TOAのティアタンはメロンカワイイ

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匿名ユーザー

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 コンコン。

 月も真上に昇る夜中、静かな空気にノックの音が響く。
 私はノックに反応して、ペンを執る手を止めた。
 気配が部屋に近づいたのには気づいていたけれど、
 このような時間にノックをする相手が思いつかず、首を傾げる。
「私です。夜分すみませんがちょっとよろしいですか、ティア」
 知った声に納得して、私は書きかけの報告書をしまって席を立った。
「大佐……こんな時間になんの御用ですか?」
 安っぽいドアの鍵を開けて招き入れると、
 女性の部屋に夜来るのは無礼と、私はしかめ面を作ってみせた。
「すみません。ちょっとルークのことで相談があるのですよ」
”ルーク”の一言に心臓が大きく鐘を打つ。
 大佐はすこし困ったようないつもの笑顔で勧めた椅子に腰掛けた。
「……どういった話ですか?なにか彼の健康などにまずいことでも……」
 焦燥が隠しきれず、眉は顰めてしまったし、声は震えた。
 彼は二年もの間姿を消していて、半年ほど前に戻ったばかりだった。
 纏う雰囲気も仕草も変わっていた事に不安を覚えなかったわけじゃない。
 考えたくなくても、思いたくなくても、
 軍属としてシビアな現実を見つめてきた私は、再会したその瞬間に心に浮かべていた。
 すなわち――ろうそくの炎のように、今にも消えてしまうのではないかと。
「彼は大丈夫ですよ、ティア。
 昨日診察したところ、彼は健康そのものでした。当面は心配ないでしょう」
 確信のないことは言わない大佐が珍しく断言している。
 私は思わずほっと息をついた。
「では何の――」
「明日誕生日なのだそうですよ。
 アニスやガイも祝いたいと考えているようでしたので、
 私もなにか余興でも――とおもいまして」
「あら、そ、そうでしたか?私、忘れてたみたいだわ……」
「本人は自分の誕生日ではないと思って悩んでいるようです。
 こういったことは公式なお祝いより、皆で祝ったほうが受け入れ易いでしょうしね」
「なるほど。協力します」
「それでは企画を立てるとしましょうか。
 あ、これは差し入れです。飲んでください。」
 私は掌に乗せられた小瓶の中身を喉に流し込む。
 飲みなれたフルーツミックスにTPが回復する。
「実験前の薬剤や、媚薬といった類ではありませんから安心して飲んでください」
「!?」

 薬は既に、喉の奥に。
「た、大佐!薬なら先に言ってください!」
「嫌ですねぇ、アナタが説明途中で飲んでしまっただけじゃありませんか」
「一体これは何の――」
 ぐらりと視界が揺れて、思わず床にうずくまる。
 嫌な痺れがじわじわと這い上がり、思わず呻いた。
「なんだ?なにか叫び声が――ティア!?」
 ドアの隙間から覗いた赤髪がざっと部屋に飛び込んできた。
 抱え起こされるが、喉が熱くて声が出ない。
「ジェイド!ティアに何をっ」
 叫びかけたルークの手に、なにかが絡みつくのが見えた。
 ルークもはっとしてそれを見る。
 私の髪と同じ色の――服の裾から這い出した――

「しっ……ぽ?」

「はい。猫のしっぽは、コアな趣味の方々にはたまらないそうですよ。
 おもしろい趣向でしょう?」
 にやにやと裏に含んだ笑顔を向けられ、思わず言葉がでない。
「効力は二日ほどです。楽しんでくださいね、それじゃ」
 大佐はうれしそうな顔で出て行く。
「まってください!解毒剤を――」
 声を遮り、ばたんと扉は閉まってしまった。


 静かになった部屋の中、二人しばらく沈黙が続く。
「そうだ。ごめんな、ティア……俺のせいで災難だったな」
「誕生日は誰にでもあるのよ、あなたのせいじゃないわ。
 それよりちゃんと教えてくれればよかったのに」
「うん、ごめん――?」
「私も改めてなにか考えてプレゼントするわ。
 21……ううん、11歳かしら」
「ん……?ナタリアは俺の1歳上だから22歳じゃないのか?」
 そこではたと気がついて額を覆う。
「やられたわ……」
 よく考えたら、彼の誕生日なら帰ってきた日だ。
 大佐が主語を言わなかったのがそのためだったなんて思いもしなかった。
「どうかしたのか?」
「な、なんでもないわ……あ、月が綺麗ねルーク」
「変なヤツ……でもほんと綺麗だな」

 恥ずかしい勘違いをごまかそうと見上げた月は白く輝いていた。

 小さな窓から二人同じ月を見上げて。
 ちらりと後ろを向くと、一時的に生えた尻尾はすっかり馴染んで、
 想いのとおりに緩やかにゆれていた。



  • 尻尾・・・・・可愛い -- 瑠紅 (2006-10-04 20:16:35)
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