TOAのティアタンはメロンカワイイ SS > スレ9 > 153-157

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それは、良く晴れた日に起こった、一つの出来事。
一人の男の願いから始まった一つの壮大で膨大で、途方もない計画。ローレライのスコアを外れるために巻き起こされた一つの騒動が鎮圧されてから、すでに二年半もの時間が流れていた。
そしてそれは、その妄執とも言える異常な計画を阻止し、そして世界を覆っていた瘴気を命を賭けて中和した一人の英雄であり、同時にかつてのアクゼリュスを滅ぼした一人の罪人がエルドラントに消えてから、二年半もの時が過ぎ去ってしまったということを意味していた。
そんな中、その英雄を称えるためのある儀式が、その日執り行われようとしていた。
成人の儀。
二十歳を迎えた王族を称え、祝うその儀式のために、一週間も前からキムラスカ城は右へ左への大騒ぎである。
通常の成人の儀における慌しさから考えると、それほど特例の大騒ぎということでもない。
しかし今回のそれは、現国王であるキムラスカランバルディアのたっての希望ということもあり、予算も規模も通常と相違無いにも関わらず、その準備を進める人々の態度はいつにもまして気合が入っている。
だがそんな大騒ぎを、どこか遠い国の出来事のように見つめる人影が一つ。城の前にあった。
ローレライ教団の制服に身を包んだ、長い髪を風になびかせるままのその女性はただなにも言わず、その瞳にどこか複雑な色を灯したまま佇んでいた。
名を、ティアグランツと言うその女性は、長い髪に隠されるようなその両目を伏せ、ただ立ち尽くす。
時間に置き去りにされたかのように、彼女はなにもしない。周りを行き交う人々も自分達の忙しさに手一杯で、そんな彼女に声を掛ける人物は誰もいない。
しかし、不意にそんな彼女の横に、黙って並ぶ小さな影があった。
まだ子供と言っても全く問題がないようなその小柄な影は、その幼さに似合う特製の、今はもういないフォンマスターガーディアンの制服を着た、アニス。
「いよいよ今夜だね。成人の儀」
不意に掛けられたその言葉にも、ティアは特に驚いた様子を見せない。ただ相変わらず目線を前に向けたまま、頷いた。
「・・・・そうね」
「どう思う?」
問われた言葉に、身に力が入るのをティアは自覚した。それが怒りか不満か、それとも悲哀なのか、自身にも検討はつかない。
迷うような瞳で、ティアは目の前を行き交う人々を見つめる。
「皆には・・・・悪いんだけど」
申し訳なさそうに、ポツリと呟いた。
言ってはいけないとは思う。今こうして、自分の大切な人のための儀式を行うために、懸命に作業を行ってくれている人々に対して、こんなことを言うのはお門違いで、そして酷い侮辱だとわかっている。
だが、胸の内に浮かんだ感情を隠せる程、隣の少女とは浅い付き合いではないし、自分は器用でもない。
言わなくても伝わるかもしれない。だが、言わなくてはという不思議な焦燥にも似た感情が沸き起こり、気付いたその瞬間、ティアは答えていた。
「バカ、みたい」
申し訳なさに顔を伏せ、ティアは呟く。
「ルークは、帰って来るのに。お墓なんか作って、その前で成人の儀なんて・・・」
服の裾を握り締め、ティアはまるで自分を責めるように、言葉を漏らす。
それはまるで、自分自身に言い聞かせるように。
「バカ・・・・みたい」
ティアの感想に、予想をつけていたのだろう。特に驚いた様子も見せず、アニスもまた目の前の人々へと視線を移した。
「そう・・・・だね」
肯定とも、否定とも取れないような曖昧な返答。顔を伏せるティアに顔を向け、その痛々しい様子に眉尻を下げたアニスは、視線を逸らした。
「出なくても・・・良いんだよ?」
気遣うようなその言葉に、ティアは裾を握る手に、さらに力を込めた。
「辛いなら、無理して出なくても」
「少し・・・・」
アニスの言葉を遮るように、ティアが言葉を挟む。
「少し、考えさせて」
それだけ答え、ティアはなにかを振り切るように城から視線を引き剥がし、すぐ横に聳え立つファブレ公爵の屋敷へと足を向けた。

そして、日が暮れる。
本来ならティアも、城に用意されている来客用の部屋で時間を過ごすはずだった。
それはティアとルークの関係を知っているナタリアが気を使って用意してくれていたらしいが、他にも様々な国の要人が訪れて城は一杯一杯になるはずだ。
そう言って辞退したティアを、今度はファブレ家のシェザンヌが引き止めた。
ルークの母親であり、その溺愛していた息子が消滅した事実を聞かされたときに、わけのわからない罪悪感から意味もわからず謝るティアを、泣きながら、ただ黙って抱きしめてくれた人。
その彼女の申し出によって、ティアは今ファブレ家の屋敷にいる。成人の儀までもう時間はほとんど無い。
提供された部屋の窓から見える、城と暮れ掛けの夕日を見つめながら、ティアはまだ決心がつかない自分を持て余していた。
儀式に出席するか、欠席するか、たったそれだけの話だ。
出たところでなにか変わるわけではないし、欠席したところで、たかが一ゲストに過ぎない自分がいないくらい、式にはなんの影響も出ないだろう。
しかしならば、なぜ自分はこんなにも迷っているのだろうか。たかが式典の一つで。
そこまで考えて、ティアは目の前にある窓ガラスにそっと手で触れる。
わかっている。なぜここまで迷うのか、わかっている。
昼間の、アニスとの会話が頭を過ぎる。あのとき言った。バカみたいと言う言葉。
ルークは帰って来るのに、墓の前で儀式を行うなどという行為をバカみたいと言いながらも、心のどこかでその行為に納得している自分がいたのだ。
最初から、わかっていたのだ。本当にルークを信じているのなら、出なければ良い。或いは出たとしても、心のどこかできちんと信じているのなら、なんの問題も無い。
だが、こうして迷っている自分が、なによりの証拠だ。
自分は、信じられなくなっている。本当に帰って来るのか、帰ってきてくれるのか、二年半もの長い留守番に、自分は疲れている。
ガラスに触れていた手が、握り締められる。
諦められれば、どれだけ楽だろうか。自分にとって彼がその程度の相手なら、どれだけ良かったのだろうか。
だが、諦めることなど出来なかった。かといって、子供のように純粋に、彼は帰ってきてくれると心から信じることも、出来なかった。
二つの想いに揺れながら、ティアはただ煮え切らない自分に対する悔しさに、唇を噛む。
夕日が、城の向こうに遠く見える山に差し掛かっていた。後一時間ほどで、日が沈む。式が始まる。
「ティア様?」
そのとき不意に、扉を叩く音が聞こえた。規則正しいノックの音。
「あ、はい」
「よろしいですか?」
扉越しに、綺麗な声が聞こえる。
「ええ、どうぞ」
なんの用だろうと疑問に思いながら、ティアは窓から離れ、扉に近づいた。そして、その彼女の目の前でゆっくりと、礼儀正しく音も立てずに開かれた扉の向こうに、一人の女性が立っていた。
メイド服に身を包み、金髪の髪をショートカットにした、綺麗な女性だった。
彼女はそのままティアに一礼すると、乱れ一つない動作で部屋へと一歩入り込み、開いた扉を再び音も無く閉めた。
「どうかしたんですか?」
その余りに優雅な物腰に、ティアは思わず敬語で話し掛ける。
元よりメイドなどという存在とは無縁な生活を送っていたため、こういう風に低い物腰で接せられると、自然と自分の態度も低くなってしまう。
「はい。もう間もなく時間なので、そろそろご出立なされた方がよろしいかと」
「え?」
告げられた言葉に、思わず首を傾げる。視線を窓に移せば、まだ夕日は山に差し掛かったばかりだ。
ここから城までの距離を考えると、まだ十分に時間がある。むしろ余るくらいだ。
戸惑うティアに、目の前の女性もまた戸惑ったようだ。ティアと同じように、不思議そうに首を傾げる。

「行かれないのですか?」
「え、だって・・・」
出ていない答えを急に求められて、ティアは言葉を詰める。どう答えて良いのかわからず、彼女にしては珍しく思考が混乱する。
「だって・・・・今からお城に行っても」
だから、どちらともいえないような言い訳がましい言葉を選んだ。まだある猶予にすがり付くような、情けない返答。
だが答えられたメイドは、眉尻をさらに不思議そうに下げた。
「お城?」
「え、ええ」
「そう、ですか・・・」
そのティアの言葉に、なにか思うところでもあったのか、メイドはそのまま部屋を横切り、先程までティアが立っていた窓ガラスの前に立つ。そこから見える城を見つめながら、ポツリと言葉を落とした。
「立派なお墓ですね」
当然、窓から見えるのは城と夕日だけだ。確かに建設されたルークの墓は巨大で立派な物だったが、ここから見えるほど途方もないようなものでもない。
墓。という単語に、ティアの胸が締め付けられる。自分の大切な人の、墓。
「でも」
顔を伏せるティアに背中を向けたまま、そのメイドは語る。
「あそこに本当に、ルーク様はいらっしゃるのでしょうか」
その単語に、思わず顔を上げる。夕日が逆光になりまぶしい視界の中、その背中はただ佇むだけだ。
ルークは本当に、そこにいるのか。
それは昼間、アニスと語ったティアの言葉だ。あんなところにルークはいないと、口ではそう言いながら、心のどこかでそれを信じきれない自分がいた、その言葉。
だが、目の前の女性は、それを酷くあっさりと告げた。なんの迷いもなく、問い掛ける形でこそあったが、ティアにはなんとなくわかった。
この女性もまた、信じていない。それがルークの死なのか、それともルークはあそこにいないという言葉通りの意味なのか、それはわからない。
だが、ティアの口元に笑みが浮かんだ。
親しさがこみ上げたのか、それとも同じ物を感じたのか、ティアはその夕日に照らされる背中に向けて、笑いかけた。
「そうね」
眼前の女性は、動かない。ただ黙ったまま、窓から見える城を見つめている。
「あそこに、ルークはいないわね」
そのティアの言葉に、メイドの口元にもまた、笑みが浮かんだ。
まるで安心したかのような、嬉しさから零れる笑みが。
ティアの視界の中、背中を向けていた彼女が、軽くステップを踏んだ。
跳ねるように、踊るようにその身を翻し、そしてフワリと広がったスカートを手で優しく押さえ、両手を重ね、一礼する。
「行ってらっしゃいませ。ティア様」
一礼から上げられた顔には、心底嬉しそうな笑顔が浮かんでいた。
「今日は成人の儀です。そんな日にお一人では、ルーク様もお寂しいでしょう」
その笑顔に答えるように、ティアもまた微笑んだ。そしてそのまま、身を翻して走り出す。
彼女の履いているハイヒールが床を蹴る高い音が、遠くに聞こえていく。
そんな中、メイドは開いた扉から、もはや見えないティアの背中に向けて、黙って、再び頭を下げた。
ティアは知らなかった。そのメイドは、かつてルークがレプリカと屋敷中に知られたとき、彼にむかって唯一心を開いていた人物だと。
道を見失い、誰もがぎこちなくルークに接する中、彼女は彼に面と向かって「私はルーク様をお慕い申し上げております」と、そう言った女性だと。
「わたくしがお慕いしたあの方が、お慕いした貴女」
上げた頭を再び深々と下げながら、彼女は満足そうに微笑んで、呟いた。
「ルーク様を、よろしくお願い致します」

屋敷から走り出ると、すでに広場には人が次々と集まってきていた。
赤い夕日に染められた光景の中、ティアは頭を働かせる。どこに行けば良いのかなど、決まっていた。
彼と自分が、初めて会話を交わした場所。セレニアの花が咲いていた、あの花畑。
「おやおや、そんなに急いでどちらに?」
掛けられた言葉に、思わず振り返る。その視線の先には、何故か嬉しそうに微笑んでいるアニスと、冗談めかして笑うジェイド、そしてマルクトの国王、ピオニーがいた。
「会場は、そちらではありませんよ?」
港に向かうエレベーターに体を向けているティアに、ジェイドが苦笑しながら問い掛けてくる。相変わらず意地が悪い。
「もー。大佐って相変わらず意地悪ですね」
横にいるアニスが、腰に両手を当ててプリプリと言う。とても今年で16歳の女の子とは思えない。
「タタル渓谷でしょ?」
どう答えたものかと視線をさまよわせるティアに向き合ったアニスが、笑う。
そして、そのとき。
人込みに紛れ込んでいる四人が佇む広場の真上を、黒い影が通り過ぎた。
「・・・・え?」
その、一瞬だけ垣間見えた見覚えのあるシルエットに、ティアが思わず声を漏らす。
「ほお、案外早かったですね」
「ですねえー」
「おー、あれがアルビールか。直に見るのは初めてだな」
上げた視界に、三者三様の言葉が聞こえてくる。驚いて顔を向けた先で、アニスが笑っていた。
「大佐が頼んでくれたの、アルビオールなら、どこでも行けるでしょ?」
「まあどこでも行けると言っても時間は限られていますしね。さ、早く行きましょう。日が沈むとノエルが我々を見つけられないかもしれませんよ」
そこまで言って、ジェイドは背後を振り返る。そこには三人のやり取りをニヤニヤしながら見つめているピオニーがいた。
「さて陛下。式典のためにすでに港と町の出入り口は封鎖されています。一声掛けて私達を通させて頂けますか?」
ジェイドの言葉通り、港も町の出入り口も、すでにキムラスカ軍が封鎖していた。各国の要人が尋ねてくる今日の式典のためである。
その封鎖はすでに前日から行われており、それ以降に町から出入りするためには、貴族か或いはそれ以上の身分の者が、その身分をしっかりと明かさなければならない。
そのため、一般人はすでに昨日の時点で出入りを封じられている。軍の大佐とオラクル騎士団という身分とはいえ、ジェイドとアニスも例外ではない。
「うむ。よかろう」
そう言ってピオニーは仰々しく頷くと、わざとらしく目をカッと見開き、驚愕の表情でジェイド達を指差し、叫んだ。
「あああああ!マルクト軍人に変装している不届き者が式典特別招待客のティアグランツ殿を誘拐しようとしているぞおおお!!」
固まる三人。
その三人の前。突然の叫びに開いた城門から兵士がなんだなんだと溢れてくる。
だが、叫んだ当のピオニーはケロリとした顔で、ヌケヌケと告げた。
「さて、この騒動で港を見張っていた兵士達も駆けつけてくるだろう。後は出し抜け」
「アナタという方は・・・」
ティアとアニスが初めて見るような表情でコメカミをひくつかせたジェイドが、眉間を押さえる。
だがそんなジェイドの様子など気にも止めず、ピオニーはジェイドの背中を勢い良く叩いた。
「今の声が聞こえていれば、ガイラルディアの奴も気付いただろう。ナタリア嬢も来るだろうし、迎えに行ってやれ」
呆れたような表情で見つめてくるジェイドの態度など歯牙にも掛けず、ピオニーは笑う。
「見送りは、多い方が良いだろう?」
「理由になってませんよ・・・」
二人のやり取りに意味がわからず立ち尽くすティアとアニス。いつの間にか四人は大量の兵士達に包囲されていた。
「はあ・・・仕方ありません。ティア。私とアニスが道を開きます。アナタはその隙に港へ。アルビオールが待っているはずです」
「え、で、でも大佐達は」
「念のため三号機も来ているはずです。私達はそれで後を追います」
「そうそう、行った行った」
アニスとジェイドの言葉に、ティアが迷うように視線を動かす。だが、意を決したように表情を引き締めると、そのまま包囲の一部を華麗に飛び越えて姿を消した。

「さて」
慌ててティアの後を追い掛けていった一部の兵士を見送りながら、ジェイドは眼鏡を押し上げた。周りの兵士は、警戒するように周囲をジリジリとまわりながら、少しずつ距離を詰めてくる。
「今更ですがアニス?アナタもティアと一緒に行っても良かったのですよ?」
「それは私も考えたんですけどねー。やっぱりこの人数を、怪我させないように退けるのは大佐でも厳しいでしょー?それに、ナタリア達も迎えに行ってあげないといけないし」
そう言いながら、アニスは背中に取り付けられていた人形を地面に降ろす。パペッターが使う譜術人形。
「でも大佐ー?」
巨大化したその背に担われながら、アニスが気楽な口調でジェイドに尋ねる。
「手伝う代わりにこの騒動が終わったら、あのバカ陛下二、三発殴らせてもらえませんかー?」
「それは素晴らしいですねえ。是非とも協力しましょう」
瞳に不気味な光を宿らせ、ニヤリと笑う二人。
漏れ聞こえてきた会話に、兵士達の背後で青くなるピオニーがいた。
「じゃあ、気合入れていきますか!」
そう言い全身に力を込めると、アニスは巨大な人形を城に向かって一気に走らせた。
「どかんかいオラアアア!!」

バチカル城。謁見の間。
成人の儀を目前に控え、謁見の間には国王のランバルディアとその娘ナタリアと、極少数の人間以外何もいない。その中には、今やマルクト貴族の一員となったガイの姿もある。
「・・・・ナタリア」
玉座に座ったランバルディアが、隣の席で顔を俯けているナタリアへと、気遣わしげな声を掛ける。
「納得、出来ませんわ」
だが、その言葉の機先を制するように、ナタリアがポツリと呟いた。
「ルークの墓前で成人の儀などと・・・わたくしは、納得出来ません」
その呟きに、それを取り巻く人々が僅かに顔を俯ける。その中で唯一ガイだけが、なにかを思うように顔を伏せたナタリアへと視線を向けている。
そして、そのナタリアへと向けられていた国王の視線と、ガイの視線が不意にぶつかった。
まるで助けを呼ぶような、普段の国王とは思えないような気弱な視線で、ランバルディアはガイを見つめた。
その視線に無言で頷くと、ガイは一歩を踏み出した。
「ナタ―――」
「た、大変にございます!!」
呼びかけられた言葉は、突如謁見の間に飛び込んできた兵士の声に掻き消された。
「なんだ!騒々しい」
脇に控えていたファブレ公爵が怒鳴るが、転がり込んできた兵はそれどころではないというように、酷く慌てた様子で口を開いた。
「オ、オラクル騎士団のパペッターとマルクト軍人と思われる二名が、特別招待客であるティアグランツ様を誘拐して、現在城門前で大暴れを!」
「はあ!?」
余りにいきなりの言葉に、間抜けな声を漏らしたのはガイだった。ティア、パペッター、マルクト軍人、どの単語にも心当たりが多すぎる。
ナタリアも同じ感想だったらしく、呆然と目を見開いたまま、椅子から腰を浮かせている。
そして
『どけっつってんだろボケエ!ドタマかち割るぞコラアアア!』
遥か遠くから聞こえてきた怒鳴り声に、二人は同時に頭を抱えた。
少女の声色とは泣けてくるほどかけ離れた言葉の内容。そんなことをする人物など、一人しか心当たりがない。
ハッキリとした目的はわからないが、なにがしたいのかは大体検討がつく。
「ナタリア」
ガイの言葉に、ナタリアが我に返ったように目を向けてくる。
向けられてくる視線に苦笑を送りながら、ガイは手を差し出した。
「行こうか」
その言葉に、ナタリアの表情が明るくなる。おそらく彼女も、ガイと同じように状況に検討が付いたのだろう。
「わかりましたわ!」
勢い良く答え、玉座から立ち上がる。
「ナ、ナタリア?どこへ」
驚いたように問い掛けてくるランバルディアの言葉に、ナタリアは笑顔で振り返る。
「お父様。わたくし体調が優れませんので、先に部屋で休ませて頂きます」
明らかな嘘。それに思わず呆然とした表情を貼り付けたランバルディアだったが、すぐにそれがこみ上げて来るような笑みに取って代わる。
「ハハハ。そうか、それでは仕方ない。下がりなさい」
笑いながらそう告げるランバルディアに、ナタリアが笑顔で返す。ガイが一礼して、そのまま二人は走り去っていった。
取り残された人々の間に、なんとも言えない沈黙が流れる。だがその中で、ただ一人ランバルディアだけが、声を上げて笑っていた。

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