TOAのティアタンはメロンカワイイ SS > スレ14 > 916-919

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…この…声が…
…聞こ…え…か?
…うか…苦し…ないで…

「………っ!?」
思わず飛び起きる。
彼の声が聞こえた気がした。
「ルー…ク? ルークなの…!?」
何かにすがるような声。
返事はなかった。
ある筈はない。…ある筈がないのに…。

(馬鹿ね…。私ったら何を言っているのかしら…。)
みっともない声を出した事に苦笑する。
誰かがいれば、笑われてしまっていたところだ。
(……寒い)
部屋の空気は冷たく、それは半分眠ったままの彼女の脳を刺激する。
それと共に、つい先程の出来事を思い出した。




…この…声が…
…聞こ…え…か?
確かに「彼」の声だった。
間違える筈がない。
「あの日」から1年、一日たりとも彼の事を忘れた事はなかった。
それほどまでに、「彼」の存在を求めていた。
…それなのに。
その先が思い出せない。
彼が何を言っていたのか思い出せない。

(…このまま私は、あなたの事を忘れてしまうの…?)
そうなってしまう事が怖い。 彼と過ごした記憶が風化していくのが、堪らなくつらい。
今となっては、 夢の中でしか聞く事のできない彼の声。
それですら忘れてしまう自分が許せなかった。

(…いつから私は、こんなにも弱気になってしまったのかしらね…。)
思い出してみれば、彼と出会う前の自分は何でも自分で解決しようとするあまり他の誰かに依存しようとしなかった。
まるで愛する兄の裏切りを知って傷付いていた自分を守るように。


あるいは、「強い自分」など最初からいなかったのかもしれない。
弱い自分を、隠していたかっただけなのかもしれない。
―そんな私を、「彼」との出会いは変えてくれたのだ。
信じていた者に裏切られたという、同じ悲しみを共有する者同士しかわからない苦難を共にし、また自分を変えていこうとする彼の姿を側で見守るうちに、自分も変わらなければいけないと思うようになった。
彼の焔は…私を染めていった。
そして、いつしかそんな彼に惹かれている自分がいた。
―しかし。
彼はもう、目に見える形ではこの世には存在していない。
いなくなってしまった。

ふと窓の外を見渡すと、漆黒の闇が広がっていた。
まるで、今の自分の胸に抱いている不安を写している様で怖くなる。
(あなたは本当に帰って来てくれるの?)
必ず帰ってくるという言葉を信じて今日まで過ごして来た。
だがもしも。 もしも帰って来なかったら…。

「何を考えているの…!? ルークは帰ってくるって言ってたわ…! 私がそんなでどうするのよ…。」
そう自分に言い聞かせたが、不安は消えない。
「夜は否定的な考えしかできない。」
悩んでいた彼に、そう言った事があった。
確かに正しい。
今の自分は、まさにそうだ。



もしも今、あなたが側にいてくれたなら、この闇も違って見えただろうか。
星々が美しく照らす穏やかな夜となり得ただろうか。

――あるいは―――

あなたの焔は、この闇を…私の心を明るく照らし出してくれただろうか。


「……待つわ。」
静かな部屋に一つの言葉が響いた。

どれだけ二人の距離が離れ、顔が見えなくとも……。
どんなに時が流れても、世界があなたを忘れたとしても……。
私は…私だけは。
…あなたを待ち続ける。

……忘れはしない…。

……私を染めていったあなたの焔を………。

……二人だけの夢を………見るために。


…ィア……聞こ…るか…

…うか……苦し…ないで……。



――戻って…来よう。


――いつか…この場所に。





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