「SS/スレ11/432-435」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

SS/スレ11/432-435」(2011/02/06 (日) 09:52:01) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

*ガラス玉 「ふぅ…、これで…最後、ね。…あら?」 世界の命運を握る戦いを目前に控え、それに備えて買い出しに来ていた少女の足が止まる。 「なにかしら…?あんな隅の方にたくさん集まって…」 目線の先には人だかりができていた。その大多数は幼い子供ばかりだが、自分と同じくらいの年の程の女の子もいる。 「露店でもあるのかしら。少しくらいなら…、覗いてもいいわよね?」 少女はそこに集まっている顔触れに、感じるものがあった。 子供や女の子が集まる場所=かわいい物がある場所。 そういった式が自然と頭の中に浮かび上がる。 そこに、ほんの少し前までその場にいた子供たちが横を通って行き、 「すっごくきれいだったねー!」 「ねー!」 と、すれ違いざまに言った。 (綺麗な物なの…?何かしら…) かわいい物ではないと知り、一瞬残念な思いも出てきたが、綺麗な物が嫌いなわけでもない。むしろ好きなくらいだ。 しかし、近付いて行くにつれ、ひとつの不安が頭をよぎる。 「あんなに人がいるんじゃ商品が見えないかも…」 それが心配だ。買い出しにあまり時間を掛ける訳にはいかない。 時間厳守は団体行動の鉄則だ。 だがしかし、それは杞憂に終わった。 客は自分より小さな子供ばかり。少女は容易に中を覗くことが出来た。 「あ…」 少女は感嘆の声を上げた。 ―綺麗だ。 確かにそうはっきりと言える物がそこには並んでいた。 色とりどりのガラス玉。 自分の存在を示すために、それらは懸命に輝いている。 「音譜帯の話をした時、―ガラスなんかと―だなんて言っちゃったけど、間違いだったわね…。すごく綺麗だもん…」 そこに、一組の親子の会話が聞こえてきた。「う~ん…、どっちにしよぉ…」 「いっこだけよ?」 何気ないその会話に、少女の胸は鼓動を速めた。 選ばれるのは一つだけ。比べて、より良いモノだけが選ばれる。 少女は一人の少年を思い浮かべた。 自らの浅慮で招いた悲劇を悔やみ、いつまでもそれを引きずり続ける赤い髪の少年を…。 (ルーク…) 彼は贖罪の場所をさがしていた。いや、死に場所と言ってもいいかもしれない。 だが、彼は死にたくないと言った。生きたいと言った。 死を間近に感じ、生への執着心を知ることが出来たのだ。 (ルーク…、私は…) 「…ょうちゃん!お嬢ちゃん!そんなとこにつったってないで、もっと近くで見ていきなよ!」 「へ…?あ…////」 気付くと、前に人はいなくなっていた。 考えごとをして周りが見えなくなっていた。 「お嬢ちゃん、名前は?」 「え…?ティアですけど…」 訝しがる少女をよそに、ガラス売りは話を続ける。 「涙、とかそれに近いしずく、あとは悲しみの意味がある名前だね。ティアちゃんは、人の悲しみを知って、人のことを思いやれる子なんだね」 いきなりそう言われ、少女は戸惑ってしまった。 「わっ、私はそんな…////」 「はは、照れない照れない」 「照れてません!」 笑いながらガラス売りは何かを取り出した。 それは透き通るほどに青いガラス玉。 「ティアちゃんの色だ。買ってくかい?」 「商売、お上手ですね…。…いえ、あの…、これ…、ください」 少女は、ガラス売りが薦める青ではなく、端の方で落ちそうになっている赤を拾い上げた。 「へ?それでいいのかい?」 「はい、これがいいんです」 ガラス売りは少し残念そうな顔をしたが、商売と割り切ったのか、その炎のように赤いガラス玉を少女に売った。 そして首をひねりながらこう言った。 「おかしいな…、さっきもさ、赤に由来のある名前の男の子がきたから赤を薦めたんだけど、その子は青を買って行ったんだよ…。腕落ちたかな…」 (ルーク…////) 「え、えっと、それじゃ失礼します。ありがとうございました」 その少年に心当たりのあった少女は、恥ずかしくなってすぐにその場を離れた。後ろの方でガラス売りがまだ何かを言っている。 少女はたった今買った赤いガラス玉を握り締め、決意を新たにした。 (ルーク…、私は…、たとえ誰も選ばなかったとしても、私はあなたを選ぶわ…。同情なんかじゃない。私はあなたに側にいて欲しいの…。あなたのことが…) ―好きだから― ---- #comment(vsize=2,nsize=20,size=40)
*ガラス玉 「ふぅ…、これで…最後、ね。…あら?」 世界の命運を握る戦いを目前に控え、それに備えて買い出しに来ていた少女の足が止まる。 「なにかしら…?あんな隅の方にたくさん集まって…」 目線の先には人だかりができていた。その大多数は幼い子供ばかりだが、自分と同じくらいの年の程の女の子もいる。 「露店でもあるのかしら。少しくらいなら…、覗いてもいいわよね?」 少女はそこに集まっている顔触れに、感じるものがあった。 子供や女の子が集まる場所=かわいい物がある場所。 そういった式が自然と頭の中に浮かび上がる。 そこに、ほんの少し前までその場にいた子供たちが横を通って行き、 「すっごくきれいだったねー!」 「ねー!」 と、すれ違いざまに言った。 (綺麗な物なの…?何かしら…) かわいい物ではないと知り、一瞬残念な思いも出てきたが、綺麗な物が嫌いなわけでもない。むしろ好きなくらいだ。 しかし、近付いて行くにつれ、ひとつの不安が頭をよぎる。 「あんなに人がいるんじゃ商品が見えないかも…」 それが心配だ。買い出しにあまり時間を掛ける訳にはいかない。 時間厳守は団体行動の鉄則だ。 だがしかし、それは杞憂に終わった。 客は自分より小さな子供ばかり。少女は容易に中を覗くことが出来た。 「あ…」 少女は感嘆の声を上げた。 ―綺麗だ。 確かにそうはっきりと言える物がそこには並んでいた。 色とりどりのガラス玉。 自分の存在を示すために、それらは懸命に輝いている。 「音譜帯の話をした時、―ガラスなんかと―だなんて言っちゃったけど、間違いだったわね…。すごく綺麗だもん…」 そこに、一組の親子の会話が聞こえてきた。「う~ん…、どっちにしよぉ…」 「いっこだけよ?」 何気ないその会話に、少女の胸は鼓動を速めた。 選ばれるのは一つだけ。比べて、より良いモノだけが選ばれる。 少女は一人の少年を思い浮かべた。 自らの浅慮で招いた悲劇を悔やみ、いつまでもそれを引きずり続ける赤い髪の少年を…。 (ルーク…) 彼は贖罪の場所をさがしていた。いや、死に場所と言ってもいいかもしれない。 だが、彼は死にたくないと言った。生きたいと言った。 死を間近に感じ、生への執着心を知ることが出来たのだ。 (ルーク…、私は…) 「…ょうちゃん!お嬢ちゃん!そんなとこにつったってないで、もっと近くで見ていきなよ!」 「へ…?あ…////」 気付くと、前に人はいなくなっていた。 考えごとをして周りが見えなくなっていた。 「お嬢ちゃん、名前は?」 「え…?ティアですけど…」 訝しがる少女をよそに、ガラス売りは話を続ける。 「涙、とかそれに近いしずく、あとは悲しみの意味がある名前だね。ティアちゃんは、人の悲しみを知って、人のことを思いやれる子なんだね」 いきなりそう言われ、少女は戸惑ってしまった。 「わっ、私はそんな…////」 「はは、照れない照れない」 「照れてません!」 笑いながらガラス売りは何かを取り出した。 それは透き通るほどに青いガラス玉。 「ティアちゃんの色だ。買ってくかい?」 「商売、お上手ですね…。…いえ、あの…、これ…、ください」 少女は、ガラス売りが薦める青ではなく、端の方で落ちそうになっている赤を拾い上げた。 「へ?それでいいのかい?」 「はい、これがいいんです」 ガラス売りは少し残念そうな顔をしたが、商売と割り切ったのか、その炎のように赤いガラス玉を少女に売った。 そして首をひねりながらこう言った。 「おかしいな…、さっきもさ、赤に由来のある名前の男の子がきたから赤を薦めたんだけど、その子は青を買って行ったんだよ…。腕落ちたかな…」 (ルーク…////) 「え、えっと、それじゃ失礼します。ありがとうございました」 その少年に心当たりのあった少女は、恥ずかしくなってすぐにその場を離れた。後ろの方でガラス売りがまだ何かを言っている。 少女はたった今買った赤いガラス玉を握り締め、決意を新たにした。 (ルーク…、私は…、たとえ誰も選ばなかったとしても、私はあなたを選ぶわ…。同情なんかじゃない。私はあなたに側にいて欲しいの…。あなたのことが…) ―好きだから― ---- #comment(vsize=2,nsize=20,size=40)

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
記事メニュー
目安箱バナー