TOAのティアタンはメロンカワイイ SS > スレ12 > 812-815

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月夜

「う~ん、今日もいいお天気ね…」
いつもより少し遅めの朝を迎えた彼女の部屋に、元気のいいノックの音が響く。
「え?誰かしら、こんな時間に…」
思わぬ訪問客を迎えるために、慌てて身支度を整え、ドアに声を掛けた。
「どうぞ?」
その声を待ちかねたように、勢い良くドアが開く。
「ぶぅ~、ティアってば待たせすぎだよぉ」
珍客だ。何をしに来たのか、全くわからない。
「アニス!?どうしたの、こんな時間に?」
「あのね、一緒に明日の準備をしようと思って」
「明日の?」
「そうだよ。ティアも自分の準備があるでしょ?」
「準備って…何を?」
「ティア…明日はバレンタインだよ?ルークに何もあげないの?」
「あ…そう、だったわね…」
「まさか二人ともあれから何の進展もないの?いい加減キスぐらいしたんでしょ?」
「わ、私は、その…」
あまりに直球な質問に頬を赤らめてうつむく。
「あー、相変わらずかぁ…」
「た、多少は…そういう事も…でも、その、いざとなると恥ずかしくて…」
「ティア、い~い?待ってるだけじゃ駄目なの。自分からぐいぐい行かないとっ!」
「でも…」
「そのためのバレンタインでしょ?わたしも協力するから、ね?」
「わ、わかったわ」
勢いに圧されてつい返事をしてしまった。
「よしよし、そうと決まれば早速買い出しに行こー!」
数時間後、両手に買い物袋を下げ、二人が帰って来た。
「じゃあ、始めましょうか」
「うん、やろー」
部屋を満たしていく甘い香りに、初めとはうって変わって心が躍る。
「…後は固まるのを待つだけだね♪」
「ええ、そう言えばアニスは誰にあげるの?」
「わたし?わたしはフローリアンにあげるんだぁ。図書室で文献を見たみたいで、ちょうだいって駄々こねだしちゃって」
「そう…」
「モテる女はつらいよねぇ♪そう言えばもう明日の約束はしたの?」
「え、ええ。さっきしたわ。急だったから驚いていたみたいだけど…」


一方、バチカル ファブレ公爵邸
「どうしたルーク、考えごとか?珍しいな」
「なぁガイ、明日って何かあったっけ?ティアから急に会いたいって言われてさ」
「明日…あぁ、バレンタインだな」
「ばれんたいん?」
「あー、お前はきちんと理解してなかったか」
「何だよそれ?」
「お前毎年屋敷のメイドとナタリアからチョコ貰ってただろ?」
「あぁ、ナタリアには何度も食い物以外にしろって言ったのによ…」
「バレンタインってのはな、女性が好きな男性にチョコを渡して告白する日なんだよ。ただし、一般的にチョコには義理と本命があってだな…(以下略)」
「つーと、ティアのは…」
「そりゃあ本命だろうよ。お前達、それなりに進んでるんだろ?」
「い、いや、それは…」
「まさか…」
「た、多少はな。ただ、いざとなると恥ずかしくてさ…」
「お前なぁ、こういうのは男がきちんとリードしてあげないとだな」
「だってよ…誰も教えてくれヌェーし」
「また親善大使か?」
「わ、わーかったよ!そんで、どうすりゃいいんだ?」
「今からどうこう言ってもしょうがないからな…素直に思ってる事を伝えてあげろよ。お前達、そういうの苦手だろ?」
「う…」
「今回の事だって、ティアはティアなりに頑張ろうとしてるからこそだろ?なら、お前もお前なりに頑張ればいい」
「わかった…ガイ、ありがとう」
「どう致しまして。これも心の友の仕事だからな」
「そう言えばさ」
「何だ?」
「お前毎年メイドに囲まれてガタガタ震えてたよな…」
「…忘れさせてくれ」

そして翌日…
「ふぁ…緊張して眠れなかったわ。何て言って渡せばいいかしら」
「だーいじょうぶ!昨日ちゃんと練習したでしょ!?あのとーりにやれば、あのバカなんてイチコロだよぉ」
「で、でも、アレはちょっと…」
「いいから!あれぐらいやらないと、いつまでもこのままだよ?ティアはかわいいんだから、絶対だいじょうぶ!」
「そ、そうかしら…」
「そうそう、だーかーら、自信を持って、ね?」
「ありがとう、アニス」
「それじゃあ、わたしはそろそろ行くね?」
「ええ、気をつけて」
「そうそう、ちゃーんと結果は報告してねぇ♪」
「え?ちょ、ちょっとアニス!もぉ…」
騒がしい友人と別れ、訪れた静けさの中、一人彼を想う。
「…もうすぐバチカルね」


その頃、彼女の想い人は、既に待ち合わせの場所に来ていた。
「あー、考え過ぎて眠れなかった…素直に、か。出来るかな…」
友人から貰った助言を実行すべく、自分の彼女への素直な気持ちとは何か、ずっと考えていた。
自然と思い出されたのは、あの月夜の事…
「ルーク?どうしたの、まだ時間までは随分あるのに…」
急に視界に現れた彼女を見て、気が動転する。
「ティ、ティア!…それは、お互い様だろ?」
「そ、そうね…」
「それよりお前、あまり寝てないんじゃないか、顔色が良くないぞ?」
「そ、そう?昨日はアニスが来ていたから…」
「アニスが?最近会ってないな…元気にしてたか?」
「ええ、相変わらずだったわ」
「そうか…」
「…」
二人共、お互いを意識し過ぎて会話が続かない。
「…なぁ、ちょっとその辺歩かないか?」
沈黙を破り、立ち上がる。素直な気持ちを、伝える為に。
「え、ええ…」
「ここ、晴れた夜は月が良く見えるんだ。今日は、ちょっと雲が多いけど…」
「そう…綺麗な所ね」
「さっきさ…」
「え?」
「ちょうど、思い出してたんだ。二人で月を見た時の事…」
「…」
「あの時オレ、今が一番幸せじゃないって言えたらいいのにって…言ったよな」
「ええ、そう言ったわ…」
「オレ、今なら言えるよ。今が一番幸せなんじゃないって」
「ルーク…」
「だから…ティア、ありがとう。全部、ティアのおかげだから…」
突然聞かされた彼の真っすぐな気持ちに、嬉しさがこみ上げる。同時に、自分も素直になろう、そう思った。すうっと、肩の力が抜けていく。
「それは、私の台詞だわ。あなたがそばに居てくれたから、色々な悲しみを乗り越えて来れた…ありがとう。それから、これ…」
手渡されたのは、彼女の心のこもった宝物。
「ありがとう。開けていいか?」
「ええ」
小さな宝箱を開けた彼の目に飛び込んだのは、大きなハート。一口かじってみる。
「うまいな」
「ほ、本当?良かった…あのね、ルーク…」
「ん?」
雲間から漏れる月の光が映す二人の影は、寄り添い、重なり合って…
「…大好き…」
二人の心を、温かさが包んでいった。



  • いつものことながらこちらが恥ずかしくなりますね -- 条威 (2007-12-20 14:38:51)
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