。シェラタンの孤児院への援助もする」
「代償は何ですか?」
「バアルハイトの野望の阻止だ。彼は全ての大陸のマキナ化をたくらんでいる。やがては大陸間の戦争にも発展するだろう。
 それに、彼は、あの怪物、『影』の力も手に入れようとしている。そんなことになったら大変だ」
ネロはあの怪物のことを影と呼ぶ。
「野望阻止のために、他の国の協力も必要だ。各大陸の指導者を訪ね、協力をとりつけてほしい」
「こんな少年たちに大役を任せてよろしいのですか」と、ゲルドブレイムが口をはさむ。
ネロは立ち上がり、杖をつきながら数歩歩く。左足を引きずるようにしている。
「見てのとおり、私は動けないのだ。君たちに頼むしかない。それに、同じ精霊憑きなら信用できる。
 精霊憑きは選ばれた者しかなることが出来ない。我々は選ばれたのだ。サギ、共に世界を守ろう」
「・・・少し、考える時間をください」
サギたちはネロのもとを辞去した。ゲルドブレイムに客間に通される。
「考えがまとまるまでこの部屋を使うといい」
客間に残された三人。重い空気が漂う。サギはたまに、自分に読めない行動に走るなあとキミは思う。
「ねぇ、気分を変えない?・・・そうね、アザーがいいわ。あそこなら日帰りも出来るし」
ミリィがそう提案する。三人はアザーへ向かうことにする。

-ニハル砂漠-
ミンタカ郊外を出て南へ歩くと砂漠がある。アザーは砂漠を抜けた先だ。
おじさんとおばさんが売っている、アザー特産の火炎氷(かえんごおり)を細かくくだいた「輝く雪」を体にふりかけ、
暑さをしのぎながら街道を歩く。

-鉱山の村アザー-
アザーはとても活気のある村だ。坑道から次々と火炎氷が掘り出されてくる。
火炎氷は砂漠の熱でも溶けないと言われている氷で、マキナの冷却のために使われるため、大量にミンタカへ出荷されている。
村の入り口で三人は解散した。
ミリィは友達のアルマードという女性と話している。ギロは村の子供たちにじゃれつかれている。
サギはひと気のない所へ行き、キミに話し掛けてきた。
「ネロとの取り引き、本当はちっとも迷ってないんだ。いい条件だし、断る理由はなにもないよね。
 ただ、話が大きすぎて、すんなり返事ができなかったんだ。
 ・・・ねぇ、僕が動くことで、何かを変えられるのかな?」
”変えられるよ”
「・・・キミが協力してくれればね。世界を守る、か。僕がそんなことに関わるなんて、思わなかったな・・・」
「さっきから何をぶつぶつ言ってるんだ?」
男に声をかけられサギは驚く。男はバインと名乗った。最近、帝都からの火炎氷の取り立てが厳しい、
どれだけ働いても楽にならない、などということをしばらく話し、再会を約束する。
心は決まった。サギたちはネロの屋敷へと帰る。

ネロに取り引きに応じることを告げるサギ。早速ネロから指令が下る。
最近、テロが頻発している。その首謀者がアザーにいるという情報を入手した。
アザーに向かい、首謀者を探せとのこと。ネロはサギにマキナの通信機を渡す。折りたたみ式携帯電話のような形。

サギたちはまたアザーにやってきたが、調査中とあって前とは違う物々しい雰囲気に包まれている。
サギは、この件の担当官の、リュバンナという赤毛の男に、調査に関するアドバイスを聞く。
キミは「逆転裁判」というゲームを知ってるだろうか。ちょうどあんな感じで、サギは首謀者を追い詰める。
聞き込みをし、証拠を集め、突きつける――。
そして判明したテロの首謀者、それはバインだった。再会を約束したのに、こんな形で果たされるとは。
「サギ、お前とは分かり合えそうだったのに・・・」
坑道へ、そしてその奥の火炎洞窟へと逃げ込むバイン。三人もバインを追って火炎洞窟へとやってきた。
火炎洞窟は到るところにマグマが流れている灼熱の洞窟だ。
とうとう三人はバインを追い詰めた。バインの体が黒いオーラに包まれたかと思うと、怪物へ、影へと変貌した!
サギたちに襲い掛かってくる。戦いたくないが、止めを刺さぬ程度に弱らせる。
そのとき、通信機にネロから通信が入る。
「どうした、サギ?」
「首謀者が影に変貌しました・・・」
「サギ、影は危険だ」
「わかってます。でも、あれはバインさんなんですよ!」
ギロの体が青白く輝く。影を殺そうとしている。
「やめろ、ギロ!殺してはいけない気がする」
「おーっと、そいつはこっちの獲物だよ!」
マキナアルマに乗ったヴァララが登場する。ヴァララはマキナアルマのビームで影に止めを刺す。倒れる影。
「やめろ!やめてくれ!!うああああぁ!」
サギは突然、頭を抱えて苦しみだす。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「・・・続きだ」
そう、夢の続き。三人は木造の小さな部屋に居ることに気付く。
周りにはあの4兄弟と、知らない人も何人か居る。ティスタが声高に喋っている。
「クヤムはワイズマンを支持するつもりだ。このままではラサラスのようにみんなマグナスにされてしまう。
 ワイズマンと直接話をつけるしかない」
ワイズマンはマグナス化を推し進める、恐るべき指導者で、ラサラスの人が消されたのも彼の仕業だ。
マグナス化とは、人が肉体を捨て、幽霊というか影というか、精神だけの存在になってしまうこと。
あっちはマキナ化でこっちはマグナス化か。
会議が終ったらしく、三人は部屋に取り残される。
どうやらここは、前にも名前が出てきていたナオスというところらしい。
ジメジメすると思ったら雨漏りしている。壁には魚に似た生物が描かれた絵が掲げられている。
サギたちには解らないらしいが、キミはそれがクジラだと知っている。
本棚があるが、そこの本は教養あるミリィにも読めない文字で書かれている。
廊下に出ると他にも部屋がいくつかあるし、ショップもある。この建物は集落の皆が共同で住んでいるところらしい。
階段を上り屋上へ出る。否、ここは建物の屋上などではない。船の甲板だとキミは思う。
船なのに何故か陸の上にあるのが不自然だが。

-廃船ナオス-
「こんなに現実感があるんだもん。もうただの夢とは思えないわね。雨ばかり降って気が滅入るわ」
ミリィが呟く。
『そうか。わしはなんだかここが妙に懐かしい気がするな』
ギロが気になる発言をする。何かに気付き、上空を指差す。
『あれを見よ!雲があんなに高いところにあるぞ!』
「空が見えない!見渡す限り地面だ。こんな大きな浮島って・・・」
ここはどこなのかと考えるサギ。だが、やがて頭痛が襲ってきて思考は中断される。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
火炎洞窟に戻ってくると、影とヴァララは既に居なくなっていた。
影との激しい戦闘のせいか、洞窟が揺れ、崩れはじめたので急いで脱出する。
ネロの屋敷に戻り、これまでの事を報告するサギ。
「君は立派に任務を果たしたのだ。喜んでもいいと思うがね」
「人が影に・・・どういうことなんですか?」
サギはネロに聞いてみるがネロははぐらかす。
「そうそう、君の皇帝暗殺容疑を晴らす件だが、バアルハイトの横やりが入ってしまった。
バアルハイトは直接会いにくれば、君の容疑を解くと言っている」
罠かも知れないが、三人はバアルハイトの屋敷に行くことにする。
屋敷の前で突然ミリィが、友達に会いたいからと言って去っていってしまう。
やっぱりミリィは怪しいとキミは思うが、サギは気にかけていない。
屋敷に入るとシャナトが待っていた。
お前が皇帝を暗殺したんだろうと問い詰めるサギ。だがはとぼけている。
シャナトに案内され、バアルハイトの執務室へ入るサギとギロ。
バアルハイトはあっさりと容疑を解く事を約束する。
「ところで、君にはその・・・憑いているのか?精霊が」
突然バアルハイトが変なことを言い出すので、驚くサギ。
”憑いてるよ”とキミは言ったが、やはりバアルハイトには聞こえていないようだ。
サギたちは退室したが、キミの意識はしばらくバアルハイトの所に残る。シャナトが部屋に入ってきた。
「リストによると、バインが消えて次はセルシカですか・・・」
「ディアデムだな」
キミはサギたちの方へ意識を戻す。屋敷を出てミリィと合流し、もう一度ネロの元へ。
ネロに容疑が解かれた事を報告すると、次の任務が与えられる。
「君たちにはディアデムに行ってもらう。ディアデムは騎士の国と呼ばれている通り、
世界屈指の軍事力を誇っている。ディアデムの王に会い、協力を取り付けてほしい」
そしてネロはサギたちに専用の船を貸すと言う。
「ディアデムで影が現れたら?」
「抹殺しろ」
「あれが人が変貌したものだとしても?」
「そうだ。さて、これから私は私の精霊と相談する事があるのだ、失礼する」
ネロは、いつも精霊と話をするという別室へ消えた。いつも兵士が厳重に警備している、あの部屋だ。
サギたちはミンタカの港に向かう。
キミは突然、暗くて何も見えない部屋に意識が飛んだのに気付く。
「なぁ、ダイモンよ、これからどうしたものか・・・このままでは世界が終わる。どうにかしなければ」
ネロが精霊と話しているのか?"ダイモン"というのがもう一人の精霊らしい。
そんな事を考えているとサギたちに意識が戻った。
港に着いた三人。そこには金ぴかのスフィーダという小型の船が待っていた。
よく見かける魚の形の船とは違う、マキナの船(というかキミには飛行機に見える)だ。
しかも専用の運転手付き。
 
4.騎士の国の若き名君 -雲の国ディアデム-

-城下町シェリアク-
ディアデムの首都、シェリアクの港へ着くと、騎士たちが出迎えてくれた。
金髪の、軍服を着た美人の女性が進み出る。
「セルシカと申します。レイドカーン王のもとへご案内いたします」
この人がセルシカ・・・この人もやっぱり・・・?
セルシカに案内され、城へと向かう。
-雲の城エルナト-
「只今、王は稽古中ですので、道場へご案内いたしますね」
城の中の道場へ着くと、王冠をかぶった子供てきた。これがレイドカーン王か。
「ラムじい、余はナシラに漁を見に行くぞ!ギィも後から来い!」
そういって走って行ってしまう。次いで道場から出てきた、日に良く焼けた少年も王を追って走る。
「レイちゃんが行くって言ってるんだ。俺も行く!」
最後に教育係のラムバリが登場する。おはずかしいところをお見せしましたというラムバリ。
「もう少し王としての自覚を持っていただかなければ・・・」
王を追いかけていった少年はラムバリの息子のギバリだという。
セルシカとラムバリに、レイドカーン王を連れ戻すようにと頼まれるサギたち。
エルナトを出て、シェリアクを抜ける。

-雲の道-
雲の道はその名のとおり雲で出来ているが、上を歩く事ができる。
王とギバリが連れ立って歩いているのがみえる。二人は「ギィ」「レイちゃん」と呼びあう仲良しコンビだ。
二人の足は速く、なかなか追いつけない。モンスターに混じって帝国の兵士もうろついている。何を企んでいるんだろう?

-漁村ナシラ-
なんとナシラは、帝国軍に制圧されていた。それを見て驚くレイドカーン王とギバリ。
サギたちが駆けつける前に、二人は帝国軍につかまり、捕虜となってしまう。
サギたちはわざとつかまり、同じく捕虜になることで王たちと合流しようという作戦に出る。
作戦は成功し、港に泊められた船の中に閉じ込められるサギたち。王とギバリもいる。
しかし、5人そろったところで、この船から脱出する方法が浮かばない。
そんなとき、目の前でつむじ風が起こったかと思うと、そこに忍者のような格好の少年が現れた。
彼は神出鬼没の大ドロンコ、パロロ二世。(前作ではパロロ三世が出てきます)王やギバリと友達らしい。
パロロ二世の協力を得て、船の扉を破り、兵士たちの包囲網を抜ける。
レブリスという漁師の少年の力を借り、酒場へと逃げ込む。
そこには酒場を切り盛りする少女、アナがいた。酒場の床にある、村の外へ出る抜け道を抜ける。

雲の道をシェリアクの方へ戻る。途中でジャコモが登場する。
レイドカーン王たちを先に行かせて、サギたち三人は再びジャコモを撃退する。

エルナトの王の間に来た三人。王とギバリ、そしてラムバリが待っていた。
王が言うには、この先の雲の大風穴でバアルハイト配下の連中が何かをしようとしているとのこと。
きっとマキナ化をしようとしているのだ。サギたちは大風穴に向かう。

-雲の大風穴-
ディアデムは大陸全体が雲に覆われているが、その雲が作られているのがここだ。
歩くのも困難なほどの強い風が吹いている。風向きの変わる瞬間を狙って進む。
奥ではシャナトと、ヴァララ、それに部下二人がいた。ディアデムをマキナ化しようと工事を始めている。
ヴァララと部下二人との三対三のバトルになる。
それを制すと、レイドカーン王やラムバリ、セルシカ、ギバリたちが駆けつけてきた。
こちらに隙が出来るとみるやいなや、シャナトはレイドカーン王を人質に取ってしまう。
ラムバリがシャナトに決死のアタックをかける。王は助かったが、ラムバリはシャナトにやられてしまう。
「やめて、ラムバリ殿、やめてぇ!!いやぁあああああ!!」
セルシカは絶叫すると同時に、影に変貌してしまう。
シャナトの部下が装甲車型マキナアルマを持って来て、影をビームで倒す。
頭を押さえるサギ。ミリィが声をかける。
「まずいわ、まさか、サギ、また?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「マーノ、クヤムへ行く準備は出来た?」
ポルコにそう言われる。そうだ、ワイズマンに直訴しに行くんだな。
準備と言ってもたいしたことはない。兄弟たちとサギたちはクヤムに向かう。

-領主の街クヤム-
新しい石造りの街並み。色鮮やかなタイルがはまった道。
そして、人々は、こころの翼を使って自由に空を飛びまわっていた。
この街の人はこころの力に頼りすぎてるとピエーデは言う。
背の高い塔の前にさしかかったときミリィが言う。
「ねぇ、この建物、何かに似てない?」
「茨の時計台に似てる・・・」
シェラタンのはボロッボロだったけど、ここのは真新しい。
そういえば、この街はシェラタンに似ている。シェラタンの孤児院があるところに同じような建物が建っている。
そして、シェラタンなら既に何もないところに、見渡す限りの水がある
なめるとしょっぱい。絵本でしか見たことのない、海だ。
海の近くにワイズマンの館がある。ちょうどワイズマンが出てきたところだ。
鉄の鎧に鉄の奇妙な仮面をつけている。もはや人であるかどうかも疑わしい。
ワイズマンを信者たちが取り囲む。兄弟たちは見つからないように見ている。
ワイズマンは、新興宗教の教祖よろしく話す。
「フフフ・・・こころの力を使えば、全ては思いのままだ。汝ら、マグナスとなれ!
 マグナスとなればこころは永遠だ!肉体は不要だ。マグナスとなるのが真の幸せなのだ」
何人かの信者がマグナスとなるのを目撃する。ワイズマンは館に帰っていった。
ティスタたちはワイズマンの館に入る。真っ暗な中に星のような小さなライトが点いている幻想的な部屋。
「なぜ人をマグナス化する?」
「フフ・・・より優れた自分に興味はないか?精神体となって、願望が具現化される世界でだけ
 生き続けられるとしたら、それは真実となる。
 我々は次の段階に進むべきなのだよ。民たちも喜んでいる」
「力ずくでも止めると言ったら?」
ペッツが挑戦的な調子で言う。ワイズマンは翼を広げる。十数枚の翼が放射状に並び、まるで後光のようだ。
魔法でワイズマンを攻撃する兄弟たち。ワイズマンはやすやすと受け止める。
自分はどうすればいいのかとサギが思っていると、次第に頭が痛くなってきた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
大風穴に戻ってきた。セルシカを殺した装甲車型マキナアルマに戦いを挑むが、やはり負ける。

王の間に戻ってきた。レイドカーン王はギバリに言う。
「ギバリ、騎士を辞めて、いますぐナシラに戻れ」
「何だよ、レイちゃん、いきなり・・・」
「これは、王としての命令だ」
傷ついた様子で、ギバリは去っていく。
「・・・これでいい。余はラムじいも、セルシカも失ってしまった。余にはギバリが必要なんだ。
 失うわけにはいかない。ギバリを危険な目にあわせたくないから・・・」
レイドカーン王に、見違えるほどの自覚が感じられる。
サギはやっと、ここへ来た本題である、協力のことをお願いする。
「戻ってネロ殿に伝えてくれ。ディアデムは対バアルハイトに協力する」

ミンタカに戻り、ディアデムのことを報告するサギ。
「さて、次はサダルスウドに行ってもらう。サダルスウドには、現在、統治者はいないが、
 影響力の強いロドルフォという富豪がいる。ロドルフォは金をちらつかせれば
 すぐ買収されてしまうような危険な男だ。バアルハイトより先に手を打たなければ」
「あの、軍務官は、影のこと、何か知っているのではないですか?
 シャナトやヴァララは、遺児とか、マルペルシュロとか呼んでいましたが・・・」
思い切ってネロに聞いてみるサギ。
「君たちは、古の神々の戦いのことを知っているか?あれは言い伝えなどではない。
 千年近く前に戦いがあった。記録にも残っている」
ネロは語りだす。
神々の時代、邪神マルペルシュロが反乱を起こした。マルペルシュロは闇の眷属を召還し、
世界を支配しようとした。そして、神々は滅ぼされた。
現在、ドゥールに住んでいる土の民、その先祖によって、邪神は封印された。
邪神は5つのパーツに分けられ、エンド・マグナスという手のひらに乗るくらい小さなカードにシュリンクされ、
5大陸にそれぞれ封印された。5大陸が浮いているのはエンド・マグナスのせいなのだ。
邪神の主なパーツはエンド・マグナスになったが、残りのかけらはバラバラに捨てられた。
影は邪神のかけらだ。マルペルシュロの遺児とも呼ばれている。
かけらが生物に寄生し、辛い気持ち、悲しい気持ち、そんな負の感情が邪神を呼び覚ますのだ。
「かけらに寄生された人を助けることは出来ないのですか?」
サギが聞く。
「不可能だろう。あらかじめわかっているなら、防ぎようがあるが・・・」
 
5.渇望する人々 -辺境サダルスウド-

-古都フェルカド-
坂道の多い古びた街並。そして狭い。見るべきところも無く退屈な街だ。
サギたちは街のあちこちに、手配書が貼られていることに気付く。
「結婚詐欺師サギ」「女怪盗ミリィ」「人喰い覆面人形ギロ」!?
身に覚えのない事が書いてある上に似顔絵も似ていない。これではしばらくは捕まらないだろう。
坂の上の方に一つだけ際立って大きな建物がある。ロドルフォの屋敷だ。
屋敷の前に行くと暗黒部隊員とジャコモがいた。どうやら屋敷の警備を任せられてるらしい。
13才にして暗黒部隊のエリートとなったジャコモが、サギに二度も負けているのでこんな所に飛ばされたらしい。
ロドルフォはケバルライに行ったというので、追いかける。

-ヌンキ渓谷-
地元民には「ヌンキの森」と呼ばれている、緑豊かな渓谷だ。
南の方へ抜ける。

-農村ケバルライ-
いかにも田舎な村。この村の特産の山りんごは世界的に有名だ。
サギたちはロドルフォを見つけたが、バアルハイトの手下、ヒューズという男と何か話している。
ヒューズはロドルフォに、マキナ化に協力してほしいと言う。ロドルフォはなぜか金を要求する。
するとヒューズはロドルフォに金を渡す。
「ロドルフォさん!マキナ化に手を貸してはいけない!」
サギは二人の会話に割り込んで説得しようと試みるが、二人は無視して去っていってしまう。

-領主の館-
サギたちはあきらめずに、ロドルフォの屋敷にやってきた。
警備の兵士を蹴散らしながら進む。ロドルフォの部屋の前にやってきた。
そこにはジャコモが待っていた。
「ツイてる!俺はツイてるぞ!こんな所でお前に会えるとは!
 とんだ閑職にまわされたと思ったが・・・今度こそ決着をつけてやる!」
ジャコモと暗黒部隊員たちと戦闘になるが、三度目もやはりサギたちの勝ちだ。
ジャコモは床に倒れこむが、まだ意識がある。
「また負けたのか・・・。ちからが、全てを圧倒するちからがほしい・・・」
サギがそんな彼を見下ろして言う。
「何が彼をここまでさせるのかな?少しかわいそうだよ」
”かわいそう?”とキミは聞いてみる。
「そうさ。自分に何が出来るのか必死で探してるみたい。
 いや、かわいそうなんじゃないな。僕、うらやましいのかも・・・」
部屋に入り、ロドルフォを説得する。
「ああ、君たちはケバルライで会ったね。大丈夫。マキナ化に迎合するつもりはないよ。
 金が必要だっただけさ。・・・君は、この国をどう思う?」
”遅れてる”とキミは言う。
「遅れてると・・・思います」サギは控え目に言う。
「そう、遅れてる。この国には指導者がいないからね。
 それには金がもっと必要だが、私はいつか指導者として立つつもりだ」
ただの金持ちにしか見えないのに、こんなしっかりした考えをもっていたとは・・・。
そこへ、ヒューズがやってくる。ロドルフォとサギたちに、ヌンキへ来いと言って去っていく。

再びヌンキ渓谷へ。そこでは兵士たちが、火炎放射器を使って緑を焼き払っている!
クレーン車を持ち込んで鉄骨の足場を組み始めていたりもする。
奥ではヒューズが待っていた。ヒューズは右腕をマキナで改造している。
ヒューズと戦闘になるが、やはりマキナには勝てない。ギロがあきらめたように言う。
『圧倒的すぎるぞ・・・』
「だから、だからこそやらなくちゃ・・・」サギはまだあきらめていない。
”こんどこそ!”キミはサギを励ます。
「そうさ!さすがキミ、いいこと言うね。あいつを放っといたら、ひどいことになる」
そこへシャナトがやってくる。
「おや、サギ君じゃないですか。ちょうどいい・・・」
あれを持って来い、と、シャナトは部下に指示する。やがて、ライオンのような姿の遺児がヘリで運ばれてきた。
「野生の動物を宿主にした遺児ですよ」シャナトが自慢げに言う。
4つ足の遺児を攻撃し弱らせることに成功した三人。
だが、ちょっと油断したスキに、遺児はミリィを口にくわえて奪ってしまう。
サギは夢中で刀に力を込め、遺児に突き刺す。苦しむ遺児。
開放されたミリィは派手にふっ飛ばされ、骨が二、三本はイクんじゃないかと思うほど叩きつけられる。
「ミリィ、大丈夫か!」
ミリィはさいわい大した怪我じゃないらしい。
「そうか、よかっ・・・た・・・。ううっ」
ミリィを心配してか、サギはしばらく耐えているが、やはり頭に手を当て・・・。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
館を追い返された兄弟たち。
「ワイズマン・・・とても敵う相手ではない」
敗北感でいっぱいになりながらナオスへ帰る。

ナオスでは人が倒れている。留守中にワイズマンがやってきて、精神化を施していったとのこと。
そして、抵抗した者は殺された。ティスタの婚約者も殺された・・・。
ティスタは何かを決意したように言う。
「これからザウラクに行く。俺たちに残された道はそれしかない」

-眷属の根城ザウラク-
不気味な色をしている洞窟だ。キノコの胞子のようなキラキラしたものが壁についている。
ティスタは何をする気なんだろう?と思いながらついていく。
だいぶ進んだところで、ペッツがごねる。
「こんな所に誰がいるっていうんだ?」
だがティスタは答えない。やがて頭痛が襲ってきた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「まさか、遺児を殺せるとは思いませんでしたよ」
シャナトの声が響く。サギはもう、最後の力を出し切り、動けない。
ヒューズがサギに襲い掛かる。サギは覚悟して目を閉じる・・・が何も起きない。
目を開くと、なんと、パロロ二世がヒューズの攻撃を受け止めている!
さすがパロロ、まるでマンガなキャラクターだ。パロロと一緒に逃げるサギたち。
ヌンキ渓谷の出口まで来ると、パロロはつむじ風に乗って去っていった。
フェルカドに着き、通信機でネロに今までのことを報告するが、ネロは「戻って来い」とそれだけだ。
『そっけないやつだな。こっちは死ぬところだったのに』
ギロが愚痴る。
ミンタカに行き、ネロから次の指令を受ける。
「残るはアヌエヌエ。私の精霊も、妖精導師コレルリの協力が必要だと言っている。
 コレルリに対し、マキナ化に対する意見を聞いてきてくれ」
 
6.からくりの少女 -虹の都アヌエヌエ-

「アヌエヌエかぁ。魔法学校の卒業以来ね、何年ぶりかしら」
スフィーダの船内でミリィが言う。
『ぬし、大陸から出たことがないと言っておったであろう?あれは嘘なのか?』
ギロが疑り深い眼差しを向ける。ミリィは目を伏せる。
「送り迎え付きで通ってたのよ。毎日家と学校の往復。他の場所には行ったことないわ」
アヌエヌエが見えてきた。四六時中架かってる二重の虹、そして中央に聳え立つ天の樹がシンボルマークだ。
そのとき、スフィーダが激しく揺れる。後方から、帝国の大きい船に撃たれた!
アヌエヌエに不時着することになる。

-ジャングル ホロ・ホロ-
着地の衝撃で、船外へと投げ出される三人。痛いがなんとか起き上がる。
ここはジャングルのど真ん中だ。街がどっちにあるかも解らない。
「ミリィ、大丈夫?服の裾が裂けちゃってるよ」
サギが気遣うと、
「・・・あんまり見ないで」と言ってミリィは半ば逃げるように、差し出したサギの手をすり抜ける。
運転手が言うには、スフィーダは故障していて、替えの部品を調達しないと飛べないという。
スフィーダと運転手をその場に残し、街へ行く道を探すサギたち。
奇策を弄し、やがて街にたどり着く。

-花の街コモ・マイ-
アヌエヌエの人々は、花や動物を模した派手な服を着ている。魔法学校もあり、華やかな街だ。
とにかく、妖精導師の宮殿へ行き、使命を果たすことにした。
妖精導師コレルリは、可憐な少女というような姿をしているが、中身は何歳だかは不明。
(ちなみに、20年後も同じ姿をしていました)
ネロに協力するように言うと、マキナ化については反対だが、協力できないという答えが返ってきた。
「アヌエヌエは永世中立国です。つねに平和的に解決しなくては」
サギが意気消沈した様子でこちらを向く。
「ねぇ、キミ、どうたらいい?」
”食い下がりましょう”
「今の・・・あなた、精霊憑きなのですか?」コレルリが驚いた様子で聞く。
「僕ですか?はい、そうです・・・」
「・・・そう」
これ以上食い下がっても無駄だと思い、宮殿から出るサギたち。通信機でネロに報告する。
「・・・そうか。私の精霊も、コレルリに協力を強制するのは得策ではないと言っている。戻ってくれ」
スフィーダが壊れて飛べないことを訴えると、部品を届けたいのはやまやまだが、
いつになるかわからないとネロは言う。
自分たちでもなんとか頑張ってみますとサギは答える。
とは言え、自然がいっぱいのこのアヌエヌエに、部品はおろか、マキナのことがわかる人がいそうにない。
途方にくれる三人。すると、目の前に人だかりが出来ているのを発見する。ちょっと覗いてみる。
木で出来た2、30センチほどの人形、その背中に鳥の羽を差し込むと・・・歩き出した!
今まで見たこともないような、見事なからくりだ。話を聞いてみると、
オプという村に住んでいるローロという少女が作ったものらしい。
彼女ならスフィーダを直せるかも知れない。オプに行ってみることにする。

-滝の村オプ-
大きい滝に沿うように作られた村だ。村人にローロの家がどこにあるのか聞いてみる。
「ローロは今、水車作りに専念してもらわないといけないんだから、無理な注文はするなよ」と釘をさされた。
木材で作ったパーツがたくさんが床に散らばる部屋に、ローロは居た。
アヌエヌエの派手な服のせいだけではない、華のある少女だ。
サギはスフィーダを直してもらうようローロに頼む。
「私は木が専門なんです。マキナには応用できません。それに、今は水車のことで手一杯で・・・。
 そうだ、少しでも天の樹が手に入れば、マキナに負けない部品も作れるし、水車も完成させられるわ」
天の樹とはアヌエヌエの中心に生えている、30年に一度花をつけるというあの大樹だ。
勝手に伐ることは出来ず、コレルリの許可が必要らしい。
とにかく、ダメもとでなんとかやってみるとサギは大樹の入手を引き受ける。
ローロは感激のあまりサギに抱きつく。
サギ本人はもちろん、遠目から見ているキミも驚いたが、側で見ていたミリィはもっと驚いている。
「なんなのよ、デレデレしちゃって」
ローロの家から出ると、ミリィは怒って歩み去っていく。
「僕、何かしたかな?」と首を傾げるサギ。

-群生大樹-
大樹のふもとにやってきた三人。だが、「守り人」と呼ばれる番人に、追い返されそうになる。
そのとき奥からユイフィーという女性が出てくる。
ユイフィーが言うには、天の樹は年に一度、枝を落とすという。その落ち枝なら、
コレルリに頼めば譲ってくれるかも知れない、とのこと。
急いでコモ・マイへ戻る。

妖精導師の宮殿の広間では、衛士たちがずらりと整列していた。コレルリが指示を出すと、
衛士たちは出撃していく。なにごとかとコレルリに聞いてみる。
帝国が天の樹の根脈(こんみゃく)にマキナを持ち込み、何かしているとのこと。
根脈とは、天の樹の地下の、アヌエヌエじゅうに張り巡らされた根のことだ。
「手伝わせてください。マキナのことだったら力になれます」サギが申し出る。
「これはアヌエヌエの問題。他国の方のお力を借りるつもりはありません」
コレルリは断ろうとするが、サギは食い下がる。
「これは軍務官の任務ではなく、僕の希望です。早くしないと、根脈がマキナ化されてしまいます!」
ようやくコレルリは首を縦に振る。

-天の樹の根脈-
大樹のふもとから、地下へと根の上を歩きながらもぐっていくが、途中で根が途切れて進めないところがある。
仕方なく地上へ戻ると、ローロが来ていた。ローロに相談するサギ。面白くなさそうなミリィ。
ローロがいうには、天の樹の端切れ根を集めてくれば、それを材料にからくりがつくれるので、
それで行けばいいとのこと。端切れ根とは、根の端っこの部分だそうだ。
とにかくもう一度地下にもぐり、端切れ根を集めて地上に戻る。
渡れなかった場所へローロを連れて行くと、アッという間に簡易ロープウェイを作ってしまう。
サギはローロを素直に褒めるが、ミリィは本当にこんなので大丈夫かと難癖をつける。
「ローロ印のからくりは、強さが売りですから」自信満々のローロ。
三人はロープウェイに乗り先に進む。
奥までやってくると、またシャナトと、例のマキナアルマに乗ったヴァララがいる。
衛士たちが倒れている。どうやらこころの翼を抜かれたらしい。
突然、遺児が登場し、そこらに生えている植物に寄生し始め、巨大な植物の怪物と変貌する。
「ほう、植物も宿主に出来るとは・・・」
感心しているシャナトは何故か突然苦しそうになる。ヴァララに遺児を倒すことを指示する。
遺児をマキナアルマのアームで殴りつけるヴァララ。
『サギ、今遺児を攻撃すれば簡単に殺れるのではないか?』ギロが提案する。
「でも、あれは殺したくない。なぜだか解らないけど、あれを殺しちゃだめなんだ!
 こころの奥でそんなふうに感じる」
”殺しちゃダメだ!”とキミは言う。
「だから殺しちゃだめだって言ってる!」
うるさいと言わんばかりにサギに言い返される。
今までサギは、これまでの激しさを見せたことがあっただろうかとキミは思う。
素直でやさしい、いい子だとばかり思っていたが、こころの内に激情を秘め、
今にも崩れ落ちそうな危ういバランスで彼は立っているのだ。
「ねぇ、あそこ!あの根を弱らせれば、本体は自由になるんじゃないの?」
気まずい沈黙がミリィの声によって破られる。遺児は根によって地面に縛り付けられているように見える。
『ようし、根だけを狙って攻撃しろ!』
ギロが爪を構える。サギの表情がパッと変わる。
「二人とも、ありがとう!」
ヴァララが乗ったマキナアルマが本体を攻撃する間に、サギたちは根を狙って攻撃する。
ヴァララが遺児を倒すより先に、なんとか遺児を開放することに成功する。
「やった!見てよ、遺児がどんどん小さくなってくよ。頭痛も起こらない。苦しくない」
「おっと、そうはいかないよ!あたしの任務は遺児の確保だからね」
「やめろ!よせ、ヴァララ!やめてくれ!!」
サギが喜ぶのも束の間、ヴァララが遺児に止めを刺す。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
あの不気味な洞窟、ザウラクに居た。
ポルコが「まだ着かないの~?」と文句を言う中、一行はやっと最奥部に到着する。
「なぁ、ティスタ、いったい誰に会うっていうんだ?」
兄弟たちが問い詰めるとやっとティスタは口を開く。
「闇の眷属だ。彼らの力を借りて、ワイズマンを倒す!」
「闇の眷属・・・思い出した、ここって闇の眷属の城コル・ヒドラエよ」
ミリィが魔法学校で習った知識を披露する。
「闇の眷属よ!ワイズマンを倒せる力をくれ!」
ティスタが呼びかけると、闇の眷属の声が聞こえてきた。
「何を生贄にする?」
「俺の全てだ!」
「足りぬ・・・奉げるならお前ら5つを奉げよ」
ペッツが、ピエーデが、ポルコが、自分も生贄となると宣言した。
残るはマーノの、サギの番だ。ペッツが言う。
「なぁ、マーノ、お前もだろ?」
サギが口を開く前に、キミは”もちろん”と答えてしまう。
「やっぱり、そうだよな?」ペッツはうなずく。
「聞こえてる・・・この人たち、キミが言ったことが聞こえてるよ!僕、何も言ってないのに」
驚くサギ。闇の眷属は言う。
「良かろう・・・力を貸そう」
5人の体が黒い雷のようなものに打たれた。力がみなぎってくるのを感じる。
「これが、闇の力・・・」
「代価は絶対だ。ゆめゆめ、忘れるな・・・」

兄弟たちはナオスに帰る。あの、クジラの絵が掲げてある会議室に集合する。ティスタが言う。
「いいか、俺たちは負けるわけにはいかない。そのためには、みんなが力を合わせないとだめなんだ」
「ひとつになるんだ・・・5人でひとつ」
ペッツがつぶやくと、ポルコが言う。
「じゃあ、何か名前を付けようよ。チーム名みたいなの」
ピエーデの口から恐るべき名前が発せられる。
「じゃあ、マルペルシュロなんてどう?」
「なあんだ。おいらたちが育った丘の名前じゃないか」ポルコはがっかりした様子で言う。
「ワイズマンを倒せば、俺たちは死ぬ。だが、残った人々がマルペルシュロの名を記憶に留めてくれるだろう」
「やっぱりここ、千年前の大昔、神の時代なのよ。どうして飛ばされたのかはわからないけど。間違いない。
 でも、彼らがマルペルシュロだとしたら、伝承と違う。
 あの人たち、わたしたちと変わらない。あれが、神なの?」
ミリィが興奮した調子で話す。サギが静かに答える。
「見た目は変わらないけど、こころの力と魔力は桁違いだよ」
「そのうち、神々の戦いが起きるわよ、どうするの、サギ」
サギはキミに話し掛ける。
「兄弟たちを放ってはおけない。止められるものなら止めたいよ。協力してくれるね?」
”わかってますって”キミは答えた。
「うん、頼りにしてるよ」

ワイズマンと戦うために、クヤムに行くが、街はもぬけの殻だった。
わずかに数人、マグナス化された人が残るのみとなっている。
きっとアトリアに行ったのだと兄弟たちは言う。

-戦場アトリア-
クヤムのさらに奥、まばらにサボテンが生えてるだけのだだっ広い荒地がアトリアだ。
「まずい、儀式が始まってる!」
儀式ってなんだろう。ワイズマンが呼んだという竜や、
背中のこころの翼で飛び回るワイズマンの手下たちをやり過ごしながら、ワイズマンを探す。
そのうち、ワイズマンの手下たちに周りを囲まれてしまう。
さすがにこの数では・・・とあきらめそうになったとき、頭に痛みが走る。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『サギ、今はマキナアルマは倒せないだろう。いったん引くのが得策だ』
「・・・・・・」
ギロが話してるのに黙っているサギ。何かを堪える表情だ。
「そろそろ、この腐れ縁も終いにしたいねぇ」
ヴァララが襲い掛かってきて、やはり負ける。
「今なら見逃してやれる。命までは取らないよ」
「・・・戻ろう」
敵の情けを受けて惨めに撤退する。地上へ戻る途中で、サギが突然叫ぶ。
「何なんだ!何なんだよ、精霊って!伝説の精霊憑きだって?
 そんなの、何の力も無いじゃないか!あのマキナアルマだって歯が立たないし、マキナ化も止められなかった。
 別に力がほしいわけじゃない。でも、大事なときに、何も出来ないなら――。
 精霊って何なんだ!?誰にも証明できない!僕の妄想なのか!?」
『”あの人”はよくやっておる。おぬしも解っておるだろう?おぬしが信じてやらなくて誰が信じる?』
ギロがなだめる。
「だけど、キミはいったい何なんだ・・・?」
”わからない”とキミは答える。そう、理由は解らないが、こころの奥に違和感があるのは確かだ。
この感じは、たぶん――。

コモ・マイのコレルリのところに戻ってきた三人。
「ごめんなさい。マキナ化を止めることができませんでした」
サギは再度、コレルリに協力を要請するが、やはり断られる。
だが、天の樹の落ち枝については非公式だが許可を取り付けた。
大樹に行こうとするとミリィがまたしばらく中座するという。怪しいけどやっぱりサギは気にかけない。
ミリィと合流し、大樹で落ち枝を入手して、ローロの部屋へ運ぶ。
信じられないという表情で落ち枝を見るローロ。叩くと金属のような音が響く。
「ありがとうサギ!これならきっとうまくいく!」
「ちょ、何やって――」
感激してまたサギに抱きつくローロ。横ではミリィが地団駄を踏んでいる。
ホロ・ホロのスフィーダ墜落現場へローロを連れて行く。一晩の後、修理は完了した。
「水車が完成したら見に来てくださいね」ローロが手を振りながらスフィーダを見送る。
『とんだ恋敵の出現だな』
帝国へ戻る道すがら、ギロが爆弾発言。ミリィは何のことかととぼける。
『隠すな。こりゃあ大変な四角関係だぞ』
四角って、サギとわたしとローロとあと誰よ?とミリィが聞くと『わしだ』と答えるギロ。
「ギロなんかよりも、もっと強力なのがいるじゃない。”あなた”よ。ね?」
自分が引き合いに出されたのでキミはギクリとする。
 
7.精霊と邪神

ミンタカに戻ったサギたちだが、ネロは元老院に呼ばれていないという。
今晩はゲルドブレイムの家に泊まってからまた来てくれという。
ゲルドブレイムの家で、これまでのことに思いをめぐらす。
ギロは、ネロの任務から手を引いた方がいいのではないかと言う。
『これ以上はわしらの手におえる問題ではない』
「僕はまだ手を引くつもりはない。バアルハイトがやってることを、放ってはおけないよ。
 それに、いろんな大陸を見てわかったんだ。それぞれの国ごとに特色があって文化がある。
 バアルハイトはそれをマキナ化で塗りつぶそうとしている。それって、なんだか、気持ち悪いよ」
サギはそう言うが、ギロが反論する。
『気持ち悪い?そんな感情だけで命の危険を冒すつもりか』
「何かをするきっかけって、だいたいそんなもんだろ?大陸の形を変えたり、こころの翼を抜いたり、
 そんなこと、人がやっていいことじゃないよ」
『わかった。わしもいっしょに行こう』
「わたしも行く。サギといっしょに行く」
”自分もいるよ”
「ありがとう、みんな、ありがとう・・・」
次の日、三人はネロに会う。
「精霊のやつにどやされたよ。サギを助けろとな。アヌエヌエではたいへんだったな。
 次期皇帝の件でな、明日、審議を執り行うことになった。君たちも出席してくれ。全ては明日決まる」

あのテロのあった広場にいるサギたち。バルコニーの上では最後の応援演説が行われている。
まずはゲルドブレイム。そして、シャナトが演説する。シャナトは演説の途中で突然、デモンストレーションを始める。
「つれて来い!」
兵士に両脇を押さえられ、引きずられるようにバルコニーに出てきた女性。それはジーナだった。
「母さん!!」
「このマキナの時代に、まだこころの翼に頼る者がいる!」
いやな予感がする。見たくない、見たくない・・・。
群集にマキナコールが起こる。
「待って!どういうことなの!」
ミリィが前に進み出る。
「これじゃ話が違う!父(とう)さま!!やめさせて!」
その視線の先にはバアルハイトがいた。バアルハイトは無言で立ち去る。
「どいてくれ、ミリィ」サギは目の前に立ちふさがるミリィに言う。
「落ち着いて、サギ!」
「どいてくれッ!あの人は僕の母さんなんだぞ!」
「わかってる、わかってるわ。だから・・・キャッ!」
サギはミリィを横に突き飛ばして前に進む。刀を取り出し構える。
「お前ら・・・何してるんだ?みんなどけよ!母さんから手を離せよ!」
「やれ!」シャナトの号令が飛ぶ。
「ああっ、サギ、いやよ、ああっ・・・」
兵士はジーナの翼を引き抜いた。
「貴ィ様らぁああああ!!」
怒り狂ったサギが、バルコニーに飛び上がり、兵士たちに切りつける。
「どうしました?サギ君、あなたの母上はそこですよ。よく御覧なさい。そしてもっと怒るのです!!」
シャナトが煽ってくる。怒りに身を任せるサギ。サギの体から黒いオーラが出てくる。
いけない、怒りに身を任せてはダメだ。そうキミは思うがもう止められない。
危ういバランスは崩れ、そして――。
彼は遺児に変貌した。広場の人々はクモの子を散らしたように逃げる。
「ようやくお出ましですか。マキナを出しなさい!」
戦車型のマキナが出てきた。二度三度とビームに撃たれるサギ。
遺児は、サギは、上空に向かって吼えた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「・・・僕は撃たれて、そうか、飛ばされたのか」
ワイズマンの手下たちにびっしり囲まれている5兄弟。
「マーノ、しっかりしろ!でないと、やられるぞ!」
どうやらボーっとしていたらしい。気を取り直し刀を構えなおすサギ。
皆憔悴している。倒しても倒しても切りが無い。次第に闇の力が暴走していき、力任せに刀を振り回す。
気が付くとあたりは一変していた。異様な雰囲気に包まれていて、静まりかえっている。
ワイズマンは?ワイズマンはどうなった?と思い、辺りを見回す。
そこらじゅうに切り刻まれた死体が散らばっている。空気がよどんでいる。
この感じ・・・ああ、ついに、人であることを捨て、神となってしまった。
自分たちの変わりようにしばし呆然とする兄弟たち。すると、向こうから仮面をつけた魔導師たちがやってくる。
以前聞いていた土の民の先祖だろう。先頭の二人組みの魔導師が、声を合わせて祝詞をあげる。
男性と女性のコンビだ。ギロが話すときのような声。
『空と大地と海のために・・・』
魔導師たちは、剣と鏡と玉で兄弟たちを取り囲み、動きを封じる。
これは・・・そうだ、その強大な力で邪神を封じたとされる神器、天の剣・大地の玉・海の鏡だ。
『ティスタ=トウ=アゼ!呪われし者よ。その命、貰い受けん!』
邪神の名前をフルネームで読み上げる魔術師たち。
『ペッツ=ソ・ク=ラドラ!ピエーデ=キョウ=モナルナ!ポルコ=ドウ=ノルコ!』
名前を読み上げられた兄弟たちは謎の人物に次々と倒されていく。
『マーノ=シュ=ヾ※∴!』
突然自分の名前が読み上げられたのでキミは驚く。
「何だって?何て・・・言ったんだ、ねぇ・・・キミ?」
サギが苦しみに喘ぎながら聞いてくるが、キミは答えられない。
自分の名前が邪神のフルネームの最後の部分に使われている!
前作を知ってるなら解るだろうが、真ん中の部分は体の部位を表している。
トウは頭、ソ・クは足、キョウは胸、ドウは胴、シュは手。兄弟神マルペルシュロの5つのパーツ。
剣技に長けたマーノはシュか。ボインなピエーデねーちゃんはキョウだって(笑)。
そして最初は言うまでもなく5兄弟の名前、最後の部分は・・・。
自分の名前はいいとして、アゼとかラドラって何かな。
そうだ、「ゲド戦記」だ、あれに出てきた「真の名」みたいなものか。
あるいは「三国志」なんかに出てくる、字(あざな)みたいなものだろう。ということは・・・。
この期に及んで、キミは千年前のこと全てを悟る。
自分は以前、マーノだった。5兄弟の末妹。
思い返してみると、今のサギはマーノとよく似ている。性別が違うのを除けば。
刀が得意だったり、赤い服か好きだったり。自分が憑いている影響もあるのかな。
っていうか、今までサギは千年前で女の子の役を演ってたってことか。
ゲーム内ではアリなのかも知れないけど、
自分の基準からすると、確かにサギは女の子っぽい格好してるなと思ってたんだよ。
年のせいもあるけどサギには何だか中性的な魅力があるよね。
・・・やっとわかったのに、もう、死ぬのか。
「呪われし者よ。その命、貰い受けん!」
サギに死の宣告がくだされた。サギの目の前に黒い人影が音もなく立つ。
「ギロ?」
そいつはギロそっくりの人形だった。無駄のない動きでそいつは右手を突き出す。
サギの、マーノの胸は人形の爪に貫かれた。
「ぐふッ・・・。ギ、ギロ・・・」
暗転。
 
何も見えない。何も聞こえない。
”聞こえる?サギ!”キミはサギを呼んでみる。
「ここは・・・」
サギが目を開くと、周りの様子がキミにも見えてきた。
サギは十字形の磔台に、両手を広げた状態で拘束されている。暗い小さな部屋だ。
”サギ、大丈夫?”
「キミ・・・無事だったんだね。大丈夫。なんとか平気みたい」
”・・・覚えてる?”
「うん、はっきりとね。キミは、どうなの?」
”覚えてる”
自分は・・・自分はもはや、精霊ではない。邪神だったのだ。
「千年前、神の時代、最後にキミの名前が呼ばれた・・・つまり、あれは、
 あの世界での僕は、マーノは、キミだったんだね。キミは精霊じゃなかった。キミは・・・」
”邪神マルペルシュロ”
「そう、マルペルシュロ。千年前、反乱を起こし、敗れ、バラバラに封印された神。
 それが、キミだったんだよ・・・」
キミが前作バテン・カイトスを知っているなら既に気付いていただろう。なんとなく自分の存在が希薄だと。
それに、以前サギに指摘された通り、伝説と呼ばれるにはあまりにも力が弱い。
前作の主人公カラスはキミと力を合わせて強力な精霊魔法を使う事が出来たが、
サギに出来るのはせいぜい、ピンチの時にちょっとした確率変動を起こすだけだ。精霊魔法とは比べ物にならない。
その確率変動も物理法則を無視したインチキとも言うべきシロモノだ。邪神にはふさわしいかもな。
「その封印されなかったかけらのひとつが僕に宿った。だから、マルペルシュロの遺児が倒されたとき、
 キミの記憶が僕に流れ込んできた・・・。
 そして、バインさんやセルシカさんがそうだったように――僕も、暴走した。母さんを引鉄にして。
 はは・・・自分のこと、ずっと精霊憑きだと思ってた。でも、違ったんだね」
”ごめん・・・”
「違うんだ!違うんだよ。
 僕、初めてキミを感じたとき、友達ができたと思って、嬉しかった。
 でも、嬉しいと同時に、ずっと不安だったんだ。
 仲良くしなくちゃって、うまくやっていかなきゃって・・・。
 だって、僕のこころにずっと一緒に住んでいるんだからね」
サギは泣き出しそうな声で言う。
「でも、キミは何も教えてくれなかったろ?誰よりも近くにいたのがキミなのに、何もわからなかったから!!
 だから、ずっと不安だったんだ・・・」
繰り返された「ずっと不安だったんだ」という台詞が、キミのこころに重くのしかかる。
サギに対する申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「精霊憑きは選ばれし者!?世界の命運を左右するだって!? 冗談じゃないよ!
 なんだかわからない意識が、突然こころに住みだして・・・。
 こんなこと、誰もわかっちゃくれない。誰も信じちゃくれない!
 どうして僕は、みんなと違うんだろうって思ってた。いっそ、キミなんていなくなればいいのにって・・・。
 ・・・でも、今は違う。だって、キミのことがやっとわかったから。
 精霊だろうと邪神だろうと、そんなのどっちだってよかったんだ」
”サギ・・・”
「・・・・・・」
”これからどうするの?”
「あの暴走以来、僕の中でキミが大きくなってきているのがわかる・・・。
 きっと、邪神としてのキミが、僕を呑み込もうとしているんだ。
 このままだと、キミのこころに僕が取り込まれる・・・」
”どうすればいい?”
「選ばなくちゃいけない。キミが僕にに憑くのか、僕がキミに憑くのか。・・・どうする?」
自分がたとえ邪神でも、精霊でなくてもいい。
今までサギと旅した記憶や交わした言葉、二人で綴った物語は本物だ。
自分のこころに残るだろう。一生とは言わないまでも。
そしてこれからも、物語は続くのだ。いつかサギと別れる日までは・・・。
でも、それは今じゃない。自分の行くべき道は決まった。
”サギに憑いていく!”
「僕と一緒に、また旅をしてくれるの!?」
キミは、一度サギから離れる。拘束されているサギと同じ形の、黒いオーラがキミの意識だ。
キミは自分の意識が小さくなるよう念じる。すると、黒かったオーラは一点に集まり、眩い輝きを放つ。
そして、再びサギのこころの中へ。
「すごい、感じるよ・・・。こころが軽くなる・・・ちからが・・・湧いてくる」
なんとサギは自ら拘束具を外してしまう。
「すごいよ、これが、キミのちから!?ありがとう、あらためてよろしく!」
”こちらこそ!”
サギはキミに最高の笑顔を見せる。見えていないと解っていながら、キミも微笑む。
サギを呼ぶ声がする。ミリィとギロが部屋に入ってきた。
「ミリィ、ギロ、無事だったんだね!・・・母さんは、母さんは無事なの?」
「安心して。ジーナおばさまは無事よ」
ミリィとギロがジーナをシェラタンまで運んでくれたらしい。
『”あの人”は無事でおるか?』ギロが尋ねる。
「無事だよ。ここにいる」
「ねぇ、わたし、あなたに話したいことがあるの」
「わかってるよ。あのときは夢中だったけど、でも、ちゃんと聞こえてたよ。
 バアルハイトのこと、父さまって呼んでたね」
言い訳しようとするミリィをサギが止める。
「わかってる。ずっと旅してきたんだ。ミリィのこと信用してる。話して楽になるなら聞くけど、
 それはここから出た後だ」

ここは帝国にある建設中のだだっ広い施設だ。
しばらく進んでいくと、丸い巨大なエレベーターがあった。スイッチを操作し上へ。
「そこまでです。これ以上は行かせませんよ」
上のフロアでシャナトが待っていた。サギが怒りをあらわにする。
「貴様、母さんを!!」
「ほう、元気がいい。さすがは唯一、遺児となじんだ被験体ですね」
「被験体・・・?」
ミリィが一瞬、ビクっとする。
「まだそこまでは話していませんか。まぁいいでしょう。
 あなたを生かすように指示を受けていますが、邪神に寄生された化け物がのさばっているのは
 耐えられないんですよ!私のマキナアルマで葬ってさしあげます」
シャナトはパワードスーツのようなマキナアルマを装着し、襲い掛かってくる。
いつものようにサギたちはマキナアルマに対抗できない。
「くそっ、こいつだけは・・・こいつだけは許せないんだ!」
サギが根性で立ち上がり、刀を構える。
「馴染んでいるとはいえ、所詮は作り物。本物の精霊憑きのような力は出せはしない」
サギがシャナトに切りかかるが、刀を片手で受け止められ、弾き返されてしまう。
「無駄なことを」
「どうすれば・・・。畜生、あいつには、マキナアルマには勝てないのか?」
こんなにサギが苦しんでいるのに、自分はなんの役にも立てないのか?
やっぱり、精霊じゃないとだめなのか?・・・いや、そんなはずはない。
自分が本当に邪神なら、かけらだけど、神なら――。
”頑張れ!もうひとりじゃない!”キミは思わず叫んだ。
「えっ!?」
”わたしとこころをひとつにして!”
「こころをひとつに・・・わかった!やってみる」
サギは刀を構え、意識を集中させる。キミも意識を集中する。サギの中にちからが蓄えられるのを感じる。
「あいつを倒すよ、いいかい?」
「ふん、なんの相談だ?邪神のかけらが何の役に立つ?何をしても無駄だよ!」
余裕のシャナト。サギが再び切りかかる。
また刀を片手で受け止められるが、今度は逆にシャナトがふっ飛んだ。マキナアルマの一部が損傷している。
「ばかな、マキナアルマを砕くだと?」
「シャナト、ここまでだ。お前は許さない!」
今までマキナアルマに全く歯が立たなかったのが嘘のようだ。
サギが手に入れたちからで、マキナアルマが損傷していく。ついに、粉々に砕けた。
「その力、まさか本当に遺児の力を引き出すことができるとは。
 あの研究も、ただの酔狂ではなかったわけだ」
「なんのことだ」
「君に宿っている邪神は、人の手によって宿らされたのですよ」

シャナトが語りだす。
今から15年前だ。オーガンの指示の下、ひとつの研究が開始された。責任者はバアルハイト。
研究内容は人の手による精霊憑きの創造――。全てはオーガンのエゴから始まった。
帝国を継がせる為に息子を精霊憑きにしようとしたのだ。
もっとも、精霊憑きなんてのは自分からなれるものではない。
そこで考え出されたのが、精霊の力に匹敵する邪神の力を、遺児を人工的に宿らせることだった。
遺児を生まれたての赤ん坊から成人まで、集めた被験体に、強制的に宿らせた。
「ぬしも、そのひとりというわけか」ギロが聞く。
「察しがいいな。不幸にして、いや、幸いにして私は遺児と合わない体質だった。
 おかげで、貴様や他の連中のように化け物にならずに済んだわけだ」
「僕も、そのひとりなのか。人の手によって――」
動揺しているサギに代わってギロが聞く。
「ぬし、なぜオーガンを殺した?」
「簡単なことですよ。あいつだけは私の手で殺したかった。それだけです。
 ・・・さぁ、サギ君、君の恨みを晴らしたらどうです?」
死期を悟ってか、シャナトが言う。
「言われなくてもそうするよ!」
サギが止めを刺そうと構える。
”サギ、もういい!”キミはサギを止めようとする。
サギは構えを解く。
「わかってるよ。そんなことする必要もない。そうだろ、キミ?
 ・・・この憑き方、もう長くはない」
突飛なことを言い出すので戸惑う。邪神憑きには解るのか?とキミは疑問に思う。
そこへ少女がシャナトへ駆け寄ってきた。鞠つきをしていたあの子、シャナトの養女だ。
「サヴィナ・・・」
サヴィナと呼ばれた少女は、シャナトの側へ屈み込んだ。
「行こう、みんな」
サギに促され、ミリィとギロはシャナトに背を向ける。
残されたシャナトは、呟く。
「精霊憑きの実験が、後を継がせるどころか、逆に自分の命を奪うことになるとは、
 親父も想像しなかっただろうよ・・・」

施設を脱出した三人。その施設はミンタカの近くにあった。
「こんな大きいもの作って、何をするつもりなんだろう?」とサギは思う。
ミンタカはお祭りムードだ。新皇帝がバアルハイトに決まったのでみんな騒いでいる。
そうだ、ジーナが心配だ。シェラタンへ向かう。

孤児院の二段ベッドに寝かされているジーナ。医者の大先生に診てもらっている。
サギがジーナのもとへ駆けつけると、ジーナが目を覚ました。
「もう大丈夫。心配しないで、サギ。翼はなくなってしまったけど、
 何とか意識はあるわ。こころは残ってるみたい」
「母さん・・・」
「そんな顔しないの。母さん、これでも人一倍こころは強い方よ。しばらくすればきっと良くなるわ。
 早く翼を戻さないと、サギが泣き出したときに慰めてあげられなくなるものね」
ジーナが無理をしているのは誰の目にも明らかだ。
「わかったよ母さん、わかったから、もうやすみなよ」
ジーナは再び眠りにつく。大先生はサギに言う。
「サギ、ジーナさんの状況は極めて悪いぞ。わしも長い間医者をやっているが、
 こんな症状は見たことがない。こころの翼を失うということはここまで酷いことなのか・・・」
医者の大先生もお手上げだと言う。
『サギ、これからどうする?』ギロが聞く。
「僕は、母さんを治す方法を探したい。母さんはこころの力を失ってしまったんだ。
 きっと、母さんのこころに届くような何かを見つければいいと思う。
 世界中巡っても探し出してみせる」
サギはミリィとギロに、行きたい所はないのかと聞いてみる。
ギロは生まれた意味を知るためドゥールへ、ミリィはネッカルで自分のことを話したいと言う。
キミは、出来ることならもう一度千年前に行き、ワイズマンがどうなったのか確認したいと思った。
 
8.それぞれの過去

「これが、泥雲(でいうん)・・・」
この泥雲の下にドゥールがある。毒のある雲が渦を巻いていて、向こう側がまるで見えない。
だが、スフィーダの推進力なら泥雲も苦もなく通り抜ける。

-古の大地ドゥール-
ドゥールは千年前の神々の戦いの時、汚染がひどかった土地で、
他の大陸のように空に上げられることもなく、千年前のままそこにある。
スフィーダはついにドゥールの港に到着した。近くの村を訪ねると、三人は妙に注目されている。
ドゥールの住民、土の民はみな仮面をつけているが、仮面をつけていないサギたちはやはり目立つ。
ギロだけは覆面をかぶっているので馴染んでいるが。
クラムリという、白い仮面の村長がやってきた。ギロを見て「御神体」と口走る。
何のことかと疑問に思うが、とにかくこの先のゲンマ村へ行って大カムロさまという偉い人に会えという。
クラムリと一緒にゲンマ村に向かい、大カムロさまのいる広間へ。
「大カムロさま、客人をお連れいたしました」
「空から来たと言ったな?」大カムロさまが聞く。
「はい。僕たちは空から来ました」サギは答える。
「して、どこの浮島かな?」
「ハッサレーです」
「ハッサレーと言ったのか、そんな、まさか・・・。いや、だからこそ、その人形も残ったか。
 ハッサレーは、千年前神々の戦いが行なわれた戦場だった。クヤム、アトリアといった
 古代の都市があった一帯の名だ。わしらが空に上げた大陸は5つ・・・」
アルファルド、ディアデム、サダルスウド、アヌエヌエ、そして今は姿を隠しているミラ。
「では、なぜハッサレーが空に?」
「かの大戦では、多くの神々が滅せられたと聞く。戦場だったハッサレーに残った神々の力で、
 自然と空に上ったのだろう」
大カムロさまは、サギたちに奥の部屋に行くよう促す。広間の左側の扉を開けて中へ。
その部屋の壁には、4つのくぼみがあり、そのひとつにギロそっくりの人形が立っていた。
「それは、遥か古代から伝わる人形でな、セギヌスと呼んでいる。代々の長が受け継いできた」
大カムロさまが説明する。セギヌスをしげしげと眺める三人。
『触れてもかまわんか?』
ギロが大カムロさまに聞く。許可が出ると、ギロはおそるおそるセギヌスに手をかざす。
セギヌスに触れた瞬間。
「なにか、頭のなかに流れ込んでくる・・・」

気が付くと三人は不思議な空間の中にいた。セギヌスの記憶が散在する世界。セギヌスのこころの中だ。
セギヌスの記憶を辿る。
人形は、最初、セギヌスとギロを含め4体作られた。彼らは神を殺すために作られた人形だった。
ギロは男性と女性、二人の魔導師が力を合わせて操る事になった。二人は夫婦か恋人同士のようだ。
マルペルシュロがアトリアに乗り込んだという情報が入ると、魔導師たちは人形を連れ、部屋を出て行った。
セギヌスは上手く動かなかったため、置いていかれた。
そしてしばらくして魔導師たちは帰ってきた。どうやら神を倒すことに成功したようだ。
ギロは、最後のマルペルシュロに止めを刺したとき、動かなくなってしまったので、
そのまま置いてきたという。残りの二体は完全に破壊された。
だが、安心するのも束の間、神の遺体から穢れが、毒が広がり大地を侵し始めているという。
マルペルシュロの遺体を使い、大陸を空に上げようという作戦を取った。
そして、土の民たちは残り、大地を守ると言う。
『・・・これでわかった。わしは神を殺すために作られた人形。千年前、”あの人”を、
 マーノと仲間たちを殺したのも、やはりわしだったのだ・・・』
ギロが後悔の念にかられたように言う。
「あの二人の魔導師、彼らの意識があなたの身体(からだ)に残っていた・・・」
「それを僕が掘り起こした・・・」
ミリィとサギは呆然としている。ギロはキミの方を向いて、言う。
「すまぬ。許してくれい」
”こっちも覚えていないわ”キミは答える。
「ギロ、”彼女”は何も覚えていないって」
『そんなはずはあるまい。気を使うな』
”・・・本当は、覚えてる”
「許してやってくれないか。覚えていないのはギロの方だと思うよ」サギはキミに言う。
「確かに、わしの記憶はサギに会ったときから始まっておる」
落ち込んでいるギロをサギが励ます。
「今のギロは仲間なんだ。僕はそう思ってる。”彼女”も、そう言ってくれてる」
「そうね、わたしもそう思う。ポンコツには変わりないけどね」
ミリィの言葉でギロは立ち直る。
さて、帰ろうと思うが、出口がわからない。とりあえず、最初に来た場所に戻ることにする。
その途中で、突然声が聞こえてきた。
「マルペルシュロ・・・殺す・・・!」
「え、まさか、”あの人”にセギヌスが反応してるの?」
セギヌスの精神が形となり襲ってきた。ギロと同じ術を使ってくるが、三対一では結果は見えている。
「セギヌスにも、マルペルシュロを殺すという、ただそれだけの意識が焼きついていたのね」
ミリィが感心したように言う。最初に来た場所に戻ると・・・。

セギヌスが置かれた部屋に帰ってきた。ギロは大カムロさまに、この部屋を封印し、
セギヌスを二度と人目に触れさせないようにと頼む。大カムロさまは引き受けてくれた。
サギたちはドゥールを後にする。

-閑寂の地ネッカル-
ネッカルはアルファルドの近くにある、赤苔に覆われた岩で出来た小さな浮島だ。
かつてラサラスだったことは想像に難くない。
ミリィはなぜか、無理にはしゃいでいるように見える。
「ここはね、子供の頃、いつも遊びに来ていたところ。魔法学校からの帰りに、
 無理を言って寄ってもらってたの。でも、荒れちゃってる・・・。
 ほら、見て!これ全部わたしが集めたのよ」
小石を積み上げた小山がある。
「ねぇ、向こうにももっと面白いものがあるのよ」
しばらく進むと、不思議な色合いの池があった。水面を覗き込むミリィ。
「今日は白だわ。この池は日によって色が変わるの。白の日はいいことがある、なんて占ってみたりね」
(青は運が悪い。黄色は素敵なハプニング。緑はピンチをチャンスに変える。赤は何もなし)
『そろそろ聞かせてくれんか、ミリィアルデ。・・・ぬし、バアルハイトを父と呼んでいたな』
しびれを切らしてギロが聞く。
「ええ。そのとおりよ」
『わしらはバアルハイトを止めるために動いていた。言わば敵だ。その敵の娘がなぜわしらと一緒にいる』
「わたしは、父さまに言われて、サギを監視していたの。サギが本当に精霊憑きなのか、
 それとも邪神憑きなのか、それを確かめるために。精霊憑きならいいけど、邪神憑きなら――」
『殺すというわけか』
「ええ」
『ジーナもそのためか』
「違う!おばさまのことは、わたしも何も聞いてなかった。だから、だからやめさせようと・・・」
当のサギは、二人から離れたところで黙り込んでいる。黙っているサギは不気味だ。何を思うのだろう?
「旅を続けるうちに、わたしだって、父さまのすることはおかしいと思うようになった。
 わたしも今では、父さまを止めたいと思ってる!ううん。娘のわたしが、一番強くそう思ってる。
 今までのこと、許してくれとは言わない。でも、これだけは信じて!
 父さまに、言われたとか、そんな理由じゃなくて、ただ、一緒にいたいの。
 ギロと言い合って、サギを困らせて、”あの人”と冒険して・・・ねぇ、何か言ってよ!サギ!」
サギはミリィの方へ進み出る。
「最初に会ったとき、僕に精霊が憑いてることを信じてくれたよね。あれも、嘘だったのかい?」
「ううん。サギとは会ったばかりだったけど、なぜか信じられたの。
 父さまはああ言ってたけど、この人がそう言うんだ、きっとそうなんだろうって。
 なぜだか、そう思ったの」
サギはさらにミリィに歩み寄る。息がかかるくらい近い。ミリィをまっすぐに見つめる。
「なら、いいんだ。ミリィが僕を信じてくれた。だから、僕もミリィを信じるよ。
 僕はミリィが好きだ。だから、一緒にいてほしい。これからも・・・」
「サギ・・・」
抱きしめあう二人。
「ごめんなさい・・・」
「いいんだ、ミリィ」
ミリィはサギから身を離し、ギロに向き直る。
「ギロも、ごめんなさい」
『今度だましたら承知せんからな。今回は許してやる』
「ありがとう。それから、”あなた”にも、ごめんなさい」
”気にしてないよ”とキミは答える。
「大丈夫。気にしてないって言ってるよ」
「うん。ありがとう」

サギたちはジーナを治す方法が見つからないまま、シェラタンに帰ってきた。
すると、医者の大先生がサギを呼び止める。
古い文献の中に、ジーナに効きそうなものを見つけたとのこと。
「こころな草(ぐさ)」という草で、神の時代、人々が常食していて、
それによってこころの力を強めていたとのこと。これなら、ジーナのこころに届きそうだ。
その草は、千年前のマタルというところに生えていたらしい。
千年前か・・・でもマーノの物語も終わってしまったし、もう千年前には行けないのではないか?
そんなことを考えていると、突然、ミリィが叫ぶ。
「そうよ、”あの人”に昔を思い出してもらうのよ!今までは、遺児が倒されるときに、
 ”あなた”の記憶がわたしたちのこころに流れ込んできた。
 今度は違う。”あなた”が自分で思い出すのよ。・・・何か、過去を思い出せるものはないかしら?」
「・・・茨の時計台!」
サギは時計台の前でこころを集中させる。キミは千年前の、クヤムの街並みを脳裏に描く。
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目を開くとそこはクヤムだった。
「ほーら、ちゃんと来れた」ミリィは得意げに言う。

-マタル高地-
巨大な蓮の葉の下に立っているおじさんがいるので話を聞いてみる。
ここは人のこころを折るという雨が定期的に降るところなのだという。
所々に生えている蓮の葉の下で雨宿りしながら進む。
奥のほうに、白く可憐な花が咲いているのが見える。あれがこころな草か。
だが、そこには先客がいた。巨大なモンスターだ。とりあえずそいつを倒す。
倒したと思ったら、次々と巨大なモンスターが登場し、サギたちに襲い掛かろうとする。
相手にしていたら切りがない・・・そう思っていると向こうから何かが飛んできた。
「白龍!綺麗・・・魔法学校で教わった通りだわ」
ミリィが感激している。白龍はブレスを吐くと、モンスターたちを次々と倒していく。
全てのモンスターを倒すと、白龍はどこへともなく飛び去っていった。
「わたしたちのこと、助けてくれたのかしら」
ともかく、こころな草が手に入った。

サギたちは再びアトリアに来た。
相変わらずワイズマンの呼んだ龍や手下たちがうろうろしている。
ここで自分は死んだのだ。そしてギロも動かなくなり、捨てられた。
ここはやがてヌサカンとなる場所なのだ。キミはそんなことを考えた。
「この感じ・・・ワイズマンか?」
サギが言うとおり、ワイズマンがいた。死体の山を積み上げ、その頂上に立ち、
人々や神のこころを食べている。
やはり、ワイズマンは民のことを考えてマグナス化などと言っているわけではなかった。
ワイズマンは人のこころを喰らう悪魔だったのだ・・・。
「ほう、まだ残っていたか」
サギたちを見てワイズマンが言う。
「む、汝らのこころ・・・面白い。黒龍よ!」
ワイズマンは黒龍を呼び出した。先ほど見た白龍と同じくらい強そうだ。
「約束のこころだ・・・我とともに喰らおうぞ!」
まず黒龍と対戦し、そしてワイズマンと対峙する。
ワイズマンは恐ろしく強い術を繰り出してくるが、何とか勝つ。
ワイズマンの身体が蒸発するように消えていき、あとには鉄の鎧と仮面が残った。
「これで、あの人たちも少しは浮かばれる・・・よね?」
「うん。そう思う。きっと、そうさ」
サギが自分に言い聞かせるように言う。キミもそう思うだろう。

クヤムの時計台の前で、ボロッボロの時計台を思い描く。
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シェラタンへ帰ると、早速孤児院へ向かう。
ジーナにこころな草を飲ませるサギ。だがすぐには変化が見られない。
ジーナに付き添ううちに、サギは眠ってしまう。
キミは、こころな草の効果でサギのこころがジーナのこころと繋がっているのを感じる。
そして今は、キミのこころも二人と繋がっている。
キミは昔のサギを回想してみる。二人もきっと同じ夢を見ているだろう。
「女が逃げたぞ!被験体も一緒だ!」
赤ん坊のサギを抱え、皇帝の館の廊下を走るジーナ。
「また泣いているの?しょうのない子ね」
「ねぇ、母さんの翼見せてー!」
泣いている幼少のサギはジーナに翼を見せてくれるようせがむ。
『また泣いておるのか?ジーナが心配しておるぞ。翼が見たいならそう言えばいいだろう』
ギロは茨の時計台の上を見上げる。サギが翼を広げて飛び降りてくる。
「そんなんじゃないよ。そうさ、いつまでも子供じゃないんだ」
『本当にいいのだな?しばらくは戻れんぞ?』
定期便に乗っているサギとギロ。
「うん。こんなチャンスないからね。出身は問わない上に、手当てもいいみたいなんだ。
 募集は一般兵だけど、いずれ暗黒部隊にとりあげられれば、もっと稼げる。
 そうすれば、母さんにだって・・・」

なんだか走馬灯のように一気に思い出してしまった。
ん?思い出す、という表現では何かおかしい、とキミは考える。
ゲーム開始時以前、15年前から、そして1000年前にも、キミはゲーム内に存在していた。
でも、今考えてみるとそれはおかしい。
キミは「Never7」というゲームを知っているだろうか。
そのゲームの中には、妄想が現実になる、という学説が出てくる。
”心の底からそれを望み、信じて疑わない場合、奇跡が起こり、それは現実となる――”
もちろん、これはゲームの中だけのトンデモ理論だが。
でも、この学説のように、サギもゲーム開始時の夜、奇跡を起こしたのではないだろうか。
サギは精霊の、伝説のような強い力を望んでいた。そして、自分が精霊憑きだと思って疑わなかった。
そして、あの夜、サギが目覚めるとき、サギは奇跡を呼び起こした。
キミのようなプレイヤーがバテン・カイトスIIの世界に干渉するという奇跡を。
キミは精霊のような存在になり、サギは精霊憑きのような力を得た。
そして、奇跡により過去は変わった。いや、過去を決定した、と言ったほうが正しいか。
1000年前に遡り、キミはマーノになった。だから、15年前からキミはサギに憑依していることになった。
それから先は、キミの想像がそのまま、サギとキミの思い出だ。
キミがサギに最初に話しかけたとき、なんと言ったのか?
サギがギロを掘り出したときはどんな感じだったのか?
そんなゲーム内で語られない過去の出来事は、キミが自由に決定できるのだ。
だが、そんな奇跡は一時的なものだ。長くは続かない。
そう、ゲームをクリアするまでしか続かない・・・。

「母さん・・・」
サギが目を覚ますと、ジーナはベッドから身を起こしていた。
「母さん!気が付いたんだね」
「おはよう、サギ。ありがとう。あなたたちのおかげね。サギ、ギロ、ミリィアルデさん、
 そして”あなた”も。本当にありがとう」
ジーナはキミにも謝辞を述べる。サギは無言で立ち上がる。
「サギ、あなた、やりたいことを見つけたんでしょう。顔を見ればわかるわ」
「うん。わかった。僕、行って来るよ。でもまた帰ってくる」
「ええ。待ってるわ」

シャナトと戦ったとき手に入れた力、あれならマキナアルマにも負けない。
三人はアヌエヌエに飛び、天の樹の根脈へと再びやってきた。
相変わらずヴァララがマキナアルマに乗ってマキナ化の作業をしている。
「また精霊憑きの・・・いや、邪神憑きのボクちゃんか。またやるつもりなのかい?」
「やるさ!何度でも。勝手にマキナ化を始めて!こころの翼を無理矢理抜いて!
 目の前でそんなの見せられて、放っておけるわけないだろう!?」
「元気がいいねぇ。いい根性してるよ。あんたのそういうとこ、とっても好きだよ。
 おいでよ、そこまで言うならやってやろうじゃないか!!」
ヴァララが乗ったマキナアルマは臨戦体勢に入る。サギはキミに言う。
「力を貸してくれ!こころをひとつに・・・」
”やってみる!”
あのときのように、キミは意識を集中させる・・・成功だ。
サギたちはマキナアルマを破壊に追い込んだ。
「どうなってる?まるで別人じゃないか!ちっ、まずい!」
ヴァララはマキナアルマから脱出する。爆発するマキナアルマ。
「それが、邪神の力ってやつかい?右手がまるできかなくなっちまった」
「教えてくれ、ヴァララ、なぜマキナ化に力を貸すんだ。暗黒部隊にいたとき、
 あなたは僕を気遣ってくれた。あなたは優しい人だと思ったんだ。それなのになぜ?」
サギはどこまでいい人なんだろうとキミは思う。
「・・・仕事だからさ。仕事のためなら女だって捨てる。それがあたしの選んだ人生さ。
 さあ、わかったら続きをやろうじゃないか。このまま逃げ帰ったんじゃ、
 隊の連中にしめしがつかないからね」
ヴァララは肉弾戦で決着をつけようとする。
「やめよう、ヴァララ。あなたとはこれ以上戦いたくない。あなたが逃げないなら、僕たちが逃げる」
『ぬし、どんな理由かは知らんが、死んでしまったら何もないのだぞ?
 今のサギに敵わぬことは、自分でもよくわかっておるだろう』
ギロもやめるよう説得する。
「・・・フ。確かにね。お人形の言うとおりだ。まだ死ぬわけにはいかない。
 あんたの言うとおり、逃げ帰るとするよ」
「はは!よかった」
サギは笑う。

久々に通信機に通信が入る。
「話したいことがある。私のところまで来てくれ」
相変わらずネロはそっけない。
 
9.綺麗な嘘と汚れた真実 -要塞タラゼド-

ネロの元へ馳せ参じる。
「遅くなりました」
「ついに、要塞タラゼドが完成してしまった。皇帝となったバアルハイトは、
 タラゼドを拠点にさらにマキナ化を進めるだろう」
サギが拘束されていただだっ広い施設、あれはタラゼドの一部だったのだ。
そのとき、地面が揺れる。なにごとかと思っていると、兵士がやってきて言う。
「ネロ様、大変です!タラゼドが空に!」
一同は外に出る。空を見上げると、金色に輝く、巨大な要塞が空に浮いている。
「なんと巨大な・・・大陸と変わらんぞ!しかし、これほどとは・・・」
ネロが驚嘆する。あんな巨大なものがマキナの力だけで浮いているとはすごい。
世界中の人々が驚いている。ギロがミリィに聞く。
『ミリィアルデ、ぬしは何も知らぬのか?』
「知らない・・・父さま・・・いったい何を・・・?」
「む?何か出るぞ!投射映像か?」
ゲルドブレイムが説明チックな台詞を言う。投射映像にはバアルハイトが映っていた。
投射映像のバアルハイトが演説を始める。
「帝国国民の諸君、そして全大陸の指導者並びにその民たちよ。
 帝国皇帝バアルハイトの名をもって、ここに宣言する。
 帝国アルファルドは大陸を放棄、今後は、この浮遊要塞タラゼドを帝国本土とする!
 そして、帝都ミンタカは、タラゼド内のヴェガへと遷都、
 帝国アルファルド改め、帝国タラゼドとする!」
バアルハイトの演説は続く。いつ尽きるともわからない邪神の力で浮いている大陸などは捨てて、
今すぐこのタラゼドへ移住するようにと説く。
ただし、移住するには条件がある。こころの翼を捨てることだ。
そして、やがては全ての大陸を破壊すると言う。
「やつめ!皇帝の座に就いて、ついに本性を表したか!」
ネロが怒っている。ギロがあきれたように言う。
『大陸のマキナ化には失敗した。今度は壊すと言うわけか。まるで子供だな』
「そんなことはさせない!タラゼドに行こう!バアルハイトと決着をつけるんだ」
サギが意気込むと、ギロが言う。
『相手はミリィアルデの親だぞ。ぬしに出来るのか?』
「それは・・・やるしかないよ」
「待って、父さまは話のわからない人じゃないわ。まずはわたしに話をさせて?」
ミリィが言う。
「ああ、もちろんだよ。でも、もしものときは・・・そのときは、ミリィにも覚悟してほしい」
「うん。わかった」
「この世界の命運は、君たちにかかっている。大げさではない、真実だ」
ネロは励ますように言う。
「マキナアルマに対抗できるのがサギ君たちしかいない以上、その通りでしょうな」
ゲルドブレイムは仕方ないといった表情だ。
「では、行ってまいります」
サギたちはスフィーダに乗り込み、タラゼドを目指す。

-マキナ都市ヴェガ-
巨大な空間の中に複雑に通路が交差している。未来都市と呼ぶにふさわしい。
何もかもが揃い、働かなくても楽に暮らせるはずなのに、人々はなぜか無気力だ。
こころの力を捨てたせいなのか。
見覚えある丸い巨大なエレベーターがある。
広すぎて移動がたいへんだ。要塞内部へと向かう。

-浮遊要塞タラゼド内部-
入り口の警備の兵士を突破し、内部へ。
エスカレーターを上り下りして奥へと進む。どこへ行っても似たような風景で迷いそうだ。
途中にエスカレーターの動く向きを反転させる装置が置いてあるが、
サギは帝国軍にいたときに得た知識を活用して操作する。簡単なものなら動かせるらしい。
モニターを食い入るように見ている兵士たちの後ろを忍び足で通り過ぎると、大きな扉がある。
「なんだか、この先で僕を呼んでる気がする・・・」
扉を開け、その先の動く歩道を進むと、がらんとした部屋にでた。
その中心には、遺児が納められた透明な円柱のカプセルがある。
「そうか、僕じゃなくてキミを呼んでいたのか」
「助けられないの?」
”やってみましょう”自身はないけどキミは言ってみた。
「うん。僕も手伝うよ」
サギとキミは遺児が開放されるよう念じる。すると、遺児はすうっと消えていった。
「開放、したの?」ミリィが聞く。
「うん。遺児が殺られたときみたいに、イヤな感じはしなかったから、きっとそうだと思う」
先ほどのモニターの部屋に戻ると、マキナは機能しなくなっており、兵士たちもいない。
このシステムは、どういう仕組みだかわからないが、遺児がいないと動かないらしい。
サギたちは、マキナに組み込まれた遺児を次々と解放していった。
エスカレーターを乗り継ぎ、とうとう広間に面した廊下にたどり着いた。
広間は吹き抜けになっていて、ガラス窓から広間が見える。サギたちがいるのは3階だ。
広間にはバアルハイトがいた。バアルハイトは何か兵士に話すと、奥の扉に消えていった。
あの扉の先が司令室らしい。サギたちはガラスをぶち破り、広間に降り立ち、司令室の扉を開ける。

「来たか・・・」
バアルハイトは窓際に立っている。
「バアルハイト!今すぐタラゼドを戻せ!各大陸の指導者も力を貸してくれている。
 あなたの計画は失敗したんだ!」
「サギの言う通りよ、父さま、お願い、もうやめて!」
バアルハイトは表情を変えずに言う。
「失敗?違うな。全ては計画通りだ。サギ君、最後の邪神憑きである君を葬ることで、
 私の計画にも、長かったこの戦いにも、決着がつく。ミリィアルデ、それも全てお前のおかげだ。
 よくサギ君を連れてきてくれた」
「違う!・・・父さま、違うの!わたしはもう、父さまの言いなりのわたしじゃない!
 ここへはわたしの意志で来たの。父さまに言われていたからじゃない。
 父さまのしていることは間違ってる!だから!わたしは父さまを止めるために、ここに来た」
「なるほど、このところ報告がないとは思っていたが、そうか、そういうことだったか」
「聞いて、父さま。人のこころの持つ力は、決して悪いものじゃない。
 わたし、サギと旅を続けていくうちにわかったの。いろんな人と出会って、いろんな経験をして・・・。
 ずっとお屋敷で暮らしてきたわたしには驚くことばかりだった。
 魔法学校で教えてもらえなかったことばっかりだった!レイドカーン王のギバリ君への友情、
 ロドルフォさんの母国を守る勇気、コレルリさまの世界を憂う高潔、おばさまの子供を想う真情。
 みんなこころを持っていた!そして、わたしの中にあるこの気持ち、サギを想うこのこころ・・・。
 なくしたくない!なくしてしまってはいけないの!
 こころを失わせてまで・・・そんなマキナ化が何になるの?マキナこそ、この世には必要ないのよ!」
ミリィの決死の説得は、破裂音により中断される。バアルハイトが小型の拳銃を取り出し、ミリィを撃った。
仰向けに倒れるミリィ。サギが駆け寄る。
「ミリィ!ミリィ、しっかりして!」
ミリィの服がはだけ、肩と背中が剥き出しになっていた。もっと血が出るかと思ったが、出血はひどくない。
サギが傷口を検めようとすると、そこには――。
「これは・・・マキナ?」
撃たれたところから青白い火花が飛んでいる。
「これでもマキナは必要ないか?ミリィアルデ!マキナの力でその生を拾ったお前が、
 マキナを否定するというのか?15年前のあの事件で、遺児にズタズタにされたお前を
 生き長らえさせたのは何だ?他でもない、このマキナだ。違うか、ミリィアルデ!」
「ごめんね・・・ごめんね、サギ。わたし、まだ、嘘をついてた。
 父さまの言うとおり、わたしの身体はほとんどマキナ。でも、このおかげで生きていられるの。
 でも、信じて。わたしのこころはわたしのまま、ずっと変わらない」
「しゃべったらいけないよ、ミリィ。いいんだ、そんなこと。前にも言ったろ?
 僕はミリィを信じてる。だから、今はじっとして・・・」
「ごめんね・・・ごめんね・・・」
黙っていたギロが口を開く。
『自分の野望のためには、実の娘までその手にかけるか・・・。ぬし、踏み外したな?許せぬ・・・』
「小ざかしい、人形風情が!」
ギロはバアルハイトに飛び掛っていくが、返り討ちにあう。倒れるギロ。
『くそったれ!身体が言うことをきかん!』
バアルハイトは細身の剣を取り出す。
「立ちたまえ、サギ君。決着をつけようじゃないか。君は私が倒す。それが宿命だからな。
 行くぞ、ダイモン!この一戦で全てが終わる。その力、借りるぞ!」
ダイモン?どこかで聞いたことが・・・などと考える暇もなく、サギとバアルハイトの一対一の戦いになる。
サギとキミは息を合わせ、確率変動を何度も起こす。
「さすがだな、マルペルシュロの力を見事に融合させている」
「当たり前さ!僕たちの力を甘く見るな!」
「確かにな。まさか、あの成功例か・・・完全体が生まれていたとはな」
「・・・シャナトの言ってた研究か?」
「話してやろう。君には聞く権利があるからな」

バアルハイトは話す。
15年前、皇帝オーガンがハッサレーに行ったときに、マルペルシュロの遺体を見つけたことから始まった。
バアルハイトはその研究の責任者になった。
神を被験体に宿らせる所までは順調だった。だが、ある被験体が暴走するという事故が起こってしまった。
そのせいでミリィは瀕死の重傷を負い、バアルハイトの妻は死んだ。
被験体たちは開放され、研究は中止。バアルハイトは全責任を負わされた。
何もかも嫌になったバアルハイトはミリィを生命維持装置に入れ、放浪の旅に出た。死にたいと思った。
死にたいと思いながら、ミラのネクトン(前作でカラスはここでキミに会った)をさまよい歩いていると、
バアルハイトに語りかける声が聞こえ、”死んではダメだ”と言われたという。
それが精霊ダイモンだった・・・。バアルハイトが精霊憑きだったとは。
「皮肉じゃないか?死を覚悟した者に、世界の命運を左右する英知と力が授けられたのだからな!
 だが、私の戸惑いとは裏腹に、精霊は伝説通り精霊だったのだ。
 精霊は、私の求める知識を与えてくれた・・・マキナだ。帝国に戻った私は、
 マキナの開発に打ち込んだ。マキナで世界を救うために・・・。
 そう、あの遺児の力すらも、マキナでなら押さえ込むことが出来るからだ。
 これが、精霊憑きである私の宿命だ。もはや、過去の過ちの責任などという小さい理由ではない。
 わかったろう、私の戦う理由が。君を倒さなければならない理由が!」
「だからって、それならどうして、こころの力まで奪おうとする?」
サギとバアルハイトの鍔迫り合い。
「こころの翼は神の時代のなごりだ。その力に頼っていては、神々の戦いと同じ悲劇を生む。
 千年前、我々の先祖は、こころの力に溺れた。その結果、何が起こった?
 世界を汚し、大陸を空に上げねばならぬほどの大汚染を引き起こす戦いが始まった。
 そして、それは再び遺児を生む!違うか!サギ!」
「だから、なんだってんだ・・・だから、どうしたってんだ!!綺麗ごと並べて!
 そんなの、全部、自分のための言い訳じゃないか!」
「言い訳だと!?」
「そうだ。自分の都合で決め付けて!勝手に想像して!マルペルシュロの遺児だって、
 お前たちが触れさえしなければ、暴走することもなかったはずだ。
 こころの力に溺れるだって?誰にそれがわかる?そんなの昔の話だろ!
 やってみなけりゃ・・・そんなの、やってみなけりゃわからないじゃないか!!」
「幼稚な考えだな」
「なんだと!?」
「人なんてものは水と一緒だ。低い所へ流れ、溢れ出し、自らが自らに溺れる。
 それを囲ってやろうというのだ。私と、ダイモンとで!!」
「この!あなただって人だろうに!」
「話は終わりだ。今度こそ、君と君に宿るものに止めを刺してやる」
「そうはさせんぞ。”あの人”とサギは死なせん。このわしがいる限り!」
いつの間にかギロが立ち上がっている。
「わたしも、父さまは間違っていると思う。わたしは、人のこころを信じたい。
 でないと、自分も信じられなくなってしまうもの!」
撃たれた傷口を押さえながらも、ミリィも立ち上がる。
「いいだろう。世界を導く私に、血の繋がりは無用だ。まとめてかかって来い!!」
「行くよ!」
サギはキミに声をかける。
三対一ながら、バアルハイトは強い。精霊憑きらしく、強力な精霊魔法も出してくる。
だが、バアルハイトは次第に押されてきて、ついに、負けた。
がっくりと膝をつくバアルハイト。
「なぜだ、ダイモン!なぜ力を貸してくれんのだ!」
キミにも精霊の声が聞こえてきた。
”間違っていた・・・”
「間違っていた?どういうつもりだ、ダイモン!」
ダイモンは黙っている。代わりにサギが言う。
「ひとりでやっきになることはない、きっとそう思ったんだ。だから、力を貸すのをやめた・・・」
「そうなのかダイモン!私の独りよがりだと?」
「そうよ、やり直しましょう、みんなで。ね、父さま。やり直せること、それだって、
 人のこころの力だもの」
「やりなおす・・・私が・・・」
バアルハイトはいきなり血を吐いて倒れる。
「父さま、しっかりして!!」

そこへネロがゲルドブレイムを伴って登場した。
「バアルハイトを倒したか・・・」
「軍務官!来ておられたのですか?」
「フフフ、サギ、お前にはずいぶん裏切られてきたが、
 ここに来てようやく私の望む結果を出してくれたな」
ネロは杖をつきながらバアルハイトに歩み寄ると、剣を取り出し、刺した。
「軍務官!?」
「精霊憑きというやつも、言うほど大したものではなかったな。
 こうして、苦しんでいるさまは、まるで人と同じではないか」
『ぬしも、精霊憑きではないのか?』
ギロが尋ねると、ネロの顔が醜く歪む。
「ハハハハ・・・精霊憑きという肩書きには助けられたよ。精霊憑きと名乗るだけで、
 誰もが私を尊敬してくれた。こいつが出てくるまではな!
 もっとも、精霊と話しているように演じるのは、少々骨が折れた。
 そろそろ潮時だと思っていたところだよ」
『いけすかんやつだと思っていたが、やはりな』
ギロが言うと、ゲルドブレイムが言い返す。
「人形ごときが何を言うか!ネロ様のなさることだ。良いことに決まっている。
 ・・・ネロ様の深謀遠慮には頭が下がります。これで、この世界も平和になります」
「平和?そんなものは与えんよ。これからの世界は、私の管理のもとに再構築される。
 バアルハイトの残した遺産、マキナと軍事力を背景にな。
 平和など、民をつけあがらせるだけだ。そんな甘い餌を与えはしないよ。
 手始めに、私を選ばなかった元老院のクズどもをこの世から消してやるとするか」
サギは呆然として言う。
「僕たちは、あなたに利用されていたと?」
「サギ、お前は駒だったんだよ。マキナに対抗するためのな。邪神憑きのお前なら、
 精霊憑きとまではいかずとも、同じ遺児退治に役立つと思ってな」
「邪神憑き・・・そこまで知っていたのか?」サギは敬語を使うのをやめた。
「当然だろう。15年前の研究で、君を被験体とするよう薦めたのは、
 他でもない、私だからな。君の母親、ジーナと言ったか、
 あれは私に仕えていた女でな。子を身篭ったと聞いた私はすぐにオーガンに知らせたよ。
 ま、そういうわけだ。ついでに教えてやろう。あの女の翼を抜くように仕向けたのも、
 私がやったことだ。あの場で君を暴走させ、遺児殺しで点数を稼いで、
 バアルハイトに泥がつけばいいと思ってね」
「それじゃあ、シャナトは――」
「やつも私の手駒だ。あれは、なかなか使える男だったな」
「貴様ァ・・・」
サギはネロに切りかかろうとするが、ネロは剣圧を飛ばしてきて、倒れてしまう。
「いずれゆっくり殺してやる」
ネロはエレベーターに乗って去っていこうとする。ゲルドブレイムが止める。
「お待ちください、ネロ様。私も一緒に行きます」
「わからんやつだ。私は全てを手に入れた。もう必要がないんだよ、なにもな」
「私をお見捨てになるのですか」
「昔のお前は美しかったよ。だが今は違う。古くなったおもちゃは場所を取るだけだ。
 捨てるのが当たり前だろう?・・・諸君、失礼させてもらうよ」
エレベーターに乗り下へ行くネロ。ゲルドブレイムもどこかへ消える。サギはようやく身を起こす。
「父さま、しっかりして!やり直すのよ、これからみんなで!」
「ミリィアルデ、すまない、本当に、すまない」
「やめて!謝らないで、父さま!死んじゃいやだ!」
「サギ君、ミリィアルデのこと、許してやってくれ。あれは全て私がやらせたことだ」
「・・・わかっています」
「さらばだ、ダイモン。これでキミの物語は終わる・・・」
キミはダイモンがバアルハイトから離れていくのを感じる。
「父さまぁああああ!!」
バアルハイトは静かに息を引き取った。しばらくたった後、ミリィが立ち上がる。
「さあ、二人とも!ぐずぐずしてられない、ネロを追わないと!」
『ミリィアルデ、カラ元気はよせ。泣いてもいいんだぞ』
ギロが言うが、ミリィは気丈にも涙をこらえている。
「へい・・・きよ。泣くのは後からだってできるもん。今は、泣いてる暇なんて・・・」
「わかった・・・ネロは、この先の中枢部に向かったはずだ。行こう」

-浮遊要塞タラゼド中枢部-
ネロを追って、下へ下へと降りていく。
最下部に大きな部屋がある。向こうの壁際に遺児が収められた例のカプセルが4つも置いてあり、
その前にコンソールが一台置いてある。ネロはコンソールの前に立っていた。
「ネロ、今までの借り、返させてもらう!」
「遅かったな。丁度マキナの調整が終ったところだ。見ろ、便利な物を作ったものだ。
 人なんぞよりよっぽど扱いやすい」
ネロがコンソールを操作すると、床に配置された10個ほどの装置から、
それぞれ触手のようなマキナが生えてきた。
『御託はあの世で並べるんだな。サギ、さっさと終らせるぞ』ギロが声をかける。
「フン、そう簡単にいくかな」
「いくさ!いかせてやるさ!もう考えるのはおしまいだ。理屈じゃない!
 こころの中の何かがお前を消し去れって言ってる!僕はそれに従う!
 消えてなくなれよ!ネロ!」
サギはそう言うが、何かって自分のこと?とキミは思う。
ネロは剣を取り出す。そしてなんと、杖を投げ捨て、悪かったはずの左足をしっかりと踏ん張る。
マキナの触手を蹴散らしながらネロに近づいていく。ネロは触手で防御してくるので、
全ての触手を倒さねばならない。ついにネロは負ける。
「まだ、終わりではない。まだマキナは使える。やられてたまるか!」
ネロがコンソールを操作すると、床の装置からまた触手が復活した。
「そうだ、いいぞ、あいつらを喰ってしまえ!・・・な、なんだ!?どうした!」
触手が誤作動を起こし、逆に触手に食べられてしまうネロ。
『相応しい最期だな』
「これで、終ったの?」
「そうさ、これで終わりだ」

サギたちが戻ろうとしたとき、突然声が聞こえてきた。
「匂う・・・人のこころの匂い・・・」この声は・・・ワイズマン。
「いる・・・こころの力を溢れさすもの・・・。心地よい、恨みのこころ・・・。
 千年彷徨い続けたのも無駄ではなかった」
ワイズマンはネロを取り込み、ネロ=ワイズマンとして復活した!
4つの遺児のカプセルが割れる。サギたちはワイズマンの精神世界へ取り込まれた。
足元も上空も、右も左も満天の星。果てのない空間。
「貴様たちのこころも歪んでおるぞ。神ともつかぬ半端なこころを共有する愚かな少年よ・・・。
 殺戮兵器にこころを残した哀れなツガイよ・・・。
 マキナに依存する、人ともつかぬ悲しい少女よ・・・。
 フフフ・・・ハハハ・・・我と共にあれ!」
ネロ=ワイズマンはサギたちを取り込もうと襲い掛かってくる。
サギたちはネロ=ワイズマンに挑むが、負けそうになり、倒れてしまう。
「くそッ!立たなきゃ、立たなきゃやられる!」
サギは立とうと身を起こすが立ち上がれない。
そのとき、サギに肩を貸し、立たせようとする人物が現れた。金髪で背が高い。
「立てるか、サギ、マーノ!」
「ティスタ!」
「いいか、あいつのこころに引かれてはダメだ。自分のこころを信じろ」
「ふん、ひとつこころが増えたか。いいだろう。まとめて呑みこんでくれる」
ネロ=ワイズマンの一撃がサギに向かって放たれる。
当たる、と思い目を伏せるが、当たらない。目を開くと、攻撃を受け止めている人物がいる。
「相手の動きをよく見ること。ちゃんと教えてあげたのに、忘れちゃったの?」
「ピエーデ!」
そしてさらに、サギの右手を掴む、がっしりした腕。
「握りが甘くなってるぞ。お前の刀は片手じゃ無理なんだ。しっかり持てと言ったろう?」
倒れているミリィとギロを見て手を振る恰幅のいい人物。
「おーい!大丈夫。こっちの二人も生きてるよ!」
「ペッツ!ポルコ!」
「マーノ、いや、キミ・・・そして、サギ。
 俺たちはずっと見ていた。お前たちのしてきたことは間違っちゃいない」
ティスタ兄さん・・・。
「そうだ、自信を持ってやれ。その自信があれば、あいつに呑みこまれることもない」
ペッツ兄さん・・・。
「そう、そして不安になったら、一番大事な人を思い出すの。自分をしっかり持って!」
ピエーデ姉さん・・・。
「おいらにゃ、よくわからないけど。キミとサギなら、きっとできるよ」
ポルコ兄さん・・・。
「じゃあな」
兄さん、姉さん、ありがとう。
4兄弟は手を振りながら、消えていった。ミリィとギロは立ち上がった。
「サギ、平気?誰かと話していたみたいだけど」
「うん、昔の仲間とね。・・・いや、なんでもない。さあ、みんな!今度こそあいつを倒す!これで最後だ!」
サギたちはやがて、ネロ=ワイズマンを打ち破る。精神世界から戻ってきた。
カプセルの中は空になっていた。ネロ愛用の杖がうつろな音を立てて転がる。
「なんとか・・・倒したね」
「少しでもこころに隙を見せたら、取り込まれてしまうところだった・・・。
 でも、もう呑まれると思ったとき、サギの顔がこころに浮かんだの。だから、わたし、頑張れた。
 それと、ポンコツ人形のことも思い出してあげたわ。こころの端っこーの方にね」
ミリィがつとめて明るく言う。ギロも言い返す。
『ほう、ぬしもか。奇遇だな。わしもそうだぞ。鬼のような形相のぬしが出て来おってな。
 こりゃあ、まだ終われぬと思ったぞ』
「ねぇ、サギは誰を思い浮かべたの?」
「ぼ、僕は・・・」
サギは言いよどむ。ミリィ?ローロ?それとも・・・。
”もちろん、わたしでしょ?”キミは思い切って言ってみた。
「うん。キミのことを考えてた。初めて、キミが語りかけてきたときのこと。
 そして、こころをひとつにしたときのことをね」
そんなふうに言われるとちょっとはずかしい。

タラゼドが揺れ出す。サギたちは来た道を戻る。
突然、サギの叫び声がしたのでミリィとギロが振り返ると、サギは謎のマキナのアームに絡めとられていた。
侵入者用のトラップだろうか。
『サギ、大丈夫か』ギロが声をかける。
「だ・・・いじょうぶ・・・けど・・・なんだか・・・こころが・・・」
キミは助けてと言ったが、声はサギに届かなかった(エラー音が鳴ります)。これはヤバい。
サギとキミはぼんやりとした意識のなかで、ミリィとギロを見ている。見ることしかできない。
『これは人のこころを奪う仕掛けではないのか?』
「ええ、このままじゃサギのこころがなくなっちゃう!」
アームを外そうとするがビクともしない。どこかに解除装置があるはずだからと、それを探すミリィ。
近くに操作が複雑そうなコンソールを見つけた。隣には扉がある。
ミリィが言うには、これはマキナの心臓部に当たるので、これをどうにかすればマキナが停止するとのこと。
『ぬし、できるのか?』
「ええ、できる・・・はずよ。ちょっとやってみる」
ミリィは作業をしながら話す。
「ねぇ、ギロ。あなたとは、喧嘩ばっかりだったわね。出会ったときからずっと」
『改まってどうした?』
「わたし、嫉妬してたのよ。サギの側にはいつもあなたがいたから」
『ぬしだってずっと側におっただろう』
「いたけど、でも、わたしはサギを監視する側。あなたはいつもサギを守ってた。
 何も考えずにサギを守れるあなた・・・わたし、嫉妬してたんだわ」
隣の扉が開く。1畳ほどの小さな空間がある。高圧電流が流れているようだ。その前に立つミリィ。
「ギロ、離れて。どうやらマキナが足りないみたいなの。わたしなら、そのマキナの代わりになれる。
 この身体のこと、今ならよかったって思えるわ。これで、わたしもサギを守れる側になれる。
 ・・・じゃあね、ギロ。わたし、あなたのそのぶっきらぼうなとこ、大好きだった。
 今まで意地悪言ってごめん。・・・さよなら、サギ」
ミリィは死ぬ覚悟でその空間に飛び込もうとするが、それよりも先にギロが飛び込んだ。
『マキナの代わりなら、わしにも出来るだろう?』
「どうして!」
『サギには、わしよりも、ぬしが必要だ。そしてぬしには、サギが必要だ。それだけのことだ。
 ぬしのこと、わしも嫌いじゃなかったぞ。さらばだ、ミリィアルデ!サギのこと、頼む』
無常にも扉が閉まる。扉をこぶしで叩くミリィ。へたりこみ、号泣する。
そこへアームから抜け出したサギが来る。
「サギ!ギロが・・・ギロがぁ!!」
サギはやさしくミリィをなだめる。
「もう泣かないで、ミリィ。さあ、急いでここを脱出するんだ。でないと、ギロのしたことが無駄になってしまう」
「・・・うん」

タラゼド内部を抜け、ヴェガを通り過ぎ、スフィーダを泊めた港へ来たが、
そこにはスフィーダはなかった。
足元の空を覗き込み、ミリィが言う。
「この高さだと、こころの翼ではとても飛べない・・・」
そのとき、タラゼドが爆発を始め、その衝撃でミリィは気絶し、足を踏み外す。
空をまっさかさまに落ちていくミリィ。
「ミリィ!!」
サギは夢中で翼を広げ、空へ飛び込む。やがて、サギはミリィに追いつき、引き寄せ、抱きしめる。
気絶していたミリィが目を覚ます。だが落ちていくスピードはそのままだ。
「わたしたち、死んじゃうの?」
「わからない・・・」
「サギ、離さないで・・・」
そのとき、飛んできたスフィーダが二人を受け止める。
「無事かい?ボクちゃん」
「ヴァララ!どうして?」
「サギさんを助けに行くから、船を出せっておどされたんです」運転手が言う。
「変な言い方するんじゃないよ!あたしは、ただ・・・ボクちゃんを助ける仕事をしようと思っただけさ。
 勘違いするんじゃないよ。これも仕事さ」
「仕事でもいいさ。ありがとう、ヴァララ」
スフィーダは無事、ミンタカの港に到着した。
レイドカーン王、ギバリ、ロドルフォ、パロロ二世、コレルリ等々の面々が、
サギたちを心配し、タラゼドに近いこのミンタカで待っていた。

数日後。朝ぼらけのミンタカの港。スフィーダが夜明け前の光を受けキラキラ光る。
サギとミリィがやってくる。
「どうしたの、ミリィ。早くしないと、夜が明けちゃうよ」
ミリィはサギに背を向ける。
「本当にいいの?わたしなんかを連れてって」
「何言ってるのさ。ミリィだから一緒に行きたいんだ」
「でもおばさまはどうするの?」
「母さんには、落ち着いたら会いに行くさ。心配いらないよ」
「でも、でも、わたしの身体は・・・」
「そんなの関係ないだろ?僕はミリィのこころを知ってる。それでじゅうぶんじゃないか。
 それに、ローロが言ってたよ。うまくすれば、天の樹の落ち枝を使って、
 ほとんど人と変わらない身体を作れるって。ミラに着いたら連絡してくれって言ってたよ」
「ちょっとサギ!ローロに話しちゃったの?」怒るミリィ。
「え?・・・うん。なんか、まずかったかな?」
「まずいわよ!どうしてそんなこと話すのよ!ローロに話したら・・・」
「なーにがまずいんだって?水臭いよー?おいらたちに内緒で行っちまうなんてさ」
つむじ風に乗ってパロロ二世が登場する。
「言ってくれれば、王国の誇るミンディールで送ってやったのに」
レイドカーン王とギバリ。
「結婚式だというから、来てみたが、なんだ駆け落ちじゃないか」
ロドルフォ。そしてコレルリもやって来る。ミリィは腰に手を当てて言う。
「ローロ?いるんでしょ?出ていらっしゃいよ」
ローロがちょこちょこ走りながら出てくる。
「ご、ごめんなさい。あの、パロロさんに聞かれて・・・しゃべったらいけなかったんです?」
「・・・それで、ミラに行くことに決めたのですね?」コレルリが言う。
「はい。人目につかないところで静かに暮らしたくて。あの国なら、ちょうどいいかなって」
サギが答える。うなずくコレルリ。
「そう。ミラを治めるカルブレン公なら快く受け入れてくれるでしょう。私からも話しておきますよ」
「ありがとうございます」
「結局、”あの人”も一緒に行くのかい?」
パロロ二世の言葉にキミはギクリとする。どうしようか・・・。
”いつまでも一緒よ”勢いでキミはそう言ってしまう。
「うん・・・まあね。いつまでも一緒。”彼女”とそう決めたんだ」
”そう、いつまでも、どこまでも・・・”
「うん。いつまでも、どこまでも一緒に行こう!ねぇ、キミ!」
そんな、笑顔を見せないで――。サギが起こした奇跡はもうすぐ終わる。
このゲームも、ラスボスを倒して、もう終わりなのに、とキミは思う。
だが、案ずることはない。今度はキミが奇跡を起こす番だ。
心から願えばいい。”サギとずっと一緒にいたい”と。
そうすれば、時間と空間を飛び越えて、あの、暗黒部隊本部の個室からやり直せるだろう。
強くてニューゲームってヤツだ。でも、それはまた別の物語。
「みんな、元気で」
サギとミリィはスフィーダに乗り込む。

キミは見覚えある部屋を見ている。ここは、確か、ミラにあるカルブレン公の館の一室。
書き物をしているミリィ。それを見つめるサギ。
ああ、そうか。そう、そういえば、前作のミラ出身のお嬢様。
彼女、髪の毛が白くなる前は、サギのような髪の色じゃなかったっけ?
それに、彼女、雰囲気がなんとなくミリィに似てる――。
最初からずっと気になっていたけど、前作にサギやミリィのような人が出て来ないと思ったら、
そうか・・・やっぱり、死んでたのか。20年後までに死んでしまうのか。早いな。
でも、それはまた別の物語。

・・・さあ、奇跡が終わる時間だ。また会う日まで、さようなら。

心身ともにボロボロになりながらも、なんとかミンタカに帰ってきたゲルドブレイム。
元老院の人たちが待っていた。
「ゲルドブレイム殿が帰ってきたぞ!これで、帝国の再建も夢ではない!」
元老院の人たちに、皇帝となって帝国を再建するよう頼まれるゲルドブレイム。
「私が皇帝?そうか、くくっ・・・よかろう、バアルハイトの遺産、利用させてもらう!
 世界に散らばっている、5つのエンド・マグナスを探せ!なんとしてでも探し出すのだ!
 だが、その前にゲオルグを呼べ!」
天を仰ぎ、高笑いするゲルドブレイム。

~バテン・カイトスに続く~
 
☆おまけ1
サギが十字架に拘束されているとき、”サギに憑いていく”ではなく、
”サギを自分に憑かせる”を選んだ場合――。
「わかった。それがキミの決断なんだね。これで・・・僕の物語は終わる・・・。
 ここからは・・・キミの物語だ・・・」
GAME OVER

☆おまけ2
ニハル砂漠に穴を掘って研究所を構えているゲオルグ。ラリクシと一緒に研究に没頭する毎日だ。
変わった形の飛翔器なんかが置いてある。
キミがやっているのが2周目だったり、前作をやったことがあると、
「こころの器」という丸いガラス玉のようなものを持っていてくれとゲオルグに頼まれる。
持ち歩くうちに、だんだんとこころが貯まっていくような気がする。
最終的にこころがいっぱいに貯まって、光り輝くばかりになる。まるで、こころがもう一つ増えたよう。
それをゲオルグに見せると、ゲオルグの目の色が変わる。
「モノからいのちは作れない。でも、これなら・・・フフフ」
そう言ってこころの器をひったくるように取り上げられ、すげなく研究所を追い出されてしまう。

☆おまけ3
どこかで入手できる「ネロの写真」をジーナに見せてあげよう。
「サギ、あなたのお父さんのことなんだけど、今まで話したことなかったわね。
 ・・・この写真をどこで手に入れたのかはわからないけど・・・ありがとう。
 この写真を見てると、なんだか懐かしくて涙が出ちゃいそう」

☆おまけ4
ネロがタラゼドに登場したあと、ネロの屋敷に行くと、警備している兵士たちはいなくなっている。
これはチャンスとばかりに、あの、前から気になっていた、精霊と話すための別室に入ってみる。
窓もなく真っ暗。とげが付いた鉄球、錆びついた滑車、熱せられた油、アイアン・メイデン。
この部屋でネロとゲルドブレイムは(たぶん)・・・アッー!!

 
※補足
プレイヤーが男性なら当然、マーノも男の子という設定になります。
初め、性別を限定しないでいこうかなーと思ったけど女性にしてしまいました。
腐女子きんもーっ☆なところもありますが許してください。

☆筆者です。全体的に直しました(2007.7.15)





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