TOAのティアタンはメロンカワイイ

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匿名ユーザー

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 体が動かない。冷たい。全身から熱が奪われていく。
肺が締め付けられているようで、息をするのも辛い。
(いったい、なんだ……?)
 強い抵抗を感じながら、しかし無理矢理目を開けて、
ルークは辺りの様子を観察した。
 ルークの周りには、不気味な濃い紫の空気、いや、
泥のようなものがねっとりとからみついていた。
 ひどく冷たく感じるそれが、じりじりと肌を焦がす。
(瘴気の海……?魔界で見た?)
 ルークは息苦しさから逃れようと、なんとかそこから
脱出しようと、もがいた。
 そうしているうちに、鬼火のようなものがルークの眼前に現れた。
 それは、小さな少年の姿をとった。
 見覚えのある顔をしていた。
 あの崩壊の日に、目の前で魔界の海へと沈んでいった子どもだ。
父と母を呼びながら……。

(ねぇ、どうしてボクらを殺したの?)
少年は、生気のない目でルークを見た。
 ルークは、思わずこぼれそうになった悲鳴を、必死で飲み込んだ。
(殺すつもりなんてなかった!俺は、みんなを助けたかったんだ!)
 代わりに口をついて出た言葉は、弁解の言葉だった。
(でも……お兄さんはボクらを殺したよ。ボクと、ボクの大好きな
父さんと、鉱山の仲間たちを)
(違う!違う!……殺したかったわけじゃない!俺は、俺は……)
(痛かった。苦しかった。死にたくなんてなかった。それなのに)
(俺は……)
(なんにも悪いことをしてないのに、ボクらは死んでしまった。
お兄さんに殺された。
ねぇ、どうして、お兄さんはまだ生きてるの?)
(俺は……、生きて償いたいんだ……)


 とたんに、少年がにた、と嗤った。
(そんなこと、しなくていいよ……償えるはずなんて、
ないんだから……。
それより、お兄さんもこっちへおいでよ。ボクらは今でも
冷たくて、こんなに苦しいところにいる……。お兄さんも、いっしょに)
 無数の手が、暗闇から伸びてきた。引きずり込まれる。
そう思った一瞬、視界の端に光がきらめいた。
(…ーク……ルーク!)
喚ぶ声の方向に、ルークは夢中で手を伸ばした。
「ルーク、起きて!」
 眩しさが、ルークの目を灼いた。
反射的に、新鮮な空気を胸一杯吸い込む。
長く息を吐いてから、ようやく傍らに立つティアに気づいた。

「大丈夫?なんだかうなされていたようだけど……」
ティアは驚いた顔で、かがみ込んでベッドの上のルークを見上げた。
「ティア……」
 声がかすれる。
「どうして」
 呆然としたまま、ルークは問いを発した。
「なんだかよくわからないけど、『今度は私の番』なんですって。
あなたを起こしに行ってこいって、みんなに言われたの」
 ふふっと笑って、ティアが答えた。
 その答えは、聞きたかったこととは微妙にずれている気がするけれど、
なんとなくルークは安心した。
「ねぇ、それより。ほんとうに大丈夫?ひどく汗をかいているけど、
熱でもあるの?」
 そう言いながら、ティアは心配げにそっとルークの額に手を当てた。
その優しい手が自分を闇から救ってくれた気がして、
ルークは思わずティアに抱きついた。

「ちょ…ルーク!?」
 ティアが慌てた声を出して暴れる。
体を通して伝わってくる声が心地良い。
「ごめん、ティア……ちょっとだけ、このまま……」
どうにかルークを引きはがそうとするティアを無視して、
ルークは腕に力を込めた。
恐怖がすっと抜け落ちていく感覚に集中する。
そうこうするうちに、いつの間にかティアも大人しくなった。
それどころか、ルークの背中に手を回して、優しく背中を叩いてくれる。
ルークはティアに思いっきり甘えたい気分になった。

「怖い夢を見たんだ……冷たくて、暗くてさ……とても怖くて。
ティアが起こしてくれなかったら、俺、そのまま死んでたかも」
「ばかね……夢で死んだりしないわよ。もし死にそうになっても、
その前に私が起こしてあげるわ」
「うん……」
「さあ、それじゃ早く支度をして。今日もすることはたくさんあるんだから」
 ぽんぽんっと勢いよくルークの背を叩いて、ティアはすっと立ち上がった。
先に部屋の外へ出ようとするティアに、ルークは慌てて声をかけた。
「ティア!その……ありがとう」
「どういたしまして」
 ティアはにっこり笑って答えた。
その笑顔を見て、やっぱり自分を救ってくれたのはティアだ、とルークは思った。



  • こういうの良いですね〜(^^)/\(^^)
    -- 名無しさん (2013-01-28 23:37:34)
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