クロス『嗚呼・・』

物語は2人の男女の会話から始まる。

「・・なぁ、すげぇ言いづらいんだけどよ」

「どうした?」

「・・生理こないんだ」

ある別荘での会話、ここに中野 翔がおりなす壮絶な絶望から物語が始まる。




         嗚呼・・



                   ◆Zsc8I5zA3U







時期は穏やかな気候が目立つこの頃、まさに日曜日日和でもあるこの日に場所はいつもの別荘で中野 翔は愛する彼女の言葉に絶句した。聖の生理がこない・・実際には医療的に考えてもあらゆる事態が想定されるのだが、この男だけは既に結論を急ぎすぎてしまってあたふたして呆然と立ちすくんでしまう。

「おい、何つたってるんだよ? さっさと服着て、俺の勉強手伝ってくれるんじゃねぇのか」

「なぁ・・礼子先生には言ってるのか?」

「一応、明日学校で相談しようかと思ってるけど」

「なら絶対に言うな!! 不安になるな、俺がついているからな!!」

慌てながら礼子への相談を阻止する翔、もしこの状況が礼子にばれてしまえば翔の命など消えてしまうのは目に見えている。必死にうろたえる翔に聖は少し情けなく思いながらもここまで慌てている翔の姿を見るのも悲しくなってくる、それに自分の生理が来なかったのは女体化してからも何度かあったことなので慌てる事などあまりないのだが、あえて翔に突っ込むのを辞めている。

「お前が何で慌ててるのかは知らないけどよ、早く俺の宿題手伝え!!」

「あ、ああ・・わかったから下着姿でウロウロするな!!!」

強引に聖の宿題を取り上げると翔は現実を忘れるために宿題に没頭する、聖に関しては普段の宿題に比べて補習も上乗せされているので量もかなり多いのだが翔にしてみれば楽勝である。上半身裸姿で宿題をこなすのもいささかシュールな光景であるが聖も下着姿で宿題しているので大して変わりはしない。

「全く、宿題なんてめんどくせぇ・・」

(やべぇよ・・生理がこないって言うことは妊娠しかあり得ねぇじゃねぇか!!!)

翔は宿題をこなしつつもこれから考えるあらゆる事態を考えてしまったら現実に押し潰されてしまう、もし聖が妊娠したとなれば本人の意思も重要なのだが周囲の理解が何よりも必要不可欠である。それに親との話し合いやこれからの学校生活や養うための費用など考えていたらキリがないのが自分の不始末なので全てを投げ出して逃げるわけには行かない。

それでもこんな状況を引き起こしてしまったことを後悔しても仕方がない、大事なのは今後の後始末なのだから・・

「お前さ、これからどうしたいよ?」

「何言ってんだ? 俺はお前との大学を目指すだけでそっから先はまだ考えちゃいねぇよ」

「そ、そっか・・なら良いんだ」

とりあえず断片的ながらも本人の意思が明確したのでとりあえずは良しとする翔であった。





翌日・職員室

「というわけで、最近は生徒の妊娠率も増加の傾向が見られますので先生方は充分に気をつけてください」

そのまま霞はいつものように全ての教師を集めての朝の報告会を行う、今回の報告は生徒の妊娠についての問題のようだ。

「ま、私も長い間で教師してた時は女体化した生徒で何度か問題に直面したけど・・重要なのは本人の意思なので可能な限りは尊重してください」

(妊娠ね・・気をつけないと)

「春日先生がいらっしゃるので安心だと思いますけど、先生方も春日先生ばかりを頼りきりにせずにしてください」

礼子にしてみれば妊娠という言葉は余り好きにはなれない、自身の経験もそうだがそういった問題は非常にデリケートだし女体化した人間の場合は特に対処が非常に難しいので頭が痛いものだ。

「校長先生、なっちゃった場合は仕方ないんじゃないんですか?」

「あのね骨皮先生・・そうならないための対策をしなさい!! それじゃ時間ですのでこれで終わります」

霞の溜息が広がる中で報告会は終了する、各教師達が自分のクラスのホームルームや授業の準備をするために職員室を抜け出す、そんな中でいつものように保健室へ向かおうとする礼子を霞が呼び止める。

「あっ、春日先生。ちょっといい?」

「はい? 何か・・」

「実はね、さっきの話なんだけど・・一応春日先生だから大丈夫だとは思うんだけどね」

「ま、まぁ・・」

少し歯切れを悪くしながら礼子は霞に報告するが、彼女も今回の妊娠問題については明確には報告が出来ないので困ったところだ。それに約1名だが妊娠してもおかしくない人間がいるので礼子としてみればかなり頭が痛い問題である、一応旦那から貰っている強力な避妊薬は支給しているものの若さゆえの精力を押さえ込むのには厳しい話である。

「ん~、春日先生は生徒間の妊娠問題には立ち会ったことある?」

「今の所はないですね、その手の講習は何度か参加してはいますけど」

「ちょっと不安ね。講習だけじゃ実際に立ち会った時の対処が難しいわ、ちょっと私が講習してあげるから付き合ってくれる?」

礼子としては仕事に入りたいのだが、未だに学校内での妊娠問題には直面していないのでベテラン教師でもある霞に学ぶのも良い機会である。その手の実戦的な対処法を心得ておけばいざと言う時には対処もできるし今まで受けた生半可な講義よりかはずっとマシなのも確かだろう、霞があんな成りでも教師という職歴は自分よりもずっと上なのだから色々と実りはありそうだ。

「わかりました」

「ゴメンね、やっぱりこの手のことになると養護教諭が中心になりがちだから・・それじゃ空いている教室に移動しましょう」

そのまま霞は礼子を引き連れて空いている教室へと移動する、教室へ着いた2人は席に着くと霞による講習が始まろうとしていた。





特進クラス

中野 翔は人生最大の危機に1人頭を抱えて悩んでいた、これまでの自分の性生活を振りかえるのだが避妊はしていたものの妊娠してもおかしくない状況なのが頭が痛い。

(やべぇよ・・高校はなんとしてでも卒業はしたいけど、就職は絶対に決めないとまずいしな)

最近は就職率も落ち着いているので高卒でもそれなりの職業に就職することは可能ではあるが、それでも資格の面とか考えても大卒の方が良いことには越したことには変わりない。
今の自分の実力ならばバイト先の伝を頼って正社員にしてもらう事も可能ではある、事実卒業してからそういった話が店長からチラホラと出ていることだし・・それでも大学に通って様々な資格を習得しておきいたいのもある。

(にしても・・大学にも進学したいな、資格やら色々考えてもメリットはありそうだし)

「中野!!」

「っておい!! ・・何だ、藤堂か」

突如として現れたのは藤堂、いつもなら宗像と一緒に入るのが常であるのだが今回は珍しくも藤堂1人だけ・・奇妙な展開に頭を傾げつつも翔は少しばかりの現実逃避のため藤堂に会話を振る。

「それよりも宗像はどうしたんだ?」

「奴ならば家の事情で今日は休みだ。全く、応援団員たるもの弛んでいては・・」

「・・家庭の事情ぐらいは考慮してやれよ」

少しばかり宗像に同情しつつも翔は奇妙なやり取りを少しだけ楽しむ、思えば藤堂とは何度かは会話をしたことがあるものの常に宗像が一緒だったためこうして面と向かって話すのはあまりなかったのだ。

「んで、奴が休んだから俺にノートの手伝いか? 悪いけど断る」

「違う、お前に頼みたいことは別の用件だ。・・その、実はな」

これまた珍しく歯切れが悪い口調で語り始める藤堂、始めて見る姿に翔は少々困惑するものの何か深刻な悩みと見てゆっくりと話を伺う。

「要点がわからねぇよ、いつものお前らしく話してみな」

「実は・・放課後に生徒会の会議があるんだが、応援団の資料をまとめて貰うのに手伝って欲しい」

「はぁ? そんなもん他の応援団の団員にやらせておけよ、それに俺は部外者だろうが・・」

翔の言うことは尤もである、そういった会議での資料などは基本的に他の部活にやらせるべきであって部外者である自分が口出ししていい物ではないし、ましてやしようとも思わないのだが・・藤堂はここぞとばかりとんでもない発言をする。

「他の人間はダメだ!! 宗像みたいに的確な資料は作成など出来はしない!! 幸いお前はそういったのは得意そうだしな」

「お前なぁ・・応援団ならそういったことは応援団内でやるのが筋ってもんだろ? 別に応援団の奴等だって脳筋野郎ばかりじゃないだろうし、宗像がいなくたって・・」

「あいつは俺よりもそういった方面が得意分野だ。恥ずかしい話、応援団はそういった部分に秀でた人間が少ないのが現状だ。だから宗像に近いお前が適任だ」

「無茶苦茶も良いところだけどよ、少しは他の団員を信頼しt」

「それに今日の応援団の指導だってある! 出来るだけ資料作成のためだけに応援団の人間を割きたくはない・・頼む!! お前の協力が必要なんだッ!!!」

正直言って滅茶苦茶な理屈ではあるが・・あの藤堂がここまで頼んでいるのだから断りづらい、それにせっかく自分を頼ってくれるのだから協力しても損はないだろう。

「わかったわかった、やってやるよ!!」

「そうか!! 感謝するぞ。それでは放課後に応援団室で作業してくれ」

翔はキリキリと悲鳴を上げる胃を何とか抑えながら了承するのであった。





同時刻・教室

霞による実戦的な講習を受けていた礼子は経験に裏づけされた理論に納得されながらも必要な部分はメモを取って講義に臨んでいる。

「というわけなの。話は長くなったけど・・生徒が妊娠した場合は本人の意思を尊重しながらも周囲の軋轢や本人の経済状況を把握しないとね」

「なるほど・・だから校長先生は的確に対処してたんですね」

「まぁね、生徒の親御さんや当時の教頭先生や校長先生には結構叱られたけど・・今となったらいい思い出ね」

懐かしそうな表情で霞はかつての話を礼子に語り出す、教師時代は様々な生徒の面倒を見てきた霞も様々な実績を重ねて今では立派な校長である。今でも彼女を慕っているOBはかなり多いと教頭から話を伺っている、年齢的にはまだ若干ながらもこうした実績が周囲に認められて今の霞があるものだと礼子は改めて実感させられる。

「私自身も高校の時に妊娠して大学の入学が決まってからの出産だったから色々と苦労したわよ、奨学金で入学は出来たけど親の反対押し切ってダーリンは働きながら子育てに協力してくれたんだから苦労を考えたら今でも頭が下がるわ。

    • だけどそういった経験があるから今までやってこれたのかもしれない」

「まさか校長先生もそういったご苦労をなされたとは・・」

「我流だけどね。だけど一般の女の子もそうだけどさっきも話した通り、女体化した娘には細心の注意を払わないとダメよ」

礼子も自身の経験があるので霞の言っていることはよくわかる、今の時代は女体化がわりと常識的になったものの未だに女体化に対する偏見の目というものは多少ながらも存在する。礼子の時代も成りを潜めかけてたとはいっても女体化の偏見は酷かったのはよく覚えている、だからこそこうした妊娠問題は無いほうに超したことはない。





「私も大学時代の講習や他の先生方の話では何度か伺ってましたけど余り現実味がなくて・・」

「まぁ、そこら辺は仕方ないといえば仕方ない部分ね。もしこの学校で妊娠騒動になったとすればこの手の問題に一番真価を発揮するのは骨皮先生だと思うわ、逆に鈴木先生も生徒本人の意思はしっかりと尊重はするけど最終的には周囲の意見に飲み込まれそうね」

「ど、どうしてですか・・鈴木先生はそんな人間ではないと思うんですけど?」

あえて霞は礼子の周りを引き合いに出して妊娠騒動が起きた場合の仮定を話す、靖男は何となくわかるものの鈴木に関しては少しばかり意外な回答だ。彼女は教師としてもかなり優秀だし生徒達からの人気も高い。
それに礼子個人が接して来た人の中でも人間的に悪い人間ではないと言いきれるのだが・・それに彼女は普段は私情に流されずしっかりと仕事はする人間ではあるが決して人を見捨てたりはしない人間だと思う。霞はそんな礼子の心情を察しているのか少し申し訳なさそうに続きを話す。

「ああ、礼子先生の思っていることは大体分かるわよ。こんな話は校長としてじゃなく私個人の話だから・・聞き流してくれて構わないわ。
鈴木先生は確かに優秀よ、教師としての実力や様々な問題を解決した手腕は認める。理事長も彼女を学年主任に押すぐらいだからね・・でも彼女は生徒個人の問題は解決させることは得意かもしれないけど、学校以外の周囲が絡んだこういった問題を解決させるのは難しいわ。生徒個人ならあくまでも保護者との話し合いで決着はつくんだけど妊娠となると将来が非常に大きく関わってくるからね・・そのプレッシャーを正面から受け止める覚悟は決して生半可なものじゃダメなのよ。

彼女はああ見えて繊細そうだから周囲の支えがないと自分を追い詰めて押し潰されてしまいそうね・・


逆に骨皮先生はああいった想定外のことは強いわよ、前に卒業した楠本君覚えてる?」

「ええ」

楠本とはかつて聖が入学する前にいた生徒の名前で3年の時に靖男が受け持った生徒だ、礼子も良く覚えている。彼も聖ほどではなかったもののかなりの問題児で卒業前には警察沙汰寸前となった退学騒動まで発展した事件があったのだがこれを靖男は本人を説得させると、その勢いで単身で警察を筆頭とした周囲に向かい・・遂には見事に自身の処分を引き換えにして楠本の退学処置を取り消した事がある。これ以降は本人も心を入れ替えて無事に卒業を果たせたわけであるが、礼子は改めて靖男の行動力に感心させられたのはよく覚えている。

「ま、バカな子ほど可愛いっていうけど・・骨皮先生はやる時はしっかりやるタイプよ。もし生徒が妊娠した場合は反対している周囲を黙らせてでも本人の意思を尊重させていくでしょうね、生徒の更生やそういった問題の解決に関しては鈴木先生より上よ。

彼は絶対に人を見捨てたりはしない・・生徒と一緒に問題に正面から向き合って解決させる熱血先生タイプね」

「私も骨皮先生のそういったところは理解しています。ま、肝心の授業の指導や実務能力はもう少し頑張って欲しいところですけど・・」

礼子とて靖男の能力は高く評価はしているからこそ、そういった部分をもう少しだけ実務能力と指導能力に回してほしいところだ。毎度毎度、同僚の好とはいっても書類作成を手伝っているのは変だと思うし本末転倒も良いところである。

「そうなのよね・・やる時はやるのに普段はもう壊滅的よ。昼行灯の方がまだマシだわ・・って話が逸れちゃったわね、とにかく妊娠問題は事前に起こさないように気をつけてね」

「はい、私のために時間を割いてくださってありがとうございました」

「いいのよ、仕事終わったら暇だしね。これからも頑張ってね、春日先生☆」

そのまま講義は終了を迎えて礼子も霞もそれぞれの教室へと向かっていく、それよりも礼子にとって今回の話は大変実になったようだ。





お昼休み・学食

この日のメンバーは狼子と辰哉と刹那に聖とツンといったメンバーでささやかな学食の時間を楽しんでいた、話題は自分達の将来についてのようだ。

「でだ、お前達は将来は何したいんだ?」

「と言ってもなぁ・・ベターに仕事して一軒家持ちたいですね」

辰哉は今のところ考えている将来設計を話すが、聖は親子丼を食べながら更に詰め寄る。

「お前、狼子は無視か!!」

「そ、そうだぞ!! 噛んでやる!!!」

「痛ててて・・狼子はどうするんだよ」

「俺は辰哉についてく!!」

「あ、ありがとう・・」

堂々と宣言する狼子にツンも自作の弁当を食べながら自分の未来予想図をついつい思い浮かんでしまうが、慌てて掻き消すと改めて自分の将来を見据える。

(って、何考えてるのかしら・・ブーンとは別にいつまでも一緒に居られるわけじゃないしね!!!)

「お~い、ツン・・お前は大学卒業したら内藤の嫁さんになるのは確実だぞ」

「なっ・・何言ってるのよ!!! わ、私は別にブーンのお嫁さんになんか・・」

( (ツンさん、あなたの将来は予想しやすいですよ・・) )

辰哉と狼子はユニゾンで心の突っ込みを入れると話しの矛先は聖にベッタリしていた刹那に移る。

「せ、刹那ちゃんは将来はどうするの?」

「・・考えていない」

「刹那ちゃんなら俺達よりも頭が良いんだから一流大学も夢じゃないと思うんだけど・・」

「黙れ! 串刺しにするぞ!!」

「・・」

いつもの強烈な刹那の毒舌に辰哉もたじろいでしまう、聖を筆頭とした女性陣には普通なのに男性には容赦のない毒舌を浴びせる刹那に将来を心配してしまう。





「でも・・貴女の将来は一番予想できる」

「お、俺? 何言ってんだよ、俺は普通に世界のその名を轟かして・・」

「あんたは結婚でもして所帯持ってるわね、きっと」

「先輩との結婚生活も順調だと思いますよ」

「そうそう、相良さんはきっと先輩を尻に敷いて・・うげッ!!」

聖はそれなりに手加減しながらもそのまま辰哉に脳天チョップをお見舞いすると断固としてさっきの将来を否定する、辰哉も翔の影響からか余計な一言が癖付いてしまったようだ。

「さっきのは余計な一言だ!!! 俺はあいつの世話にならなくても一人で立派に・・」

「中野とラブラブな新婚生活だな」

「あっ!! てめぇはポンコツ教師!!!」

「よぉ、さっきから面白い話してるな。俺も混ぜろ」

突然現れたのは靖男、どうやら聖達の話しに興味を示したようだ。ちなみにここにいる全員は靖男が受け持っている生徒といった共通点があるのだが、そんな事お構いなしに靖男は自分のスペースを確保するとそのまま座って学食を食べながら話の輪に混じる。

「痛てて・・骨皮先生、何でここにいるんですか?」

「連れないな、先生は悲しいぞ木村。でだ、さっきのお前達の話の続きだが・・」

痛む頭を抑えている辰哉を無視して靖男は更に話を進める。

「まずは月島と木村は高校卒業して手堅く大学に入って卒業したら普通に結婚・・まぁ、平凡だが幸せな家庭を築くだろうな」

「「・・/////」」

「ツンと内藤も一緒だ。ただ内藤は傷は耐えないだろうがな」

「せ、先生・・」

思わずツンも顔を赤くして下を向いてしまう、そして更に靖男の話は止まらない。





「円城寺はキャリアウーマンとして活躍して世間をあっと言わせることをするだろうな。先生ちゃんと見てるんだぞ?」

「・・・」

「んで、問題は相良だ・・お前は中野と大学に入学はするだろうが、妊娠して出来ちゃった結婚しそうだな。ぶっちゃけこの面子だと相良が最初に子供作りそうだ、んで中野が欲情して主な製作場s・・ウゲッ!!!」

聖は問答無用で靖男に脳天チョップを放つ、先ほどの辰哉とは違って今度は手加減無用なので靖男の頭の中にはギャグ漫画よろしく大きなこぶが目立つ。

「何すんだ!! 借りにも俺はお前の担任だった男だぞ、ちっとは敬え!!!!」

「うるせぇ!!! 勝手に人の将来を語りやがって・・俺が出来ちゃった結婚なんていう恥ずかしい真似すると思うかッ!!!!」

( (い、いや・・真っ先に妊娠しそうな気がする) )

再びユニゾンで心のツッコミを入れる狼子と辰哉、それに刹那やツンも聖が妊娠したところで驚かないと思うし、むしろ妊娠してもおかしくない状況だと思っている。だけどもそういった事態には絶対になってほしくはないので聖と靖男を除く全員は翔には頑張って欲しいと願わざる得ない、製作率が半端ではないことは知っているので、どうせ妊娠するならばせめて将来が安定して余裕が出てからの妊娠の方が遥かにマシだからである。

「せ、聖さんの子供なら可愛いと思いますよ」

「それは俺も思うな」

「・・抱っこして見たい」

「あのなぁ!! お、俺は別に・・」

といいつつも肝心の聖も実生活を予想してみれば否定しようにも中々否定はできない、それに彼女は数日後には一瞬ではあるが自分の娘に会うことにはなるのであるが・・

「周囲の意見も大事にしたほうが良いぞ~、大人しく認めたら楽になるぞ」

「うるせぇ!!! ・・てか、てめぇは俺等ぐらいの歳には何してたんだ?」

「そういえば・・骨皮先生ってどうして教師になったんですか?」

「いいぞ、ツン!!」

これまた尤もと言えば尤もな疑問、これまでにも靖男の実績は誰もが認めるのだが肝心の過去についてはわかっていない。





「そうですよ!! 先生はなんで教師になりたかったんですか?」

「俺達ばかり不公平ですよ!!!」

「・・気になる」

今度は2年生グループの追撃が始まる中で靖男は少し珍しくもどこか顔色がよろしくない、そのまま五目チャーハンを食べながら凌ごうとするのだが周囲のヒートアップは更に止まらない。

「てめぇ!! いい加減に白状しろ!!!!」

「そうよ! 私達ばかりいいように弄って!!!」

「教えてくださいよ!!」

「誰にも話しませんから!!」

「・・教えて欲しい」

(・・過去か)

あまりにもの周囲が収まってくれないので靖男はどうしようか迷っていたその矢先に・・都合よくも昼休み終了のチャイムが鳴り響く。

「っと、先生にも色々あった・・以上だ。んじゃ、俺忙しいからまたな~」

「あっ!! 待ちやがれポンコツ教師!!!!!」

「ちょ、ちょっと!! 私達も早くしないと授業に遅れちゃうわよ!!!」

「そ、そうだ!! 辰哉、次の数学って・・」

「小テストだ!!」

「・・ここは急いだほうが無難」

そのまま5人は急いで食事を終えると次の授業に急ぐのであった・・





放課後・応援団室

時間は一気に飛んで放課後、約束どおり翔は藤堂と共にこれから行われる会議の資料作りに没頭しているのだが、やはり翔はこれからの事を考えると頭が痛い。

(ハァ・・どうやって責任取るか。礼子先生にばれたら確実に殺されるな)

「中野!! 資料は出来ているのか?」

「あと少しで完成だ、お前もさっさと会議の考えをまとめてろ!!」

こうして翔の手によって会議に開かれる資料は着々と出来ている・・といっても殆どの目立つ資料は出来ていて最終的なまとめなのだが、こういったことは普段は団長である藤堂の仕事であるのだが・・宗像が好きでやっているのか、はたまた強制的にやらされているのかと聞かれたら間違いなく前者なのは違いない。といっても普段から宗像頼りにしているのもどうかと思う、もし彼が休むことがあったとしたら自分が駆り出されるのは正直勘弁して欲しいところだ。

「お前な、宗像を頼ってばかりじゃ意味ないぞ?」

「うるさい!! 宗像は好きでやってるんだ、俺が口出すほどではない!!!」

「生徒会での会議は本来なら・・わかったらそう睨むな!!!」

藤堂の無言の圧力に屈した翔は黙々と資料の作成を続ける、それにしてもこの膨大な資料の中から会議の場で有利に会議を進めて行く宗像の手腕には正直言って感心してしまう。

そして数分後、ようやく資料を纏め上げた翔はそのまま藤堂に手渡すと資料をチェックさせる。

「よし、出来たぞ。目は通してくれ」

「助かったぞ。これで会議に間に合う」

「・・なぁ、藤堂。変なこと聞いてすまないが、もしあいつが妊娠してしまっ・・フベラッ!!!!」

突如として藤堂の拳が翔に見舞われる、慌てて翔は体勢を立て直すが思わぬ挨拶に怒鳴り上げる。





「おい!! いきなりグーパンはないだろ!!!」

「いきなり変な話題を振る貴様が悪い!! 相良が妊娠だとッ! そんなものはお前の責任で決まってるだろッ!!!! ・・相良が妊娠だと?」

思わぬ翔の言葉に藤堂は持っていた資料を握り締めてしまう、ふと冷静になって翔の顔を見るのだが表情から察するに冗談ではなさそうだ。

「・・失望させられた、お前はどうするんだ?」

「逃げるわけにはいかねぇだろ。責任は取れるだけ取るつも・・」

「馬鹿者ォォォ!!!! 言葉では言うのは簡単だ、軽々しくそんな言葉を吐くんじゃない!!!!!!」

藤堂の言葉に翔は言い返す術を持てなかった・・いや、反論すらできなかったのだ。自分への言い訳になってしまう、これ以上は惨めな思いをしたくはなかったのだが・・藤堂の勢いは留まらない。

「何も言い返せないとは・・見損なったぞ!! 相良はなんと言ってるんだ?」

「いや、まだ聞いちゃいねぇが・・」

「お前にはつくづくガッカリさせられたよ、見てて不愉快だ。お前は俺にここまで言われて悔しくないのかッ!!!」

「・・悔しいけど俺はあいつを――」

空気を読まずにここで翔の携帯が鳴り響く、翔はそのまま電話に出ると受話器からはちきれんばかりの怒鳴り声が響き渡る。

“てめぇ、何やってるんだ!!! さっさと俺の宿題手伝え!!!!”

「お、おい・・今、お前に関する大事な話をだな」

“俺に取ったら宿題が大事なんだよ!!!! 今どこにいるんだ!!!!!”

聖の怒鳴り声にたじろいでしまう翔だがここで藤堂は翔の携帯を無理矢理取り上げると聖に負けないぐらいの怒鳴り声を響かせる。

「相良ァァ――!! 身重の貴様こそ何やってるんだ!!!」

“てめぇは・・何でこいつの携帯に出てるんだ!!!”

「うるさい!! 今のお前は大事な身体のはずだッ!! なのにこうしてフラフラと・・これから母親になるんだぞ――!!!!」

“てめぇこそ、なに訳わかねぇこと抜かしてやがるッ!!!!! さては―――!!!!”

「や、やめろ―――!!!」

慌てて両者を止める翔だが、ここまで来れば双方完全に引き下がるはずがない。更にヒートアップした藤堂は聖に怒鳴り上げる・・

「いいか!! さっさと産婦人科にでも・・って、何をする中野!!」

「うるせぇ、これ以上騒ぎを大きくするな!!! ・・お、おい聞こえているか?」

“てめぇ・・俺がいながらいい度胸してるな”

「ま、待て!! 勘違いするな、俺は何も――」

“うるせぇ!!! てめぇの言い分なんざ聞きたくはねぇんだよ―――・・今からそっちに行くから首を洗って待ってろ!!!”

そのまま強引に電話を切られた翔はこれから起こりうる状況を想像すると脂汗が額から流れ落ちる。

「ふ、藤堂!! ここは俺が何とかするからてめぇはさっさと会議に出ろ!!!」

「クッ、納得がいかん展開だが・・仕方ない。中野、キッチリと男の責任は取れよ!!!」

「・・ここは押忍って言ってやる。だからさっさと生徒会室に行け!!!」

そのまま翔は強引に応援団室を後にするとそのままある場所へと駆け込んで行く・・この状況で駆け込む場所など1つしかない。





保健室

「てなわけなんだよ、礼子先生ぇ~・・」

「ハァ・・中野、俺はお前が情けないぞ」

あれから迷うことなく保健室へ向かった翔は運良くも帰る準備をしていた礼子に出くわしてさっきの経緯を話す、今回の顛末については流石の礼子もタバコを吸いながら怒鳴るどころか呆れてしまって物が言えない。

「それにしてもてめぇ本当に相良を・・妊娠させちまったのかッ――!!!!!!!!!!」

「い、いやだから・・まだあいつには」

「バカ野郎ォォォォ!!!!!!!!! 相良が妊娠しないように俺が薬渡してんの忘れたわけじゃねぇだろうな!!!!!」

「わ、わかってるの決まってるだろッ!! だから俺はこうs・・」

「うるせぇ!!!! それ以上は聞きたかねぇ、言葉では簡単だけどな・・てめぇは取り返しのつかないことしてしまったんだぞ――――」

半端ない礼子の言葉の重みに翔は萎縮してしまうと同時に自分の浅はかさを認識してしまう、そのまま礼子はタバコをもみ消すと行動を決意する。

「今から相良と一緒に病院行くぞ、あいつの伝だが腕は確かだ」

「すまねぇ・・」

「全く、お前等は・・」

そんな中で突如として保健室の扉が強引に開かれる、現れたは勿論聖・・瞳は既に血走っており放たれるオーラは凄まじい、例えるなら相当の実力者でも裸足で逃げ出してしまう勢いだ。それは翔でも例外ではなく本能が勝って思わず後ずさりしてしまうのだが聖はゆっくりと詰め寄る、普段と違って無言なのが余計に怖い。





「・・覚悟は出来てるだろうな」

「ま、待て!! お、落ち着いて話を――」

「覚悟しろォォォォ!!! 浮気者には塵一つ残さずにぶっ潰してやる――――!!!!!!!!!!!!」

聖はそのまま翔に制裁を加えようとしたがここで礼子が制止させる。

「てめぇ等、暴れんじゃねぇぇぇぇ!!!!!」

「「・・」」

聖をも上回る礼子の怒鳴り声によって2人の動きはそのまま止まるのだが、しかし聖は一瞬で再起動する。

「いくら礼子先生でもこればかりは――・・」

「・・俺に逆らうのか――」

「は、はい・・」

(す、すげぇ・・さすが初代金武愚の総長だぜ)

格の違いを思い知ったのか礼子の雰囲気に圧倒された聖は即座に勢いを即座に止めていつものように大人したのを確認した礼子は一瞬で喫煙の痕跡を消すと普段の通りのまま聖に話を振る。

「ふぅ・・落ち着いた?」

「あ、ああ・・」

「・・それじゃ、改めて聞くわ。生理はきたの?」

翔は神に祈るような気分で聖の回答を静かに待つ、もしここで生理が来なくて妊娠検査機で陰性が出れば聖は見事におめでたという事になる。

そんな翔を他所に聖はあっけらかんと答える。

「生理? 来たけどそれがどうかしたのか」

「えっ、お前・・昨日は来てないって」

「お前バカだろ!! 今朝ようやく来たんだよ、月ものは思い通りには来ないんだ・・ってそれがどうかしたのか?」

「よ、よかったぁ・・」

自分の推測が外れて心の底から安堵する翔だったが、今度は礼子から先ほどの聖とは比べ物にならないほどのオーラを徐々に放つ。
全ては翔の勘違いから始まったこの騒動・・余計な事で動かされて道化にされたこの怒りは考えるだけで腹が立つ、聖もそれを感じたのか恐る恐る自分の安全を確保する。

「れ、礼子先生・・帰って宿題していいか・・な・・?」

「・・いいわよ」

「お、俺もこいつの指導を・・ヒイッ!!」

翔の身体は動こうにも動けない、ヘビに睨まれた蛙の如く・・そのまま聖は底知れぬ恐怖を感じながら保健室を後にする、残されたのは翔と礼子・・これから怒る展開など1つしか考えられない。

「中ァ~野ォォォォォ!!!!!!!」

「ま、待て!! 俺の言い分を・・」

「聞くかあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「うぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ・・・」

こうして保健室に翔の声が木霊する、制裁の内容は文章で現せないほど過激なものなのでご想像にお任せしたい・・





職員室

そのまま翔への制裁を終えた礼子は疲れきった表情で日誌を霞に提出する、それによく見ると靖男の姿も見受けられた、霞は思わず礼子の表情を見ると心配の余り声を掛ける。

「春日先生、どうしたの・・?」

「・・いえ、ちょっとトラブルがありまして」

礼子の疲れきった表情に霞も思わず口に出すのをやめておく、一体何が彼女をここまで疲れ果てさせるのかが気になるところだ。礼子はそのまま自分のデスクで一息つきながら疲れを癒す、隣では靖男が一生懸命に書類を作成する。

「相変わらず精が出るわね、骨皮先生・・」

「わぁ~!! 誰かの手が欲しい・・早くcivの続きしたい!!」

「骨皮先生、無駄口叩いている暇が合ったらさっさと書きなさい! 出てないの先生のクラスだけよ~」

「わかってますよ!! ・・はい、出来上がり!!」

そのまま書類を作成し終えた靖男は書類を霞に提出する、そのまま霞は書類を見ながらいつものように溜息吐いて判子を押す。

「全く早く書類提出してくれればこんなことにならなくて済むのよ・・今日はもういいわよ」

「疲れたぜ。全く、相良の奴は変な事聞いてくるから余計にしんどかった」

不意に靖男が呟いた言葉に礼子は先ほどの件を思い出すとついつい苦笑してしまう、その姿に靖男は少しばかりムッとしながら礼子に話を振る。

「なんか俺おかしいこと言った?」

「別に・・ただちょっと思い出し笑いしただけよ。ところで何を聞かれたの?」

「俺の過去だってさ・・んなもんに興味あるのかね~」

靖男はコーヒーを啜りながら天井を見上げるが、今度は霞が靖男の話に興味を示す。





「私も興味あるな。この際だから教えて~、上司命令♪」

「校長先生、それが通じるのは本当の子供だけです。あんた実年齢幾つですか・・」

「・・骨皮先生、来週に行われる女体化生徒を考える会のPTAへの提出書類まだだったわね」

「で、でも・・期限はまだじゃ」

「この際だからさっさと提出しなさい!!」

地雷を踏んだ靖男と霞のやり取りを見ながら礼子はコーヒーを啜り、改めて靖男の過去が気になってしまう。

「ねぇ、骨皮先生ってどんな過去を送ったの?」

「春日先生までそれかよ。全く相良と似たもの同・・」

「何か言った?」

「い、いや・・」

礼子はそのまま右手に持っていたボールペンを握りつぶす、その光景に恐れおののいた靖男は観念したのかポツリポツリと語り出す。

「やれやれ・・あるところに卓球漬けの日々を送ってた男子高校生が2人いました、1人は卓球の腕は上手かったけど勉強がからっきしな靖男君。
そしてもう1人は卓球の腕はそこそこだったけど勉強が出来て女にモテモテの進也君がいました、2人は大変仲が良く順調な高校生活を送っていましたとさ・・めでたしめでたし」

「・・骨皮先生、洗いざらい全て聞かせてくれたら書類は撤回してあげてもいいわよ」

「これが仕様なんですよ、校長先生。・・そして2人に大きな転機が訪れます、女体化です。なんとモテモテだった進也君は童貞だったのでそのまま進也君から真帆ちゃんへと変わりました」

「随分と大きな改名ね」

礼子はそのままコーヒーを啜りながらワクワクしている子供のような霞と共に靖男の話の続きを静かに聞くが、靖男は僅かに声を落としながら話を続ける。





「友情が恋愛になるのも時間の問題でした。2人はしどろもどろになりながらも恋愛して幸せな青春生活を送っていました、ここで神様は運命に悪戯させて2人に大きな試練送ります。

なんと言うことでしょう・・真帆ちゃんが妊娠してしまったのです、避妊は怠っていなかったものの時既に遅く妊娠は丁度2ヶ月。ここでお馬鹿な靖男君は世間体や周囲を顧みずに真帆ちゃんに子供を産んで2人で育てようと軽々しく提案します、真帆ちゃんは小さく頷きながらもその瞳はどこか悲しそうでした・・
そして翌日、靖男君は現実を直視することになります。なんと真帆ちゃんは誰にも言わずに突如として県外へ転校してしまいました、靖男君は必死で真帆ちゃんを探したもののその所在は遂に明らかになる事はありませんでした」

「「・・・」」

「靖男君は絶望しました、そして数え切れないほど自分を責めました・・大好きな卓球を辞めてしまい、前など見えず歩いているのがやっとでした。そのまま高校を卒業した靖男君はなりくずし的に教育学部へと進み、上辺だけの付き合いで中身は死んだように淡々と講義を受けていく毎日・・そして教育実習である学校に赴任した靖男君は教師にこんな事を言われます。


“ダメだよ、そんな顔してちゃ・・私もね昔、金髪で無表情だけど儚そうな顔した女の子もいたし、生徒と一緒に暮らしたこともあるけど凄い励まされて貰ったの!!! ・・靖男君も辛いだろうけど、精一杯笑って暮らそ!”


西もt・・ある女教師の言葉に靖男君は感銘を受けました、聞くところによると彼女は幼い頃に両親を殺されて一時は話せなかったそうです。そんな辛い境遇にあった彼女だからこそ靖男君の心境をわかっていたのかもしれません、それから彼女に多数の励ましの言葉をもらった靖男君は世界に羽ばたきましたとさ・・めでたしめでたし」

話が終わると2人は思わず言葉を失う・・そんな空気を察したのか靖男はそのままコーヒ-を啜るといつものように惚けた顔に戻りながらケラケラと話す。

「え~、さっき話したのは演劇部に送ろうとしていた話です。フィクションです、嘘っぱちです」

「良い話ありがとう骨皮先生・・さっさと書類全部出しなさい」

「校長先生、そりゃないでしょ!!」

「あのね!! わざわざ期待したとおもったら・・安い小説でももっと良い話を書くわよ」

こんな中で霞と靖男の応酬が再び繰り広げられるのだが礼子は再び靖男の話しにある疑問が生じる、もし仮に話が本当だとすれば靖男の赴任した学校の教師について心当たりがある、もし自分が会ったことあるのなら思い浮かぶのはあの人物しかない。

「・・ねぇ、骨皮先生?」

「あんだよ? 春日先生も安っぽいってバカにすんのか!! フィクションだから仕方ねぇだろ!!」

「靖男君が励まされた先生・・なんて言う名前? フィクションなら教えてくれていいでしょ」

「・・西本 心、それがその先生の名前だ。そのはちゃめちゃだけど人一倍生徒想いの先生は靖男君の支えとなってなったのでした。ま、フィクションだし気にするな」

(懐かしいな・・あいつまだ先公してたのか、昔はしつこくて無視してたのよ)

その名前に礼子は心の中で強い反応を覚える、かつて高校時代の担任の名前・・昔は取るに足らない存在だったが今となっては少しばかり懐かしく想えるその言動は眩しく感じてしまう。

「登場人物教えたんだ。書類手伝って貰うぜ、せっかく演劇部に売るネタだからな」

「ねぇ、書類手伝って上げるから最後にもう一つ教えて・・靖男君は真帆ちゃんと会う事が出来たの?」

「・・さぁな、本人に聞かないと知らないね。所詮はフィクションの話に突っ込むのは野暮ってもんだ」

「そう・・じゃ、そういうことにして上げる」

(全く、素直じゃない2人ね・・)

礼子はそのまま靖男から書類を受け取ると複雑な心境を抱えながら完璧な書類を書き上げる、霞はそんな2人をどこか含みのある笑いで見守るのであった。








fin

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最終更新:2011年12月08日 04:49
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