ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女

part32-105~114,117~120,132~140


105 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/02(木) 18:48:41 ID:9wmRSnnp0
序章

それは、今から三年前の、ある夜のことだった。

僕は警官に追われていた。だめだ。このままでは見つかってしまう。
物音を立てないように・・・そう思ったが、足元の空き缶を倒してしまった。
「あっ!こんな所にいたのか!」
僕は夢中で走った。警官は追いかけてくる。
そして、角を曲がった時、一人の男が僕の行く手を遮ってしまった。
「君、どうかしたのか?」
「あ、あの・・・」
とっさに言葉が出ない。警官たちは僕に追いついてしまった。
「住所と名前を聞いただけじゃないか。何で逃げるんだ?」
「この子がどうかしたんですか?」
男は警官に言った。
「あんたはいったい誰だね?この少年の知り合いか?」
「いえ、そういうわけじゃないんですが」
「この少年が、こんな時間にうろついていたので、不審に思い、声を掛けたら、
いきなり逃げたんですよ」
「ちょっと待ってください、突然こんなことを言うのもなんですが、
ここは僕に任せてもらえませんか?」
「おや?あなたは確か・・・」
「何か事情がありそうだから、この子に話を聞いてみようと思うんです。構いませんね?」
「あなたがそう仰るなら、我々も安心ですよ。では、よろしくお願いします」
警官たちは、あっさり引き上げていった。この男は何者なんだろう?
「あの、どうもありがとうございました」
「いやいや、そんなことより、喉が渇いただろ。どこかで何か飲まないか?ご馳走するよ」

僕は、男と一緒に、小さな喫茶店に入った。
男は、僕にいろいろと質問をしてきたが、僕は答えなかった。
「言いたくなければいいんだよ。
うーん。見たところ、中学を卒業したての15才、目下、家出中・・・こんなところかな」
・・・当たっている。この男の観察眼は大したものだ。
男の顔をしげしげと眺める。30代くらいで、ちょっといい男だ。
悪い人でもなさそうなので、僕は、少しずつ、身の上話を始めた。
「ふーん。君は、離れ離れになったご両親を捜すために、旅をしていたのか。
何かワケがありそうだね?」
「・・・・・・」
「それよりも、これからどうするつもりなんだ?泊まるところもないんじゃないのか?」
またまた当たっている。そう、今はとりあえず、あてはない。
「君を見ていると、昔の自分を思い出すんだ。だから、放っておけなくて、声を掛けたんだよ。
会ったばかりで、いきなりなんだが、今日のところは、僕の家へ来ないか?」
「失礼ですが、あなたは・・・?」
「僕は空木俊介(うつぎ しゅんすけ)。私立探偵なんだよ。
きままな一人暮らしさ。どうだろう、さっきの話。無理にとは言わないが・・・」
警察と知り合いのようだし、悪い人でもなさそうだ。
「じゃあ、今夜はお言葉に甘えて、お世話になります」
「そうか、決まりだな」

こうして、私立探偵 空木俊介と出会った僕は、やがて先生の助手となった。
そうすることが、離れ離れになった両親を見つける一番の近道だと思ったからだ。
僕は先生の助手として、いくつかの事件に出会った。
そして僕は、この恐怖の物語に出会ってしまったのです・・・。

―一人で学校にいると、うしろから誰かの呼ぶ声がする。
―ふり向くとそこには、一人の少女が立っている。
―何かを言いたげな、淋しい少女が、
―あなたのうしろに立っている・・・。

続く

106 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/02(木) 18:50:02 ID:9wmRSnnp0
1章

僕が空木先生の助手になってから、数ヶ月の日々が過ぎた。
そんなある朝、恐ろしい事件の幕開けを告げる、電話のベルが鳴り響いた。
「先生、警察から電話です。また何か、事件のようですよ」

空木先生と僕が、河原に行ってみると、そこには、
見知らぬ少女の死体が、静かに横たわっていた。
濡れたセーラー服に長い黒髪。生前は可愛かったんだろうな。
「空木探偵事務所の人ですか?ご苦労さまです」
見た限り、彼女は絞殺されたようだ。死体の身元はまだわからないと警官は言う。
死体の発見場所を調べることにする。
ゴミが溜まっているのでそれを取り除くと、小さな手帳があったので、拾い上げる。
丑美津(うしみつ)高校、1-A、小島洋子(こじまようこ)。
この手帳は、生徒手帳のようだ。添えられた写真は、確かに、あの死体の顔だ。
生徒手帳は、鑑識に回されることになった。
「洋子!洋子が、どうして、こんな事に!」
セーラー服の女の子と、一人の男が、河原に駆けつけてきた。
「あの、あなたたちは?」
女の子の方は、取り乱してしまってそれどころではないらしい。代わりに男が答えた。
「わたくしは、小島洋子の担任で、日比野(ひびの)と申します。
しかし、なぜ、こんなことに・・・。しかも、こんな場所で」
「洋子さんは、何者かに殺されたようです」
日比野さんは30過ぎくらいで、とても真面目そうな先生だ。
平静を装っているが、とてもショックが大きいようだ。顔が青ざめている。

僕と空木先生は、事務所に引き上げてきた。
「やはり、殺人事件でしたね」
「うん。別の場所で殺された後、川へ投げ込まれたらしい。犯行時間は昨夜だということだ。
君は、学校での調査にうってつけの人間だから、警察も頼りにしているらしいよ」
そうか。僕が高校に行っていれば、一年生か。洋子さんと同級になる。
「そうそう、河原に来てた女の子に、ここへ来るように言っといたから・・・」
「おじゃまします」
「ほら、噂をすれば・・・」
「あの、今朝は取り乱してしまって、すみませんでした。
私、橘(たちばな)あゆみと言います。洋子は、私の親友でした」
僕は彼女に、形式通りの質問をする。
「洋子さんが殺されたことに、何か心当たりはありませんか」
「解りません。洋子に、人の恨みを買うような、事情があったとも思えない。
ただ、ひとつ、気になることがあるんです。
実は、私と洋子で探偵クラブっていうサークルを作ってたんです。
テーマを決めて、調査した結果を報告しあうんです。
洋子は、何かを調べていました。
それが、彼女が殺されたことに、関係があるのかも知れません」
「洋子さんが、何を調べていたのかは知らないんですか?」
「ええ、でも、何かを一生懸命調べていたことは、間違いありません。
その頃からなんです。洋子の様子が変わったって気付いたのは」
「どんな風だったんです?」
「いつも何か、考えているような、
そして、時々、別人のような表情を見せるようになったんです」
僕が考え込んでいると、空木先生が言う。
「一度、洋子さんの家に行ってみてはどうだ?」


107 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/02(木) 18:50:59 ID:9wmRSnnp0
「私が案内します」
僕はあゆみちゃんに、洋子さんの家へ連れて行ってもらった。
玄関に出てきた、洋子さんのお母さんに、探偵だと名乗る。
「最近の洋子さんの様子で、何か気づいたことはありませんでしたか?」
「そうですね・・・。一週間ほど前から、あの子、よく出歩くようになりました。
夜遅く帰ってきた後、自分の部屋で何かをしていたようです。
元気もなかったので、心配していた矢先でした」
「一週間前、何かあったんですか?」
「いえ、とりたてて何もなかったと思いますが。
そういえば、ある朝、起きてくるなり、こんなことを言ったんです・・・」
洋子さんは、その朝、ヘンな夢を見たと言ったという。
夢の中で、学校の廊下を一人で歩いていると、うしろから自分を呼ぶ声がしたので、
振り返ると、そこに、血まみれの少女が立っていて、
「助けて、ここから出して」と言って、消えてしまった。
だが、怖いとは感じなかった。そんな夢だったという。
あゆみちゃんが、驚いた表情をしている。
「どうしたの、あゆみちゃん」
「その夢の話に、心当たりがあるの。一緒に、学校へ来てちょうだい!」
「わかった。行ってみよう。お母さん、どうもお邪魔しました」

丑美津高校に着いた。あゆみちゃんに訊く。
「心当たりって、何?」
うん、洋子が夢で見たっていう、その血染めの少女の話が、この学校に出るっていう
幽霊の噂ととても似ているの!」
「幽霊の噂?」
「ええ。この学校で、古くから噂され続けている話で、誰でも知ってるわ。
・・・そういえば、洋子、その幽霊のことを話してた!確か、一週間ほど前に!
もしかしたら、洋子が調べていたのは、この幽霊の噂だったんじゃないかしら?
私、みんなに聞いてくる!」
あゆみちゃんは僕を置いて行ってしまった。
しかし、幽霊か・・・気になるな。僕は、通りかかった生徒を呼び止めて、話を聞くことにした。
「この学校の幽霊の噂を聞きたいんだけど」
「それって、もしかして、『うしろの少女』のことかしら?
血染めの少女がうしろに立ってるっていう・・・」
「その少女の幽霊は、うしろの少女って言うんだね?」
「うん。とーっても気味悪い話なの」
「どういう話なの?」
「じゃあ、話してあげるね。
―一人で廊下を歩いていると、うしろから、誰かの呼ぶ声がする。
―振り返るとそこに、血染めの少女が立っている・・・。
だいたい、こんな感じ。
こういうのって、大抵、昔何か事件があったりするのよね。
自殺した生徒がいたりとか。
まぁ、昔のことなんて私にはわからないけど」
「誰か、詳しい人、知りませんか?」
「学校のことをよく知っている人がいるとすれば、駒田(こまだ)先生じゃないかしら?」
「駒田先生?」
「美術の先生よ。古い話なら大抵知ってるわよ」


108 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/02(木) 18:52:11 ID:9wmRSnnp0

僕は美術室へ向かった。そこには、見覚えあるおじさんがいる。
ぼさぼさ頭で・・・(って、それは前作だけど二年後だって!)
とにかく、誰かさんに似ている人だ。確かに、彼の年齢なら、昔のことも知っていそうだ。
「わしが駒田ぢゃ、よろしく」
「事件のことは、ご存知ですね?」
「今朝、聞いた。かわいそうにのう・・・」
駒田先生に、うしろの少女について訊く。
「生徒でもないのに、よく知っとるのう。
古くから噂されとる話しぢゃ。そう、15年くらい前から、噂され始めて、
今でも見た人がいるという話ぢゃ」
「15年前、学校で何か事件はありませんでしたか?」
「そうぢゃのう・・・。そうそう、一つ思い出したぞ。
15年前の11月頃、女生徒が行方不明になったんぢゃ」
「その生徒は、どうなったんです?
いまだ、見つかっとらん。生きているとは思えんのう・・・」
「うしろの少女の噂は、女生徒の失踪と関係があるんじゃないでしょうか?」
「かも知れん。時期が、ほとんど同じぢゃし。
そういえば、うしろの少女のことを聞きに来た女生徒がいたのう。
ん?殺された女生徒はなんという名前ぢゃった?」
「小島洋子ですが・・・」
「たぶん、その子じゃ」
ふと時計を見ると、だいぶ遅い時間になっていた。そろそろ引き上げよう。
「明日もお邪魔していいですか?」
「もちろんぢゃ、協力するぞ」

僕は探偵事務所に戻ってきた。空木先生が待っていた。
「お帰り。どうだ?調査の方は。
・・・実は、知り合いの刑事から、11月に時効になってしまう、
ある殺人事件の調査を頼まれてしまったんだ。
だから、小島洋子の事件は、ほとんど君一人の調査になりそうだ。
心細いだろうが、頑張ってほしい」
空木先生は、僕に、鑑識から帰ってきたという、洋子さんの生徒手帳を渡すと、
警察署に行くと言って、出て行ってしまった。
困ったことになってしまった。これからどういう風に調査しようか・・・。

続く

109 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/02(木) 18:53:35 ID:9wmRSnnp0
2章

昨日の約束通り、丑美津高校の美術室に行ってみたが、駒田先生はいなかった。
辺りの生徒に、小島洋子のことを尋ねると、旧校舎の前で見かけたという人がいた。
僕は、旧校舎の前に行ってみた。ここで洋子さんは何をしていたんだろう?
旧校舎の壁に一ヶ所だけ、色が違うところがある。そこだけ塗りなおされたらしい。
「おい!壁にイタズラするな!ここで何しとる!」
作業服姿の、60前といった感じの男に怒鳴られた。
男は田崎(たざき)さんという、この学校の用務員だそうだ。
洋子さんのことやうしろの少女のことを訊くと、田崎さんは僕を疑り深い目で見るので、
探偵だと名乗ると、慌てた様子で去っていってしまった。何だか怪しい。

遠くにあゆみちゃんの姿が見えたので、ついていってみることにする。
あゆみちゃんは、廊下の突き当たりの、大きな鏡の前で立ち止まった。
鏡に映る僕の姿に気がつき、あゆみちゃんは振り返った。
「あら、あなただったの。やっぱり、洋子は、うしろの少女のことを、
いろんな人に聞いて回っていたみたいよ。ちょうど一週間ほど前から・・・。
でも、うしろの少女のことと、洋子が殺されたことと、どう繋がるのかしら・・・」
あゆみちゃんは、なぜ、こんな所にやって来たのだろう?
そんなことを思っていると、あゆみちゃんが口を開く。
「実は、ここで洋子と会ったことを思い出したの。
洋子の様子が変わってから、少したったある日、私、この鏡の前に立っていたの。
すると、うしろから近づいてきた洋子が私にこう言ったの。
『あゆみ、あのうしろの少女のことだけど、
彼女、本当に、あなたのうしろに立っているかも知れないわよ』」
「それじゃ、まるで、洋子さんが自分のことを
うしろの少女だって言ったみたいじゃないか?!」
「でも、それだけしか言わなかったの。洋子、いったい何を言いたかったのかしら。
私、なんだか怖いわ」

あゆみちゃんと別れて、美術室に向かうと、駒田先生がいた。
僕は駒田先生に、生徒手帳を見せる。
確かに洋子さんは、駒田先生の所に来たそうだ。
「やたらと話を聞きたがる彼女の様子は、気味が悪いほどぢゃったぞ」
あの怪しい男、田崎さんのことも聞いてみる。
「田崎は、用務員になる前、左官屋だったそうぢゃ」
「じゃあ、あの旧校舎の壁を塗ったのは・・・」
「左様、田崎が塗ったんぢゃ。かなり前、あれが崩れ落ちたとき、田崎が修理したんぢゃ」
そうだ、15年前に行方不明になった女生徒は?
「そうそう、失踪した女生徒は、浅川(あさかわ)しのぶという、当時1-Aの生徒だったんぢゃよ!」
「浅川しのぶ・・・。何か、彼女について覚えていることはありませんか?」
「それが、記憶にはないんぢゃ。ただ、彼女はなにかの事件に巻き込まれたのでは、という
噂だったと思うが」
駒田先生はもう帰ると言うので、僕も帰ることにした。

探偵事務所には空木先生がいた。
「調査は順調かい?僕の方は、頼まれた事件のあらましを説明してもらったところだ」
空木先生は、調査している事件のことを話してくれた。
15年前に、金田源治郎(かねだげんじろう)という、この町のスナックのオーナーが殺された。
当時、有力な容疑者と見られた男性は、自殺体で発見された。
それから、事件は迷宮入りしてしまった・・・。
「手掛かりは何もないんですか?」
「うん、犯行時、その現場に居合わせたと見られた人物がいたそうだ。
当時、丑美津高校の一年生で、浅川しのぶという女の子だったと・・・」
「その子、それ以来、行方不明なんですよね?
・・・先生、二つの事件には、何か関係がありそうですよ」
「今から、警察に行って話を聞いてきたまえ」
「ええ、そうします!」

続く

110 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/02(木) 18:54:20 ID:9wmRSnnp0
3章

僕は警察署にやって来た。
受付の婦警さんに空木探偵事務所の者だと告げると、刑事さんが現れた。
「ほう、君が空木さんの助手なのか。
初めまして、捜査1課の丸山と申します。
金田源治郎殺人事件の話を聞きたいそうだね」
刑事さんに話を聞く。
金田は、15年前の2月にこの街に引っ越してきて、スナックを開いた。
そして、その年の11月10日の午後9時ごろ、自宅で殺された。
死因は、刃物でメッタ突きにされたことによる出血多量。
犯行の手口から見て、金田に対して恨みを持っている者の犯行かと思われた。
金田は、表向きはスナックのオーナーだが、裏ではワルだった。
個人で違法な高利貸しをやっていたし、詐欺も働いた。多くの人が被害にあっている。
だが、金田は尻尾を出さず、警察にはなかなか捕まらなかった。
警察が重い腰を上げ、捜査に乗り出そうとした矢先に、金田は殺された。
つまり、金田を恨んでいる人、容疑者は大勢いる。凶器も見つかっていない。
金田には、当時、16歳になる五郎という一人息子がいた。
五郎はかなりの遊び人で、今でもブラブラしているそうだ。
金田のスナックに入り浸っていた不良少女たちは、五郎と知り合い、
そのうち家にまで遊びに行くようになった。
特に、丑美津高校の女生徒が多かったようだ。
それというのも、金田の家は丑美津高校の近くにあったからだ。
事件のあった晩、五郎と遊びに行く約束をしていた少女が、金田の家で五郎の帰りを待っていたそうだ。
「それが、浅川しのぶなんですね?」
僕がそう言うと、刑事さんは驚く。
「その通りだ。彼女は、何らかの形で事件に巻き込まれたのだろう、という謎を残したまま、
行方不明になってしまった。正直なところ、もう死んでいると思うよ」
金田の家から十数メートル離れた道路に、しのぶと同じAB型の血液が見つかったという。
しのぶは、金田を殺した犯人の顔を見てしまったので、犯人に殺されたか、
あるいは連れ去られたのかも知れない。
しかし、警察は、しのぶについてもう一つの仮説を立てていた。浅川しのぶ犯人説。
事件後すぐに姿を消したのは、やはり怪しい。
未成年のしのぶが犯人だったときのことを考えて、マスコミにはしのぶの名前を報道しないように指導した。
聞き込みするときも気をつかった。だから、直接の関係者以外は、事件のことをはっきり知らないだろう。
でも、犯人は別にいて、しのぶは殺されたのだ思う、と刑事さんは言う。
犯行が行なわれた直後、五郎は帰ってきて、警察に通報した。
その夜、五郎は、帰る途中で、一台の車とすれ違ったと言っていた。
黒い乗用車というだけで、車種もナンバーも不明。しかし、犯行に車が使われた可能性は大きい。
しのぶを連れ去るためにも、車は必要だ。
「ところで、容疑者と見られた人が、自殺体で見つかったということですが・・・」
「ほう、よく知ってるね。そう、内田輝彦(てるひこ)という男が自殺しているんだよ」
内田は小さな町工場を経営していたが、金田によって、工場を騙し取られてしまったという。
内田に、参考人として事情を聞こうとしていたところ、犯行の数日前から行方不明になっていたため、
行方を探したが、死体となって発見された。
内田が犯人かも知れないが、確証は何もない。他の容疑者はアリバイが崩せなかった。
そして今年、時効を目前に控えてしまったのだ・・・。

僕は警察署を後にした。聞いてきたことを整理する。
洋子さんは、うしろの少女を調べているうちに、金田の事件に気付いたのかも知れない。
そして、洋子さんは重要な手掛かりを見つけ出し、その結果辿り着いた犯人の正体が、
内田以外の人間だったとしたら、洋子さんはその犯人によって・・・?!
だが、この推理を裏付けるためには、洋子さんが金田の事件を知っていたのか、確かめる必要がある。

続く

111 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/02(木) 18:55:03 ID:9wmRSnnp0
4章

僕はまた洋子さんの家に行ってみることにした。
ベルを鳴らすと、洋子さんのお母さんが玄関口に現れた。
僕が事情を説明すると、お母さんはなにか手掛かりになるかも知れないと言って、
洋子さんのカバンを持ってきてくれた。
中を見せてもらう。教科書に、ノートが何冊か。
ノートを取り出して見ると、そこには金田の事件の新聞の切抜きがびっしりと貼られていた。
洋子さんが金田の事件を知っていたのは間違いないようだ。

また丑美津高校で聞き込みだ。手掛かりは、きっとある。
辺りの生徒を捕まえて話を聞くが、金田の事件は古すぎて知らないという。
だが、駒田先生なら知ってるかもね、ということだ。
また駒田先生か。美術室へ行ってみる。
美術部員がいたが、駒田先生はいないようだ。
美術部員に話を聞くと、なんと、うしろの少女を最初に見た人を知っていると言う。
それは生物の葉山先生らしい。
それからしばらくして、駒田先生が美術室にやって来た。
金田の事件や浅川しのぶのことを話すと、駒田先生は覚えていると言う。
五郎のことや、内田のこと、警察で聞いてきた事を説明する。
「それが、今度の事件と関係があるんか?」
「金田の事件の犯行現場に居合わせたと見られ、そのまま行方不明になってしまった少女が、
浅川しのぶなんですよ」
「・・・あの事件にまきこまれとったんか。
で、小島が殺された事とあの事件とどう繋がるんぢゃ?」
「うしろの少女を調べていた洋子さんは、偶然知ってしまった金田の事件の真犯人に殺されたんじゃないか
と思うんですよ」
「あの事件が解決すれば、小島を殺した犯人が解るかもしれんわけぢゃな」
さっき聞いた、葉山先生のことも聞いてみる。
「最初にうしろの少女を見たのが葉山くんだとすれば、それは15年前のはずぢゃ。
彼女がここの教師になって、まだ10年あまりぢゃ。
・・・あっ、葉山くんは、ここの卒業生ぢゃ。在学中に見たということぢゃな。
彼女なら、ほかにも、何か知っとるかもしれん」
駒田先生は葉山先生を呼んできてくれた。
葉山先生にうしろの少女のことを聞く。
「・・・その日は、15年前の11月10日のことです」
「金田が殺された日ですね?」
「ええ、だからはっきり覚えているんです。
その日の午後10時頃、私は宿題のプリントを学校に忘れてきたことに気付いたんです。
家を抜け出して、こっそり学校へ取りに行ったの。
プリントを持って、帰ろうとしたとき、後ろから誰かに呼ばれたような気がしたんです。
やばい!と思って振り返ると、ある教室の窓のところに、血にまみれた少女が立っていたんです!
もうびっくりして、気が遠くなりそうでした。
それで、もう一度見たんですけど、そこには誰もいませんでした・・・。
私、あわてて逃げたわ」
「・・・・・・」
「うしろの少女は、きっと、しのぶさんの幽霊よ。薄暗かったから、顔まではわからなかったけど、
でも、その幽霊、セーラー服を着ていたの。
・・・今と同じ話を、小島さんにも話したの。そのあと、小島さんと田崎さんが言い争っているのを見かけたわ」


112 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/02(木) 18:55:45 ID:9wmRSnnp0
用務員室に行き、田崎さんに、洋子さんと言い争っていたことを聞くが、
田崎さんはうろたえながら、知らないと言い張った。
明らかに何か隠しているので、問い詰めようと思ったとき、そこにあゆみちゃんが来た。
「あゆみちゃん、どうしてここへ?」
「あなたに話があったの。
昨日、洋子の死体が発見された河原へお花を供えに行って、ついでに聞き込みをしていると、
ちょっと気になる話が聞けたの!
洋子が殺された晩、あの川原で、挙動不審な初老の男性が目撃されていたの。
顔は解らなかったようだけど、話からすれば、ちょうど田崎さんぐらいの・・・」
田崎さんは逆上した。
「お、お前ら、よってたかって人のことを・・・!」
用務員室から追い出されてしまった。僕はあゆみちゃんに声をかける。
「あゆみちゃん、帰るんだったら送ってくよ」
「私、これから職員室に行くの。一緒に行く?」
「そういえば、事件の日以来、日比野先生に会ってないな。一緒に行くよ」

職員室に着いたとき、視線を感じて振り返ったが、そこには誰もいなかった。
日比野先生は事件のショックからまだ立ち直っていないようで、
何を聞いても取り合ってくれない。
そこに、いかにも紳士、という感じの初老の男性が現れた。年は、60前かな?
「日比野くん、どうしたんだね?さっきから呼んでいたんだよ。
・・・おや?君は・・・探偵さんだね。初めまして、校長の浦辺(うらべ)です」
校長先生は、日比野先生と話があるからと言って、日比野先生を連れて行ってしまった。
職員室を出ると、ちょうどあゆみちゃんも出て来た。
あゆみちゃんは僕に話しかける。
「ねえ、私、あなたのお手伝いをする!犯人を早くみつけたいの!
打ち合わせもしたいし、帰りに事務所へお邪魔してもいいでしょ?」
あゆみちゃんの気持ちはよくわかる。だが、彼女の安全のためにも関わらせちゃいけない。
「あゆみちゃん、君は事件に関わっちゃダメだ。危険すぎるよ」
「・・・私、余計なこと言っちゃったみたいね。ごめんなさい」
あゆみちゃんは去って行ってしまった。

探偵事務所に帰ってくると、電話が鳴り出した。空木先生からだった。
「君に知らせておきたいことがあるんだ。当時、金田殺しの容疑者と見られた人物がもう一人いたんだ。
なんと、丑美津高校の関係者なんだ」
「それは、田崎じゃないですか?」
「その通り。金田に相当な借金をしていた田崎は、事件の数日前、金田と言い争っているところを目撃されている。
だが、アリバイがあったんだ。犯行時間、田崎は学校に残って、壁の修理をしていたと言ったらしい。
その壁の修理を頼んだのは、浦辺校長だったんだ。浦辺は、金田と面識もなく、
事件と関係があるとも思えない。アリバイは、成立したそうだ。
・・・ああ、それから、あのあゆみという女の子のことだけど、
彼女の行動には、気をつけておいた方がいいと思うよ」
田崎が修理していた壁とは、あの旧校舎の壁のことだろう。
しのぶさんが行方不明になったあの夜に修理されたのか・・・。
何か秘密が隠されているような気がする。

続く

113 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/02(木) 18:56:33 ID:9wmRSnnp0
5章

丑美津高校の用務員室に行く。
田崎さんは僕を追い返そうとしたが、僕は言った。
「田崎さん、あなた、金田のことはよくご存知ですね?
あなたにやましいところがなく、当時のアリバイに嘘がないのなら、
話を聞かせてください」
田崎さんは話し出した。
「事件の晩、わしは、校長に、旧校舎の壁の修理を頼まれとったのを思い出して、
夜の9時から12時までかけて、塗ったんじゃ」
「校長先生が、あなたのアリバイを証明したんですね?」
「そうじゃ。わしが壁を塗っとる間、ときどき様子を見にきなさった。
・・・もうええじゃろ。正直に話したぞ、出て行ってくれ!」

授業が終わる頃を見計らって、職員室に行く。
浦辺校長に話を聞きたかったが、もう帰ってしまったという。
葉山先生がいたので、にもう一度話を聞いてみようとしたが、
職員室は人が多いせいか、葉山先生は何も話そうとはしない。
僕は葉山先生を旧校舎のところへ連れて行った。辺りには誰もいない。
そこは、田崎さんが塗ったという壁の前だった。
「この壁、15年前の、あの事件があった晩に、田崎さんが塗ったそうなんですが」
僕がそう言うと、葉山先生は少し驚いた顔をした。
「えっ?ああ、そうね、たぶんその通りよ。
あの晩、うしろの少女を見て、逃げるとき、私ったら、気が動転しちゃったせいか、
気が付くと、この旧校舎のところに来ていたのよ。
この辺りで靴が片方脱げちゃってね、怖かったからそのまま帰ったの。
で、次の日、靴を探しに来たとき、この壁は綺麗に仕上がっていたわよ」
「あの晩、ここを通ったんですね?」
「ええ、10時過ぎに・・・」
「田崎さんは、あの晩、9時から12時までこの壁を塗っていたと言うんですが、
田崎さんを見かけましたか?」
「えっ?田崎さんなんていなかったわよ」
また昨日みたいに視線を感じたので振り返ると、そこには田崎さんがいた。
逃げる田崎さんを僕は追いかけたが、見失ってしまった。

僕はひとり、探偵事務所で自分のミスを恥じていた。
そこへあゆみちゃんが訪ねてきた。
「あゆみちゃん、どうしたの、こんな時間に」
「・・・・・・」
あゆみちゃんは何かを思いつめている様子だ。
「どうしたの?元気ないじゃない」
「教えてちょうだい。田崎さんが、洋子を殺した犯人なの?もし、そうなら、私・・・」
「あゆみちゃん、そんな事どこで聞いたのか知らないが、君は事件に関わっちゃだめだ」
「だって・・・」
「だって、じゃない!自分の身が危険なのが、まだ解らないの!?」
僕は思わず怒鳴ってしまった。ちょっときつく言い過ぎたかな。
話題を変えよう。
「そうだ、あゆみちゃん、コーヒーをいれるよ、飲むだろ?」
「あ、私がやるわ」
あゆみちゃんがいれたコーヒーを一口飲むと・・・。
「あれ、へ、変だな?体の自由がきかない!ま、まさか、あゆみちゃん!」
「ごめんなさい・・・」
「な、なぜなんだ、あゆみちゃん・・・」
僕は、薄れゆく意識の中で、何度もあゆみちゃんの名を呼んだ。
「あ・・・あゆみ・・・ちゃん・・・」

続く

114 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/02(木) 18:58:23 ID:9wmRSnnp0
6章

電話が鳴ってる・・・。あ、切れた。
だんだんと意識が戻ってきた。ここは探偵事務所のソファーの上だ。
そうだ、あゆみちゃんが・・・でも、なぜ・・・?
起き上がる。あゆみちゃんはもういない。床に睡眠薬の瓶が転がっているのを見つけた。
そして、テーブルの上には書置きがある。
「ごめんなさい。私、犯人をどうしても許せない。それが誰なのか、
本当に田崎さんなのかを、自分で確かめたかったの。
もしかすれば、私、二度とあなたに会えないかも知れないね。
でも、私、どうしても・・・。
勝手なことをしてごめんなさい。さよなら    -あゆみ-」

なんて無茶を!
僕は書置きを握りしめ、事務所を飛び出した。どこにいるんだ、あゆみちゃん!
迷路のように広がる街の中を走る。
丑美津高校の制服の、後姿の少女を見つけた。
「あっ、いた!あゆみちゃん!」
だが、人違いだった。
「ねぇ、あゆみって、もしかして、橘さんのこと?
橘さんは、今日、休んでたわよ。風邪だっていうことだけど、
さっき、駅前の繁華街で、橘さんに似ているコを見かけたわよ」

繁華街には大勢の人が行き交っている。この中から一人を見つけるのは不可能に近い。
くそっ、あゆみちゃんはどこに・・・?
酔っぱらいのおぢさんに絡まれたが、風俗店の呼び込みのお兄さんに助けてもらった。
「助かりました」
「それより、ここは子供の来るところじゃないよ」
呼び込みのお兄さんは、通りかかった二人連れの方に行ってしまった。そこに、見覚えのある顔がある。
あれは浦辺校長だ。一緒にいる人相の悪い男はだれだろう。
そのとき、後ろから僕を呼ぶ声がする。振り返るとそれは洋子のお母さんだった。
「あっ、洋子さんのお母さん!あゆみちゃんが・・・」
「私も、あゆみちゃんのことで話があるのよ。今日の午後6時頃、うちにあゆみちゃんが来たの」
6時・・・事務所へ来て、僕を眠らせた後だ。
「洋子にお線香を上げに来ただけだって言ってたんだけど、
ひどく思いつめていたみたいなのよ。最後に、『さよなら』って言い残して、
心配になったから探していたの」
「お母さん、実は、あゆみちゃん、僕を睡眠薬で眠らせて、事務所を出て行ったんです」
僕は、あゆみちゃんが残した書置きをお母さんに見せた。
「この、田崎っていう人が洋子を?・・・一人で犯人を捜そうなんて、無茶だわ!」
「僕が、彼女の協力を頭から拒んだのがいけなかったんです・・・」
「田崎って人は、今、どこに?」
・・・そうだ、あゆみちゃんは田崎さんのところにいるのかも知れない。
「僕、田崎の家へ行ってみます!」
「待って、これ、あゆみちゃんの写真。あなたに渡そうと思って持ってきたの。これで早く見つけて!」
僕は写真を受け取ると、田崎さんのアパートへ急いだ。

田崎さんのアパートの前に来たが、田崎さんが帰っている様子はない。
あゆみちゃんもいないようだ。
隣の部屋に住んでいる男の人がいたので、話を聞くことにする。
あゆみちゃんの写真を見せると、今日来たと言う。
「4時過ぎに、表で田崎さんの声がしたから、出てきたんだ。
すると、この子がいて・・・。田崎さんが走っていってしまったんだ。
預かってた小包を渡そうと思ったのに」
「その小包、見せてください!」
さすがに中を開けるのはまずいが、差出人が誰かは確認できる。
「丸福村(まるふくむら)7-4 田崎ふみ」
「丸福村ってのは、小さな漁村で、田崎さんの故郷だよ。
そうそう、その写真のコ、この小包の住所をメモして帰ったよ」
ま、まさか、あゆみちゃんは丸福村へ?

117 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/02(木) 20:00:53 ID:9wmRSnnp0
僕は丸福村へ行き、田崎さんの母親、ふみさんと会った。
探偵だと名乗ると、ふみさんは慌てた様子を見せる。
「俊夫が、俊夫がまた何かやったんですか?」
俊夫、田崎さんはそんな名前だったな。
「俊夫は、今まで人様に迷惑ばかりかけてきました。
カッとすると、何をするか解らん性格ですが、根は優しい子なんです。
都会暮らしが長かったせいか、荒れていた頃もあったようです。
そんな俊夫を正しく導いてくだすったのが、浦辺というお方ですわ・・・。
なのに、あのばかたれは、また・・・」
ふみさんは泣き出してしまった。そこへ男が訪ねてきた。
男にあゆみちゃんの写真を見せると、崖の方へ行ったと教えてくれた。

崖に駆けつけた僕は、田崎さんに捕らえられたあゆみちゃんを見つけた。
田崎さんの手には包丁が握られている。
「馬鹿な真似は止せ!逃げられないぞ!」
「来るな!わしはもう、おしまいじゃ!」
田崎さんを説得しようと試みたが、田崎さんは死ぬ覚悟だ。
僕は、隙を見つけて飛びかかった。それに気付いた田崎さんは包丁を振り下ろそうとしたが、
寸前のところで止めて、がっくりとうなだれた。
「できん、わしは人など殺せん・・・」
「田崎さん、何もかも話してくれますね?」
「はい・・・」
金田が殺された日は、借金の返済日だったそうだ。
だが、返す当てがなかったので、田崎さんは金田に謝りに行こうとした途中、
金田が殺されたのを知ったという。
このままでは疑われてしまうので、アリバイを作るために、夜中に学校に忍び込み、壁の修理をした。
翌日、浦辺校長に全てを話すと、校長は、田崎くん、君は人殺しが出来るような人間ではない、
私に任せておけと言ったそうだ。
そして、校長は嘘の証言をし、田崎さんのアリバイは成立した。
「浦辺校長は、わしみたいな人間を、二度も信じてくださった」
昔、田崎さんが左官屋だったとき、傷害事件を起こし、クビになってしまったそうだ。
そんなとき、浦辺校長と知り合い、用務員として雇ってくれたという。
「今の話に、嘘はありませんね?」
「はい」
「それでは、今度は小島洋子のことを聞かせてください」
洋子さんは、田崎さんのアリバイが嘘だということに気づいていたという。
それで洋子さんは田崎さんを問い詰め、口論になった所を葉山先生に見られた。
それからしばらくして、洋子さんは殺された。
「なぜ、本当の事を今まで話してくれなかったんです?」
「それは、無実の罪をかぶるより、耐えがたいことがあったからじゃ」
本当の事を話せば、自分を信じてくれた浦辺校長を裏切ることになる。
校長へのせめてもの恩返しにと、故郷の海で死のうと決めた。でも、あゆみちゃんに見つかってしまった。
「思わず、あゆみさんを酷い目に合わせてしもうた!ゆ、許してくれ!!」
「田崎さん、もういいのよ」
あゆみちゃんは怒ってないようだ。
「私、田崎さんの言葉に嘘はないと思う。お願い、信じてあげて!
それから・・・ごめんなさい」
「あゆみちゃん。良かった、無事で」

翌日、あゆみちゃんと僕は、探偵事務所に帰ってきた。
「これには驚いたよ、まるで遺書じゃないか」
あゆみちゃんに書置きを見せる。
「あなたにもしもの事があったらどうしようと思ったの。だから、私ひとりで・・・」
「ありがとう。でも、あんな無茶・・・」
「友達を亡くすのはもう嫌だもん」
「・・・・・・」
「今からなら、午後の授業に間に合う。私、学校へ行くわ」
「じゃあ、送っていくよ」

続く

118 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/02(木) 20:01:42 ID:9wmRSnnp0
7章

丑美津高校に着いた。
「あっ、そうだ、実は私・・・」
あゆみちゃんが何か話そうとすると、チャイムが鳴った。
「もう行かなきゃ。放課後、旧校舎で話すわ」
そう言ってあゆみちゃんは去っていった。

放課後まで、どうやって時間をつぶそうか考えていると、葉山先生に声をかけられた。
「校長先生がお呼びよ。あなたにお話があるらしいの」
校長室に通された。
「申し訳ありません。事件のことをお聞かせ願おうと、お呼びしました」
僕は、事件の成り行きを浦辺校長に話した。
「田崎は、疑われていたのですか・・・。
田崎は人を殺すような人間ではありません。わたくしは、田崎を信じております。
今も、そして15年前の、あの事件のときも・・・」
浦辺校長は、大切な生徒を、
小島洋子も、浅川しのぶも守れなかった、と言って悲しい目をした。
浦辺校長は、評判どおりの人物のようだ。
それだけに、先日、繁華街で一緒にいた、人相の悪い男とは不釣合いだ。
「実は、先日、あなたを見かけたんですが・・・」
「えっ?」
そのとき、電話が鳴り出した。
「すみません、お話は後にしていただけませんか」
僕は校長室を出て、職員室に行った。
日比野先生が沈んだ様子で座っている。顔色が悪い。
日比野先生と少し話をしてから、電話が終わった頃だろうと校長室に戻る。
だが校長先生はいなかった。窓のブラインドが閉めてある。
ブラインドをちょっと覗くと、校長と一緒にいた人相の悪い男の姿が見えた。


119 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/02(木) 20:02:26 ID:9wmRSnnp0
慌てて外に出てみたが、男はもういなかった。
その代わり、へんな男子生徒に声をかけられた。
「何もんだ、てめーわ・・・」
剃り落とした眉毛に、整髪料で独特の形に固めた髪。所謂ツッパリってヤツだ。
「男の人を見かけなかった?」
「なれなれしい野郎だ。ちょっちツラ貸しな」
人気のないところに連れて行かれてしまった。
「テメーだろ、学校をうろついてるヘンな野郎ってのは?あ?!」
僕は、探偵で怪しい者ではないと説明するが、男子生徒は信じてくれない。
「ざけんなよっ!ガキの探偵はファミコンだけだ!」
彼はさっきから「ざけんな」とか「ばっくれ」とか「ガンくれ」とか、聞きなれないことばかり言う。
ヘンなのにつかまったな、と困っていると、あゆみちゃんが通りかかった。
「何してるの?」
あゆみちゃんが、僕が怪しいものではないと説明すると、彼の表情は和らいだ。
「私、あなたと葉山先生が美術室で話しているのを立ち聞きして、
そのとき知った、金田の事件を調べてたの。お願い、手伝わせて!犯人を早く捕まえたいの!」
僕に向かって懇願するあゆみちゃん。
「話は聞かせてもらったぜ」
男子生徒が口を挟む。
「そーゆーコトなら、協力しよーじゃねぇか」
「ありがとう、ひとみちゃん」
あゆみちゃんは彼をひとみちゃんと呼んだ。
「牛美津高校 番格、河合(かわい)ひとみだ、ヨロシク!」
ひとみちゃんは、洋子さんの同級生で、生前親しくしていたそうだ。
「まだ返事を聞いてねぇぜ」
そうだった。ひとみちゃんは強そうだし、あゆみちゃんのボディガードになれるかも。
「・・・手伝ってもらうよ」
僕は二人にそう言った。
改めて、ひとみちゃんに、人相の悪い男がいなかったかどうかを聞く。
「さっきの野郎なら、校長と行っちまったぜ。
洋子の事件以来、妙な野郎が来てるみたいなんで、気にしてたんだが、
奴は校長の知り合いみてーだし、オメーを疑っちまった。すまねぇ」
あゆみちゃんの提案により、三人で手分けして調査することになった。
僕は金田の事件、ひとみちゃんは人相の悪い男のこと、そしてあゆみちゃんはその他のこと。
放課後、旧校舎の前で会おうと約束し、ひとみちゃんは張りきって聞き込みに出かけた。

浦辺校長がまた来るかも知れないと思って、僕はまた繁華街にやってきた。
まだ時間が早いせいか、人通りは少ない。
あのときと同じ、風俗店の呼び込みのお兄さんが呼び込みをしている。
お兄さんとしばらく話をしていたが、お兄さんは暇だからと言って店の中に引っ込んでしまった。
僕みたいなのが入っていい所ではないと思いつつも、店の中に入ってみる。
案の定、おじさんに止められた。
「おいおい、入っちゃだめだよ」
おじさんに探偵だと名乗った。
「僕はここの店長だが、何を調べてるんだ?」
これくらいの年なら、15年前のことも知ってるかな、と思い、
金田の名前を出すと、店長は反応した。
「それなら、よく知ってるよ」
店長と五郎は、若い頃遊び仲間だったそうだ。
五郎は、養子で、金田源治郎とは他人だったらしい。
そのせいで、五郎が源治郎を殺したのではないかという噂が立ったそうだが、
五郎は源治郎と上手くやっていたし、殺す動機がない。
店長は懐かしいという様子で話す。
「五郎とは、もう10年以上会ってないよ」
そろそろ忙しくなる頃だと言うので、店長は店の奥に去っていった。
浦辺校長は来そうにないし、僕は帰ることにした。

続く

120 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/02(木) 20:03:08 ID:9wmRSnnp0
8章

ひとみちゃんやあゆみちゃんの調査はどうなっているのだろう?
僕は丑美津高校を訪ねた。
旧校舎の前で待っていると、やがてひとみちゃんがやってきた。
「あの男は、洋子が殺された翌日に、初めて現れたみてえだぜ。
しかし、犯人だったらなおさらこんな所へ来ねぇだろーし。
結局誰だかわかんねえが、校長の知り合いにしちゃ、釣り合わねぇな、あいつ」

美術室で駒田先生に会う。
「結局、金田源治郎殺しについては、何もわからんのぢゃな・・・」
「ええ。手掛かりといえば、五郎が見た黒い車くらいです」
僕は何気なく、壁に掛かった絵を見た。セーラー服の少女の絵。
前に来た時はなかったよな?あっ、今、瞬きした・・・なんてことはない。
そこへあゆみちゃんがやって来た。少女の絵を見て驚く。
「この絵の少女・・・洋子に似てる!鏡の前で話し掛けてきた洋子にそっくり!」
僕は駒田先生に聞いてみた。
「先生、この絵の少女、洋子さんがモデルでは?」
「そういえばなんとなく・・・。ぢゃが、彼女ではない。
昔の美術部員が、卒業するとき置いてったんじゃ。
確か、桂木(かつらぎ)という女生徒が描いたものぢゃったな。
あっ!思い出した。この絵のモデルは・・・浅川しのぶぢゃ!
作者を訪ねてみてはどうぢゃ?」

少女の絵を描いた、桂木さんの家に来た。
「初めまして、桂木です。しのぶの絵を描いたのは私です」
しのぶは大人しいコだったのに、金田五郎と知り合ってから、急にハデになってしまったという。
三週間前、桂木さんを訪ねてきた少女がいた。その少女は生前のしのぶにそっくりだったので、
驚いている桂木さんに、少女は小島洋子と名乗った。
僕は桂木さんに生徒手帳を見せた。
「これ、洋子さんなの?ずいぶん感じが違って見えるわ・・・」
洋子さんは桂木さんに、しのぶさんのことを聞いたそうだ。
「洋子さんの話し方やしぐさが、しのぶとそっくりなのよ。
そして、彼女、こう言い残したの。
『しのぶさんは、今でもきっと、丑美津高校のある場所にいます』
・・・どういう意味なのかしら?」
他にしのぶさんに関して知っていることはないかと聞く。
「ああ、そういえば、しのぶには仲のいい幼馴染がいたそうよ。
確か、内田っていう男の子だったわよ。同じ丑美津高校だったけど、顔を知っている程度だったし、
事件のあと、すぐに転校してしまったわ」
内田という名前を聞いて驚く。金田殺しの容疑者で、自殺した内田輝彦と関係が?
帰り際に、桂木さんは、何かわかったら連絡すると言ってくれた。

続く

132 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/03(金) 15:21:00 ID:nes8Gozg0
9章

丑美津高校の美術室だ。あゆみちゃんが待っていた。
僕はあゆみちゃんに、桂木さんから聞いたことを話した。
壁の、少女の絵に目が行く。
「そうそう。その絵のことが気になって、洋子のお母さんに会いに行ったの。
すると、洋子としのぶさんが、いとこ同士だってことがわかったの!
いとこ同士だったら、二人が似ていても不思議じゃないけど、
鏡の前で見た洋子は、あの絵そっくりだったわ」
あゆみちゃんが、少女の絵を見て言う。
「洋子にしのぶさんの魂が乗り移ったみたいに・・・。
ばかばかしいと思われちゃうかもしれないけど、私はそう思う。
そうすれば、洋子が残した言葉の意味がわかるような気がするの」
あの言葉。「しのぶさんは、今でもきっと、丑美津高校のある場所にいます」。
「洋子は、自分をうしろの少女・・・つまり、しのぶさんだって言おうとしたんじゃないかしら」

あゆみちゃんと別れて、職員室へ行く。
顔見知りの先生はいないし、浦辺校長も出張中だというので、適当な先生に話を聞く。
なんでも、生徒たちだけではなく、先生たちも、うしろの少女を見たと言って騒いでいるらしい。
それと、浦辺校長が、最近、家を手放したという話を聞いた。

美術室へ戻ると、駒田先生がいた。さっき聞いたことを聞いてみる。
「校長が、家を手放されたそうですね」
「らしいのう。教師たちは、お金がいることでもあったんだろうと言っとったが。
確かに、校長の家は一人では広すぎたぢゃろうが・・・。
校長は、一人暮らしなんぢゃよ」
駒田先生は浦辺校長のことを話してくれた。
「忠志(ただし)さんは、若い頃奥さんを亡くされたんぢゃ」
「忠志さん?」
「校長の、下の名前じゃ。もう30年以上も前の話ぢゃ。
その頃、わしと同じ一教師だった忠志さんに念願の子供が授かったんぢゃ。
ところが、奥さんは体が弱く、出産の時に・・・」
「赤ちゃんも助からなかったわけですね」
「ぢゃと思うが。
・・・お前さんは、なんでも事件と結びつけようとするのう」
それを言われるととても痛い。だけど、今はどんな手掛かりでもほしい。

もう帰るという駒田先生を、校門のところで見送ると、
入れ違いに、葉山先生がやってきた。
「あ、葉山先生、なにかあったんですか?」
「ちょっと、事故が・・・。私のクラスの生徒が怪我をしたの。
頭を打ったらしいから、入院して、検査を受けることになったの」
葉山先生は、病院から帰ってきたところらしい。
その生徒が、階段を降りていたとき、後ろに気配を感じて振り返ると、
日比野先生がいて、その後ろに、うしろの少女が立っていたので、
驚いて階段を踏み外したらしい。
「とにかく、校長先生に連絡しないと・・・。
うしろの少女はやっぱりいるのよ、私が見たあの日からずっと」
そう言い残して葉山先生は行ってしまった。


133 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/03(金) 15:22:36 ID:nes8Gozg0
旧校舎の前でひとみちゃんと会う。
ひとみちゃんはマッチを僕に渡す。
「スナック サンボラ」と書いてある。
「ひとみちゃん、スナックなんかへ行ってたの?」
「違う。それはあの男が落としてったのを拾っただけさ。サンボラと言やぁ、隣町のスナックだよ」
ひとみちゃんと一緒にサンボラへ行くことになった。

サンボラの店内に入る。マスターは怖そうな人だ。
「ここは子供の来るところじゃないぜ・・・帰んな」
マスターは僕たちを追い返そうとしたが、ひとみちゃんを見て、表情が変わった。
「お前、もしや、河合か?」
「・・・ああっ!加藤さんじゃないスか!」
二人で勝手に盛り上がっている。
「この人、おれが中学のとき、世話んなった加藤さんだよ」
「あんた、河合の知り合いだったのか。そんなら話は別だぜ」
マスターが話してくれるようになった。
「金田五郎さんだろ?うちの客だよ。五郎さんは昔からのお得意さんだったらしいぜ」
五郎は、財産を使い果たしてからは、来なくなってしまったという。
ところが、最近、また来るようになったという。
「実は、この間、五郎さんがこんな事を言っていたんだ。
親父を殺した奴を知ってるだの、酒が飲めるのもそいつのお陰だのと・・・。
あとは本人に聞いてみな」
五郎はこの先のマンションに住んでいると、マスターは教えてくれた。
もう遅いから、とひとみちゃんは帰っていった。

五郎のマンションの前に来た。五郎の部屋はどこだろう?
「ぎゃあああああああー!」
部屋の一つから、もの凄い悲鳴が聞こえてきた。
その部屋に駆けつけると、ナイフで刺されて死んでいる男の姿があった。
よく見ると、手に何か握っている。
「これは、校長と一緒にいた男だ」
窓の下を立ち去る人影が見えた。犯人だろうか?
とにかく、警察に連絡する。
しばらくすると、刑事さんと空木先生が来た。
「大変なことになってしまったね。これは、金田五郎だ」
やっぱり、そうか・・・。
刑事さんは、五郎が握っていたという万年筆を見せてくれた。
よく見ると、「T・U」とイニシャルが彫ってある。
「あとは任せなさい。君はもう帰ったほうがいい」
空木先生にそう言われたので、僕は事務所に帰ることにした。

探偵事務所で、今日の事を整理する。
五郎は、金田殺しの犯人を脅したために、殺されたのかもしれない。
五郎が握っていた万年筆、やはり犯人のものだろうか。
イニシャルが「T・U」になる人物・・・内田輝彦?
しのぶさんの幼馴染の内田さんは下の名前がわからない。
もう一人いたはず・・・そうだ、浦辺忠志。まさか、浦辺校長が?

続く

134 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/03(金) 15:23:21 ID:nes8Gozg0
10章

翌日、丑美津高校にやってきたが、いつもと違い、人の気配がない。
そこへ駒田先生が通りかかった。
「今日は、祝日ぢゃ」
「そうでしたっけ・・・?」

美術室で、駒田先生に昨日の事を話す。
「浦辺校長と、五郎。この二人の関係は、妙だと思いませんか?」
「おまえさん、まさか、校長を・・・?」
「確証はありませんが・・・」
「ふん。校長が犯人などとアホなことを言うて。
ばかばかしゅうて話にならん。わしゃもう帰る」
「・・・・・・」

探偵事務所に戻ると、留守番電話にメッセージが入っていた。
「桂木です。今日、内田君やしのぶと中学が一緒だった、さやかさんという人が
うちに来ますので、ぜひ、来て下さい」

続く

135 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/03(金) 15:26:26 ID:nes8Gozg0
11章

桂木さんの家に来たが、まださやかさんは来ていないらしい。
「さやか、遅いわね・・・。あ、ひとつ、思い出したことがあるわ。でも、ただの思い出話よ。
ある日、足を挫いた女の子が、校長先生の車に乗っけてもらってね、それが、羨ましかった・・・って、
それだけよ。立派な、黒い乗用車だったわ。女生徒の憧れのマトだったの」
浦辺校長が、15年前、黒い乗用車に?
・・・そうだ、サンボラに行って、もう一度マスターに話を聞こう。
桂木さんに、サンボラのマッチを渡す。
「このお店に行ってますから、さやかさんが来たら、連絡して下さい」

サンボラでは、お客さんたちが、テレビを見ていた。
「おう、来たか」
テレビでは、五郎が殺されたことを報道している。
「まさか、五郎さんが殺されるなんてな。客たちも、驚いてるよ」
僕はマスターに、何か解ったことはないかと訊いてみた。
「そうだ、思い出したぜ!ちょうど二週間前、久々に、五郎さんが来たときのことだ。
うちは、ご覧の通り、馴染みの客ばかりだから、
客の注文があれば、野球のシーズンには、音を消して、テレビをつけておくんだ。
その日、一人で飲みながらテレビをボーっと見てた五郎さんが、いきなり立ち上がって、こう言ったんだ。
『俺にもまた、ツキが回ってきたみたいだぜ!』って。
確か、9時頃だったよ。ここからテレビは見えないから、何を見たのかは解らんねぇけど」
店の電話が鳴り出した。
「あんたに、電話だぜ」
マスターから受話器を受け取る。
「桂木です。さやかから、駅に着いたって電話があったの。迎えに行くから、留守番頼まれてくれない?」
「はい、すぐ戻ります」

桂木さんの家に戻り、入れ違いに桂木さんはさやかさんを迎えに行った。
ここは応接間だ。テレビが置いてある。五郎は、二週間前、テレビで何を見たんだろう?
あ、もう9時になるな。五郎がテレビを見ていたのは今くらいの時間か。ちょっと見せてもらおう。
テレビをつけた。野球中継が終わったところだ。そして、ニュースが始まった。
「あら、テレビを見てたのね。連れて来たわよ」
桂木さんがさやかさんを連れて戻ってきた。さっそく、さやかさんに話を聞く。
「しのぶや内田君とは中学から一緒でした。二人のことは良く知っています。
・・・しのぶがグレたことには、私も心を痛めました。
その結果、あんな事件に巻き込まれたなんて・・・残念です」
「あの、内田君って・・・?」
「15年前、自殺してしまった内田輝彦さんの息子が、しのぶの幼馴染のたっちゃんです。
私たちは、内田君をたっちゃんと呼んでいました。
たっちゃんとしのぶは、小さい頃から仲が良かったそうです」
たっちゃん・・・イニシャルはT・Uだ。
「小島洋子さんのこと、何か知りませんか?」
「洋子さん・・・お気の毒です。そういえば、二週間前、洋子さんの事件を知った9時ごろのニュースで、
インタビューを受けておられた、浦辺校長を見かけました。校長先生、とても悲しそうでしたわ・・・」
五郎は、9時のニュースで浦辺校長を見たのか?
五郎が浦辺校長を脅迫したから、校長は家を手放し、五郎に金を渡したのかも?
そのとき、桂木さんが口を挟んだ。
「ねぇ、さやか、荷物を置いてきなさいよ。部屋に案内するわ」
二人は奥の部屋に行ってしまった。僕は応接間でしばらく待っていたが、二人はなかなか戻ってこない。
耳を澄ますと、奥の部屋から話し声が聞こえてきた。
「あのー、何してるんですかー?」
奥の部屋の二人に声を掛ける。
「あっ、ごめんなさい!さやかが持ってきた、中学の卒業アルバムを見せてもらってたの」
たっちゃんやしのぶさんの写真が載っているはずだ!
「見せてください!」
生徒たち一人一人の顔写真の下に、名前が書いてある。そこに、見覚えのある顔があった。
こ、これは、日比野先生・・・?
「そう、それがたっちゃん、内田達也(たつや)君です」
顔は、日比野先生だが、名前は内田達也となっている。

136 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/03(金) 15:28:22 ID:nes8Gozg0

翌日、僕は、誰もいない校長室に、日比野先生を呼び出し、話を聞いた。
「君は、そんなことまで調べていたのか。確かに、僕は内田輝彦の息子だ。
日比野というのは、母の旧姓だ。転校をきっかけに、母方の日比野と名乗るようになったんだ。
僕の父は、金田殺しの容疑者として手配され、そして、死体で見つかった。
僕の苗字が変わったのは、母が、世間体を気にしたからだ。
父を亡くした僕を支えてくださったのは、ほかならぬ浦辺校長なんだ」
内田輝彦と浦辺校長は、古くからの友人だったそうだ。
「五郎と知り合って、しのぶは変わってしまった。
事件に巻き込まれる前から、僕の知っている浅川しのぶは、もういなかったよ。
五郎は殺されたそうだな。金田親子・・・あいつらは人間のクズだっ!」
「・・・・・・」
そうだ、五郎が殺された日のアリバイを訊いてみなければ。
「確かに、僕には十分な動機がある。おまけに、アリバイなんてないさ。
でも、あんな奴らがどうなろうと、構わないじゃないか!」
「・・・五郎は、事件の夜、現場から走り去った、黒い乗用車の持ち主を脅していたようです。
その人物は、浦辺校長かも知れません・・・」
僕がそう言うと、日比野先生の目は怒りに燃えた。
「・・・お、おい!まさか、本気で、校長を疑ってるのか?
一つ、言っておく。なぜそんな馬鹿なことを思いついたのかは知らないし、
僕を疑うならそれでいい。だが、校長を侮辱することは、僕が許さない!絶対に・・・」

校長室を後にして、廊下を歩いていると、あゆみちゃんに会った。
「あゆみちゃん、実は・・・」
「ごめんなさい、これから英語の追試なの。あとで事務所に行くわ。
それにしても、嫌なお天気ね、今日・・・」
窓の外はどんよりと曇っている。
「こんな日、学校にいると、洋子の言葉通り、私の後ろに、うしろの少女が立ってるような気がする。
あの日も、こんなお天気だったの。
しのぶさんは、やはり今も、この学校のどこかに、本当にいるのかも知れないね・・・。
じゃ、あとでね」

僕は歩きながら考える。
洋子さんが言い残した言葉、「しのぶさんは、今でもきっと、丑美津高校のある場所にいます」、
あれは、どういう意味なのだろうか。
しのぶさんが、幽霊となって、この学校を彷徨っているとでも言いたいのだろうか?
あっ!葉山先生が見たという、血染めの少女が、怪我をしたしのぶさんだったとしたら、
しのぶさんの遺体が、学校のどこかに隠されている・・・とか?
いや、それよりもまず、浦辺校長のアリバイを確かめなければ。
日比野先生も怪しいけど、浦辺校長も怪しい。
校長は、五郎が殺された日、出張中だった。そうだ、葉山先生が、
校長に連絡すると言っていたっけ。葉山先生に訊いてみよう。


137 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/03(金) 15:29:14 ID:nes8Gozg0
気が付くと、そこは旧校舎の前だった。
葉山先生は、忘れ物を取りに行った夜、ここを通ったといっていたけど、遠回りになるのに、なぜこんな所を通ったのだろう?
そこへ、葉山先生が通りかかった。
「葉山先生、校長先生に連絡はつきましたか?」
「それが、ぜんぜん連絡が取れないの。出張先へ問い合わせても、そんな予定無いっていうのよ」
浦辺校長のアリバイは崩れた。
「それより、何してるの、こんな所で?」
「先生こそ、なぜここへ?」
「誰かが通路に車を停めたから、ここを通らなきゃ帰れないのよ・・・。
あっ、そうだわ。あの夜、わざわざここを通ったのは、通路に車が停まっていたからよ。
だから私、こっちへ来たのよ!」
「それはどんな車だったか、覚えていますか?」
「黒い車だったわよ。それから、来たときは、車なんてなかったわ。誰かが、後から来たようね」
「・・・先生、しのぶさんの死体が、学校のどこかに隠されてるかもしれませんよ!
先生が目撃したうしろの少女は、あの夜、黒い車で学校へ連れて来られた、
浅川しのぶさんだったかも知れません・・・」
葉山先生は驚いて、横を見た。その視線の先には、色の違う壁があった。
「きっと、あそこよ!間違いないわ。あの壁は、犯人が塗ったのよ!」
だが、あの壁は田崎さんが塗ったはずだ。

用務員室の田崎さんを訪ねる。
「あの夜、あの旧校舎の壁を塗ったのは、本当に、あなたですね?」
「間違いなく、わしじゃよ。まだわしを疑っとるのか・・・」
「実は、壁の中に、事件の決定的な証拠が隠されているのでは、と思ったんです。
それは、金田を刺した凶器と、浅川しのぶさんの死体です・・・」
「な、なんじゃと!?」
「でも、壁を塗ったのがあなたなら、それはありえませんね」
「いや、そうは言い切れんぞ。壁を塗ったのは確かにわしじゃ。しかし、壁が固まり始めるまでには、
時間がかかるもんじゃ。わしが帰ったすぐ後なら、
壁土を取り除いて、もう一度塗りなおすことは可能じゃ」
あの壁を壊すべきかも知れない。空木先生に相談しよう。
用務員室を出ようとする僕に、田崎さんは言う。
「早く犯人を捕まえてくれ!わしはまた疑われる!いや、それよりも、
わしを庇ってくださった、浦辺校長の名誉のために!」

探偵事務所に戻り、空木先生と話をする。
「壁にしのぶの死体が隠されているかも知れないんだね。
そこまで解ったなら、犯人の目星はついているね?」
空木先生がそう訊ねたが、僕は答えられない。いや、答えたくなかった。
「実は、あの万年筆の持ち主が解ったんだよ。その人物は五郎に強請られていた」
「それは浦辺ですね」
「その通りだ」
「先生、あの旧校舎の壁を・・・」
「ちょっと待ってくれ。今、警察が浦辺の行方を追ってるんだ。
僕も最後の追い込みのために、今から警察へ行かなきゃならない。じゃあ、行ってくるよ」
事務所にひとり、残されてしまった。僕は頭を抱えた。
田崎さんや日比野先生が言う通り、浦辺校長は立派な人物だ。
僕が会ったときも、嘘を言っているようには思えなかった。
あの校長が犯人なんて、信じられない、信じたくない・・・。
電話が鳴り出したので、取る。
「はい、空木探偵事務所です」
「空木の助手かい?あんたに、誰も知らない話を教えてやろう。
丑美津高校の浦辺はな、昔、金田の詐欺に手を貸していたんだぜ」
「な、なんだって!もしもし、あなたは、いったい!?」
「あの善人面した浦辺を心から憎んでいる男だ。奴は今、学校にいるぜ・・・」
言いたいことだけを言って、電話は切れた。
聞き覚えがあるような声だったったような気がするが・・・?
そうだ、今学校にはあゆみちゃんがいるんだった。今の話が本当なら、あゆみちゃんが危ない!

続く

138 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/03(金) 15:29:56 ID:nes8Gozg0
終章

学校に駆けつけると、そこにはあゆみちゃんと日比野先生がいた。
「あゆみちゃん、校長先生を見かけなかった?」
「学校にはもう、私と先生しかいないはずよ。教室でテストを受けてたし、
日比野先生もずっと一緒だったから、ご存知無いと思うわ」
「校長は、まだ出張先から戻られていないよ」
「校長は出張先にはいませんでした。そして、ついさっき、
校長が学校にいるという電話があったんです!とにかく、校長室へ行ってみましょう!」

僕とあゆみちゃんと日比野先生の三人で、校長室の前まで行ったが、
ドアには内側から鍵が掛かっていた。
僕はドアを思いっきり蹴破った。そこには、血にまみれた校長の死体があった。
サッと見回すが、窓にも鍵が掛かっているようだ。密室状態か。
流れ出た血はまだ乾いていない。死体の側に封筒が落ちていた。
それは浦辺校長が書いたと思われる遺書だった。
「みなさん、わたくしは、教育者として、いや、人間として、許されぬ罪を幾つも犯しました。
わたくしは、金田の詐欺に手を貸しておりました。
やがて、金田が邪魔になったわたくしは、彼をナイフで刺したのです。
そして、その犯行を見ていた浅川しのぶを車で跳ね、動かなくなった彼女を連れて現場から逃げました。
15年経った今、小島洋子と金田五郎が、事件を知ってしまいました。
事実が明らかになることを怖れるあまり、わたくしは、この二人までも手にかけました。
こんなわたくしを信じ、そして、慕ってくださった皆様にお詫びするためには、
こうするより仕方がなかったのです。
                        ―浦辺 忠志―」
「う、嘘だ・・・!」
日比野先生は取り乱している。
「先生、帰りましょう。僕が警察へ連絡をしておきます」
「嘘だ、校長は人殺しなんかじゃない。これは全て、嘘だ!
なぜなら・・・本当はみんな、俺が殺したからだ!」
「な、なんだって?!」
「お前らさえ、お前らさえいなければ・・・!」
日比野先生は憎しみをたたえた目で僕とあゆみちゃんを睨んだ。
「金田源治郎、あいつさえ現れなければ、親父も、しのぶも・・・!」
日比野先生、いや、内田達也は、源治郎を殺して、自分も死のうと決めた。
最後の別れを告げるため、校長に電話をした後、達也は源治郎を殺した。
そのとき、しのぶさんが現れた。しのぶさんは、達也を見て、
人殺しと叫んで外に飛び出していった。そして、急ブレーキの音が聞こえた。
電話を受け、駆けつけてくれた校長の車の前に、しのぶさんがが飛び出して、跳ねられてしまった。
校長は、達也としのぶさんを車に乗せ、学校に連れて行った。
ある教室に達也としのぶさんは入れられ、校長は去っていった。
そのとき、しのぶさんが立ち上がり、窓際に立った。しのぶさんは死んではいなかったのだ。
そこへ葉山先生が通りかかった。
「見つかってしまう!そう思い、頭の中が空っぽになった。そして、気が付くと、
砕け散った花瓶の破片と、足元に横たわる、しのぶの姿があったんだ」
今度こそ、しのぶさんは死んでしまった。その後の始末は、校長がしたらしい。
「校長は、俺のために・・・。その校長を、五郎の奴が強請りやがった!
あんなやつ、もっと早く殺してやればよかった!」
そのとき、達也がスキを見せた。僕はあゆみちゃんの手を取り、校長室の外へ飛び出した。


139 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/03(金) 15:38:21 ID:nes8Gozg0
「だめっ!そっちへ逃げちゃ!」
あゆみちゃんはそう言ったが、もう遅かった。
廊下の突き当たりの、大きな鏡の前に来てしまった。逃げ道はもうない。
「し、しまった!」
達也の足音がゆっくりと近づいてくる。
「小島は、あの夜、俺をその鏡の前に呼び出し、こう言った。
『先生、先生は昔、人を殺したわね・・・』
そのときの小島の顔は、しのぶそっくりだったんだ。
恐ろしかった・・・。俺は、思わずこう叫んだよ。
『そうだ!15年前、お前を殺したのは、この俺だ!』
気が付くと、俺は、小島の首を締めていた・・・」
達也の心の奥に潜む闇は、なんて深いんだろう。
「殺すつもりはなかった。小島をそのままにして、俺は逃げ帰った。なのに、
小島は河原で見つかった!なぜだっ!
・・・でも、もう、どうだっていい。
お前らさえ、余計なことをしなければ、校長は死なずに済んだ。お前らも、殺してやる!」
達也はナイフを手に、飛びかかってきた。僕はあゆみちゃんを庇って身をかわした。
ナイフは鏡に当たり、鏡にひびが入り、砕けた。
「ぎゃあああああっ!」
砕けた鏡の裏から、ミイラとなったセーラー服姿の死体が飛び出し、達也に覆い被さった。
「し、しのぶ?!」
そのとき駆けつけてきた、空木先生や、刑事さんたちも息を呑んだ。
「あの日、洋子が言ってた、私の後ろって、鏡に映った私の後ろという意味だったんだわ!」
あゆみちゃんはそう言うと、気を失ってしまった。


全てが終わり、空木先生と僕は、探偵事務所に戻ってきた。
「本当にご苦労だったね。君がいたからこそ、この事件を解決できたんだよ」
鏡の裏からは、しのぶさんの死体の他に、凶器も見つかったそうだ。
しのぶさんの死体や凶器を鏡の裏に隠したのも、洋子さんの死体を川へ捨てたのも、
浦辺校長がやったことだ。
だが、浦辺校長が、金田の詐欺に手を貸したという事実は出てこなかった。
校長を憎んでいると言っていた、事務所に匿名の電話をかけてきた男、それも浦辺校長だろう。
そして、あんな遺書を書いて自殺した・・・。達也の罪を全て被ろうとして。
「あっ、そういえば、あの万年筆は、いったい何だったんですか?」
「あれは達也が大学へ入学したときに、浦辺から贈られた物らしい。
達也が肌身はなさず、大切に持っていたものだそうだよ」
「でも、その頃は、苗字は日比野になっていたはずだから、T・Uって彫られていたのは
おかしいですよね?」
その謎は、後日明らかになった。
浦辺校長の奥さんは、出産のとき死んでしまったが、赤ちゃんは生きていたのだ。
その赤ちゃんが達也だった。
片親では不憫だからと、浦辺校長は、子供のいなかった内田夫妻に達也を預けた。
だが、その結果、不幸な道を辿ってしまった達也へ、
万年筆に刻んだ「T・U」というイニシャルに、願いをこめて贈ったに違いない。
「浦辺達也」。そう、彼の本当の息子へ。
「そうそう、君に紹介する人がいるんだ」
空木先生の後ろから現れたのは、あゆみちゃんだった。
「彼女は今日から我々の仲間だ。君と同じ、助手としてね」
「よろしくね!」
「さて、そういうことで、あゆみちゃん、どこかでおいしいものを食べようか。
ご馳走するよ」
「はい、お供します」
あゆみちゃんと空木先生は、僕を置いて事務所を出て行こうとするので、慌てて追いかけた。
「ちょっと、待ってくださいよー」



140 :ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女:2007/08/03(金) 15:39:05 ID:nes8Gozg0

そして、二年後の、夏のある日。事務所の電話が鳴る。
「はい、空木探偵事務所です」
「明神村の綾城家に仕えております、善蔵と申します。ちょっと、ご相談したいことがあるのですが」
「明神村、綾城ですね。今から伺います!」
僕は電話を切り、あゆみちゃんに言う。
「あゆみちゃん、出掛けてくるよ!」
「え?どこへ行くのよ?!」

「ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者」へ続く







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