愚鈍と愚者のバラッド 後

放課後

 補習の準備を万全にしながら今か今かと教室で聖を待ち構えていた靖男であるが、その期待に反して教室に現れたのは翔であった。靖男はがっくりと肩を落とすと全ての状況をおおよそ把握する、現に聖の代わりに翔が補習に現れたのは一度や二度ではないのでこの後の言葉などもう既に決まっている。

 「また相良はサボりか? お前も相良の彼氏だったら補習に参加させろ」

 「あのなぁ、俺だって色々やったんだよ」

 「本人が参加しないと意味がないだろ・・」

 がっくりと溜息を吐く靖男に翔は少しばかりの罪悪感を覚えてしまうが、自分が参加したところで意味はないので聖をとっ捕まえようにも抵抗するのは目に見えているので諦めている。

 「ま、折角の暇潰しだ。大人の社会授業に入ろう」

 「ちょっと待て!! 別に俺は何もないだろっ? だったらとっとと帰って・・」

 「この俺の経験を舐めるな小僧! んじゃ、授業に入るぞ。お前も高校卒業してから色々あると思うが最終的には就職すると思う」

 「あ、ああ・・」

 どっちにしろ進学を経て待っているのは労働である、将来はどこかの企業に就職をして適度な収入を経て生活をしていくものだろうと翔は勝手に思っている。そんな翔の内心など靖男にしてみれば正直いってどうでもいいので更に話を進める。

 「そこでだ、大人の男には色々と付き合いと言うものがあってだな。一口に言っても様々なので今回は男の付き合いとして代表的な夜の店についてピックアップしていく」

 「おいおい!!! んなもん彼女持ちの俺が行くわけねぇだろ、第一あいつにばれてしまえば・・」

 「んなもんが通じるのは十代までだ。それに一度断ってしまえば職場とのコミュニケーションは取りづらいだろうし、営業での接待とかでも大きく響くぞ?」

 靖男の言葉からは妙な説得力があるので翔も無下には反論できない、更に靖男は黒板に書き込みながら説明を続ける。

 「そう慌てるな、それ相応の対処も後で教えてやる。まず夜の店の代表と言えば飲み屋だ、大まかには2つの形態に別れる。まず1つは世間一般で言うキャバクラだな、こちらは主に繁華街に数多く密集しており、料金は高めだがサービスと女の子の質はかなり高い。そしてもう一つはスナックだ、こちらの方は田舎のほうにありながらもキャバクラと比べて料金はかなり安いが女の子の質はあまり宜しくない。
 さてここで中野に質問だが、お前だったらキャバクラとスナックを行くとしたらどっちに行く?」

 「いきなりその質問かよ!! そうだな・・予算があるときはキャバクラでない時はスナックだな」

 「模範解答だな、だけどそれじゃ3点だ」

 「おい、いきなりそれはないだろ!!!」

 自分の回答が貶されたことにいきり立つ翔であるが、靖男は慌てず騒がず次の説明に入る。

 「まぁ、落ち着け。俺は別に不正解とはいっていない、確かに予算面ではそうだが必ずしもさっき言った法則が当てはまるわけではない。高いのに女の子の質は最悪な店やら安いのに女の子の質が高い店とかあってどれもピンきりだ」

 「そこら辺はよく聞く話だな。バイト先の店長やらよく言ってるよ」

 「要は店選びをしくじったら大変な目に遭うことだ、事前の情報収集を怠ってはいけないな。そして重要な肝なのがそのシステムだ、ここら辺を見誤ると大変なことになるからよく覚えておけ、テストにも出る重大なところだ」

 「どんなテストだよ・・」

 翔は呆れ気味に応えながらも興味がないわけではないので耳を傾ける。

 「まずは基本のセット料金、これは店にもよって異なるが俺の経験上では大体キャバクラが集中している繁華街は60分5千円から7千円の間だな、高級な部類になると8千円も取るからこれも事前情報が必要だ。そして田舎のほうだと大体4千円ぐらいだな」

 「結構バラつきがあるんだな」

 「こればっかりは店によるから一概には言えれん。後、繁華街のキャバクラの話だが飲み放題はブランデー、ウイスキー、焼酎だな。他は別料金がつくから注意しろよ、特に生とかは高いからな」

 「マジかよ!!」

 焼酎やウイスキーなどが飲めずにビールが好きな翔にしてみれば衝撃的な話である、何せ基本料金のほかに飲み物まで別料金が加算されるシステムに思わず萎縮してしまう。そんな翔の表情を察した靖男は緊張を和らげるためにいつもの口調でやんわりと補足を付け加える。

 「そんなにビビるな、もし飲めなかったらソフトドリンクでも大丈夫だ。悔しいがお前はイケメンだから大丈夫だろうし値段はそんなに張らないから心配するな。これはあくまでも繁華街だけの話であってスナックとかはそう値は張らない」

 「何か引っ掛かるが・・まぁ、それなら安心だ」

 「さて、次は料金の説明に入る。これも店によって異なるが“前払い”と“後払い”があって前払いはセクキャバ・・主にオッパブが多いな、後払いはキャバクラだ」

 「へー、金を先に払う店もあるんだな。だったら少し安心するな」

 「と思うのが初心者の甘いところだ。前払いはあくまでも最初だけであって延長とかしたら後払いになるところもある、良心的な店は全部前払いで通してくれる場合もあるがそんな店先生は行ったことない、出来るなら教えて欲しいぐらいだ」

 少し感情が入っているのは気のせいだろうか? とにかく靖男もこの手のことはかなり経験しており、普段の授業とは比べ物にならないぐらいの熱の入るようである。

 「延長ってなんだよ?」

 「おっ、乗ってきたな。延長と言うのは文字通りだ、最初の時間が過ぎると店員が“延長しますか?”って聞いてくる。延長すると当然金が掛かるから分岐点の一つである、これも店や時間によって料金はかなり異なるが俺の経験だと基本料金よりは少し安くしてくれる。しかしこれが曲者でな、人間は酒が入っていると金銭感覚がおかしくなってしまうものでこれに周囲から乗せられてポンポン延長したら痛い目を見ることになる、俺も何度痛い目を見たことか・・」

 (こういう大人にはなりたくはねぇな・・)

 いくら未熟な翔も自分が酔う限度や加減は自信を持ってわかる、それ以上呑み続けるといった愚かなことは絶対にしない。


 「ゴホン、話が逸れたな。さて中野、お前は酒を飲むときは一人か?」

 「んなわけないだろ!! 親父じゃあるまいし、一人で呑むとか寂しすぎるだろ・・」

 翔にしてみれば一人で酒を呑むのは論外だと思うし、みんなでワイワイ飲みまくったほうが楽しいものである。現に聖といるときも必ずといっていいほどチューハイが常備してあるので鮭の力と持ち前の若さでそのまま行為にもつれ込んだことは何度もある。

 「さてそんな君に必要な説明だ、店に入ると自分達の酒は用意されるが付いてくれる女の子には酒は用意されない。何でかわかるか?」

 「おいおい、俺達だけが酒があるなんてそりゃ可哀相じゃねぇか」

 「そう思うだろ。みんなでワイワイやりたい盛りのお前には女の子にも酒を飲ませたいだろう。実はそれは“可能”だ」

 「どうするんだよ・・」

 自然と見事な話術に引き込まれてしまったのか、はたまた好奇心が働いたのか・・翔は固唾を呑んで靖男の説明を待つ。

 「簡単なことだ、女の子に飲んでいいと言えばいい。そしたら女の子は自分の酒を頼むんだが・・これにも料金が当然掛かる」

 「待て待て!! 女の子に飲ますだけで金取るのかよ!!!!」

 「そりゃそうだろ。向こうだってあくまでも商売なんだ、頼む酒にもよるんだが・・普通だと大体一杯で千円から三千円だが、ドンペリや高い酒だとかなり値は上がる」

 自身の経験論を中心にしながら靖男は更に話を進めていく、それにしても心なしか表情が楽しそうであるのは気のせいではない。普段の授業でもこれぐらいの熱意を見せていれば霞を始めとして周囲の評価はあっという間に上がるだろう。

 「ここまでくればお前でもわかるだろう、勢いに任せてガンガン女の子に飲ませて延長までしたら・・」

 「それで高くつくのか」

 「その通りだ。だけど適度に飲んでやればそんなに金は掛からない、さっき言ったように女の子に飲ませないだけでも随分安くなるからな。そして次は行動についてだ、飲み屋に行く場合は余計なトラブルを避けるためにも事前にお互いの所持金を確認したほうがいい」

 「そうだな。金は確かに重要だ」

 「そして複数でいく場合で重要なのは店でどんな行動するかだ。一発勝負よりも事前に打ち合わせてどれぐらいで切り上げるかを予め予定しておいたほうがいい、女の子にペースを握られてしまうと勝手に延長やら酒を頼んだりしてしまうからな。自分のペースを保ちながら周囲を楽しませるのが高くつかない極意だ」

 靖男の複数という言葉に引っ掛かりを覚えた翔は質問をする。

 「ちょっと待て、複数ってことは・・1人でも行けれるのか?」

 「ああ。だけど俺はあまりオススメしない、1人で行けば料金は安くはなるが周囲に味方がいないとあっという間に乗せられてしまうぞ? だから飲み屋は多少高くついても単独よりも複数がやり易いし対応も出来る、互いのチームプレイが物をいうな」

 そのまま靖男は買っておいたジュースを飲みながら一息つく、しかしこの話によって翔は今まで抱いていた夜の店のイメージががらりと変わったのは間違いないだろう。

 「さて、ここでお前みたいに彼女がいる場合の対処法についてだ。大概は付き合いとかで通じるんだが・・お前の場合はあの相良だからちょっとやそっとの言い訳は通じないだろう、だから周りに協力してもらって相良を遊ばせておいたら大丈夫だと思う。何せあいつじゃおバカで単純だから何も考えずに行動するだろう」

 「なるほど・・確かにそうだ」

 聖の性格を熟知している翔も靖男の案には思わず感心してしまう、確かにツンや狼子辺りに事情を説明すればすぐに動いてくれるだろうし聖も何も考えずに遊んでしまうだろう。

 「まだ説明し切れていないところが多々あるがとりあえず時間だから終了だ。さて中野、この話を聞いてどうだった?」

 「今までドラマやらそういった感じのイメージだったけど案外違うんだな」

 「さて興味を持ってくれたところで・・実地授業に入ろうと思う。店はクラブ・にょたっこの・・」

 「そんなこと認めるわけないでしょ!!!!!!!」

 「「こ、校長先生―――!!!!!!」」

 突如として声を発したのはその場にいるはずのない人物・・白羽根学園校長、藤野 霞その人。時は遡って数分前の出来事、霞はいつものように校長室に向けて廊下を歩いてると何やら熱心に説明をしている靖男の声に足を止めており、あの靖男が珍しく指導しているのかと思って感心しながら持ち前の身体能力を使って気配を消して教室に入ったのだが・・明らかに歴史の本質とは逸脱した内容に呆れを通り越して放心状態に陥ってしまってようやく意識を取り戻したのだ、いつもとは違う並々ならぬ気配に霞の説教に手馴れている靖男も思わず身震いしてしまう。

 「珍しく熱心に話していたと思ったら・・何しょうもない事教えてるの!!!!!」

 「こ、これはですね。社会経験というか、こういった歴史もあると言うことを・・」

 「何言ってるの!!! 教師が生徒を夜の店に誘ったのがばれたら私達は情状酌量の余地なしで即刻クビよ!!」

 今回は霞の活躍によって未然に防がれたものの本来こういったことがばれてしまえば翔は当然の如く退学になってしまい、靖男は教員免許剥奪の上で即刻クビを言い渡されて上司である霞もクビか最も軽くて降格の上での飼い殺し生活であろう。過去に度重なる教員の不祥事があってか法律が変わって教員免許にも運転免許と同じような制度が取り入れられているのだが、教員免許に関しては一剥奪されると二度と取れないと言う非常に厳しい処置となっているので下手な行動は起こせないのだ。

 「骨皮先生!! 即刻職員室に着てもらうわよ!!!」

 「や、やめてくれ~~・・」

 (やっぱり、反面教師も大事だな)

 ロリっ娘校長に引き摺られる靖男を見ながら翔は改めて意味深に見守るのであった。


 あれから霞の説教に加えて多大なる始末書を書かされた靖男、本来なら減給処分やら色々な処置が取られても何も文句が言えれないことを考えるとかなり寛大な処置と言えるのだがその心中は当然穏やかではないのは当然だろう、そのまま教員専用駐車場に止めておいた自分の車に乗り込む。

 (あのロリ娘!! 久々に散々絞られたぜ・・)

 どうやらいつもよりもかなりきつく絞られたようでその表情からは疲労が滲み出ている。ちなみに普段は靖男は車出勤ではないのだが、今回は遅刻しそうだったので止む無く車で出勤している。そのまま素直に帰るのも癪なので憂さ晴らしがてらにドライブをしながら自宅へと向かう。

 「それにしても車ってのは便利なのはいいが、金が掛かるのが嫌だね。政府も公務員の減給よりもこっちに気を遣ってくれたらありがたいのに・・」

 靖男の言うようにこの世界でも車に関してはそれなりの維持費が掛かるので、昨今騒がれている公務員の減給よりもそちらのほうを何とかして欲しいものである。実際に車の維持費に関しては国会でも度々議論されているので改善の兆しがひょっとしたらあるのかもしれない。しかし靖男がここまでお金に余裕がないのは何も車に限った話ではない、普段の散財をキッチリ抑えておけば余裕で生活できるぐらいの水準があるのだが、本人の生活の所以なのかこればかりは治らないところである。

 (全くここ最近は生活が・・ってあれは相良じゃねぇか、しかも大人数相手に喧嘩してるじゃないか!!)

 気がつけば車は人気のある大通りから人気のない薄暗い埠頭へと走ってきてしまっているのだが、そこで靖男が目に付いたのは大人数相手に一人で喧嘩をかましている聖・・周囲に転がっている野郎達の亡骸を見れば彼女の実力が本物だと言うことを嫌でも思い知らされる。そんな四方八方から向かってくる人間を片っ端から撃破していく聖であるがとある出来事で動きが止まってしまう。

 「なっ――・・」

 「どうだ、相良ァ!! いくらてめぇでも連れが人質に取られてしまったらどうすることもできまい!!!!!」

 聖が突如として動きを止めてしまったその理由・・眠らされている2人の男女、聖が大人しくしたのをいいことに野郎達が持っていた刃物を2人の肌にチラホラとなすりつける。その行為に聖は激昂するがここで自分が動いてしまえばこの2人の命は保障はされないのは見て明らか、だからここは耐えなければならないのだ。

 「この野郎ォ・・辰哉と狼子を離しやがれ!!!!」

 「離してほしけりゃ、大人しくするんだな・・こんな風になッ!!!」

 「グッ――・・!!」

 そのまま聖の右肩に鉄パイプの重い一撃が走る、男のときと比べて頑丈ではなくなった肉体はすぐさま悲鳴を上げるが、常人であれば重症になるところをただの負傷で済んでいるのが聖の凄いところではあるがそれでもダメージを受けたのは変わりないので右肩を押さえ込む。そんな光景の中、担任である靖男はすぐには飛び出さずに第三者として状況を観察する。

 (人質に取られているのは1年の月島 狼子に木村 辰哉か・・そんで相良とやりあっているのは九条高校の連中か。全くお互いに身体はでかいのにやってることは本当にガキだな・・)

 靖男とてこういった現場を見るのは何も一度や二度ではない、聖たちが入学するまではこういった現場に対峙したこともあるし中には警察が乱入してきた中で飛び込みながら混戦になった事だってある。そういったことを繰り返されるうちに本人が気がつかないまま、いつしか世間から不良とレッテルを貼られている人間達から慕われているし靖男自身もそういった人間と接していくうちに彼らも自分達と同じく様々な性格の持ち主がいることを気付く、そういった彼らを慈悲もなく問答無用で弾く世間に靖男はいつしか嫌悪感を覚えるようになる。古い体制や柵に囚われている彼らのほうがよっぽど心憎くて汚い人間だと思えてしまうのだ。

 「・・さて“仕事”するか。“もしもし、久々に連絡取ってあれだがちょっと来てほしいんだ。何ッ、都合が悪い・・? んなもん今回はクソくらえだ!!! さっさと20秒以内に来るんだ、、同じ公務員なら何でも使って仕事しやがれェェェ!!!!!”」

 本人や傍からは判らないが靖男の表情が僅かに変化する、そのまま彼はこの状況を打破するために携帯を取り出してある人物に連絡を取ると普段とは打って変わって強めの口調で強引にこの場に呼び寄せようとする。その間にも状況は一気に悪化しており、人質を取られて無抵抗な聖はとりあえず報復としてありとあらゆる打撃を食らわされた後は捕らえられてしまって絶体絶命の危機に瀕していた。

 「クソッ・・」

 「あの相良がこうも面白く捉えられるとは好奇だな! おィ!!!」

 「それに良く見れば結構美人だ、このまま男をぶち殺して女と一緒に仲間内で輸姦してやろうぜ!!!!!」

 「「「「「おおおっ!!!!!!!!」」」」」

 邪な企みが現実味を帯びてしまうこの状況の中でも聖は野郎たちを睨み続けながら決して諦めはしない、今まで培った相良 聖としてのプライドが人に従うのを絶対に許さないのだ。

 「何だァ~? その目は・・気にいらねぇな!!!!」

 「ざけんな!!!! てめぇら三下が俺様を倒そうなんて有り得ねぇんだよ!!!! こんな風になッ!!!」

 そのまま聖は自由になっている足を使ってすぐさま立ち上がると右肩の激痛を必死に堪えながらハイキックとミドルキックの壮絶な嵐を浴びせて瞬く間にKOしてしまうが・・その行為が野郎達の怒りをすぐに買ってしまうことになる。

 「両手を縛ったところでてめぇ等なんて敵じゃねぇんだよ!!!」

 「てめぇ、知った風に舐めるんじゃねぇぇぇ!!!」

 「おい、輸姦わすのは一旦止めだ。この糞女に身の程ってのをわからせねぇとな!!!」

 「やれるならやってみやがれッ!!! てめぇ等まとめて辰哉と狼子の分まで叩きのめしてやらぁ!!!!!!!」

 「「「「「「うおおおおおおおおおおおお―――――――――!!!!!」」」」」」

 けたましい雄叫びが響き渡る中、とある人物が聖に襲い掛かろうとした1人が見事な甲を描きながら無意識に宙に吹っ飛ぶ、その光景に野郎達の動きは無論の事で聖も信じられない光景に思わず目を点にさせてしまう。聖の窮地を救った人物・・それは鉄パイプ片手に振りかざす靖男の姿であった、そのまま靖男は普段では考えられないような巧みなフットワークで瞬時に2、3人を叩きのめす。

 「は~い、喧嘩はここでお終い。てめぇ等ガキはこんな時間に起きちゃいけないからさっさと家に帰って眠なさい」

 「なっ・・てめぇは何者だぁぁ!!!」

 「俺か? 俺はお前らの大ぃ~嫌いな先公だ。んじゃ、特別授業開始だ」

 「なめるなぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 そのまま向かってきた1人に靖男はやれやれと思いながらも鉄パイプで思いっきり胴に狙いを定めて思いっきり打ち込めると、男はよっぽど痛かったのか苦痛の表情が滲み出る。

 「ぐぅぅ、先公の癖に・・」

 「ガキが大人を舐めるとこうなる。いい勉強になったろ、九条高校の佐竹君?」

 「!! て、てめぇ・・どうして俺の名を」

 「生憎だがお前だけじゃない。中川に花岡に有田、お前らは大手大学であるモナー大学の進学も約束されているし、あの平塚グループの下請けである大企業の山伏電器の内定が気待てるんだろ?」

 「「「!!!」」」

 佐竹を始めとして靖男に呼ばれたものは一瞬で硬直してしまい、驚きのあまり呆然としてしまう。靖男の言っていることは決して出任せでもなく全て事実であり、このような事がばれてしまえば彼らの将来は水泡に帰すのは間違いないだろう、そんな靖男も彼らの心情をある程度汲みながらこんな進言を続ける。

 「さて俺はそこらへんの教師と違って鬼じゃない、このままおとなしく引き下がればお前らの学校には黙ってやるよ。他にも将来が約束されている奴がチラホラと見受けられるが、こんな時期にこのような問題を起こせば将来を棒に振るぞ? 相良が過去にお前達に何かしたのなら俺が謝る、だからってこんなことしたって気が晴れるわけじゃないだろ?」

 「おい、ポンコツ教師!! てめぇ、何言って・・」

 「お前は黙ってろ!!!!!」

 普段とは違う靖男の威厳のある言葉に流石の聖も思わず沈黙せざる得ない、聖が大人しくなったことで更に靖男は話を続ける。

 「お前らはガキだ! 若さに身を任せるのも人生の内だ! だけど良いことばかりではない、それで身を滅ぼすことだってある。世間はお前達が思っているほど優しいものではない、だからここは・・」

 「うるせぇんだよ。先公なんて信頼に置けねぇな!!!」

 「偉そうに説教したっててめぇも所詮は俺達のことを見下してるんだろ? そんなのはうんざりなんだよ!!!!」

 「俺達はてめぇみたいな大人なんざ糞食らえなんだよ!!」

 そのまま上記の3人は靖男に向かってくるが、当の本人はそんなことお構いなしに冷静に佇む。

 「・・言いたいことはそれだけだな、だったら俺が叩きのめしてやるッ。お前らの理不尽を俺にぶつけて来い!! だが同時に“痛み”をまだ知らないお前らに俺がこいつとは比べ物にならないほどの痛みを直接身体で教えてやる!!!!!」

 「「「ほざけぇぇぇ!!!!!」」」

 そのまま彼らは勢いで靖男に向かっていくのだが、靖男は彼らの攻撃を決してかわさずに受け続けながらも1人1人の急所目掛けて思いっきり鉄パイプを叩き込み倒れるまで何度も何度も同じところを打ちつけて鉄パイプだけではなく、やられたところを重点的に拳で叩きのめす。そんなやり取りが数分ぐらい続いた後、靖男に立ち向かう前の勢いはどこへやら・・既に見る影もなく容赦ない打撃で叩きのめされてしまって今では靖男の足元しか見れない、そのまま靖男は持っていた鉄パイプを放り投げて3人に語りかける。

 「あがが・・」

 「強・・い・・」

 「た、たかが・・先公の癖に・・」

 「どうだ? これがさっきまで相良が受けていた痛みって奴だ。お前らの理不尽よりも数倍痛いはずだ、これに懲りたら・・」

 「貴様等!! 何をやってるか!!!!!」

 更に現れた1人の男性・・この人物こそ先ほど靖男が呼び寄せた人物の1人、彼らが通う九条高校の生活指導である本状 孝之(ほんじょう たかゆき)であった。彼らは本状の顔を見るや否や様々な反応を見せる、恐怖に震える者や憎しみを向ける者など様々であったが、靖男はいたって冷静で今度は本状のほうをじっと見やる。


 「この揃いも揃って・・お前達は自分達のやったことがわかっているのか!! 
 学校が! 親が! 必死になってお前達のために働き、ここまで育て上げたことを忘れたのか!!! 俺もお前達の将来のためと思って指導してやったのを・・忘れるとは!!!

 お前達が“世間のクズ”と同じような行動をするとは失望させられた、学校からの処分があるまで貴様等全員は自宅待k・・フベッ!!」

 「頭から捻り出した大層なご演説に酔いしれるのはいいが、大事なところをしっかり見落としてるな本状先生よ」

 本状を殴ったのは他の誰でもない靖男・・この有り得ない光景に本状は殴られた頬を抑えながら当然のように自分を殴った靖男に激昂する。

 「何をする骨皮ッ!!! お前も俺と同じ教師なら俺の言っていることは当然わかるだろ? こいつ等は俺の生徒でありながら既に暴力行為と言う重大な問題を犯したんだぞ!!!」

 「・・お前がどういう風に指導したか今の言葉でよくわかった。ご大層なこといっている割にはこいつ等のことを一言も庇ってないな、さしずめお前は中身も見ずに上っ面だけで判断して自分の地位のためにこいつ等としか接してないだろ?」

 「そ・・そんなことは断じてないッ!! か、彼らには輝かしい未来がある、それを棒に振ったこの行為こそが愚かだと俺は・・」

 「んな妄言はルイ13世辺りが処刑される前に散々言ってるんだよ!!! ・・それにな、俺は知ってるんだぞ。お前はこいつ等以外の問題をもみ消したり、こういった問題があった奴の事情を一切無視して退学させたりしてることとかな。そんな厄介者を根こそぎ退学させたりしたお陰で来年は教頭になれるそうじゃないか?」

 「そ、そんな事実は――・・問題を起こした奴等はそれ相応の処分を学校と検討して上でのことだ! それに揉み消しなどという卑劣な行為などするわけがないだろ!!!!」

 「の割には表情が苦しそうだぜ、本状先生」

 先ほどの威厳のある態度とは違って本状は靖男の言葉の一つ一つに苦虫を噛んだ表情を浮かべる。これもまた事実、靖男は独自で培った教員のネットワークで瞬時に本状のことを調べ上げてその素性を把握している。それに何も靖男のネットワークは教員だけではない、その他に警察とかにも知り合いがいるのでそれらの伝を利用して調べをつけているのだが、所詮は言葉だけの情報のみなので本状からしてみればまだ逃げることはできる。
 そんな靖男も本状の対応などは予めからわかりきっていたので更に追い詰めるためにあるワードを言い放つ。

 「・・桂木 静花、この名前をお前は良く覚えているだろ?」

 「なっ――・・どうして他校の人間であるお前がその名前をッ!!」

 靖男が言い放った人間の名前に本状は明らかな動揺を見せる、ここで黙りっぱなしであった聖がようやく言葉を開く。

 「おい、ポンコツ教師!!! てめぇはさっきから何言ってるんだよ!!!」

 「まぁ大人しく聞いておけよ、今からお前にもこの本状がどんな人物かわかりやすいように話してやる。
 桂木 静花・・元は桂木 静雄、女体化して改名した名前だがそんなことはどうでもいい、こいつは男のときから元来いじめられっこで女体化してからもそれは変わらなかったようだ。そこら辺は直接下してはないにしろ連れのお前らは良く知ってるよな?」

 靖男の問いかけに野郎達は黙って頷いてしまう、そして更に話は続く。

 「さてこの桂木 静花は去年に女体化してその4ヵ月後に遺書を残して自殺してしまうことになる。・・理由は簡単だ、女体化してからお前達に犯されてたんだからな。更に問題なのは桂木 静花はこの本状の生徒だったからだからな!!!」

 「か、彼女の問題は解決したんだ!! 担任として葬式にも参加をしたし、彼女のご両親とも話し合ったんだ。今更貴様に言われる筋合いはない!!!!」

 桂木 静花が自殺した事実が発覚したのは以外にも数日経ってから、九条高校から自殺者が発生したことで当時は大きな問題となったがある理由によってそこまで大問題には至っておらず、すぐさま沈静化されているのだがその理由はあまりにも衝撃的な内容であった。

 「あろうことは本状は彼女の遺書を処分して自分が作成した遺書に書き換えたんだ。その理由は何もこのご時世では何も珍しいことではない、女体化が苦痛で命を絶った・・ってな。この偽りの事実を九条高校は提示したお陰でそこまで世間からは非難されていない」

 「骨皮、自分が何を言っているのかわかっているのか? 俺がそんなことするはずがないだろ、お前は昔から変な奴だったがこんな妄言を言うのが趣味な奴だったとはな。どうやら名門で名高い白羽根学園もたかが知れる・・おっと失礼、お前が教師として不適合者なだけだったか?」

 そのまま本状は落ち着きを取り戻したのか、靖男の言葉を一笑に付ける。靖男には思わずヒヤッとさせられたがよくよく冷静になって考えてみると靖男の言っていることは全て物的証拠はおろか状況証拠すら何一つ出ていないし根拠としてもかなり弱い、それに普段の行動を考えても教師としてはこれほど不適合者にピッタリな人物は早々いないだろう。

 「・・さて、昔の好でロクな証拠もない妄言や俺を殴ったことは不問にしてやる。このままさっさと消えろ、後は俺が適正な処置を引き継いでやる」

 「何言ってるんだ? 証拠ならあるぜ、何ならこの場で読み上げてやろう。

 “お父さん、お母さん・・このまま命を絶ってしまった自分をどうか許してください。今まで彼らに傷つけられる日々はもう耐えられません、担任である本状先生にも相談しましたが、頭が悪い自分の言うことなど信じようともせずに成績がいい彼らがそんな行為をしているはずがないと言いくるめられて、逆に自分の成績のことで怒られてしまいました。
 彼らが自分にやったことは決して許せません、唯一自分ができるのはこの事実を明るみにすることです。

 最後に私を産んでくれてありがとう。  九条高校 3年4組 桂木 静花”」

 「ど、どうして貴様がそれを――・・」

 靖男から読み上げられた遺書の内容に真っ先の動揺を見せたのは当然のように本状しかいない。あの時、普段使われていない教室で自殺をした静花の死体を見つけたときは衝撃であった。そして彼が次に目に付いたのはパソコンで作成されてたオリジナルの遺書、それをすぐにライターで破棄した後は即刻職員室に戻って偽の遺書を作成してすぐさまその痕跡を消すと再び元の位置へと戻したのだ。教頭の地位が約束されている本状にしてみれば自分の生徒である静花がいじめを苦にして自殺してしまった上に彼女の悲痛な叫びを無視してしまった事実を明るみにされれば社会的地位まで失ってしまう、それに自殺そのものをもみ消してしまったら余計に騒動が大きくなってしまう。そこで彼が考えたのは事実の捏造、これならば騒動が起きたとしても騒ぎを最小限にすることが出来るし自分の将来も揺るぎはしない。
 それに静花をいじめていた連中はどれも成績が優秀で自分の名誉を上げる人材のみ・・それに保護者の存在も考えたら自分の立場に固執している本状がどちらを取るかは明白の理であった。

 そのような本状の行為に真っ先に怒りを覚えたのは聖であった。

 「てめぇ・・自分のやったことが恥ずかしくないのかッ!!!!」

 「・・黙れ、相良 聖。俺は貴様のようなクズとは違う、お前のように中学の頃から鑑別所が確定していた貴様とは比べるまでもない。それに桂木 静花は男のときから勉強も運動もできない取り得のない人間だ、幼い頃からまだしも高校になったらその将来はわかりきっているだろ? 全く・・最後の最後で忌々しいことをしやがる」

 「この屑が・・ぶっ殺してやる!!!!」

 どうやら彼もここまで来れば認めざる得ないようで、本状の最低の発言に聖は怒りに火がついて飛びかかろうとするが、靖男は力づくで聖を制止する。

 「おい、ポンコツ教師!! 死にたくなかったら離しやがれ!!!! 俺はこいつを・・この屑野郎をぶちのめす!!!!」

 「待て、相良!! ・・そんなことしたって意味はない。こんな屑殴るだけ無駄だ」

 「骨皮・・お前も同罪だ。どこでそんなものを手に入れたのかはわからんが、所詮は俺を陥れるためにお前が急遽作成したものだろ? ここで不問にしようと思ったが気が変わった、お前を名誉毀損ならびにこの乱闘行為で刑事告訴する。当然、告訴となれば九条高校が出るんだから名門の白羽根学園であろうと関係ないぞ?」

 「だったら、最後に教えてくれ。お前は本当にこんなことをやったのか? お前がここまでの対応に出るのだから俺は文句なくクビだ、この出来事が問題になれば誰も俺の言ってることは信じはしない」

 既に万策尽きたかのように諦めモードになっているのに本状は気を良くしたのか、ようやく事の真相を暴露する。

 「お前の殊勝な態度に免じて最後だけ教えてやろう。・・そうだ、全てはお前の言うとおりだ。桂木の親には学校から多額の見舞金を渡しているから問題はない、あそこの家庭は生活に苦しいようだったから無理矢理送りつけたら何も言っては来なかったよ」

 「そうか・・だそうだ、刑事さんよ?」

 靖男の呼びかけに突如として物陰から更に1人の男性に2人の警官が本状を押さえつける。そのあまりの光景に訳のわからぬまま警察に取り押さえられた本状は当然のように抵抗する。

 「なっ――・・骨皮ァ!! これはどういうことだ!!!!」

 「どういうことって・・見たまんまだろ? っと、紹介が遅れた。こいつは俺の昔からの親友で名前を・・」

 「警視庁、生活安全課の巡査部長。吉田 丈志(よしだ たけし)!! 九条高校教員、本状 丈志。貴様を桂木 静花自殺事件の最重要参考人として署までご同行願おう」

 「悪いが、今の言葉は俺がしっかりと携帯で録音しておいた。何ならこの場で再生してやるよ」

 「うっ・・」

 靖男の携帯からは先ほど本状が言い放った暴言が非常にクリアな音源で一字一句洩らさずに再生されており、本状は失意の中でがっくりと肩を落とす。

 「さて、ここからは俺の仕事だ。・・おっ、お前は相良じゃないか? 元気にしてるか、また問題起こすとしょっ引くぞ」

 「うるせぇ、糞ポリが!!! 散々俺を追っかけまわして何度も中野との勝負を邪魔しやがって!!!」

 「そこまでにしろ。んで丈志よ、ここからは俺の頼みなんだが・・相良を含めてこいつ等を見逃してやってほしいんだ」

 警察の出現は本状だけではなく乱闘を企てた彼らにも同じような動揺を与えていたのだが、この靖男の発言に自ずとこの場にいる全員の注目が集まる。

 「こいつ等はまだガキだ、こんなちっぽけな喧嘩で棒に降らせてしまったら本状と同じになってしまう。これは教師としての頼みだ」

 「・・お前は普段はアレだがいざと言うときは本当にこの職業が向いているな。わかったよ、俺もこいつ等をしょっ引くたびに出世するのは心苦しかったからな。今回はこいつ等見逃してやる・・お前達!! 今回は俺の親友であるこのロクでもない教師の顔に免じて見逃してやるが、次はないと思えよ!!」

 「「「「「「あ・・・ありがとうございますッ!!!!!!!!!!!!」」」」」」

 丈志も伊達に長いこと警察という職業をやってはいない、こういった不良たちを見ていく中で自分達の力で更生する者を見ていると働いていることを実感させられてしまう。だからこそこういった小さい喧嘩や彼らが起こす問題行為の数々を取り締まるだけでも心が痛むものだし、何よりも警察という組織が彼らに対して無慈悲で更生の機会すら与えていないのが悲痛の元となっている。

 だからこそ無用にしょっ引くのは彼とて望んでいる展開では決してないのだ。

 「靖男。お前は悪ガキを更生させるのが一番似合うよ」

 「勘弁してくれ」

 「ハハハ、冗談だ。それじゃ、俺は署に行く・・また一緒に呑みに行こうぜ」

 「ああ、夜遅くまでご苦労さん」

 そのまま丈志は本状を引き連れてその場から立ち去る。そして全てが終わったのだが、靖男にはまだやることが残っている。


 「さて・・相良、これでわかったろ? 今はまだどうにかなる歳だがいくいくは取り合えしのつかないことになるんだ」

 「うるせぇな!!! 今回はあれだったが、俺は野郎たちをブッ倒すことが性に合ってるんだよ!!!!」

 「バカかッ!!! お前1人だったらまだいい!!! ・・だけどな今は違う、お前には今はたくさんの友達がいて楽しいんじゃないのか?
 お前がこんなことを起こしてしまえば今回のようにお前の友達が巻き込まれていくんだぞ!!!!」

 「んなことはわかってる!!! だから俺がケジメつけるんだよ!!!! 連中の狙いは俺だ、俺さえ出れば全て万事解決なんだよ!!!!!」

 「・・本当にそう思うのか? 薄々気付いてるんじゃないのか、自分のやっていることが虚しいことによ」

 「そ、それは――・・」

 思わぬ靖男の言葉に聖は何も言えれない、言おうとしてもそれなりの言葉が見つからないのだ。

 「今はまだ気がつかないのかもしれない・・だけどお前ならそのうち気付くはすさ」

 「う、うるせぇ!!! こんなことで俺に恩を作ったと思うなよ!!! てめぇみたいなポンコツ教師は絶対に俺は認めねぇからな!!!!」

 「やれやれ・・んじゃ、俺達も帰るぞ。眠ってる月島と木村も一緒にな」

 「話を逸らすな!!!」

 そのまま眠り続けている狼子と辰哉を抱えて靖男は聖たちを送ったのであった。

 翌日、校長室

 「やってくれたわね、骨皮先生」

 「アハハハ・・」

 「笑うごとじゃないわよ!!! 結果オーライだったけどお陰で九条高校に謝る羽目になったじゃないの!!!!」

 あれから丈志を通じて事の詳細は校長である霞の耳に入り、霞は朝から九条高校に出向いて校長に謝りに行くわとてんてこ舞い。ようやく自体が落ち着かせたところで霞は騒ぎの張本人である靖男を呼び出しているのだが・・本人がこんなのだから全く始末に終えない。

 「全くもう・・あなたって人は」

 「まぁ、相良もこれで落ち着くんですし別に構わんでしょ? 俺達よりも九条高校が大変だと思いますけど」

 本状は犯行を全て自白しており、正式な逮捕に踏み切られるのも時間の問題だろう。本状の逮捕によって当の九条高校は朝から大慌てで校長も霞の謝罪を聞き入れた後はすぐさまどこかへと消えてしまったのだ。

 「なに悠長なこと言ってるのよ、おかげで私はあなたの分まで理事長に散々絞られたのよ!!! ・・ま、でも行動については褒めましょう」

 (ロリっ娘から褒められるとは・・駄菓子屋のお菓子でも奢ってくれるのか、それだけは勘弁してくれ)

 「・・聞こえているわよ、それに生憎駄菓子は潤君の小さい頃で充分堪能したの。先生には私からいいものをあげるわ♪」

 「ま、まさか・・特別手当ですか!!!」

 「今まで先生が溜めていた書類よ☆ 月日は延ばしてもらってるからこの場で私と一緒に書こうね~♪」

 「い、嫌だァァァ!!!!!!!」

 哀れ一番の功労者である靖男の叫びが今日も白羽根学園に響き渡るのであった。


fin

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最終更新:2012年06月24日 19:47
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