月光
暗闇が僅かにふるえる。
雨音のように、風のように、優しく耳をくすぐる。
水中から拾い上げられた石のように目がさめて、
滴る雫のように纏わりつく眠気を振り払い、彼は体をおこした。
耳をすませば懐かしい音色に心うばわれ、
一歩、また一歩、と鈴のような響きに歩みよった。
闇の中花咲き乱る、墓標のそばへ。
あと数歩の所で座った影がふりかえる。
雨音のように、風のように、優しく耳をくすぐる。
水中から拾い上げられた石のように目がさめて、
滴る雫のように纏わりつく眠気を振り払い、彼は体をおこした。
耳をすませば懐かしい音色に心うばわれ、
一歩、また一歩、と鈴のような響きに歩みよった。
闇の中花咲き乱る、墓標のそばへ。
あと数歩の所で座った影がふりかえる。
「……ごめんなさい。起こしてしまったかしら」
「いや、いいんだ。それより続き詠ってくれよ」
「いや、いいんだ。それより続き詠ってくれよ」
無限鏡のように笑顔がうつる。
影は小さく肯いて、再び静かな旋律で部屋を満たした。
影は小さく肯いて、再び静かな旋律で部屋を満たした。
しばし経って、再び静寂が広がる。
「どうしてこんな時間に大譜歌を詠ってたんだ?」
「……言えないわ」
「……そっか。
ティアは変わらないな」
「服のこと?」
「……本当に変わらないな」
「……言えないわ」
「……そっか。
ティアは変わらないな」
「服のこと?」
「……本当に変わらないな」
二人、浮かぶ表情は笑顔のまま月を見上げる。
「……今って、すごく平和だよな」
「ええ……数年前の事を考えられないくらい平和ね」
「きっともう、戦争は起こらないだろうな」
「そうね。預言はもう詠まれないし、
ピオニー殿下もナタリアも……戦争を起こすには優しすぎる。
争いのない世界は存在し得ないけれど、
治安も安定してきているし、きっとしばらくは平和なままだと思うわ」
「うん、それに……おれももう、消えないですむみたいだし」
たった一言にぴくり、と肩が僅かに跳ねたのを彼は見逃さなかった。
「だからもう、弱くなってもいいんだぜ。
なにかあってもおれが守るしさ。
――あ…いや、守らせてほしいな、なんて」
「ルーク……」
「っおれ、もう寝るよ。おやすみ」
慌てた様子で立ち上がるのを、ティアは服をつかんで制止した。
「――そうやってすぐ逃げる。あなたも変わらないわ。悪いクセが」
「う……ゴメン」
ティアが手を放すとルークはおとなしく座り直した。
「逃げるくらいなら言わないで」
「……ゴメン」
「あなた、一応もう成人なのよ。
あんなこと言って逃げるなんて無責任じゃないかしら」
「……悪かったよ」
「そんなままじゃ守ってもらうなんて無理ね」
「……もう言わないよ」
「卑屈になるのもやめて頂戴」
散々に責められて、哀しげに俯いたルークの肩に優しく手が触れる。
覗き込むように見つめるのは笑顔。
「ええ……数年前の事を考えられないくらい平和ね」
「きっともう、戦争は起こらないだろうな」
「そうね。預言はもう詠まれないし、
ピオニー殿下もナタリアも……戦争を起こすには優しすぎる。
争いのない世界は存在し得ないけれど、
治安も安定してきているし、きっとしばらくは平和なままだと思うわ」
「うん、それに……おれももう、消えないですむみたいだし」
たった一言にぴくり、と肩が僅かに跳ねたのを彼は見逃さなかった。
「だからもう、弱くなってもいいんだぜ。
なにかあってもおれが守るしさ。
――あ…いや、守らせてほしいな、なんて」
「ルーク……」
「っおれ、もう寝るよ。おやすみ」
慌てた様子で立ち上がるのを、ティアは服をつかんで制止した。
「――そうやってすぐ逃げる。あなたも変わらないわ。悪いクセが」
「う……ゴメン」
ティアが手を放すとルークはおとなしく座り直した。
「逃げるくらいなら言わないで」
「……ゴメン」
「あなた、一応もう成人なのよ。
あんなこと言って逃げるなんて無責任じゃないかしら」
「……悪かったよ」
「そんなままじゃ守ってもらうなんて無理ね」
「……もう言わないよ」
「卑屈になるのもやめて頂戴」
散々に責められて、哀しげに俯いたルークの肩に優しく手が触れる。
覗き込むように見つめるのは笑顔。
「私、ずっとあなたを――」
- いいんでんない? -- 瑠紅 (2006-10-14 13:07:17)
- 続き読みたい~。 -- シン (2008-10-11 11:39:35)
- いい・・・
ぜひ続きを・・ -- 茶味 (2008-10-30 02:56:49) - ティアやっぱりいい娘だwww -- ゼウス (2011-01-12 00:43:32)
- ヤバイ!萌え死ぬ・・・ぐはぁ! -- ナイト (2011-04-07 17:10:28)