TOAのティアタンはメロンカワイイ SS > スレ13 > 249-252

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「私、教官のお嫁さんになりたい…」
まだ13…14だったろうか。馬鹿だ、と我ながら思った。
今でこそ、多少の常識も揃えているし、世渡りに問題はないのだが、
昔の自分は俗に言う箱入りだった。
立派な兄を追い、詠士職についた祖父と兄に育てられ、
そして敬愛する恩師は、幾多の憧れを集める女性だ。

将来。
軍人となると決めていたけれど、もしそうでなかったら、と。
珍しく同席していた兄と、恩師の前で、私は思わずそんなことを口にした。
性別の問題もあった。普通なら兄に行く筈の矛先が、
何故教官に行ったのかが未だに謎でならない。
「血が繋がっていると子に問題が起こる可能性がある」という知識はわかっていたが、
それ以前に同性ではそんな生産性すらありはしないのに。

それ以上に謎だったのは、最初で最後に見た教官の慌てふためいていた姿と、
「あのとき始末しておくべきだったな」と剣を抜きかけた兄の姿だった。
…私のダメなところを始末しておくべき、と思ったのか。
馬鹿で、幼かった私を許してください、兄さん、教官。



時は流れる。

「お母さん」
「…何?」
ブウサギのぬいぐるみのほつれを直していると、
寝惚け眼を擦っている愛娘が目の前に来ていたことに気づく。
もうルークも、下の子も眠っているから、起きぬけてきたのだろう。
たまたま眼が醒めてしまったから、自分はこうして明日に回そうとしていた
ことを、片付けているのだが。
「…私、お父さんと…結婚したい」
「え」

軽いデジャブを感じた。
さすがに嫉妬なんてするはずもないが、いきなりどうしたのだろう、と
取り合えず手を止めて立ち上がり、優しく娘の方に手を置いた。
ぼうっとした、自分と似た目つきの瞳に、視線を合わせる
「どうしたの、急に」
「…将来は、立派な男性と…結婚するのが、女性の夢だって、アニスさんが。
 私、お父さんのことが好きだから」
「…そう」
立派、を何か取り違えている気がしなくも無い。
父親として、男性として。あのときの何も知らない公爵子息とは別人のように
成熟したルークは、とても魅力的だ。短所も含めて。
だから自分は好意を抱いたのだけれど。
女性の夢、として、幸せな結婚式をあげて。
取り合えず、「じゃあ、する?」なんていえるものではないから。
「…残念だけれど、家族とは結婚は出来ないのよ。
 それに、あなたにはまだちょっと早いわね」
まだ10を数えたばかりの娘は、ぱちりと瞬きをした。


「はやいの?」
「そうね。私も、ルーク…お父さんが好きよ。あの子も、あなたも、大好きでしょう?
 でも、あなたが思うのは…家族としての好き、だと思うわ。」
柔らかな頬に手を添えて。
「…色々な人と出会って、色々な想いを知りなさい。
 お父さんの背中と、胸の中と、掌の感触だけが世界ではないわよ。」
優しく呟いていると、船を漕ぎはじめたようだ。
しょぼしょぼする瞳に微笑み、抱きしめる。
「大好きなお父さんを、忘れないで…。あなたが大きくなっても、ずっと好きでいて。
 いつか離れるその時が来ても、あなたが想っていてくれれば…私たちは、ずっと一緒だから」

「…ええと」
「あ、あ…つまり、その…ね?」
「わかったわ…。 お母さんから、お父さんはとっちゃダメなのね」
「え!?い、いえ、その、そうだけど、そうじゃなくて…」
まくしたててしまったことに気づいて、慌てて取り繕うとすると、
娘から鋭いのか鈍いのかよくわからない言葉が飛び出す。どぎまぎしてしまった。
「わたし、お母さんみたいに、「メロン」じゃないから、
 お父さんは好きになってくれないと想ってたけど…違うのね…よかった。」
「ルーク、何てことを…」
「でも」
「…?」
「お父さんのことを、好きでいて、いいのよね?」
不安そうな眼に、安心させるように。ぽん、と頭の後ろを叩いて。
すっと離れると、裁縫道具をまとめた。
おなかから一本毛は出ていたけれど、もう大丈夫。明日に続きをしよう。
「…もちろんよ。
 …そろそろ寝室に戻りましょうか、ジゼル。一緒に寝ましょう?」
「うん」
ブウサギのぬいぐるみを抱いて、彼女の手を握って。
…今日は、眠ろう。この幸せな時間を、柔らかな体温を抱きしめて。




「…ティア、女同士で結婚は出来ない」
「え」
「だが、あなたが私を大事に想ってくれているのは素直に嬉しい。
 閣下も、勿論だ」
「…はい」
「だから、忘れないで。あなたはいずれ自立する。
 あなたの度量ならば、それはもう目前といってもいいだろう。
 私が教えることも、閣下があなたをお護りする必要もなくなる時期が来る」
「はい」
「でも、あなたが私の教え子であることも、閣下の妹君であることも変わりはしない事実だ。
 私も、閣下も、あなたを想い続ける。いずれ離れるその時が来ても…。
 …私はあなたと道を違えることもあるかもしれない、それでも、あなたの無事を祈るわ」



  • リッチドールの奈々子です。宜しくお願いします。☆-(ゝω・ )ノ★ http://www1.cwca.mobi -- あかね (2012-10-09 18:55:09)
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