「あら?・・・ルーク。あなたの右腕、血が出てるわ」
ティアが指を差して、俺の右腕を指摘した。
先程の戦闘の時に怪我したもの。
かすめただけで、大した怪我ではない。
「へ、平気だよ!この程度かすり傷だって」
「だめよ、見せてみなさい」
俺の服に、ティアが手をかける。
じたばたと腕を上下に振りながら、それでも俺はティアの手を払えなかった。
ティアの柔らかい手のひらが俺の腕に触れる。
俺はひどく居心地が悪かった。
緊張のためか心臓の鼓動がやけにはっきり聞き取れて、煩い事この上ない。
いつから自分は彼女の事を、こんなにも意識するようになったのか?
自分の鼓動が彼女に聞こえてしまうのではないか?
そんな事を考えつつじっとティアの顔を凝視してみたが、真剣さしか伝わってこなかった。
優しくされると考えたくない事が頭に浮かぶんだ・・・
「・・・もう。ここ、切れてるじゃないの。たしかアブソーブゲートでもこんなことがあったわね」
あの時もそうだ。ひどく恥ずかしかった。
せっかくティアが気をかけてくれたのに、俺はそれを断わった。
今思えばダサい選択だ。結局俺は臆病なんだ。
ちょっと待っててとティアが立ち上がる。
「ちゃんと手当てしないと・・・」
「本当に平気だって。ツバかけとけば治るんだよ俺の場合」
「そんなことばかり言ってると、後に大変な事になるわよ。ほら、大人しく座って」
周りには仲間達が好奇の目で俺とティアを見ている。
ティアはそんな視線を無視して俺に気遣う。
俺は恥ずかしくてしようがない。ボロが出ないうちに、早くこの場を抜け出したい。
「・・・これで傷は塞がったはずよ」
治療を終えたティアがちょこんと隣りに座る。
手際よく布を取り出すと、塞がった箇所に残る血を拭ってくれた。
「どう?もう痛くない?」
「あ、ああ。ありがとな・・・」
ティアは丁寧に血を拭き取ると、俺の服を元通りにしてくれた。
「すまねぇ・・・」
「また怪我したらわたしに言って?いつでも治してあげるから。みんな、待たせてしまってごめんなさい。さあ行きましょう」
好奇の目で見ていた外野達は、何だつまらないといった様子で俺を置いてさっさと歩きだす。
「ティア、俺たちも行こうぜ。置いてかれちまうよ」
「ええ・・・」
ティアの顔が急に沈んだ。この表情は過去に見たことある・・・とにかく悲しそうな顔だ。
そんな彼女が俺の腕をすっと撫でながら語りかけてきた。
「あなたの身体はね・・・あなただけのものじゃないわ」
「・・・?」
「・・・忘れたの?わたしを守ってくれるって言ったじゃない」
「そう・・・だな」
「少しはわたしを頼ってよ・・・」
「・・・ごめん」
「つまらない事で倒れたりしたら許さないんだから・・・」
俺の身体の事はジェイドとティアだけが知ってる。
『俺がティアを守る』つい口に出してしまった俺の言葉。いつかは消える存在なのに馬鹿な事を言ったと思う。
だけど後悔はしてない、なぜなら俺の本心だから。
どうしようもない馬鹿だった俺を、ティアはいつも見ていてくれた。
ティアがいてくれたから俺はここまで変われる事が出来たんだ。
卑屈な考えを止めるんじゃなかったのか?限られた時間を楽しく過ごすんじゃなかったのか?
ティアだって、いつも強い訳じゃない。
そんな彼女を不安にさせてどうする?
「こんな怪我したら、不安になっちゃうじゃない・・・」
「ごめん。ティアにそんな思いをさせちまって」
「もう、無理しないでね・・・」
「ああ。ほら、そんな顔してねーで早くいこうぜ!」
「え?ごめんなさい・・・」
「何でティアが謝るんだよ。つまんねー意地張ってた俺が悪いんだから気にすんなって!」
「ふふっ。そうね、ルークは素直じゃないものね」
「わ、笑うんじゃねぇよ・・・!とにかく行こうぜみんなが心配するよ」
ティアがにっこりと微笑む。よかった、いつもの彼女表情にもどってくれた。
さあ、もうすぐ最後の決戦だ。エルドランドにヴァン師匠はいる。
例えこの命と引き換えにしても師匠を止めるんだ。
そう、絶対に——————————
「ねえ。ルーク・・・。わたし———」
「ん?どうした?」
「・・・あのね。もし・・・もしもね、ルークの存在しない世界なんていらない・・・なんて言ったらあなたは怒る?」
ティアが指を差して、俺の右腕を指摘した。
先程の戦闘の時に怪我したもの。
かすめただけで、大した怪我ではない。
「へ、平気だよ!この程度かすり傷だって」
「だめよ、見せてみなさい」
俺の服に、ティアが手をかける。
じたばたと腕を上下に振りながら、それでも俺はティアの手を払えなかった。
ティアの柔らかい手のひらが俺の腕に触れる。
俺はひどく居心地が悪かった。
緊張のためか心臓の鼓動がやけにはっきり聞き取れて、煩い事この上ない。
いつから自分は彼女の事を、こんなにも意識するようになったのか?
自分の鼓動が彼女に聞こえてしまうのではないか?
そんな事を考えつつじっとティアの顔を凝視してみたが、真剣さしか伝わってこなかった。
優しくされると考えたくない事が頭に浮かぶんだ・・・
「・・・もう。ここ、切れてるじゃないの。たしかアブソーブゲートでもこんなことがあったわね」
あの時もそうだ。ひどく恥ずかしかった。
せっかくティアが気をかけてくれたのに、俺はそれを断わった。
今思えばダサい選択だ。結局俺は臆病なんだ。
ちょっと待っててとティアが立ち上がる。
「ちゃんと手当てしないと・・・」
「本当に平気だって。ツバかけとけば治るんだよ俺の場合」
「そんなことばかり言ってると、後に大変な事になるわよ。ほら、大人しく座って」
周りには仲間達が好奇の目で俺とティアを見ている。
ティアはそんな視線を無視して俺に気遣う。
俺は恥ずかしくてしようがない。ボロが出ないうちに、早くこの場を抜け出したい。
「・・・これで傷は塞がったはずよ」
治療を終えたティアがちょこんと隣りに座る。
手際よく布を取り出すと、塞がった箇所に残る血を拭ってくれた。
「どう?もう痛くない?」
「あ、ああ。ありがとな・・・」
ティアは丁寧に血を拭き取ると、俺の服を元通りにしてくれた。
「すまねぇ・・・」
「また怪我したらわたしに言って?いつでも治してあげるから。みんな、待たせてしまってごめんなさい。さあ行きましょう」
好奇の目で見ていた外野達は、何だつまらないといった様子で俺を置いてさっさと歩きだす。
「ティア、俺たちも行こうぜ。置いてかれちまうよ」
「ええ・・・」
ティアの顔が急に沈んだ。この表情は過去に見たことある・・・とにかく悲しそうな顔だ。
そんな彼女が俺の腕をすっと撫でながら語りかけてきた。
「あなたの身体はね・・・あなただけのものじゃないわ」
「・・・?」
「・・・忘れたの?わたしを守ってくれるって言ったじゃない」
「そう・・・だな」
「少しはわたしを頼ってよ・・・」
「・・・ごめん」
「つまらない事で倒れたりしたら許さないんだから・・・」
俺の身体の事はジェイドとティアだけが知ってる。
『俺がティアを守る』つい口に出してしまった俺の言葉。いつかは消える存在なのに馬鹿な事を言ったと思う。
だけど後悔はしてない、なぜなら俺の本心だから。
どうしようもない馬鹿だった俺を、ティアはいつも見ていてくれた。
ティアがいてくれたから俺はここまで変われる事が出来たんだ。
卑屈な考えを止めるんじゃなかったのか?限られた時間を楽しく過ごすんじゃなかったのか?
ティアだって、いつも強い訳じゃない。
そんな彼女を不安にさせてどうする?
「こんな怪我したら、不安になっちゃうじゃない・・・」
「ごめん。ティアにそんな思いをさせちまって」
「もう、無理しないでね・・・」
「ああ。ほら、そんな顔してねーで早くいこうぜ!」
「え?ごめんなさい・・・」
「何でティアが謝るんだよ。つまんねー意地張ってた俺が悪いんだから気にすんなって!」
「ふふっ。そうね、ルークは素直じゃないものね」
「わ、笑うんじゃねぇよ・・・!とにかく行こうぜみんなが心配するよ」
ティアがにっこりと微笑む。よかった、いつもの彼女表情にもどってくれた。
さあ、もうすぐ最後の決戦だ。エルドランドにヴァン師匠はいる。
例えこの命と引き換えにしても師匠を止めるんだ。
そう、絶対に——————————
「ねえ。ルーク・・・。わたし———」
「ん?どうした?」
「・・・あのね。もし・・・もしもね、ルークの存在しない世界なんていらない・・・なんて言ったらあなたは怒る?」