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*親子
「ここが…、外郭大地…」
絶えることなく水が湧き、魔界から外郭大地への現在唯一の移動手段であるユリアロードの出口であるアラミス湧水洞。
ここに、ある想いを胸に秘めた少女が現れた。
「綺麗なところ…。魔界とは大違いだわ」
少女は今まで「外の世界」に出たことがなかった。
出身地のユリアシティでは、そこから一歩でも出れば障気が蔓延しているし、ユリアロードを通ってアラミス湧水洞に来たとしても、そこの魔物は侮れない。
現在所属している神託の盾騎士団の訓練も、主席奏長である兄の計らいで、ユリアシティで受けていた。
任務も、ユリアシティで済ませることが出来ることばかりだ。
だがついに白羽の矢が立ち、諜報部員として働くため、大詠師モースの命を受けて外郭大地に来たのだった。
ふいに、視界の端で草むらが動いた。
「魔物!?」
少女はすばやく戦闘体勢を取った。
だが、そこに現れたのは、危険な魔物ではなく、生まれたばかりの小さな魔物の子供であった。
「かっ…、かわいい…////」
初めての人外の者との戦いと思っていたためのいやな緊張がほぐれ、表情もときめく少女のそれへと変わっていく。
「ほら…、怖くないから…。おいで…?お母さんはどうした
のかな…?」
少女は、周りに他の魔物がいる可能性を忘れ、その魔物に夢中になってしまった。
いくら軍属とは言え、彼女もまた年端もいかない少女。仕方ないと言えば仕方ない。
「グルルルル…」
子供だけがいて、親がいないだなんてことはそうそうない。
気付くと後方から、親と思われる魔物が近付いて来ていた。
「しまっ…!」
急いで体勢を整えるが、魔物のあまりの大きさに体が震える。
(だめ、やられる…!)
そう思った瞬間、視界がいきなり暗くなった。
あまりの恐怖に、少女は気を失ってしまったのだ。
だが、彼女は殺されはしなかった。
代わりに、誰かに背負われているような感覚にとらわれる。
目が覚めると、自分の体は安全な場所に移動させられていて、魔物の親子はすでにいなくなっていた。
何故私は無事なのだろうか。その考えばかりが頭を覆う。
そして思い出す。
覚えているはずのない年齢の時の思いで。
自分が生まれたばかりの頃に、優しく抱き締めてくれた母のことを。
夜中に急に泣き出した時に優しく謳ってくれた母のことを。
その時、頬に一筋の涙が流れた。
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