ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者

part31-294~313


294 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 04:07:07 ID:1NS+CiRZ0
それは、僕が17歳のときの、夏のことだった。

序章

僕は誰かに抱きかかえられていた。朦朧とする意識の中で声が響く。
「しっかりするんだ、君!」
僕はゆっくり目を開く。頭が痛い。
「僕は、どうして・・・ここはどこだ?僕は、誰だ?何も思い出せない・・・」
僕は草地の上に寝ていたらしい。海の近くらしく、波の音が聞こえる。
だが、どうしてこんな所にいるのだろう。そして、僕を抱きかかえているこの男も誰だか解らない。
そして、自分のことも。名前だけはかろうじて覚えていたが、それだけ。
ここに来る前何をしていたのか、どこに住んでいるのか、自分は何者なのか。
そんなことを考えるうちに、意識が遠退いていった。

僕を助けてくれた男のマンションで目覚めた。
「災難だったね。でも無事で良かったよ。私は天地(あまち)というんだ。よろしく」
天地さんは、僕を見つけたときのことを話す。
僕は海上(うなかみ)の崖の上から下の草むらに落ちたらしい。
そこへ天地さんが偶然通りかかって、助けてくれたそうだ。
頭が痛いと思ったら、頭に怪我をしている。崖から落ちたときのものだろうか。
「とりあえず、海上の崖に行けば何か思い出すかも知れないね」
そんな天地さんの言葉どおりに、僕は海上の崖に行くことにした。

海上の崖の上。僕が落ちたほうは草むらだが、反対側は海だ。もし、そっちに落ちたら助からなかっただろう。
思いに耽っていると、僕を呼ぶ声が聞こえてきて、僕と同い年くらいの女の子が現れた。
「連絡もしないでどこへ行ってたの?心配したんだから」
「君は僕の知り合いなんですか?・・・お名前は?」
僕が訊ねると女の子は驚いた顔をする。
「何をふざけてるのよ?あなたと同じ探偵事務所の『あゆみ』じゃないの」
「ごめんなさい。何も覚えていないんです。その、記憶喪失になったみたいで」
「ええっ!記憶喪失ですって!」
あゆみと名乗る女の子はさらに驚く。
「ここから草むらに落ちて、気を失ったですって?・・・わかったわ。とにかく一緒に探偵事務所に来てちょうだい」
あゆみに探偵事務所とやらに連れて行かれた。「空木(うつぎ)探偵事務所」という表札がある。
中に入って、ソファに座らせられる。向かい側にあゆみさんが座った。
「ここは空木先生の事務所で、私たちの仕事場よ。先生はいないみたいね」
僕はあゆみさんと共に、この探偵事務所の所員をやっていたらしい。あゆみさんにいろいろ訊いてみる。
「あの、空木先生って?」
「あなたと先生が知り合ったのは、あなたがまだ中学生くらいの頃の話だそうよ。
離れ離れになった両親を探していたあなたは、この街で先生と知り合ったの」
「どうして、あの崖に来たんだい?」
「あなたがあそこで誰かに会うと言って電話してきたから、連絡を待っていたんだけど、
何の連絡もないし、心配になって・・・」
「僕が・・・誰かに会う?」
ふと、テーブルの隅にメモが置いてあることに気付いた。そこには、
「明神村(みょうじんむら) 綾城(あやしろ)」と書いてある。
「これはあなたの字ね」
そのメモを手掛かりに、明神村に行くことにした。

―綾城の家に仇なすものあらば
 我、死後の世界より蘇りて
 その者に災いをもたらさん・・・

続く


295 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 04:08:13 ID:1NS+CiRZ0
1章

数時間後、僕は明神駅に降り立っていた。僕が事故に遭った海上の崖は、
この明神村と天地さんのマンションとのほぼ中間に当たる。
僕は、ここに来たことがあるんだろうか・・・?
山深い、静かな村だ。静かすぎて不気味なくらいだ。
駅員さんに「綾城」のことを訊ねる。
「綾城家のことでしょう。あそこに見える、あの山のふもとの大きな屋敷です」

綾城家の場所はすぐにわかった。相当大きい屋敷だ。金持ちらしい。
玄関でベルを鳴らすと、執事らしき男が出迎えてくれた。いかにも執事という感じの老人だ。
「どこへ行っておられたのですか?心配しておりましたよ」
「えっ?僕のことをご存知なんですか?実は、僕・・・」
「えっ!記憶喪失!では、依頼した調査の内容や私の名前まで忘れてしまわれたのですか?」
執事さんに依頼の内容を訊く。
「調査というのは、つまり、先日亡くなりました『綾城キク』様についてでございます。
お医者様は心不全と診断されましたが、私にはただの病死とは思えないのです」
「つまり、キクさんは何者かによって・・・」
「それを調査していただこうと、この屋敷にお呼びしたのです。
そして、先日あなた様はこの屋敷へ参られました。
それなのに、こんなことになろうとは・・・。
依頼の内容をお話させて頂いている途中で、あなた様にどなたからか、お電話が掛かってまいりました。
その電話のあと、重要な情報が手に入るかも知れないと仰って、この屋敷を出て行かれたのです」
キクさんのことを訊く。
「キク様は綾城商事の会長でしたが、78歳の高齢の上、心臓が弱っておられたのです。
そこで遺言書を作成されたのですが、遺言公開の直後に、ご自分の寝室で亡くなられてしまったのです。
ここまでお話しても、まだ思い出していただけませんか!」
そう言われると、何か思い出せそうな気がするから不思議だ。少し頭をひねる。
「そうだ!確かにここで依頼を受けた!思い出したぞ!そして、あなたは、善蔵さんでしたね?」
「思い出していただけましたか」
善蔵さんの顔がほころぶ。そして、記憶を失う前の僕が聞いてない話を聞く。
遺言公開には、キク様のご親戚のかたが立ち会われただけです」
親戚とは、キクさんの甥の綾城完冶(かんじ)と二郎、姪の春日(かすが)あずさの3人だけ。
完冶さんは三人兄弟の長男で綾城商事の社長。あずささんは春日家に嫁いだ長女、そして末っ子の二郎さん。
キクさんに子供はいないのかな。
善蔵さんは、僕をキクさんが亡くなった寝室へと案内する。そこは和室だった。
キクさんは布団の上で死んでいたという。それをお手伝いの茜さんが発見したそうだ。
死因は、熊田医師が心不全で間違いないと言ったらしい。
善蔵さんの勧めで、熊田医師に会うことにする。

熊田医院に着いた。熊田医師はこの村唯一の医者だそうだ。
熊田先生は眼鏡をかけてぼさぼさ頭だ。キクさん死因について訊く。
「心不全ぢゃ。とはいうものの、こんな急に亡くなられるほど悪かったわけでもないんぢゃが。
まぁ、ときがときぢゃから、執事が不自然に思うのもわからなくはないがのう。
そうだ、綾城といえば、春日あずさという女が喉を傷めてここに来とるぞ」
あずささんにも話を聞く。
「遺言公開の晩、私たち兄弟3人は屋敷に泊まったわ。
・・・遺言の内容を話せですって?そんな面倒なことごめんだわ!兄さんたちにでも聞けばいいでしょ」
あずささんは話の途中で咳を何回もする。喉を傷めているので、禁煙中だという。


296 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 04:09:09 ID:1NS+CiRZ0

僕はキクさんが埋葬されているという、神楽寺(かぐらでら)の墓地に行ってみた。
この下にキクさんが眠っているのか・・・と何気なく手を伸ばして墓石に触ろうとしたら、
寺の住職が飛んで来た。
「こらっ!墓に悪戯しちゃいかん!」
「すいません。悪戯してたわけじゃないんです」
「おや?あんた、この村のもんじゃないな。それじゃ、この村の伝説については知らんだろう」
住職の玄信(げんしん)さんは村の伝説について話してくれた。
綾城の主が、無念の死を遂げたとき、満月の晩に墓の中から蘇り、恨みに思う人間を殺すと言われている。
戦国時代にまで遡る話で、村人の間で語りつがれてきたらしい。
今でも伝説を信じる人がいるが、それは、この村ではいまだに遺体を土葬にしているからなのだそうだ。

綾城家に帰ってくると、善蔵さんが、お手伝いの茜さんが帰ってきたと教えてくれた。
茜さんが待っているというキクさんの寝室へ行き話を聞く。
「あの日、奥様がなかなか起きていらっしゃらないので、様子を見にここへ来たんです。
そのときは、すでに・・・。そういえば、遺言公開の日、庭でアキラ様を見ました」
「アキラ?」
「完冶様のお子様です」
そのとき、善蔵さんが僕を呼んだ。あゆみちゃんから電話だそうだ。
一度帰って来てと言うので、事務所に帰ることにする。

あゆみちゃんと一緒に調査内容を整理する。
あゆみちゃんは綾城商事のことを調べるというので、僕はまた綾城家に行き調査することになった。

続く




2章

僕は再び綾城家を訪れた。
居間には完冶さんがいた。遺言書について訊く。
「遺言書の作成には、綾城商事の顧問弁護士をしている神田先生が手伝っておったな。
そうそう、ここに遺言公開のときに取ったメモがある。まぁ、見たまえ」
「それでは、拝見します」
完冶さんからメモを受け取る。
『綾城商事の会長としてキクが持っていた全ての権利は、綾城家の正当なる後継者の印を持つ、
綾城ユリに譲られるものとする。
キクの個人財産は半分をユリに、残りの半分を完冶、二郎、あずさの三名で公平に分配すべし』
「綾城ユリさんって・・・?」
「会長の一人娘だ。20年前家を飛び出したまま行方不明だ」
キクさんには子供がいないと思っていたのに。
「後継者の印ってなんなのですか?」
「どんなものかは知らんが、本家筋の人間だけが手に出来るそうだ。
わしら分家筋の人間には縁の無いシロモノだよ」
何とも不思議な遺言状だ。
昨日聞いたアキラという人のことを訊いてみる。
「わしの息子だ。23にもなって、仕事もせずにフラフラしおって・・・」
「遺言公開の日、アキラさんも来ておられたそうですが」
「なにっ?わしは知らんぞ!第一、アキラは遺言公開のことなぞ知らんはずだ」
忙しいので、と言って完冶さんは居間を出て行った。
善蔵さんにユリさんや印のことなどを訊くが、あまり詳しくは知らないらしい。
だが、もしかしたら熊田先生なら知っているかもということだ。


297 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 04:11:06 ID:1NS+CiRZ0

熊田医院を訪れて、熊田先生に話を聞く。
「あずさが今日も来とったぞ。さっき薬を持って帰ったところじゃ」
ユリさんのことを尋ねると、熊田先生はなせか恥かしそうにする。
「もしかして、先生、ユリさんのこと・・・」
「な、何を言うとるか!ユリさんのことなら玄信に聞いてくれ!」

神楽寺に行き、玄信さんにユリさんのことを訊く。
「ユリはキクさんの一人娘じゃ。
20年前、この村へ仕事にやって来た青年と知り合ったんじゃ。
やがて二人は愛し合うようになった。じゃが、キクさんの旦那が二人の仲を猛反対したんじゃ。
身分が違うとな・・・。
しかし、ユリの決心は固く、ついに駆け落ちしてしもうたんじゃよ。
それでも、一人娘じゃから、キクさんはこっそり、後継者の証をユリに持たせたようじゃが」

あずささんが屋敷に帰った頃だろう。綾城家に向かう。
居間に通されるとあずささんがいた。アキラについて訊ねる。
「ああ、兄さんのどら息子ね。遺言公開の日も会ったけど。
そのとき、誰かに会ってたみたいね」
綾城商事についても訊く。
「社長の完冶兄さんと、専務の二郎はね、会社の中で激しく対立してたのよ。
今ではもう、おばさまもいないから、会社は完冶兄さんの思うままね。
おばさまが亡くなって一番困った事になったのは、二郎じゃないかしら?
完冶兄さんがいる限り、二郎は会社の中で小さくなってなきゃいけないから」
善蔵さんにも話を聞く。
「弁護士の神田ってどういう方なのですか?」
「立派な方です。キク様が亡くなられたとき、親身になってくださいました。
そして、探偵に調査を依頼しては、ということで、
有名な空木探偵事務所の優秀な探偵でいらっしゃる、あなた様のことを神田様が教えてくださったのです」
「えっ、そうだったんですか」
ということは、神田と僕は顔見知りだったのかも知れない。覚えてないけど。
神田弁護士の事務所の電話番号も教えてもらった。

空木探偵事務所に帰ってきた。あゆみちゃんが待っていた。
「ずいぶん遅かったわね。それで、綾城商事の事だけどね、
キクが亡くなったことで、綾城商事は大変みたいよ。
それというのも、社長と専務の対立にとうとう火がついちゃったらしいの。
二人の対立は、これからますます激しくなっていくんじゃないかしら」
これまでのことを整理する。
「今夜はもう遅いから、調査の続きはまた明日にしましょう」

続く


298 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 04:11:59 ID:1NS+CiRZ0
3章

僕は、これまでに思い出したことを天地さんに報告しに行くことにした。
天地さんの部屋に行く。
「失礼します。くつろいでおられるところ、すみません」
「いやいや、テレビを見ていただけだよ」
僕は天地さんに、綾城家の調査のために明神村に行っていたようだけど、
あの崖には何をしに行ったのか思い出せないと話す。
そろそろおいとましようかと思ったとき、テレビで速報が流れた。
「綾城商事の綾城完冶社長が、明神村の元会長宅の土蔵の中で、何者かによって殺害されたもようです」
「何だって!完冶さんが・・・」
僕は綾城家に急いだ。

綾城家の土蔵の周りは立ち入り禁止になっていたが、空木探偵事務所の者だと説明して入れてもらった。
完冶さんの胸にはナイフが突き刺さっていた。抜かれてないため、出血が少ない。
死体の側には土蔵の鍵が落ちていた。
土蔵の奥には、もう一つ扉があったが、鍵が閉まっていて開かないようだ。
善蔵さん、茜さん、あずささん、二郎さんにアリバイなどを訊く。
二郎さんは取り乱していて、ろくに話が聞けなかった。
善蔵さんは、土蔵からいくつかの骨董品がなくなっているという。
また、土蔵の鍵はキクさんの寝室にある煙草入れの中にしまってあったというが、
その煙草入れがいつの間にかなくなっていたということだ。
アキラはキクさんにかわいがられていて、キクさんの寝室にも自由に出入りしていたそうだ。
警察から電話があった。土蔵の鍵からアキラの指紋が検出されたというので、
アキラを容疑者として指名手配にするそうだ。

明神駅の駅前に行ってみる。
村人たちは、キクさんが蘇って完冶さんに復讐したという噂で持ちきりだ。

ふと気が向いたので海上の崖に行ってみる。
本当に、僕は、あの日何のためにここへやって来たんだろう。
いや、それどころか、ここへ来たということさえ、思い出せない。
草地の反対側は断崖絶壁だ。目が眩む。
「おい、あぶねぇぞ!」
老人に声をかけられた。ここは自殺の名所だから、もしかしたら・・・と思って声をかけたという。
「ところであんた、よくこの崖にやって来る女の人をしらんかのう。
えらい別嬪じゃったが。どこの娘じゃろ?」

探偵事務所に戻り、あゆみちゃんと話をする。
「おかえりなさい。とうとう殺人事件が起きてしまったわね。
社長の完冶が死んだことで、ついに専務の二郎が綾城商事の実権を手に入れたそうね」
・・・アキラが土蔵の骨董品を盗もうと思って、それを完冶に見つかり、殺された?
土蔵の鍵もアキラなら簡単に手に入るし、アキラが現段階で一番怪しいのは確かだ。
「待てよ、アキラは遺言公開の日、誰かに会っていたといっていたな。
あゆみちゃん、それが誰なのか調べてみてくれないか?」
「わかったわ。あなたは一度、綾城商事に行って、二郎にもっと話を聞いてみる必要があるんじゃない?
それと、ひとつ気が付いたんだけど、あなたが半袖のシャツを着ているところって、初めて見たわ」
「そうだっけ・・・?」

続く


299 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 04:21:06 ID:1NS+CiRZ0
4章

僕は綾城商事のロビーに立っていた。耳を澄ますと、来客同士の立ち話が聞こえてくる。
「しかし、なんですね、ここの専務も危ないところでしたね」
「まったくですな。あの社長の計画がもし実現しておれば、
今頃は専務としての立場すら危うかったでしょうな。
専務は、犯人に感謝してるんじゃないでしょうかね」
そんなことをしていると二郎さんが通りかかった。つかまえて話を聞く。
「アキラさんは、遺言公開の日、誰かに会っていたようですが、二郎さんじゃありませんか?」
「冗談じゃない。あんなやつと話すことなど何もない」
「アキラさんが容疑者という事になりましたが、そのことで何か気づいた事はありませんか?」
「奴が何をしようが私の知ったことじゃないね。君が何が言いたいのかわかったよ。
私がアキラをそそのかして兄さんを殺させたと思ってるんだろう?
ふん、大した推理だね。そう思ってるんなら、証拠でもなんでも見つけてくればいいさ」
二郎さんは行ってしまった。

明神駅に着くと、村人たちは、蘇ったキクさんを見たとか、伝説は本当だったとか騒いでいた。
駅員さんが僕を呼び止める。
「ユリさんかどうかはわかりませんが、上品なご婦人がたった今、綾城家の方に行かれましたよ」

綾城家に着くと、茜さんが出てきた。
「香(かおり)様がお見えですが」
完冶さんの妻、綾城香さんだ。有名なファッションデザイナーである彼女は、
たった今パリから帰国したばかりだという。
香さんに話を聞く。
「アキラじゃありません!あの子にこんな恐ろしいことは出来ないわ!
アキラは犯人なんかじゃない!
そ、そうだわ!あなた、確か探偵さんだったわね。アキラを探してちょうだい!
私にはもうアキラしかいないの!
ねぇ、探偵さん、これを見てちょうだい!」
「え?これは・・・?」
「アキラの写真です。かなり前に撮ったものなので、ちょっと感じが違ってますが・・・」
「これは重要な手掛かりだ!わかりました。任せてください!」
「どうか、これで、お願いします・・・」
そう言うと、香さんは泣き崩れてしまった。
渡された写真をよく見てみる。この顔、どこかで見たような・・・。
善蔵さんに話を聞くが、煙草入れはまだ見つからないという。

あゆみちゃんから電話がかかってきた。
「見つかったわよ、例の骨董品!
隣町の骨董品屋に綾城家の家紋の入った壺があったの。
22、3歳くらいの男の人から買い取ったものだと言ってたわ。
それと、キクさんが死ぬ少し前に、アキラを乗せた車を見かけたという、
アキラの友達の証言があったの。
運転していたのは、40歳くらいの男の人だということよ」


300 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 04:21:55 ID:1NS+CiRZ0
熊田医院に行き、熊田先生に会う。
完冶さんの解剖結果が出たそうだ。
完冶さんは、ナイフで刺されたときに、既に死亡していたであろうという、妙な結果が出たそうだ。
ところが、ナイフの傷以外には、外傷は見あたらないらしい。
「それはそうと、お前さん、今着ておるシャツのサイズがちょっと合っとらんぞ」
熊田先生に指摘された。
そういえば、あゆみちゃんも、この半袖のシャツは僕のものではないと言っていたっけ。
天地さんが貸してくれたのかな?

僕は天地さんの部屋を訪ねることにした。
「どうだい、記憶はもどったのかい?」
「まだ完全じゃないようです・・・」
「そうか・・・」
天地さんは、残念といったような顔をする。
「あの、このシャツ、もしかして・・・」
「えっ?そのシャツは、僕のいとこのものなんだ。
君のシャツはひどく汚れていたので、クリーニングに出してしまったんだ。
戻ってくるまで、そいつを着ていてくれないか」
「・・・・」
「何か、君の力になれればいいんだけど・・・。
そういえば、そうそう、思い出した!
君は気を失っていたときに、うわごとでしきりに、お守りがどうのって言っていたよ。
どうだい?何か心当たりがあるかい?」

海上の崖に行ってみた。
崖の上には美しい女性がたたずんでいた。僕は声をかけることにした。
「あの、ちょっとすみません。あの、失礼ですが、あなたは?」
「私は、藤宮雪子(ふじみや ゆきこ)と言います。
私は、ここで、結婚の約束をした人を待っているの。二人の思い出の場所、
この海上の崖で。
彼は、町を出て行くとき、こう言ったわ。必ず成功して迎えに来るって。
今年が、その約束の年なの・・・。
彼は綾城和人(かずと)って言うのよ。
私と同じ隣町に、彼は母親と一緒に住んでいたわ。彼のお母さんがなくなられたあと、
法律家になると言って町を出たの」

綾城家に行き、善蔵さんに和人さんについて訊いてみる。
「ど・・・どこでその名前を?いえ、隠していたわけではないのですが、
和人様はユリ様の弟なのですよ」
「ユリさんには兄弟が・・・?」
「しかし、キクさまの本当のお子様ではないのです。
旦那様は綾城家の籍に入れて、我が子として育てられました」
「この屋敷に住んでおられたのですか?」
「はい。和人様とその母親は、当時この屋敷の離れに住んでいらっしゃいました。
ところが、旦那様が亡くなられてからは、キク様に疎まれて、この屋敷から出ていかれました。
今頃、どこでどうなさっておられることやら・・・。
和人様とユリ様は本当に仲のいいご兄弟でした。
家を出られるときも、ユリ様は和人様が気がかりでしたでしょう。
和人様ならユリ様の居所をご存知かも知れませんね」
善蔵さんは、そろそろ最終電車の時間だと言うので、僕は帰路についた。


301 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 04:22:40 ID:1NS+CiRZ0

探偵事務所に帰ってきた。あゆみちゃんは待ちくたびれたというような顔をしていた。
「お帰りなさい。実は私、あなたに電話した後、
アキラがよく出入りしていたというスナックへ行ってみたの。
そこで聞いたんだけど、アキラはヤクザに借金してずいぶん困っていたらしいの。
ところが、さいきんどういうわけか、溜まっていた借金を全て返済しているのよ!
それどころか、アキラは仲間たちに、自分は将来綾城商事の社長になるのだと言っていたんだって。
キクさんが死ぬ少し前のことよ」
アキラは骨董品を売った金で借金を返したのか?などと考えていると、
外がうっすらと明るくなってきていることに気付く。もうこんな時間か・・・。
電話が鳴り出した。
「誰かしら?」
電話に出たあゆみちゃんの顔が青ざめる。僕は受話器を奪い取った。
「大変です!二郎様が、二郎様が・・・」
善蔵さんからだった。
「えっ?二郎さんが、どうしたんです?もしもし!善蔵さん!」
だが、返事はなかった。僕の声は空しく響いた。

続く


302 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 06:07:36 ID:1NS+CiRZ0
5章

僕は始発電車で明神村へと向かった。
明神山で僕を待っていたのは、ロープで首を吊っている二郎さんの遺体だった。
自殺だろうか?
第一発見者は、朝の散歩に来ていた善蔵さんだという。
善蔵さんを呼び出し、二郎さんのことを聞く。
「昨夜、忘れ物を探しに戻られた二郎様は容疑も晴れ、ホッとされておられましたのに・・・。
探し物は見つからなかったようですが。
・・・そういえば、二郎様がお帰りになられる前、神田様からの電話を茜が取り次ぎました」
あずささんにも話を聞く。
「完冶兄さんも、二郎も、アキラが殺したのよ!今度は私を狙ってるんだわ!」
あずささんは怒って去っていってしまった。

屋敷へ行き、茜さんに話を聞く。二郎さんは、神田弁護士の所へ行っていたという。
二郎さんが探していた免許証が見つかったというので借りる事にする。
神田弁護士の事務所へ電話をかける。
「神田弁護士事務所でございます。神田はただいま不在ですが」
秘書の女性が電話に出た。
「昨夜、綾城二郎という人が伺いませんでしたか?」
「来客ならございましたが・・・えっ!?その方が自殺?
あの、わたくしでよろしければ、お話を伺いますのでこちらにいらっしゃってください」

神田弁護士事務所へ行く。
「お待ちいたしておりました」
秘書さんが迎えてくれた。神田弁護士のことを聞いてみる。
「お若いのにとても優秀な方です。まだ30代だったと思いますよ」
そうだ、昨日来たのが二郎さんだということを確認しなくては。二郎さんの免許証を見せた。
「昨日お見えになったのは、確かにこの方です。
ああ、この方が綾城商事の専務さんでしたか。
この方と先生は、かなり長く話をされた後、一緒に出かけられましたよ。
でも、あの方が自殺されたとはとても信じられませんわ」

僕は明神駅に戻ってきた。
「綾城家でまた人が死んだ!崇りじゃー」
村人たちが騒いでいる。

熊田医院へ行き、熊田先生に検死結果を聞く。
「やはり、ただの自殺ぢゃと。何か悩み事でもあったんぢゃろ」
「・・・でも、二郎さんには、直前まで全く自殺するそぶりはなかったそうですよ。
殺人の容疑も晴れて、これからだっていうときに、あまりにも不自然だと思いませんか?」
「確かにそうぢゃが・・・」
熊田先生は考え込んでしまった。

綾城家に行き、善蔵さんに話を聞く。
色々なことが続いたせいか、茜さんは実家に帰ってしまったとのことだ。
善蔵さんも疲れた様子だ。
「・・・和人様は、キク様の子供ではありませんが、法律的には綾城家の人間と認められます。
和人様も遺産相続には関係があるのではありませんか?」

重い足をひきずって探偵事務所へ帰る。今日もあゆみちゃんが温かく出迎えてくれる。
「おかえりなさい。何かわかったの?
私の調査だけど、結局アキラと一緒にいた男が誰なのかはわからなかったの・・・」
「そうだ、あゆみちゃん、これ・・・」
僕は二郎さんの免許証をあゆみちゃんに渡した。
「・・・アキラと会っていたのは二郎かも知れないっていうのね!
わかったわ。調べてくる。これ、ちょっと借りるね」
それはそうと、和人さんだ。やはり、和人さんが何らかの形で事件に関わりがあるのでは・・・?

続く

303 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 06:08:31 ID:1NS+CiRZ0
6章

明神駅は物々しい雰囲気に包まれていた。
「見たんじゃ!わしは、キクさんを見てしもうた!本当だで!」
「えっ?わしもゆんべこの目で見た!ありゃ絶対キクさんじゃ!」
僕は駅員さんに話しかけた。
「あっ、あなたでしたか。村人たちの様子が変なんです。
キクさんを見たっていう人が急に増えちゃってるんですけど・・・」
「えっ?!キクさんを?」
「ええ。不思議なことに、キクさんを見たっていう時間が、
大体みんな同じような時間なんです。一体何を見たんでしょう?」

まさか、本当にキクさんが墓から蘇ったりは・・・ないだろうなぁ。
そんなことを考えながら神楽寺にやって来た。墓地に玄信さんがいた。
「玄信さん、こんにちは」
「えっ!お、おう、あんたか。久しぶりじゃのう」
一応、キクさんのお墓を調べてみようと、手を伸ばす。
「よさんか!調べたって、もう血の跡など付いて・・・し、しまった!」
「血の跡?玄信さん、一体、何の話です?」
玄信さんは観念して話し始めた。
この間、墓石を調べてみたら、墓石が動かされた跡があり、そこに血のようなものが付いていたとのことだ。
完冶さんが殺される少し前のことだったが、騒ぎが大きくなってはいけないと思い、
黙っていたとのこと。
「まだ、何か隠していませんか?」
「・・・実は、こんな物が落ちとったんじゃ」
玄信さんが差し出したそれは、古びた手鏡だった。
手鏡の裏には奇妙な絵が描かれていた。
中央に卍の印が、そして向かって右にウサギ、左に鶏、上にネズミ、下には馬の絵が描かれている。
「何の事だろ、これ?」
「さあのう・・・。動物は干支じゃ。それぞれ方角を表しているようじゃ」
なるほど、確かに方角だ。
方角を12等分して、北の子(ね(ねずみ))から始めて、時計回りに干支を当てはめるんだったな。
丑寅(うしとら)の方角などという呼ばれ方をする。
「この手鏡は、ここから崖に通じる坂の途中に落ちとったんじゃ。よく見てみぃ」
手鏡をよく見てみると、綾城家の家紋が入っていた。
「これ、預からせてもらっていいでしょうか?」
「かまわんとも。・・・妙な隠し立てして済まんかったの」

綾城家に行く。善蔵さんは手鏡を見ると怯えたような顔をする。
「そ、それは、キク様が愛用されていた手鏡で、
確かに、キク様を埋葬するとき、柩の中に入れた物です!ま、間違いありません!!」
何故怯えているのかと善蔵さんに聞いてみる。
「わ、わたくし、ゆうべは早く休みました。
眠りかけたとき、玄関の方で物音がしまして、目が覚めました。
あずさ様かと思ってすぐに出たのですが、もう誰もいなかったのです」
この怯え方はただ事じゃない・・・。

なんとなく海上の崖へ来てしまった。
雪子さんに和人さんのことを聞ければいいんだけど、今はいないみたいだ。

天地さんの所に行ってみることにする。
「やあ。君か。どうだい?お守りのことはわかったかい?」
「いえ、まだ何も・・・」
「そうか。まだ君の記憶は完全じゃないわけだ。
事件も大変だろうけど、自分の事を疎かにしないようにね」
「あの、僕は本当に、お守りって・・・?」
「うん。確かにお守りと言ってたよ。聞き間違いじゃないと思うなぁ」
「・・・・・・」
「そうだ、実は仕事の都合でしばらく留守にするんだ。君の記憶が戻ることを心から祈ってるよ」


304 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 06:09:30 ID:1NS+CiRZ0
善蔵さんは落ち着いただろうか。綾城家に戻る。
「ユリ様の幼馴染のご婦人がお見えです」
居間に通された。
「初めまして」
ご婦人にユリさんのことを聞く。
「ユリがこちらの家を出てから、間もなく一枚の葉書を受け取りました。
苦労もあったようですが、駆け落ちした方と幸せに暮らしていたようで、私も喜んでいました」
「その葉書は・・・?」
「今、手元にございませんので、後日お届けいたします。その代わり、これをお持ちしました」
ご婦人は古びた写真を差し出した。とても美しい女性がやさしく微笑んでいる。
「当時のユリの写真です。お持ちください」

すぐにでも八束町へ行った方がいいんだろうけど、それよりも和人さんの方が気になる。
僕はもう一度、海上の崖へ向かった。
初めて雪子さんと会った時間と同じ、だいぶ日が傾いた頃、崖へ着いた。
雪子さんが立っていた。やはり、毎日この時間に来ているんだな。
「あら、あなたは・・・」
雪子さんがふり向く。
「和人さんのことで何か知っていることがあれば、是非話してください」
「そうね・・・。
この間、言ったわね、和人が法律の勉強をするために、行ってしまったこと。
そのきっかけとなったのは、ある人から受け取った、一通の手紙だったらしいわ。
その手紙を読んだ彼は、強く法律の矛盾を感じたと言っていたわ。
そしてお母様が亡くなられると、彼はすぐに町を出て行ったの」
「他には、特に、ありませんか?」
「そういえば・・・。和人は、綾城家のことをあまり話したがらなかったわ。
・・・私、そろそろ行かなくちゃ。今日も彼に会えなかったけど」

探偵事務所へ帰る。
今日もあゆみちゃんと情報交換だ。
「おかえりなさい。なにかわかったの?
私の調査だけど、アキラと会っていたのは二郎じゃなかったわ。
でも、40歳前で紳士風の男性だったという事は間違いないみたいよ。
それから、もう一つ・・・。今、綾城商事の運営における中心人物は、
相談役の神田みたいよ」
「・・・・・・」
「そうだ、免許証、返しておくね」

続く


305 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 06:10:29 ID:1NS+CiRZ0
7話

明神駅に着く。今日も相変わらず、村人たちはキクさんの事を噂している。
適当な村人を捕まえて話を聞く。
「裏山で畑仕事をしておる私の従兄弟が、
あの首吊りがあった前の晩に人影を見たと言っておりましただ。
従兄弟でしたら、今日も畑に出ていると思いますだよ」

裏山というのは明神山のことだ。僕は明神山に行ってみた。
二郎さんの死体は片付けられ、辺りは静まりかえっている。
さっきの村人の従兄弟を見つけた。二郎さんの免許証を見せる。
「この人がここで自殺したんですけど、あなたが見かけた人じゃありませんか?」
「少し離れとったし、暗かったから顔まではわからなんだが、
人影は二人だった。一人はもう一方の人によりかかるように歩いとった。
いや、どちらかというと、引きずられるという感じだったな」

綾城家を訪ねると、善蔵さんが、昨日のご婦人から受け取った葉書を持ってきてくれた。
葉書を受け取り、住所を確認すると、「八束町(やつかちょう)一丁目」と書いてある。
僕は八束町へ行こうとしたが、電車が来る時間までだいぶあることに気付いた。
善蔵さんに和人さんのことを聞いてみた。
「あっ、神田様と和人様はお年がおなじくらいだと思いますが・・・!
すでに和人様が法律家になられているとすれば、神田様とお知りあいではないでしょうか?」

まだ時間があるので、熊田先生を訪ねる。
「実は、あのあとずうっと考えとったんぢゃが・・・。
確かに、二郎が自殺するのは不自然だと思ったわしは、二郎の検死をやり直させてくれと
警察病院に行って来たんぢゃ。
で、いろいろやってみたが、やはりなんにも出てこない。
諦めかけたそのときぢゃ!二郎の右手の人差し指と中指の間から、青酸反応が出たんぢゃ」
「じゃあ、二郎は毒殺ということに?」
「ところがぢゃ。体内からは出ておらん。つまり、直接死亡した原因とは言えないんぢゃ・・・」
熊田先生に葉書を見せてみる。
「さすがユリさん、美しい文字ぢゃ。・・・ほう、ユリさんは、遠山という人と結婚したんか」
そうか、ユリさんは結婚して苗字が変わってたんだ。「遠山ユリ」か。
熊田先生は立ち上がった。
「おい!わしは今から新聞社の資料室に行くぞ!過去に同じような事件があったかも知れんし」
「僕は、まず八束町へ行ってきます」


306 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 06:12:50 ID:1NS+CiRZ0
八束町に着いた。
これといって変わったところはない町だが、僕は何故か、懐かしいように感じた。
一丁目の辺りを探すが、それらしい家は見当たらない。
この辺りは最近、人の出入りが激しいらしく、ユリさんが住んでいた当時のことを知っているという人はなかなかいない。
ようやく、この辺りに詳しいと言われている、駄菓子屋のお婆さんに話を聞くことができた。
「遠山ユリという人をご存知ですか?」
「遠山ユリさんなら、よう知っっとります。ほんに、気立てのいい、美しい人でしたからのう」
お婆さんにユリさんの写真を見せる。
「その美しいユリさんは、この写真の人ですね?」
「そうそう、この方が遠山ユリさんですわ」
葉書を見せる。
「この葉書の住所には、遠山という家が見当たらないんですけど・・・」
「それも、そのはずじゃ。17年ほど前、火事で焼けてしもうてのう。
その火事で、ユリさんは気の毒に、死んでしまわれたんですわ」
何だって!ユリさんは既に死んでいたのか・・・。
「ユリさんは、必死の思いで赤ん坊を助け出して、大火傷を負ったんじゃ」
「ユリさんには子供がいたんですか」
そのとき、僕の体を悪寒のようなものが駆け抜けた。お婆さんは話を続ける。
「その子は、ユリさんが生前親しくなさってた、山本佐和子という人に引き取られたんですわ。
山本さんの家は、三丁目にあるアパートですわ」

教えられた場所にアパートがあった。
「ごめんください」
「はい。どちら様ですか?」
出てきたおばさんの顔を見てハッとする。この人、どこかで会ったことあるような・・・。
僕はおばさんに名前を告げ、探偵だと名乗る。
「遠山ユリさんという人のことをお聞きしたいのですが」
「お名前は聞いたことがありますが、直接の知り合いではないんです・・・。
昔、遠山さんというお宅が全焼したそうです。ユリさんという方はお気の毒でしたが、
赤ん坊は、左肩に火傷を負っただけだったそうです。
その赤ん坊を、当時孤児院を経営していた私の母の佐和子が引き取って育てたのです。
私は、山本佐和子の娘の素子と申します」
「あの、佐和子さんは・・・」
「佐和子は先日亡くなりました。経営していた孤児院を無理矢理立ち退かされまして・・・。
そのショックで寝込んでしまい・・・。母は、最期までその子供のことを心配していました。
込み入った事情がありまして、その子を捨て子だということにして育てていたようです」
「事情って・・・?」
「それは申し上げられませんが、その子はある日何かに気づいたのか、
母の下を飛び出してしまって、それきりだということです」
僕は思い切って聞いてみることにした。
「ところで、素子さん、どこかでお目にかかったような気がするんですが・・・」
「はあ?初めてだと思いますよ」
「そうですか・・・。どうもありがとうございました。失礼します」
「あら?・・・いえ、気をつけて」

八束町を後にする。
夏の日差しが照りつけているのに、悪寒が去らない。
胸の奥に黒い塊がつかえているような感じだ。この感じは何だろう。記憶が戻る予兆のようなものだろうか。
「お帰りなさい。何かわかったの?」
探偵事務所に戻ると、あゆみちゃんがいつものように声をかけてくれたが、僕は答えなかった。
・・・ユリさんは既に死んでいた。その子供は行方不明で、手掛かりは左肩の火傷の跡だけ。
「・・・どうやって調査をすればいいんだ!」
黙って考えていたつもりだったが、声に出してしまった。
「ばかっ!弱虫!・・・こんなときこそ、頑張らなくっちゃ。ねっ!」
あゆみちゃんの笑顔に救われた。もう悪寒は消えていた。
「ごめん、心配かけて・・・。がんばるよ!」
「やったあ!!」

続く


307 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 06:21:14 ID:1NS+CiRZ0
8章

熊田先生が行くと言っていた、新聞社の資料室を訪ねる。
熊田先生は一人ではお手上げだと言うので、僕も一緒に探すことにする。
「あっ、先生、これを見てください!青酸化合物のことがこのページに!」
青酸化合物に、ある種の薬品を反応させ、熱を加えると、シアン化水素と呼ばれる有毒ガスが発生する。
このガスを多量に吸い込んだ場合、中毒を起こし、死亡する。
このガスで死亡した死体からは、青酸中毒特有の反応が出ないため、死亡状況から判断する以外には、
死因として立証する事は不可能に近い。
「先生!これは・・・」
「うむ!有力な手掛かりぢゃ!」

先生と僕は、熊田医院に引き上げてきた。
日がだいぶ傾いてきたな。雪子さんが崖にくる頃だ。
そのことを熊田先生に話すと、先生は自分も連れて行けと言い出した。
「綺麗な人なら、一度会ってみたいと思ったんぢゃ」

先生を連れて海上の崖の上に来てみたが、雪子さんはいなかった。
しばらく待っても雪子さんは来ない。
突然、熊田先生が驚きの声を上げた。
「たた、大変ぢゃ!海に女が浮かんどる!すぐに警察に連絡ぢゃ!」

駆けつけた警察は死体を引き上げた。それは、物を言わぬあずささんの変わり果てた姿だった。
「わしは綾城家へ行って、善蔵に話してくるわい」
そう言って先生は行ってしまった。
あずささんは、昨夜、絞殺されたあと、崖から突き落とされたという。
あずささんの死体を調べさせてもらうことになった。
爪を調べてみると、何かをはげしく引っかいたような跡があった。
鑑識の人が言うには、これは人間の皮膚だという。犯人を引っかいたのだろう。
気が付くと、辺りは野次馬が集まってきていた。
昨夜、あずささんを見たという人がいた。
「ゆうべ、女が歩いとったのを見てしもうたんじゃ!
キクさんかと思うたが、よく見ると、この女たっだんじゃ!
この女の後を、付けるように男が歩いとった!
あれは確か、綾城家に時々出入りしとる男じゃった!」
綾城家に出入りする男と言えば、既に死んでいる完冶さん、二郎さん、そして行方不明のアキラ、
そして・・・。その男というのは、もしや・・・?

綾城家に行く。善蔵さんはそうとうショックのようだ。
熊田先生は医院に戻ったらしい。
善蔵さんにあずささんのことを聞く。
「ゆうべ、あずさ様は、出かけられる前に、どなたかと電話で話しておられました。
何か激しく言い争っておられた様子ですよ。そのとき、何か、メモを取られていたようです」
電話の脇のメモをよく見てみると、強く書かれた部分がへこんでいる。
鉛筆で擦ると、へこんだ部分が浮かび上がる。
海上の崖11時半、アキラとは関係無い、間もなく、遺産分配、
ユリの子供見つかった!
あずささんは、電話の相手に崖に呼び出されたのか。そして、それはアキラと会っていたという人物かも。
さらに、ユリさんの子供が見つかったって・・・?
そのとき、善蔵に声をかけられた。
「熊田先生がお呼びです。何かお話があるそうですので、すぐに参りましょう」


308 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 06:22:20 ID:1NS+CiRZ0
善蔵さんと一緒に熊田医院へ行く。
「おお、来たか。茜が来とるんぢゃ。さっき、ばったり会ったんぢゃが、えらく深刻な顔をしとったから、
気になって連れて来たんぢゃ」
茜さんに話を聞こうとするが、何かを思いつめた様子で話を聞けるような状況ではない。
ポケットの中に硬い物が入っていることに気付く。
そうだ、キクさんが愛用していたという手鏡、何か知っているんじゃないか?
茜さんに手鏡を見せてみると、茜さんの表情がさっと変わる。
「う、うそ。これが、どうしてここに。止めてください!」
茜さんは泣き出してしまった。
「申し訳ありませんでした。キク様を殺したのはこの私なんです」
茜さんはポツリポツリと話し始めた。
「実は、キク様は煙草を止めてはいなかったのです。煙草はいつも私が買っていました。
お止めしたんですが・・・。一服つけないと眠れない、そう言われて、断りきれず・・・。
あの晩も、キセルに火を点けられ、間もなく発作を起こされました。
奥様が亡くなっているのを発見した私は、キセルと煙草入れを隠しました。
申し訳ありませんでした・・・」
再び泣き崩れる茜さんに、熊田先生は言う。
「馬鹿もん!キクさんの心臓は、そんなことで止まってしまうものか!
決してお前のせいじゃない。ぢゃから、もう泣くな」
茜さんは善蔵さんと一緒に屋敷に帰って行った。
熊田先生と事件について話す。
「しかし、キクさんにしても、禁煙中だったあずさにしても、煙草の好きな奴ばかりぢゃのう。
完冶も、二郎も、かなりのヘビースモーカーだったったようぢゃ」
待てよ、シアン化水素は、青酸化合物に熱を加えると発生するんだったな・・・。
そうか、これだ!
「先生、二郎さんは、青酸化合物入りの煙草を吸ったから、亡くなったんですよ!」
「なるほど、青酸入りの煙草に火を点けると、ガスが発生して・・・」
「二郎さんは、青酸煙草で殺された後、自殺のように偽装されたんでしょう。
きっと、完冶さんも、同じ方法で殺された後、土蔵まで運ばれて、ナイフを刺されたと考えられます。
あずささんは禁煙中だったから、この方法が使えなかった・・・。
ん?もしかして、キクさんもこの方法で?」
「これは、神楽寺へ行かにゃならんな」

僕と熊田先生は玄信さんに事の全てを話した。
「キクさんの墓をあばいてみようと言うんじゃろ、しかし、それだけはのう・・・」
「警察にキクさんの遺体を調べてもらえば、事件の糸口が掴めるかも知れないんですよ!」
僕は説得したが、それでも玄信さんは気が進まない様子だ。
「玄信さん!わかって下さい。これ以上、犯人を野放しに出来ないんです!」
「よし、わかった。確かに君の言うとおりじゃ!警察を呼ぶか!」
やっと玄信さんを説得することに成功する。鑑識の人たちがやってきた。
数々の謎を秘めたキクさんの姿が、目の前に現れようとしている・・・。
だが、墓の中にキクさんの遺体はなかった。代わりに、一人の男の死体があった。
「これは、綾城アキラだ!」
アキラは、既に、死んでいたのか・・・。
鑑識の話によると、アキラは、完冶さんより先に死んでいたという。
完冶さんを殺したのはアキラじゃなかった。
死因は撲殺。墓石で殴られたのだろうという。血はそのときに付いたんだ・・・。
そして、アキラのポケットから青酸反応のある刻み煙草が出てきたそうだ。
そういえば、アキラの写真を持っていたっけ。
取り出して見比べてみるが、ずいぶん感じが違っているな。
おや、この顔、どこかで・・・。
悪寒が駆け抜ける。
「思い出したぞ!僕は、あの夜、海上の崖で、この男に・・・そうだ!
あれは事故なんかじゃない!僕はアキラに襲われたんだ」


309 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 06:24:06 ID:1NS+CiRZ0

探偵事務所に戻る。あゆみちゃんが待っていた。
「何か思い出したのね!」
キクさん、完冶さん、二郎さんは青酸煙草で殺された。
キクさんの煙草入れに青酸入りの煙草を忍ばせたのは、
この連続殺人の犯人に利用されたアキラの仕業だ。
だから、それを調査に行った僕に危険を感じたアキラは、
あの晩、僕を電話で崖まで呼び出し、襲い掛かってきた。
頭を殴りつけた上、事故で死んだように見せつけるため、草むらに突き落としたんだ。
「ねえ、どうしてあずさまで殺されたの?」
「あずささんは、遺言公開の日、アキラが誰かと会っていたと言っていた。
その会っていた人がたぶん、犯人だ」
そこまで考えたとき、突然電話が鳴り出した。熊田先生からだった。
「ついにわしはどえらい事を見つけたぞ!
例の煙草殺人の実例があったんぢゃ!
ある薬剤師の女が、自分の夫に多額の保険金をかけて、殺したという事件があったんぢゃ!
しかし、問題はここなんぢゃ。その事件の担当弁護士というのが、実は・・・」
「『神田』ですね」
「そうぢゃ!」
電話を切る。やっぱり神田弁護士が・・・。
ふと視線を感じて、そちらの方向を見ると、あゆみちゃんと目が合った。
「どうしたんだい?僕の顔ばかり見て」
「さっきから気になってたんだけど・・・。
アキラはあなたを殺そうとしたのに、どうして海へ突き落とさなかったのかしら?」
「・・・!?」

続く


310 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 07:17:26 ID:1NS+CiRZ0
9章

僕は綾城家を訪れる。いつものように善蔵さんが迎えてくれる。
「お帰りなさいませ。
先ほど、神田様からお電話がありまして、ユリ様のお子様が見つかったとのことです!
やはり、キク様からユリ様を探してほしいと頼まれて・・・」
善蔵さんの言葉を遮って、僕は言う。
「善蔵さん、この事件の犯人は、どうやら神田のようです」
善蔵さんはひどく驚いた。
「ユリ様については、キク様からいろいろ聞いておられたでしょう。
後継者の印がどのようなものかもご存知だったかも・・・。
しかし、神田様が・・・」
茜さんを呼び出す。
「茜さん、煙草入れは・・・?」
「持ってきました。これです」
茜さんから煙草入れを受け取ろうとしたが、手が滑って落としてしまった。
引出しが外れ、その中から紙切れが出てきた。紙切れには、
「馬 進み、兎 進みて、鶏 開く、卍の中の 印臨まん」
そう書かれていた。
煙草入れを調べてみたが、壊れた様子はない。引出しも元に戻す。
善蔵さんに煙草入れを見せてみる。
「この煙草入れを見ていると昔の事が目に浮かぶようです・・・。
あ!じ、実は、旦那様のせいで自殺してしまった夫婦の事を思い出したんです。
その夫婦は、神田という苗字でした!その家には確か、息子が一人いたはずです」

昔の事を知っているとすれば、玄信さんだ。神楽寺へ行く。
玄信さんは、まだキクさんの遺体が見つからないと言う。
「玄信さん、神田という名前に聞き覚えがありますね?
一連の事件は、全てその男の仕業のようです。話していただけますね?」
「・・・あんたの思っとるとおりじゃ。キクさんの旦那に両親を自殺に追いやられた男こそ、
綾城商事の顧問弁護士、神田という男に間違いない。
キクさんは、神田のことをすべて知っておったんじゃよ。
それでも、あえて神田を顧問弁護士に決めたんじゃ。せめてもの罪滅ぼしのつもりでな」

神田の事務所へ行く。また神田は不在で、秘書さんが応対してくれた。
「あら?あなたは、いつかの・・・。はあ?先生が殺人犯?
変な事言わないでよ!言っておきますけど、神田と言う名前の弁護士なんて、
いくらでもいるのよ!」
そうだ、神田はユリさんの子供をここへ連れて来ていたかも。聞いてみよう。
えーっと、火事に遭ったのが17年前でそのとき赤ん坊だったと言うから、今は17、8歳くらいかな?
「あの、神田先生は、17、8歳くらいの少年をここに連れてきた事はありませんでしたか?」
「時々、あなたくらいの少年を連れてこられましたよ。
とっても礼儀正しくて、誰かさんとはずいぶん違うわね!」
秘書さんに嫌みを言われてしまった。
あ、そうか、僕も17歳だったっけ。実感があまりないけど。


311 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 07:18:06 ID:1NS+CiRZ0
なんとなく海上の崖に来てみた。
ここに立っていると、あの夜のことがありありと蘇ってくる。
あの殺気に満ちたアキラの顔が。
崖の上でボーっとしていると、日が落ちてきた。
確かに、僕はこの崖でアキラに襲われた。だが、何故アキラは僕を海の方へ落とさなかったんだろう。
夕日を受けて、何かが光った。拾い上げてみると、それはボタンだった。

天地さんのマンションへ行ってみる。
あっ、そうだ。天地さんはいないんだった。話を聞きたかったのに・・・。
何となく立ち去り難くて、僕は天地さんの部屋の前にしばらく佇んでいた。
すると、見知らぬ男がやってきて、話し掛けてきた。
「おたく、天地さんのお知り合いですか?天地さんから洗濯物を頼まれたんですが、遅れちゃって。
やっとお持ちしたんですが、お留守なんですよ」
男はクリーニング屋の店員らしい。ビニールに包まれたシャツを持っている。
「それ、たぶん僕のものだと思いますが」
「えっ、じゃあ、受け取ってくださいよ。ところで、あなた、海にでも落ちたんですか?
そのシャツ、海水でずぶ濡れでしたよ」
じゃあ、僕は・・・。一体、どうなってるんだ!

混乱する頭で、探偵事務所に帰る。あゆみちゃんに今日の事を話す。
「えっ!やっぱり海へ落とされていたらしいって言うの?!
・・・たぶん、海に落ちていたあなたを、誰かが助けて草むらまで運んだのね。その理由はわからないけど。
そして、倒れていたあなたを、天地さんが発見した・・・」
あっ、そういえば、このシャツ・・・。
「あゆみちゃん、これかなぁ、僕のシャツって・・・」
「これよ、これ!あなたがいつも着ていたのは。あら?ボタンが一つ取れてる」
崖で拾ったボタンを取り出す。
「これかな?」
「同じボタンだわ。待ってて。今付けてあげる」
数分後。
「はい、出来たわよ。ねぇ、着替えれば?」
「そうしようかな・・・」
僕は今着ている半袖のシャツを脱いだ。
「あら?あなたってそんなところに火傷の跡があったのね。今まで気付かなかったわ」
え?でも自分じゃよく見えない。洗面所に駆け込んで、恐る恐る、鏡を覗く。
僕の左肩には、確かに火傷の跡が・・・。
これは、昨日や今日、出来たものじゃない。そういえば、前からあったような・・・。
何か、思い出せそうだ!でも、まさか、そんな!
ああっ、頭が割れそうだ!もしや、僕は!
しばらくすると落ち着いてきた。そうだ、明日、もう一度素子さんに会ってみよう。

続く


312 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 07:18:50 ID:1NS+CiRZ0
10章

僕は再び、素子さんの元を訪れた。
素子さんの顔をよく見てみる。やっぱり、僕はこの人を知っている。
素子さんに火傷の跡を見せる。
「わかりました。全て話してあげましょう。そうよ、あなたはユリさんの子供に間違いないわ。
この間、あなたが帰り際に後ろを向いた時、シャツの袖から、その火傷がちらっと見えたの。
そのときはまさかと思ったんだけど・・・。
あなたは、捨て子として、母の孤児院で育てられたの。
でも、本当の両親を探すという書置きを残して、孤児院を飛び出してしまったの。
ちょうど、あなたが中学校を卒業したすぐ後の事らしいわ」
「・・・僕が、捨て子として育てられたその事情とは、一体、なんだったんです?答えてください!」
「そうね、あなたには知る権利があるわね。その事情というのは、あなたのお父さんのことなの。
遠山孝夫(たかお)。それがお父さんの名前よ。
ある日、孝夫さんは、ガラの悪い連中に人が乱暴されている所を見てしまったの。
止めに入った孝夫さんは、ナイフを出して向かってきた相手を、逆に殺してしまったの!」
「そ、そんな・・・」
「必ず正当防衛が認められる、みんなそう思ってたの。
でも、殺してしまった男は、この町の有力者の一人息子だったらしいの。
そのせいか、孝夫さんは刑務所に入れられてしまったわ。
「それで、父さんは、今どこに?」
「お気の毒に、孝夫さんはとうとう刑務所から出られないまま亡くなってしまったの。
残されたユリさんも、死んだ男の仲間の嫌がらせにあって・・・。
あの火事も、その連中の仕業だったそうよ。
もうわかったでしょう。私の母は、あなたから殺人者の息子という過去を消し去りたかったの」
「本当のことを話してくださってありがとうございました。僕は、父を誇りに思います」
そうだ、素子さんは、佐和子さんに似ているのだ。佐和子さん・・・僕を育ててくれた、孤児院の婆ちゃん。
「そうそう、一つ思い出したことがあったわ。
あなたは男の子なのに、いつも人形で遊んでいたそうね。
立派な日本人形で、ユリさんが大切にしていたものだったそうよ。
あなたは、孤児院を飛び出したときも、人形だけは忘れなかったそうね。今でも持ってるんでしょ?」
「素子さん、本当にありがとうございました」
「また、いつでもいらっしゃいね」

僕は急いで探偵事務所に帰った。
あゆみちゃんに、素子さんから聞いた話をする。
「そうだったの・・・。ユリさんがあなたのお母さんだったなんて。皮肉な話ね」
そうか、僕のことを調べた神田は、僕を善蔵さんに紹介したんだ。罠にはめるために・・・。
応接セットの側の戸棚の中の、日本人形を取り出す。
「これは、僕の物に間違いない!こうして手に取ると、子供の頃のことが目に浮かんでくる。
とうとう、何もかも思い出したぞ」
今までの話を総合すると、これが綾城家の後継者の印なのか?ただの人形に見えるが。
ん?この人形、こんなに軽かったっけ?中は空洞になっていて、何かが入っているようだ。
思い切って中を見てみることにした。
人形の中には、綾城家の家紋が入ったお守り袋が隠されていた。
「こんな物が入っていたなんて、知らなかった・・・」
お守り袋の中には、小さな鍵と、折りたたまれた紙切れが入っていた。
紙切れにはこう書かれている。
「あなたが、これを見つけるときが必ずやってくると、母さんは思っていました。
今すぐこれをもって、明神村の綾城という家を訪ねてみなさい。
そこには今までと全く違ったあなたの人生が待っているの。
その家には、キクっていう名前のあなたのお婆ちゃんがいます。
きっとあなたの力になってくれるわ」
あの葉書に書かれたのと同じ、綺麗な字だった。
「か、母さん・・・!!」
後継者の印は、たぶん、綾城家の中にあるんだ。その場所に入るには、この鍵が必要なんだ。
その場所は・・・あそこしかない!

続く


313 :ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:2007/07/10(火) 07:19:51 ID:1NS+CiRZ0
終章

僕は、綾城家を訪れた。
善蔵さんに、お守り袋のことを話し、土蔵を開けてもらうように頼む。
完冶さんが殺されたときに見た、土蔵の奥のもう一つの扉。その鍵を開ける。
扉の奥は広大な迷宮になっていた。しばらく進むと、馬の絵が描かれた壁を見つけた。
そうだ、煙草入れから出てきた紙切れだ。紙切れに書いてある通りに進むと、隠し部屋が開いた。
部屋の隅には神棚が奉ってあり、その上には黄金に輝く印章と紙があった。
僕は、印章と紙を取った。紙にはこう書かれている。
「この印を持つ者を綾城家の正当なる後継者とみなす」
後継者の印とはこれのことだったんだ!
僕がうわごとで言っていたお守りっていう言葉には、こんな秘密があったのか。
・・・待てよ、僕は今日までお守りの存在すら知らなかった。
その僕が、どうしてうわごとでお守りなんて言うんだ?
「やあ。記憶は戻ったかい?ふっふっふっ」
ふり向くと、そこには見慣れた男が立っていた。顔には傷跡がある。
「私が弁護士の神田だ。君には天地と言ったほうがわかりやすいかね?」
「き、貴様は・・・」
「名探偵くん、どうやら、君は私の計画の全てを知ってしまったようだね」
綾城家に復讐しようと、そして、綾城商事を乗っ取ろうとした神田は、
キクさん達を青酸煙草で殺し、アキラを撲殺し、あずささんを絞殺したのだ。
後継者が見つかったと言って、僕の替え玉を用意したりもした。
僕を罠にかけ、後継者の印を探させようとしたが、アキラは勝手に僕を殺そうとした。
アキラに殴られて海に浮かんでいた僕を引き上げて調べてみたが、
お守りを持っていなかった。そして記憶を失っていたので、一芝居打ったという。
「さて、おしゃべりはここまでだ。ここらで、消えてもらおうか・・・。
俺は、綾城家に勝ったんだ!」
神田の手にナイフが光った!
そのとき、神田に飛び掛った男がいた。男は神田の手をねじり上げ、ナイフをその手から落とした。
やがて、神田は善蔵さんの通報により駆けつけた警官に取り押さえられた。

「あなたは、たしか・・・・。和人さん・・・ですか?」
「そうだ。ずいぶん探したよ。君に見せたい物があるんだ」
それは、母さんから和人さんに宛てた手紙だった。父さんの不幸が綴られていた。
法律の矛盾を感じたと言って、町を出るきっかけになった手紙だ。
和人さんは今年、念願の司法試験に受かったので、僕に会おうとして探し回っていたらしい。
「君は、今日から綾城家の後継者だ。立派に屋敷を継ぐ事が、姉さんのためだ。
・・・お、おい君!これは・・・」
僕は、印章を和人さんに手渡すとこう言った。
「僕は、綾城という苗字じゃありません。遠山孝夫とユリの息子です。
それに、僕は、僕にとってもっと大切なものを手に入れました。失いかけていた過去と、この母さんの写真です」




注:「たかお」の漢字表記が解らなかったので適当に当てました。







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