『Dark Purple』(2)



    「どうなってしまうのか!! ・・・じゃねぇよ!!!!! 何なんだここは!? これが俺達に紹介するバイトかッ!!!」

    「それに高校生がこんな仕事してたらこの店は勿論のこと私たちの進路までお先真っ暗だよ!!!!!!」

    2人の言う事は尤も・・とうよりも当然の疑問なのでとてもではないが納得が出来ない、高校生である2人がこのような店で働いているとなれば大問題中の大問題なのは目を見ても明らかなのでいくら相手が京香であろうとも果敢に立ち向かう。

    「教頭先生!! 前からおかしい人だとは思ってましたけど今回ばかりは常軌を逸してます!!!!」

    「俺達はバイトを紹介してもらえるって聞いて着いてきたのに、これじゃまるで未来をドブに捨ててくださいって言ってるようなもんじゃねぇか!!!!!!」

    「・・黙れこのクソガキィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! ・・とりあえず質問には答えてやる、高校生だったら歳なんて誤魔化せばいいんだ!!! それに俺はいたって大真面目だ!!!!!」

    あまりの突飛な京香の勢いに2人は完全に呑まれてしまう、それだけ京香には説得力以上に周囲を納得させてしまうような力があったのだ。

    「よく考えてみろ、キャバならいくらでも都合は利くし給料もちゃっちいバイトなんか目じゃねぇ。それに送迎もちゃんと完備しているから生活リズムを崩すことはない」

    「うっ・・」

    「負けちゃダメだよ、陽太郎! ・・私達は高校生です、生活リズムよりも平日に深夜が帰りなんてしたら怪しまれますし何よりも未成年ですのでお酒なんて飲めません!!」

    「そこら辺はちゃんと考えてある。事前にお前達の親には俺の講習という形で許可はもらってあるし、それに酒はアルコール風味のノンアルコールカクテルだ、だから問題はない」

    この日のために京香は綿密に計画をこと細かく打ち立てて全てを達成してある、後はこの2人の同意だけが条件なのだが・・京香は既に武力を手にしておりそれを2人に突きつける。

    「それに今のお前達にこいつを今すぐ払えるかな?」

    「「こ、これは―――!!!!!!!」」

    京香が2人に突きつけたのは先程の服屋で購入したドレスと靴の請求書、そのとんでもない金額に2人の目は丸くなる。

    「ドレスと靴に締めて税込みで2,235,481円だ。これを今すぐ俺に払うって言うなら勘弁してやっても良いぜ」

    「いちじゅうやくせんまん・・・」

    「そ、そんな!! 奢ってくれるって言ってたじゃないですかッ!?」

    「俺は奢るとは一言も言ってないぜ。お前らが勝手に解釈しただけだ」

    確かに京香は奢るとは一言も言っておらず、このドレスと靴の代金も普通に出したなので全ては京香の掌で踊らされたことに後悔する2りであるが、彼女についてきてしまった自分達に非があると思いたいもののまさかバイトでキャバクラを紹介されるとは誰が想像しただろうか?

    「んで、今のお前達に払えるのか?」

    「「は、払えません・・」」

    「よし、これで決まりだな。・・店長、説明のほうをお願いします」

    2人は抗議の声を上げようとするも金額の桁と京香の威圧感が合わさって精神が完全に折れてしまってぐうの音も出ない、既に2人の心は京香に敗北を認めてしまっているのでどうすることもできない。

    「杏は相変わらず教師になってもエグイね・・さて、気を取り直して説明に入らせてもらうよ。うちの店は女体化をメインにやっているんだ、みたとろ佐方さんは文句なく合格だけど宮守さんは普通の女の子だよね」

    「え、ええ・・」

    「大丈夫です。この私が徹底的に仕込みます」

    「わかった。それじゃ次は給料の説明に入るね、うちは完全歩合制で~・・」

    宮永から給料や店に関しての重要な説明が始まるが、心が折れた2人はショックで唖然となりながら華やかなサウンドと共に聞き流すことしか出来なかった。

    「以上で説明は終了だけど、何か質問は?」

    「「ありません・・」」

    「店長、彼女達に関しては私が改めて教えますので・・話しておいた在籍の件は?」

    「もちろん取ってあるに決まってるじゃん。この店の歴代最強NO1で伝説のキャバ嬢 杏の籍を捨てるバカはいないからね。ところで杏にはちょっと悪いんだけど他にも面接希望者がこっちにきているから彼女達と一緒に付き合ってもらえない?」

    「わかりました、彼女達と一緒に待機します」

    そんな会話が繰り広げられている中で店員に連れ添われて1人の女性が部屋へと入ってくる、由宇奈や陽痲とは比べ物にならないぐらいの女性らしい豊満なスタイルに物静かでクールな印象を持たせられるこの女性であるが、その人物に視線を向けた由宇奈であったが彼女の中でその女性は自身の記憶の中である人物に大変酷似していた。

    女性は宮永に履歴書を手渡すとか細い声で自己紹介を行うが、由宇奈は驚愕も含めた突拍子もない声を突然荒げる。

    「・・どうも、茅葺 さy」

    「りゅ・・龍之介君――――!!!!!!!!!」

    「何だと!!! こいつが茅葺だってぇぇぇぇぇ!!!!!!」

    (うはwwwwwwwwwwテラヤバスwwwwwwwwwwwwww)

    由宇奈の叫びに呼応したかのように陽痲も同じように叫び声を上がる、しかし当の本人はこんな状況で内心とはいえこんなこと言えるのは大したものである。

    事の起こりは昼手前に遡る・・この日、龍之介は学校が休みだったのでホスト業でたまった鬱憤を取るためにも久々に惰眠を貪りながら充分な睡眠を取っており久々の快適な目覚めが来ると思ってた、そして目が覚めてまず気がついたの身体の異変・・自分と長い付き合いであるナニがなくなており、セミロングで整えてあった髪は一気に長くなり胸は前に来た客並の膨らみがあるのでスタイルからすれば上等の部類に入るだろう、そんな外面では無口で通している彼が上げた第一声はこの一言。

    「ちょwwww女ww体ww化wwしwwてwwるwwwwwww」

    哀れかな内弁慶の性、こんな彼がまずすることといえば役所に行くことではなく・・パソコンを起動して恒例のチャットから始まる。

    ryu:やべぇwwwwwwwwwww

    kimi:どした?

    ryu:ガチで女体化したwwwwwwwwww

    kimi:ちょwwwwwww早くうp汁wwwwwwwwwwww男時代の写真も比較したいから同時な

    ryu:待て待てwwww現在の姿だけうpしてやるwwwwwww

    「男の写真なんて晒されても困るしな。職業がばれてしまったらやばいだろjk?」

    龍之介はそのまま今の自分の姿を顔を隠しで撮影すると写真をチャットに送信する。

    kimi:うはwwwwwwwwテラ美人wwwwwwwwwww

    ryu:恥ずかしいからやめろwwwwwwここから質問なんだが、ネタ抜きでこれからどうするべき?

    kimi:普通なら役所じゃね? てか女体化専用スレがあったはずだから対処法が書いてあるよ。url乗せるぜ~

    ryu:㌧

    記載されたあるスレッドを開いてみるとそこには女体化した際の手続きやらそれに伴う対処法やらよくある事例などが事細かに記されており、龍之介のように両親が既に死別して一人暮らしをしているケースの場合も細かいところまで記されていたのでかなり参考になる。

    kimi:どうだった?

    ryu:どっちにしろ役所に行かなきゃ行けないみたいだ。てなわけで行ってくる

    kimi:把握、今日は休みなのに散々だなwww

    ryu:仕事も休みなのに泣けるわ。んじゃなwwww

    kimi:いtr

    そのまま龍之介は市役所へ向かうために服を着替えるが今まで男として生きてきた彼に女性用の下着などもってはいないので少しばかり頭を悩ませるが腐ってもホストで培ったファッションセンスは健在なのでこれまでの服装を着るとたくみに決めてそのまま手続きのために役所へと向かう、今は法律も大分改正されて役所もコンビニのように年中無休で24時間職員が常住しているので非常に便利な時代になったものだ。役所に入ると女体化の部署は常に多かったのでそのまま順番待ちのカードを受け取るといつものように携帯を取り出すが今回は仕事用の携帯をいじりながら客への返信を繰り返しながら役所で自身の順番を待つ。

    (うはwwwwさすが俺中々のファッションセンスだわwwwwwww)

    “また次の出勤時間はいつかな? 今度は流星君のために高いお酒入れちゃうよ”

    (バカスwwwwwんな金あるなら彼氏作れよwwwww)

    “お待ちしています、店でしか会えないけど着てくれれば僕は待ってるよ”

    心中とは真逆のメールを送りながらこうして龍之介は自分の固定客を上手く維持する、これもホストの店長から教わった技で他のホストが行っているアフターなどはしなくてもこんな風に適当に機嫌を取ってやれば維持など容易い、それに自分はネット弁慶故に外ではあまり喋らないのでこういったメールだったらギャップも狙えて女性心をくすぐれるのだ。
    しかし今の自分はもう女体化してしまった身・・もうホストで働くことも不可能だし年齢も誤魔化して働いている上に周囲からのやっかみも買っているのでこれを機に脱却するのがベストだろう。

    (次の仕事は何にするか・・でもエロゲーや家賃も払いたいから金が欲しい。女体化したんだし別のところで水商売でもするかwwwwww)

    「番号札45番でお待ちの方、受付3番にお越しください」

    「・・はい」

    そのまま龍之介は受付へと移動すると役所の人間から提示された書類を書き進めて持参した印鑑などを要所要所に推し進めていく、向こうもお役所仕事なのでこういった事もスムーズに運ばせる。

    「書類はこれで大丈夫です。身分の証明できるものはお持ちではありませんか?」

    「・・これで大丈夫でしょうか?」

    「はい、特殊救援カードですね。戸籍と照らし合わせますので少々お待ちください」

    龍之介が職員に差し出したのは特殊救援カード、彼のように両親が死別して1人で生きていく事を希望している人間には国が身分証明として発行してくれるカードである。龍之介は小学校4年生の時に両親が交通事故でなくなって以来、一人で生きていくことを希望したため国の特殊支援システムで中学校卒業までは手厚い保護と身分所であるこのカードを支給されながら無償で国からの保証金と両親の遺産で黒羽根学園の学費を一括で払って生活してきたのだ。

    「お待たせしました、こちらの書類にカードの番号をお書きになった上で新しいお名前をお書きください。それと女体化したら新たにカードを再発行しなければならないので終わりましたらお手数ですが2階の福祉課までお願いします」

    (忘れてたwwwwwカードの再発行って時間掛かるじゃねぇかよwwwwwwwwwwww)

    「戸籍は3日で書き換えられます。茅葺さんは特殊プログラム対象者ですので書類が書き終わりましたら学校などに提出が必要な書類を一式お渡しいたします」

    女体化してからの役所の手続きは実質比較的速く行われるのだが、龍之介のような人間の場合となると少し時間が掛かるのだ。それでも1日足らずで殆どの手続きを終わらせれるのはかなりありがたいとは思うのだが、龍之介にしてみればアニメの視聴やら休日に色々予定をしていたのが殆ど潰れてしまうのが悲しいこところである。

    「では、まずこちらの書類から・・」

    (漫画やゲーム買いたかったのに下着でパァになるとかワロエナイ・・)

    そのまま悲惨な気持ちを胸に秘めて龍之介は書類を書き続ける、そのまま流れ作業で全ての手続きと書類が終わると役所から書類を受け取った龍之介はその足で下着を買うためにランジェリーショップへと向かう、服などは何とか流用は出来そうだが下着だけはどうしようもないので店員にサイズを測ってもらいながら適当に数着購入する。
    今までは2ちゃんとかのネタで盛り上がってきた代物であるがいざ自分が女体化して付けてみると変な感じだったがいずれは慣れてくるのだろう、更に龍之介は今度は仕事を探すためにあらゆる求人雑誌を手に取るが・・やはり女体化する前がホストであったのでここは同じように水商売でやったほうが打倒だろう。夜の世界の情報網は怖いものの携帯やネットの接続費に住んでいるマンションの家賃や生活費諸々を考えたら普通のバイトなど到底出来やしない。

    (年齢偽ってやってるんだから女体化したらタダじゃ済まないだろjk)

    そして掛かってくる仕事用の携帯を全無視しながら龍之介は身も心も変わってこのクラブ castleへとやってきたのだ。

    さて場は元に戻って面接室、せっかく年齢を偽って勤務しようと思った龍之介にしてみれば由宇奈と陽痲の存在によって自分の本当の年齢が割れてしまったので絶望視する龍之介は帰ろうとするのだが、1人冷静な京香が無理矢理引き止める。

    「待て、2年A組 茅葺 龍之介!! ・・お前、こういった店に入ったのは1度や2度ではないだろ。女体化する前は何してた?」

    「・・」

    「教頭命令だ、話さないと退学にすんぞ」

    流石の龍之介も京香には敵わないようで元来の無表情が汗で強張ってしまい、折角の綺麗な顔が台無しである。

    「(やっぱり教頭先生は怖いお・・)ほ、ホストを少々・・」

    「なるほどな、道理であいつ等特有の仕草が見え隠れするはずだ。・・店長、彼女も私が面倒をみますのでよろしいでしょうか?」

    「そうだね。女体化してこういった仕事に手馴れてるなら問題ないよ」

    宮永とすれば由宇奈と陽痲を捕まる覚悟で採用するつもりだったのでこの際1人ぐらい増えても問題はない、それに前の職場がホストだったならば教える手間も省けるし即戦力になれるので万々歳といったところである。
    しかしこの事態に一番納得がいかないのは龍之介に告白したばかりの由宇奈、彼が昨日までホストをしていたことにも驚きであるがそれよりもようやく陽痲の支えで勇気を出して彼に告白をしたのに女体化してしまうとは不幸以外では片付けられない。

    「そ、そんな・・龍之介君が女体化してしまうなんて!!!! あの時の告白は何だったのよッ―――!!!!」

    「由宇奈、しっかりしろ!! 茅葺が童貞だったのは不幸としかいえない・・」

    (え? 俺が悪者wwwwwwwてか、佐方ってさりげにひでぇwwwwwwwwwww)

    「う、うん・・」

    突然のキャバクラでの勤務の上に勇気を出して告白した人物の女体化・・この2つの不幸に直面した由宇奈に不憫に思った陽痲は精一杯慰めながら立ち直らせていく、自分も女体化して由宇奈への恋心を粉砕したのだがこればかりはあまりにも不幸すぎる。

    「おい、茅葺!! お前も由宇奈に何か言ったらどうなんだッ!!」

    「・・ご、ごめん」

    「いいよ、陽太郎。龍之介君だって好きで女体化したわけじゃないんだからね」

    こんな寸隙が繰り広げられる中で改めて宮永は貰った履歴書を見ながら龍之介の面接を再開させる。

    「えっと・・茅葺 莢(かやぶき さや)さんだね、一応確認するけど役所で手続きは済ませてるよね? あれがしないと流石にまずいから」

    「はい、カードです。・・後は衣装も貸し出して欲しいんですけど」

    龍之介改め莢は特殊支援カードを宮永に提示するとちゃんとした身分も証明する、宮永にしてみれば年齢は誤魔化せるものの女体化を売りにしている店なのでちゃんと手続きをしているかが心配なのだ。

    「構わないよ。ただレンタル料として月8000円差し引かせてもらうね、無断で持ち出したりしたら罰金だから注意するように」

    「わかりました」

    「後、さっきから気になってるんだけど・・それはさっきから鳴り響いてるのは仕事用の携帯だよね。それに勤めていたホストクラブには話は通したのかな、とりあえず店名教えて」

    「・・クラブ ダルシャンでNO3でした」

    「ほぉ・・中々あそこは上等な店だからな」

    莢から改めて店名を聞いた京香は納得の笑みを浮かべるが、宮永の顔は見る見るうちに悲壮感漂うものとなる。

    「ゲゲゲッ、あそこか・・店は良いんだけど上同士がちょっとな」

    「・・・」

    宮永が言っている意味を莢はすぐに理解する、こういった店の大元は系列元・・つまりはそういった筋のお方が出てくるのでかなり厄介な話となる、宮永もこういった店の店長とはいえそういう筋の人間とはかなり接してはいるが莢が勤めていたクラブダルシャンの大元は非常に性質が悪いことで有名なのだ。

    「何の話だろうね?」

    「わからん、俺達には知らない世界があるんだろ」

    ようやく落ち着きを取り戻した由宇奈は陽痲と一緒に店から支給されたジュースを飲みながら宮永の様子を観察する。これから2人はこの店で羽ばたく夜の蝶となるわけだが、高校生である2人には京香への借金を返すためにはこの店で働くしか選択肢はないので覚悟を決めるしかない。

    「ああ~、ちょっとこれは参ったな。NO3となったら店としても黙ってはないだろうし、こりゃ上に知られたらやばいな」

    「・・今すぐ話をつけてきます」

    「その必要はない。・・携帯を貸せ、俺が直々に話をつけてやる」

    そのまま京香はタバコを吸いながら莢から携帯を取り上げるとクラブ ダルシャンへと繋げるとすぐにそこの店長が慌てた口調で電話に出る。

    “流星! 悪いんだけど出勤してくれない? 店がかなり忙しくなったしお前を指名したいってお客さんが多くてね”

    「・・久しぶりだな、悪いが流星はたった今から一身上の都合でやめることになったんだ」

    “ハァ? てめぇ誰だ!! ・・って京香先輩ィィィ!!!!!!”

    ダルシャンの店長は京香の声を聞いたとたんに萎縮した声で震え上がる、どうやら京香はこの店長とは先輩後輩の間柄のようで気を良くした京香は莢の移転に一気に話を進めるが、ダルシャンの店長も負けてはいない。

    “なに言ってんですか!! いくら先輩でも流星は店の稼ぎ頭・・そう簡単には譲れません!!”

    「お前の店の欠持ちって雷鳴組だろ? あそこの組長は俺が現役時代の客だからな、下手に話をこじれさすとお前のクビどころか指が飛ぶぜ?」

    “いや、ですけど・・”

    「てめぇじゃ話にならねぇ!!! どうせ店にいるんだから上と代われぇぇぇぇぇ!!!!!」

    “ひぃぃぃぃ!! お、お待ちくださいぃぃぃぃぃぃ”

    そのまま携帯からは暫くの保留音が鳴り続けると数分してから相手はドスの利いたその筋の人へと代わると京香も今までダルシャンの店長を圧倒していた声から長年培った猫なで声に変わると相手も上機嫌になる。

    「あっ、杏です! お久しぶりですぅ~」

    “おおっ、杏じゃないか!! 久しぶりだな。どうした?”

    「実は、そちらの店に在籍している流星君ですけど・・ちょっと店をやめることになったんで何とかならないですかぁ~?」

    “任せろ任せろ、俺が責任者だからすぐに籍は消してやる。完全に現役は引退してもたまにお前が店を手伝ってるって聞いてるんだけど中々これなくてな~、今度来たときはドンペリいれるぜ!!!”

    「お待ちしております、それではお願いします~」

    そのまま京香は携帯を切ると莢に返却する、京香が直接上の人間と話をつけたのでこれで店の移籍も滞りなく行われるだろう。


    「よし、これで終わったぞ。あそこの組長は律儀だからちゃんと籍は消してくれる」

    (うはwwwwwwwやっぱりこの教頭はすげぇwwwwwwwwwwww)

    「店長、この3人はこれから私が面倒見ますのでよろしくお願いします」

    「杏にはまた助けられたね、この3人については一任するよ」

    正式に店長である宮永の許可ももらえたところで京香は早速3人の着替えをさせる前に彼女達にはとあることを決めさせる。

    「さて、正式にこの店に勤めることになった次第だが・・店で働くには源氏名を決めんとな。名刺はそのときでいいだろう」

    「げ、源氏名ですか?」

    「遂にこの時がきたって訳か・・って茅葺よ、源氏名って何だ?」

    「源氏名とは店で働く時の名前・・中には本名で働いている奴もいるけど大概は源氏名だ」

    元ホストだけあって流石に莢はこういったことには手馴れているので陽痲の疑問にすかさず答える、そして由宇奈はすかさず自分の源氏名を京香に提示する。

    「それじゃ・・私は由宇奈だからゆうで!!」

    「ゴメンね、ゆうって名前の娘はもういるから」

    「ううっ、一生懸命考えたのに・・」

    折角考えた名前を全否定された由宇奈は落ち込んでしまう、クラブ castleでは同じ源氏名は扱わない決まりなのでこればっかりは仕方がないのだ。

    「お前らの場合は本名で良いだろ。名前もキャバ嬢向きだしな」

    「ええええ!!!!! 陽太郎を陽痲って呼ぶのはなぁ・・」

    「それは賛成だ!! 俺とすればP.N以外で名前が2つあるのはまどろっこしいからそれで賛成だ」

    「(うはwwwwww安直すぎでワロタwwwwwwwww)・・」

    「決まりだな。んじゃ店で働く以上は俺の事は店では杏で呼ぶように! 間違えるたびにテストの点数を減額させるから覚悟しとけよ」

    こうして源氏名も決まったところで3人は京香の指導の下、この夜の街へと舞い込むのであった。

    用意が良いのかはたまた律儀なだけなのか・・由宇奈と陽痲に宛がわれた更衣室には京香に買ってもらったドレスと靴が綺麗に飾られており、これが現実なんだと嫌でも認識させられる。そのまま2人は渋々ドレスを1着えらんで着替えながら靴も履くのだが足のサイズも教えていないのにピッタリなのは嫌がらせ以外何者でもない、そのまま着替えた由宇奈と陽痲は京香の元へと向かおうとするが先に着替えて準備を済ませてた莢に止められる。

    「・・2人とも、髪と化粧を」

    「そんなこともするんだ。陽太郎、できる?」

    「だから陽痲だ! お前店の中でその名前呼んだらテストが減額されるんだぞ」

    「そうだった・・気をつけないと」

    この中で生まれたときから女をやっている由宇奈は化粧など慣れた手つきでこなしていくのだが、陽痲は未だに慣れていないようで所々間違えてしまう。

    「あり? 中々上手く出来ないもんだな」

    「・・貸して、化粧には順序がある。やってあげるから鏡でよく見てて」

    そのまま莢は手馴れた手つきで陽痲に抜群のメイクを施していくが同じ女体化した人間とては陽痲が圧倒的に長いはずなのに異様に詳しい莢が変に思えてくる。

    「茅葺ってこういったことには手馴れてるんだな」

    「ホストのときにもよくやっていたし、前に客から教えてもらったからやり方は覚えている」

    「おいおい、男でも化粧するのかよ!!」

    そのまま陽痲は鏡越しではあるものの化粧を施されている自分の姿に見惚れてしまいそうになるが、これからは覚えておかなきゃいけないので莢の説明を聞きながら必死にやり方を見つめている。

    (うはwwwwww佐方ってやっぱり貧乳wwwwwwwwテラモエスwwww暇潰しにネットで化粧のしかたググってよかったわwwwwwwwwwwww)

    「おい、何か変な声が聞こえて来るんだが・・」

    「・・気のせい」

    一方化粧を終えた由宇奈は今度は髪形を整え始める、それにしてもメイク室の品数の多さには圧巻させられてしまうので女としては感心させられてしまう。

    「やっぱりこういったところってすごいんだなぁ・・よしっ、今日はこの髪型にしよう」

    そのまま由宇奈は櫛を取るといつもお気に入りの髪型に整え始める、そのまま鏡越しで陽痲を手伝っている莢の様子を見ていると僅かながら変な気持ちになってしまう。いくら女体化したとはいえ自分にとっては代告白をしたのだ、龍之介が莢となって女体化したとはいっても昨日の返事は聞かせて欲しい、結果がどうであれ自分に対する気持ちをぶつけてもらわなければ納得がいかない。

    (男のときにやっておけばよかった・・orz)

    「そういやよ、茅葺・・お前由宇奈にちゃんと気持ち伝えてやれよ。あいつは自分の気持ちに正直に告白したんだ、ちゃんと応えてやらないと人間として失格だぞ」

    「・・・わかってる、日に目処がついたら答えるつもりだ」

    「頼むぜ」

    莢も由宇奈の気持ちに関してはどう答えていいのかサッパリだったが、いざ女体化してみると申し訳なさがこみ上げる。あれから祈・・kimiとの会話を終えて自分なりに考えてみたが答えは一向にではしない、しかしこうやって陽痲と話すことでいかに由宇奈が自分に対して本気で告白していたのかと嫌でも思い知らされる。

    「彼女には・・なんて返したほうが良いかな?」

    「んなもん知るか。・・ま、親父の小説だったら好きか嫌いであれキッパリとしてたぜ」

    (キッパリって・・童貞にはハードルが高い。だけど宮守になにかしらやらないとダメな気がする)

    そのまま莢は自分の気持ちを確かめるとこの件を保留にして陽痲の化粧を終わらせる、鮮やかな手つきによって変わった陽痲の姿はとても綺麗なものだった。
    そしてそれと同じぐらいに由宇奈も髪形を整え終えると化粧を終えた陽痲の姿に思わず見惚れてしまう。

    「うわぁ・・陽太郎が綺麗になってる、さすが龍之介君」

    「さすが茅葺だぜ、自分でも驚いてる」

    (うはwwww褒められたwwwwwwこれが男のときだったら良かったのにorz)

    準備を終えた3人は面接場所へと戻ってくるとそこにはいち早く準備を終えた京香が待ち受けていた。これから4人はこのクラブで勤務をしていくわけだが、経験者である京香と莢はともかくとして由宇奈と陽痲はずぶの素人・・ある程度教育させていかないとこのままでは使い物にはならない。

    「遅い!! これからお前達は勤務をしていくわけだが、由宇奈と陽痲は何も知らない状態だ。まずは挨拶をやってみろ」

    「「いらっしゃいませ~」」

    「ダメダメだ!! 覇気が足りない、もう一回!!」

    それから由宇奈と陽痲は京香による徹底的な指導を受ける、2人も借金を返すことに必死なので懸命に覚えながら物の数分で挨拶を始めとして酒の作り方や基本的な立ち振る舞いなどを物の数分で吸収していく、こればかりは京香の指導が良いのかそれとも2人の懸命な努力によるものかといえば間違いなく前者であろう、莢もそんな2人の様子を黙って見守る。

    「よし、今教えた事は基本中の基本だからしっかりと身体に叩き込んでおけ。それから陽痲はともかくとして由宇奈は女体化していないんだ、そこらへんはしっかりやれよ」

    「わかりました!! 教t・・じゃなくて杏さん!!!」

    何とか言葉を引っ込めながら由宇奈は店での分別を測ろうとする、何せテストの点数が掛かっているのでこればかりは覚えておかないと成績に小うるさい両親に何を言われるかわかったもんじゃない。

    「あの杏さん、莢は何もしなくて良いんですか? てか他の人たちへの自己紹介は?」

    「それは既に店長にしてもらっているから大丈夫だ、それに莢には今更教えることなどない。んじゃ次は実地訓練に入るが・・ちょうどよくVIPルームに3人客が入ったからお前達は俺と一緒にそこに行ってもらう、お前らの歳は20歳って言っておけ」

    京香の教育が終わって遂に本格的な業務が始まる、由宇奈と陽痲はこの初陣を落とすまいとそれぞれ自己啓発していくのだが、それでも由宇奈からは緊張が声となって出る。

    「つ、遂に実践か・・緊張する」

    「・・大丈夫、俺と杏さんである程度カバーする」

    「ありがとう、龍・・じゃなくて莢ちゃん」

    (褒wめwらwれwたwww俺もトーク苦手だけど最低限やるかwwwwwwwwww)

    莢に励まされて落ち着きを取り戻す由宇奈であるが、そもそもホストをしていた時はその無口さが売りだったのに対して女がメインのキャバクラでそれが通じるとは思えない、由宇奈を励ますとはいえ少しばかりとんでもない発言をした莢は少しばかり頭を悩ませる。

    「んじゃいくぞ。ここでお前らの未来が決まるからな」

    「「うおおおおお!!!!!」」

    「・・」

    そのまま3人は京香に引き連れながら初陣へと向かうのであった。

    VIPルーム

    「おいおい、骨皮・・いきなり大丈夫か?」

    「そうだぞ。奥さんに黙って店を休んでまできたんだから・・」

    VIPルームの席を座っていたのは例の居酒屋の店主に警察官の吉田 丈志にそして白羽根学園 教師の問題教師である骨皮 靖男・・どうやらこの3人は靖男の誘いで店にやってきたようだが、いきなりVIPルームを頼み込んだ靖男に2人は戦々恐々とする。

    「何だよ、お前らだって話したら喜んで着いて来たくせに・・大丈夫だ、この店は知り合いがいるし何度か通い慣れてるから任せておけ」

    「お前のその言葉に何度騙されたか・・なぁ、吉田?」

    「ああ、こいつが暴走したら何とか抑えるぞ」

    2人は靖男がよからぬ方向へと暴走しないように祈りながら黙ってタバコを吸いながら時間を潰していくとようやく京香と3人が靖男がキープしている芋焼酎と飲み放題のブランデーを持って現れるとそれぞれ間にある隙間に座り込んで京香の仕切りで始まる。

    「おまたせしました~、杏です。3人とも新人ですのでお願いします」

    「由宇奈です」

    「陽痲だ」

    「・・莢です。お酒お造りします」

    「「おおっ~!!!」」

    早速、莢に合わせて由宇奈もブランデーを取り出すと京香から教わったように酒を造り始める。京香を筆頭に美人揃いの揃った店主と丈志は興奮しながらお酒を受け取る。

    「骨皮、俺はお前を久々に見直したよ!!」

    「まさかこんな可愛い娘がいる店を知ってるとは!!」

    「だろ、俺たちもなんだから皆も何か飲めよ」

    「「「「いただきます~」」」」

    靖男の号令の下、4人もそれぞれ席を立ちながら飲み物を取ってくる、由宇奈と陽痲はノンアルコールのカクテルに莢はホスト時代に飲みなれているシャンパンで京香は十八番であるハイボールをそれぞれ自分の机に置くとこの飲みの発案者である靖男が乾杯の号令を上げる。

    「そんじゃ、久々の友人の再会と可愛い娘の笑顔に祝して・・乾杯~!!!」

    「「「「「「乾杯ィ~!!!!!!」」」」」」

    恒例の乾杯を終えるとそれぞれ自分の飲み物を呑みながら強固の抜群の仕切りでトークをしつつ莢のサポートで場は盛り上がり続ける、まだあどけない由宇奈と陽痲はそれぞれ何とか話題を模索しながら全体的なトークから個別のトークへと移行していく、ちなみに靖男には京香と由宇奈が付いており丈志には陽痲で店主には莢とそれぞれ付きながら個別トークを進めるが、彼らは京香以外の人間が未成年であることがばれてしまえば間違いなく豚箱行きである。

    「へぇ~、陽痲ちゃんは20歳か。女体化して何か変わったりした?」

    「そうですね、今までの連れがちょっと変な感じに見えましたよww」

    「えっと莢ちゃんは何してんの? 俺はこうみえても居酒屋の店主してるんだぜ」

    「・・すごいです」

    莢はこれまでの経験上から陽痲は元々人と喋る事は苦ではないほうなのでそれぞれ独自に会話をつなげながら話を進めていく、その光景に京香は冷静に観察する。

    (佐方はあどけなさが残るが上手い具合に会話してるな、茅葺はホスト時代は無口で通してたみたいだが見た目と的確なサービスで何とかカバーしてる・・こいつ等は問題ないとして、当面はこいつだな)

    「そういえば由宇奈ちゃんは大学に行っているの?」

    「え、ええ・・理系だったんで」

    「そうそう、この娘って化学方面に興味があって色んな実験してるんですけど、資格が必要なのもあって勉強してるんです」

    何とか京香に助けられた由宇奈はガチガチに緊張してしまって会話どころではない、京香も早く陽痲や莢みたいに由宇奈もトークをしてほしいのだがこの様子だと先行きが不安になる。

    (はぁ・・緊張してやがる。こりゃ必要ならば再教育の必要ありだが・・相手がこいつなら大丈夫だろ)

    「靖男さんは教員しているみたいですけど?」

    「あ~、クソガキの面倒見ながら何とかやってるけど部下は使えないわ、校長がもう口うるさくってやんなっちゃうのよ。俺はしっかりやってるのにね」

    明らかに事実を大幅に脚色している靖男であるが、それでもお得意の口八丁で由宇奈を中心にトークを盛り上げる。

    「でも頑張ってるならいつかは報われますよ、靖男さんは先生なんですし」

    「良いこと言ってくれるね、もう1時間延長した上にこの場にいる全員にもうボトル奢っちゃう。お前らも良いよな?」

    「「任せた!!!」」

    「あ、ありがとうございます!! すみません~、1時間の延長と私たちの飲み物をボトルでお願いします」

    気を良くした靖男はとんでもない宣言すると、そのまま由宇奈はボーイを呼ぶと自分達の酒のボトルを取り寄せる。しかしそのお陰で由宇奈も緊張が解けたのか今度は自分から靖男に会話を投げかける、その様子に京香はそれぞれの客の相手をしながらようやく安堵する。

    (やるじゃねぇか、これでこいつも何とかなったな)

    「それで靖男さんはどこの学校の教師なんですか?」

    「おぅ、白羽根学園だ。巷では名門校って通ってるけど曲者揃いでな~、バカ2人は下らないことでいつも喧嘩して止めてるのよ」

    「へ、へぇ~」

    白羽根という言葉に由宇奈は思わず京香を見てしまうが、普段通りにしてくれるのでとりあえず安堵するがここで京香は靖男に話しかけ始める。

    「白羽根学園ですか~、あそこって名門ですよね。でも校長が子供みたいでおバカとか」

    「そうそう、よく知ってるじゃねぇかよ。それで由宇奈ちゃんはどこの高校の出身?」

    「どこでしょうか~?」

    あえてはぐらかす由宇奈、これはさっき聞いていた陽痲の会話の真似であるのだが・・ここで靖男はまたとんでもない発言をしてしまう。

    「わかった、黒羽根高だ!!」

    「正解です!! よく分かりましたね~」

    「当たり前だ! それにあそこの教頭も負けず劣らず不良教師でよ、実はここだけの話であの教頭とは従姉なんだけど参っちゃうよね」

    「そ、そうなんですか・・」

    今度は恐る恐る当事者である京香の顔を見る由宇奈であるが、いつもの営業スマイルに青筋が見えたので慌てて靖男の方角を振りかえると慌てて別の話題を提供する。

    「で、ですけど!! 在学中に女体化してると得なんですよ。男子女子の制服きれますから」

    「そうなんだ。だけどあそこは制服だけが評判だからな、でも高校のときはそんなもんだよな」

    (チッ、てめぇにだけは言われたかねぇよ。ポンコツ教師がッ!!!)

    徐々に不機嫌になっていく京香であるが陽痲と莢はそんな事など気にせずに個別でじゃんじゃんトークを盛り上げる。

    「いや、莢ちゃんは気が利くね」

    「(仕事に決まってるだろバーローwwwwwww)・・」

    「しかも無口なところがドストライク!! 俺こういった娘の心開いていくの好きなんだわ~」

    (エロゲじゃねぇんだからwwwwwwwwww)

    そのまま酒が入ったのか店主は黙々と会話をしながらあらゆるトークで莢を落としてみようと試みる。

    「そうえば名刺貰ってなかったね」

    「・・すみません、今は貰ってないんですよ。でもお客さんのお店には行きたいです」

    「マジで!! えっとね、俺の店はここにあって・・来てくれたら一杯サービスするよ!!! でも名刺貰うまでは通っちゃう!!」

    莢もホストの時と勝手が違ったようで普段よりも多少の会話を加えながら話を弾ませていく、そして陽痲もそんな莢の様子を見ながら感心する。

    (茅葺はすげぇな、俺も見習わんと)

    「陽痲ちゃんは趣味は何してるの? 教えてくれないと逮捕しちゃうぞ」

    多少苦笑しながら陽痲も丈志のグラスを見ながら酒を造っていくと自分の趣味を話し始める。

    「冗談きついですよ。俺は読書です、テレビで話題の小説読みたいんですけど中々暇がなくって」

    「わかるわかる!! 時間がないと大変だよね、俺も読書が趣味なんだけど最近は白井 栄太郎の噺家探偵シリーズにハマってね~」

    「(自分の母親の書いてる小説出されてもな・・)わかりますよ、推理が斬新で面白いですよね~」

    多少言葉を選びながら陽痲は何とか丈志との会話をつなげていく、こちらも本格的にお酒が入ってきたようで個別に会話を続ける。そして全体のまとめ役である京香も自分の役割をきちんとはなたしながら話題を提供する。

    「そういえば皆さんは友人らしいですけど、どれぐらいの付き合いなんですか?」

    「ああ、こいつ等とは中学までだけどそれからは個別に連絡を取ったんだよな」

    「そうそう、俺は警察官でこいつは居酒屋の店長。そんでこの歴史バカは学校の教師なんだから変なもんだよな」

    「うるせぇ!! これでも努力してここまで来たんだ!!!」

    そのまま一気に芋焼酎を飲み干した靖男は更に暴走度を加速させて残り2人も完全に酒が入ったのか度重なる延長の申し出も次々に承諾していき、更には料理まで頼み始めて場は完全に加速していく・・

    「由宇奈ちゃんと杏ちゃんは~、男時代は何してたの?」

    「えっと・・多少バレーをしてましたよ。体力なくて辞めましたけど」

    「どれも魅力がなかったから帰宅部ですよ」

    「いや~、バレー辞めたのは正解だよ。担任って融通利かないから」

    完全に酔いが回った靖男は自分をかなり脚色しながら由宇奈中心に話を続けていく、すでに芋焼酎もかなりの量まで入っており次のボトルをキープまでしてしまったほどである。
    普通ならここまできたら会計のほうを心配していくのだが全員酒で判断力をかなり鈍らせているので酒を飲み続ける。

    「靖男さん、大丈夫ですか?」

    「由宇奈ちゃんは優しいな~、職場では誰も優しくしてくんねーから身に染みるわ。黒羽根高の時もあの教頭に散々いじめられたんだろ? あいつ昔から頭の螺子が2、3本外れてるからあんなんで・・」

    「へ、へぇ・・」

    ここまで来ると由宇奈も京香の顔がまともに見れない、そして京香は遂に本格的にブチ切れたのか自分の酒のボトルをあろうことか靖男にぶっ掛けてしまう。その京香の行動にその場にいる全員は時が止まってしまって唖然となってしまうが、京香はいつものオーラを出しながら靖男を除く全員をその場で黙らせる。


    「な、何すん・・」

    「おい、目が覚めたか・・ポンコツ&ド低脳ゲーム廃人教師がよォ!!」

    「お前は――ッ!!!!」

    久々の京香のオーラに靖男は身震いしながらも彼も負けてはいない、札付きの悪どもを黙らせたその実力を京香に向けて遺憾なく発揮させる。

    「ハンッ! 黙ってきいてりゃ、ベラベラと・・もう勘弁ならねぇ!!!!!」

    「うるせぇ、この不良教師!!! いくらお前が偉そうにしてもな、この俺には通じるか!!!!!!」

    そのまま2人は周囲をそっちのけで言い争いを始めるが、ここは個室で防音設備の効いているVIPルーム・・哀しきかな、店内では2人の言い争いは聞こえずに由宇奈を挟んで口上戦が勃発する。

    「てめぇはいつもいつも・・てめぇが飲むたびに俺が散々負けてやったのを忘れたかッ!!!」

    「うるせぇ!! こっちだってタダでPC直したり男の紹介してやってるだろうがッ!!!」

    はっきり言えば京香の言い分が強いのだが、靖男も負けじと京香に言い返す。

    「お前は世間では行動力があって秀才だと思われているが、実態は自分の興味を満たすためだろうがッ!!!!」

    「てめぇもさっきから自分のことを色々脚色しやがって・・毎日てめぇのヘマをクソガキに叱られてるだろうがッ!!!!」

    「んだとッ!! そいつに3年間言いくるめられた上に形無しだったてめぇに言われたくねぇんだよ!!!!」

    「うるせぇ!! クソガキに散々こき使われてるてめぇに言われたかねぇ!!!」

    さっきからお互いに霞のことばかり言っているのは変なものである、この言い分を当の本人が聞いていたら間違いなく本格的にブチ切れていただろう。一向に終わらない2人の言い争いに全員は唖然となりながら見守る中で由宇奈は勇気を出して2人を止めようとする。

    「あ、あの・・靖男さんも杏さんも落ち着いてください!!!」

    「由宇奈ちゃん、男には負けられない戦いがあるんだ。大丈夫、こいつのやり口は把握してるからすぐに決着をつける」

    「そうだ、由宇奈が心配しなくてもこいつとの決着はすぐにつけるさ・・ちょっと失礼」

    京香は立ち上がると忽然と個室を後にしようとするが、靖男は既に勝った気でおり早々の勝利宣告を引っさげる。

    「おっ、遂に逃げ出したか!! 俺の勝利だな」

    「慌てんじゃねぇよ。後でてめぇに引導を渡してやる」

    「負け台詞として記憶してやるよ」

    勝負は既に決したと判断した靖男は勝利の咆哮を挙げながら酒を一気に呷り意気揚々と由宇奈に誇らしげに語る。

    「ハハハッ!! これに懲りたら奴も大人しくなるさ、俺って凄いだろ?」

    「え、ええ・・」

    とりあえず由宇奈も飲み物を飲みながら永延と続く靖男の話にとりあえず耳を傾けながら適当に返事はするものの、あの京香がこれぐらいで終わるような人間だとは到底思えないので本気で靖男の未を心配になってしまう。
    周囲もとりあえずは嵐が収まったことを確認するとまた再び温和な談笑が広がる中で京香が舞い戻るのだが靖男は既に勝ち誇っているので余裕たっぷりの表情で京香を見据える。

    「どうした? ようやく頭下げに来たのか、歴史上でもそれが一番の選択だぞ。属国となって生き長らえるからな」

    「もう店は閉店だ、お前にはさっさとこいつを払ってもらおうか」

    「しゃあないな・・おい、これは何だ?」

    「んだよ、貸してみろよ・・骨皮、これはどういうことだ?」

    「どした? 本官に見せてもらおう・・に、269,800円だと!!!!」

    京香が手渡したのは本日の飲み代の請求書なのだが、そのとんでもない金額に野郎3人は酔いが一気に冷めてしまうと改めてその金額の桁に目をぱちくりとさせてしまうが、真っ先に抗議をしたのは言わずもがなこの男。

    「ちょっと待てェェェェ!!! てめぇ、ぼったくったんじゃないだろうな?」

    「んなことするか、VIPで俺たちに飲ませてこれだけの料理を頼んだ挙句に酒をキープして度重なる延長を加えればこれぐらいにはなる。高い酒頼まなかっただけでもマシだな」

    「うわぁ・・」

    「あんだけやったらこうなるのか・・」

    (考えなさ杉wwwwざまぁwwwwwwwww)

    あくまでもこの値段は正規の値段で計算して算出したので決してボッタクリなどはしていない、むしろこれだけ豪遊した割りには結構安く付いたほうだし高級な酒を頼んでいればその値段は倍以上にも膨れ上がっただろう。
    しかし現在の3人してみれば大金であることには代わりないが手持ちを合わせてもとても足りないので醜い男の言い争いが繰り広げられる。

    「おい、骨皮!! お前この金どうするんだよ!!!」

    「知るか!! お前らだって散々延長した挙句に飲んでただろうがッ!!!」

    「しかし元はといえばお前がVIPルームに入り込んだのが発端だろッ!!!!」

    金が絡むと級友の友情は砂塵のものとなる、大の男が3人喧嘩をする姿は見てるだけでも情けなくなってしまう。

    「俺、子供が生まれたらこういったところにいくなって躾けるわ」

    「そうだね・・お金って人を変えるってことがよくわかったよ」

    (うはwwwwwVIPに実況してぇwwwwwwwwww)

    約一名はあらぬ事を考えているが三者三様に深々と彼らの繰り広げる醜い争いを白い目で見つめ続ける、しかし閉店後で早く帰りたい京香はイライラしながら3人に喝を入れる。

    「おい!! さっさと払え!!!」

    「ちょっと待ってもらえるか? おい、俺は手持ちはそんなに持ってないぞ。丈志と骨皮はどうなんだ?」

    「俺も現金しか・・骨皮は?」

    「一応多めに持ってきたけど・・カードもある。って、お前らどうした?」

    「「それだ!!!」」

    その刹那、丈志は靖男を得意の柔術で完全に押さえ込むと店主が靖男の財布からカードを抜き取ると間髪いれずに渡す。その突然の行動に靖男はじたばたと暴れ出すのだが本格的な柔術によって取り押さえられているので流石の靖男も抜けれることが出来ずに虚しく沈黙する。

    「悪いな、金はちゃんと返すから」

    「お前が怒らせたのが悪い」

    「ありがとうございます~、またお待ちしておりますね」

    「お、俺の給料・・」

    そのままカードは無常にも通されて支払いの関係で貰ったばかりの靖男の給料は一気に消し飛ぶこととなる、そのときの靖男はまるで死んだような顔つきだったそうな。余談だが、この一件で生活が苦しくなった靖男は無口な元恋人の家に転がり込むのは当然の流れてあったそうだ。


    閉店後、ボーイ達によって片付けが行われる中で宮永は出勤している女の子達を集めると改めて入ってきた3人の自己紹介を始める。

    「みんな、今日はお疲れさま。紹介するのが遅れたけど今日から働いてもらう由宇奈ちゃんに陽痲ちゃんに莢ちゃんだ、それに彼女達が一人前になるまで杏が復帰することになったからこれを機会に相談するといいよ」

    「「「よろしくお願いしまーす!!」」」

    彼女達の自己紹介が終わるや否や全ての女の子達は京香の元へと殺到していき、注目されるはずの3人はぽかんとしてしまう。

    「杏さん、人気があるんだ・・」

    「そりゃそうだよ。杏はかってこの店でNO1で驚異的な売り上げをたたき上げて業界を轟かせたからね、全盛期の頃は色々なお客さんが杏を指名してくれてこの界隈では伝説的な存在だったんだ。

    今は店が忙しい時にちょっと手伝ってくれる程度だけどね、それに彼女は店の娘たちから結構慕われてて彼女がいた頃は派閥とかもなかったんだ」

    「へー、すげぇんだな」

    (まさかあの伝説のキャバ嬢が教頭だったとはwwwwwwww)

    莢も先輩ホストから伝説のキャバ嬢については噂程度では聞いた事はあった。“かって夜の店に現れたその女はあらゆる客を虜にしながら様々な偉業を成し遂げた伝説のキャバ嬢がいると”まさかそれが京香だとは思わなかったが宮永の証言にこの女の子の慕われ具合を見るとどうやらそれは本物のようだ。

    「んじゃ、由宇奈と陽痲は一緒に帰るぞ。明日も出勤だから実質的な特訓を重ねないとな」

    「「えっ!!」」

    (カワイソスwwww俺は家も近いから帰って積みゲー消化してアニメを見ないとなwwwwwwww)

    「莢もだ。お前は2人と違って経験豊富で完璧だが、まだ温いところがあるからな」

    「(うはwwwwwww俺\(^o^)/)・・」

    莢は正直言って明日は休日なのでゲームやアニメを見て休みたかったのだが、それは叶わぬ夢となったようだ。そして宮永は4人分の給料を手渡すと京香は当然のように懐に収める。

    「どうもありがとうございます」

    「いいよいいよ、今日も稼がせてもらったからね。それじゃ明日も頑張ってちょだい」

    「「は、はい・・」」

    「・・」

    面接時と同じような笑顔で宮永は立ち去るが、本日の給料がしっかりと京香に握られてしまっているので嫌でも同行せぜる得ないので渋々京香の後を着いていくのであった。


    京香・自宅

    店が終わって再び着替えた4人は繁華街に止めてあった車を飛ばして数分したところに京香の住んでいる高級マンションにたどり着く3人、一介の教師が高級車を乗り回している上にこんな最高級のマンションを手に入れられるのは不可能に近いのだが副業で夜の仕事をしていれば維持できるはずだ、仕事が終わって通常通りに戻った由宇奈はすぐに疑問に出して京香に問いかける。

    「あの、教頭先生・・今日乗った車やこういったマンションって高いんですよね?」

    「んあ? 車とこのマンションは昔、客に買ってもらったんだよ。一回寝るとキャッシュで買ってもらえるんだから金持ちって凄いよな」

    「寝たってまさか・・」

    (枕w営w業wktkrwwwwwwwww)

    あっけらかんと喋る京香であるが、この業界での世界を垣間見た由宇奈と陽痲は少し身体を引き締めながら莢と一緒にゆっくりと京香の部屋へと向かう、そして京香の部屋へとたどり着くと気品溢れる高級感漂う内装に3人は圧巻させられる。

    (うはwwwwwwwwwすげぇwwwwwwww)

    「俺、自分の両親の倹約思考に泣けてくるわ」

    「教頭先生って本当に何者?」

    「俺は普通の教員だぞ、それよりも遠慮せずに入れ。とりあえず冷蔵庫の中のもんは勝手に飲んでいいから洗面所に一通り揃ってるからメイクを落として風呂でも入りな、着替えは俺が後で適当にやるから。

    んじゃ俺は先に風呂に行くけど・・入ってきたら殺すからな」

    「「「は、はい・・」」」

    そのまま京香は冷蔵庫からビールを取り出すと一気飲みして恐怖で引きつる3人の表情を後にして浴室へと消えていく、3人もとりあえず慣れないことをしたのでメイクを落として風呂には漬かりたい、店の空調はよかったものの夜風で少し身体が冷えたので京香の心遣いはいずれにせよありがたいものだ。

    そのまま3人は洗面所へ向かうと由宇奈と莢がメイクを落とすための必要なものを取り出すとテキパキとメイクを落とし始め、陽痲も2人に教えてもらいながらぎこちない手つきで落とし始める。

    「ととと・・」

    「陽太郎は化粧なんて全然してなかったもんね。前に教えてあげようとした時は断られたからね」

    「そりゃ、化粧なんてする必要なんてないと思ってたからよ。すまないな、茅葺」

    「・・後はこれで終わり。早く覚えてもらわないと俺が困る」

    「わ、悪い・・」

    既に浴槽では京香がルンルン気分で風呂に入っており、シャワーの音が鳴り響くがドア越しから見える豊満な肉体美に思わず見惚れてしまう。

    「やっぱ、伝説のキャバ嬢だけあって凄いんだな」

    「そりゃそうだよ。さて落とし終えたことだから片付けて教頭先生が戻るまでリビングで待っとこう?」

    「・・・」

    そのまま3人は京香が戻ってくるまでキッチンにあるこれまた巨大な冷蔵庫の中にあった大量の酒を掻き分けてジュースを見つけ出すが、莢だけは迷うことなく缶ビールを取り出すとそのままリビングへと向かう。

    「ちょ・・龍之介君!! それお酒だよ!!」

    「・・」

    「ま、いいじゃん。俺たちも早く行くぞ」

    オレンジジュース片手の陽痲にせかされながら由宇奈もジュースを取り出してリビングへ向かう、ようやく仕事が終わったところで今度は陽痲今日の仕事を労って乾杯する。

    「んじゃ、今日はお疲れさん。乾杯~!!」

    「乾杯ィ~」

    「・・かんぱい」

    莢も合わせながらビールを開けると携帯をいじりながら淡々の飲み始める、生粋のネット弁慶である彼女にしてみればこういった場は苦手なので淡々と一人でいたいのだが、そんな光景が見事に絵になるので由宇奈と陽痲は少しばかり感心してしまう。

    「龍之介君って本当に物静かだよね」

    「折角3人集まったんだから何か喋ろうぜ?」

    「(無理ゲーwwwwwんなことできたらやっとるわwwwwwwwww)・・」

    女体化して数時間・・ようやく身体には違和感を感じなくなったものの性格だけはどうしようも出来ないので黙ってビールを飲み続けることしか出来ない、両親が亡くなってからは逃げるように他者との接触を出来るだけ絶って電脳の世界にどっぷりと漬かった自分にはこうすることしか出来ないのだ、しかし由宇奈はそんな彼の気持ちを察したのか陽痲を少し嗜める。

    「陽太郎も無理強いさせちゃダメだよ、龍之介君だってまだ女体化して1日も経ってないんだから」

    「へいへい、俺が悪うございましたよ」

    由宇奈にたしなめられて陽痲はばつの悪そうにしながら仕方なく由宇奈と喋り続けるが、その間に莢は携帯をいじり続けるとチャットに反応が出る。

    kimi:おいすー

    ryu:おいす、今ちょっと人がいるから返信は厳しい

    kimi:何だと! 女ならうp、男なら無視だ

    ryu:無茶言うなwwwww

    そのまま莢は由宇奈と陽痲の動向に全神経を集中させながら密かなチャットを続けていく、幸いにも2人は己の会話に夢中なので今のところは大丈夫だろう。

    「そういえば由宇奈と喋ってた人って教頭先生の従兄弟なんだってな、しかも白羽根学園にいるって・・」

    「うん、でも私はあそこの校長と応援団ぐらいしか知らないよ。それに教頭先生とは従兄弟が白羽根学園にいる変な共通点が出来ちゃったよ・・」

    思わず京香と出来た共通点に由宇奈は多少ガッカリしてしまう、彼女の前では従兄弟の話題など出したら自分の身が危ういので今後は気をつけなければ下手に目を付けられてしまうのだ、それだけ京香の白羽根に対する執念は凄まじいのである。

    「お前も大変だな。・・んで茅葺は白羽根に知り合いとかいないのか?」

    「! ・・いない」

    何とか陽痲の言葉に反応する莢であるがチャットと同時進行でやるのは結構神経を使うのでなるべくなら振って欲しくないが、仕方ないのである程度は付き合わないとまずいだろう。

    「でも龍之介君って頭も良いし運動神経抜群なのに、どうして黒羽根高に入ったの?」

    「・・こっちのほうが近かったから」

    「何か勿体無い話だな。しかしお前がホストでバイトしてたなんて驚きだぜ」

    「そうそう、よく生活できてたね」

    「・・基本的にシフトは融通利くしそれに合わせるだけだから」

    そのままビールを飲み続けながら鞘も淡々とであるが会話に参加していく、しかし2人とは違ってそこまで喋らないので上手い具合に引っ込めながらチャットを進行していく。

    ryu:アニメも見れずに会話に挟まれるのはネ弁には地獄でござる><

    kimi:おまwwwwwwww兄貴が寝ている中でガンダムを観る自分に謝れwwwwwww

    ryu:何のシリーズ見てるの?

    kimi:W。閣下のエレガントとトールギスはガチ

    ryu:ビルゴさんはチートすぎるwww

    由宇奈と陽痲はテレビをつけながら自分達の会話で夢中なので莢も動向を確認しながらMS談義を始める。

    kimi:TV版とデザイン違うから変な感じだ。トーラスって途中からいらない子だよね

    ryu:人間が乗ったらハイスペックなんだぞwwwwベテラン兵が乗ったらガンダムは圧倒できる

    kimi:mjk、そいえば撃破してたよね。忘れてたwww

    ryu:というかあの世界のガンダニウム合金は変態ジジイが開発したからな

    kimi:あの爺さんたちって本当にヤバイよな、ゼロなんて代物作り出す時点で有り得んわwwwww

    ryu:MDやリーブラの主砲まで意図的にバグを加えてるからな。でもあそこの世界だったら水中に特化したMS作れば海中戦で倒せそうだ

    kimi:それだと仮想敵はデスサイズだな

    MS談義が熱を上げる中で由宇奈と陽痲はテレビを見ながら莢とは対照的に芸能人の話題が中心となる。

    「そういえばSAOARIって色んな映画に出てるよね」

    「そうそう、前に親父が自分の小説が映画化したときにチョイ役で出てただけでも大歓喜してたからな」

    「すごいじゃん! それで会えたの?」

    「いや、何でも向こうは過密スケジュールだから時間が取れなかったんだって」

    やはり彼女たちの話題の中心となる芸能人は今をときめく大女優のSAORIとなってしまう、2次元の会話を繰り広げている莢は少しばかり肩身が狭い思いになってしまうが会話に参加できるネタもなければ技量もないので大人しく聞いておくしかない。

    「ふーん、でもこの時間になると面白い番組やってないよね」

    「ま、再放送が中心だけで殆どはニュースやら変なアニメがやってるぐらいだしよ。でも暇潰しにはなるな」

    そのまま適当にチャンネルをいじりながら現在やっているアニメに変えられると莢は無意識に身体が反応してしまう。

    「!!」

    「あれ、龍之介君。どうしたの?」

    「お前も暇だったんだな。ま、教頭先生が上がるまで見とこうや」

    (うはwwwwwこの面子で見たかったアニメが見れるのは幸運すぎるwwwwww)

    偶然にもそのアニメは莢が録画しておいたアニメなのだが、この時間帯にやっている番組などニュースとごく一部の深夜アニメが殆どなので暇潰しにどちらを選ぶかと言えば間違いなくアニメのほうだろう、ニュースなんて見ても退屈すぎて面白くがない。

    「んでも、アニメって小さい頃以来見てないぜ」

    「私もだよ。よく2人で見てたよね」

    (声優はいいのに作画が崩壊しとるとか・・叩かれるぞwwwwww)

    なにやら見解の違う回答であるが、これでも暇潰しにはなるのでチャンネルはそのままアニメに移行されるとごく一部の偏った意見を除いて時間は静かに過ぎていく。

    (やっぱり萌えるわ。うはwwwwwktkrwwwwwww)

    「でもこの歳でアニメ見るのって変だよね」

    「俺もこんな時間にテレビなんて見ることなかったからな、たまにはいいんじゃないのか?」

    (ちょっとこれは意外だわ、このシーンのフィギィアでたら買わないとwwwww)

    そのままアニメの視聴が続く中でようやく風呂から上がった京香が3人の元へと現れる。

    「うぃ~、遅くなったな。お湯が勿体無いからお前ら3人まとめて入ってしまえ」

    (ちょwwwww今いいところだったのにwwwwwwwww)

    「「わかりました~」」

    (宮守と佐方は暇そうにしてたのはわかるが、茅葺は何でガッカリしてるんだ・・?)

    ようやく風呂にありつけて安堵する由宇奈と陽痲に対して名残惜しそうに携帯をいじりながらその場を後にする莢に京香は少し顔を抱えながら風呂上りのビールをあおりながらタバコを吸うのであった。

    浴室

    ようやく風呂に入れるということで由宇奈と陽痲は歓喜しながら身体を洗い続けて莢も無表情ながらシャワーを浴びてゆったりと湯船に漬かって酒を抜き始める、この中で一番酒を飲んでいるのは莢なのでここでゆっくり休めないと2日酔いになってしまうのだ。

    「ふぅ~、気持ちいいね。しかし景色も良いなんてさすが高級マンションだよ」

    「本当に絶景だな。それにしても・・この中だったら茅葺がダントツでスタイルが良いのは心なしか悔しいぜ」

    「(男のときだったら勃ってたわwwww)・・」

    「陽太郎はおっぱいちっちゃいもんね。だけど龍之介くんが私よりスタイル良いのは女として悔しい・・」

    由宇奈も莢のスタイルの良さには少し悔しさを覚える、男のときも顔立ちも良くて程よい肉体だった莢に惚れたので女体化というのは本当に反則だと思う。そのままシャワーを浴び終えた2人もゆっくりと湯船に漬かるとガラス越しから映る目の前の絶景の景色に見惚れながら幸せと言うものを感じ始める。

    「絶景の景色を見ながら風呂に入る・・幸せってこういうもんなんだな」

    「爺臭いよ陽太郎。にしても龍之介君のバストはどれぐらいかな・・えいっ!!」

    「!! な、何を・・」

    由宇奈は突然、莢の胸を触り始めるとその手触りと気持ちよさから少し夢中になってしまうもののそういった耐性がない莢にしてみれば溜まったものではない。

    (ちょwwwwwww本当にやめ・・れ・・・)

    「ふむふむ、C~Dの間って所かな。それでも私より大きいなんて・・」

    「・・は、離して」

    「あ、ゴメン」

    ようやく由宇奈から解放された莢はなんともいえない感覚に悩まされる、女体化してからは軽く自分の身体を触ってみたものの由宇奈のような触り方はしていないのだ。そしてそれに便乗するかのように陽痲も由宇奈ほどではないが莢の胸を触り始める。

    「すげぇ・・由宇奈よりも大きいし弾力がある」

    「失礼なこと言うな!!! ・・ま、羨ましいけどさ」

    (何でこんな美味しいイベントなのに男じゃないんだろ・・)

    少しばかり莢も女体化したことに後悔してしまう、しかしずっと昔から必要以上に人と付き合ってない莢が童貞を捨てられないまま女体化してしまうのは時間の問題だっただろう。それだけに今までのようなネット弁慶を治してまっとうな人付き合いをすればよかったなと後悔してしまう、それにホストのときも適当にアフターに付き合って置けば捨てれるチャンスもぐっとあったので尚更である。

    「・・」

    「それよりものぼせるといけないから早く上がろうぜ」

    「そうだね。私は上がるけど2人はどうするの?」

    「俺はもう少しいるつもりだ、茅葺はどうするんだ?」

    「酒を抜きたいから暫く入ってる」

    「それじゃ私はお先に上がらせてもらうね」

    そのまま由宇奈は浴槽から抜けると再び陽痲と莢の2人が残されてしまう、ヘアメイクしていたときの会話もあるので思い出してしまうと少し気まずいところではあるが、陽痲は言い機会なので先ほどの話の続きを始める。

    「・・んで、決心は付いたか?」

    「まだ・・」

    「カァ~、あのよ。俺が言うのもなんだけど結構罪作りだな」

    陽痲にしてみれば付き合ってあげたとはいっても一友人として早いところ結果は気になるところだし、このまま決着を付けてあげないと由宇奈があまりにも不憫だ。顔には出していないものの告白した翌日には好きな人が女体化して舞い戻ってきたのだから相当なショックなのは間違いないだろう。

    「・・俺もよ、男の時は由宇奈が好きだったんだよ。だから前はお前を見ていると複雑だったし酷い時には腹も立ったりした」

    「・・」

    「だからお前が少し羨ましいんだよ。幼馴染って言うアドバンテージがあった俺よりも惚れてしまったお前によ・・
    今は女体化して踏ん切りが付いたけど俺は心底お前が羨ましい、だからあいつのためにも早く返事を返してやれよ、昔からバカ正直なところがあったから今でも待ってるぜ。お前の返事を――」

    そのまま陽痲は湯船から出るとそのまま立ち去ろうとする、これ以上漬かっていたら本当にのぼせてしまうので無理な長湯は健康に悪いのだ。

    「ま、俺からはこれ以上何も言う事はないけどよ。お前も自分の気持ちに正直になって返事してやれ・・んじゃな、先に上がってるぜ」

    「自分の気持ち・・?」

    残された莢は静かに自問自答しながら湯船に残されるのであった。

    そして数分してから莢が風呂に上がると京香から宛がわれた服に着替えるとリビングには豪勢な食事が用意されており、既に由宇奈と陽痲が食事を取っており京香もタバコを吸いながら莢を出迎える。

    「えらい遅かったな、かなり遅いが晩飯だ。さっさと食え」

    「凄いんだよ。これ全部教頭先生が作ったから驚きで・・ウギャ!!」

    「うるせぇ!! あのクソガキみたいにいうんじゃねぇ!!!!」

    (言わなくてよかった・・)

    由宇奈に京香の脳天チョップが炸裂するとその光景に陽痲は自分が発言しなかったと心底思う、そして莢も席に着くと京香の手料理の数々を食べていくがこれだけ美味しい料理を作る京香が何でキャバ嬢をやっているのだろうかと疑問に思ってしまう。

    「よし、飯食ったらさっさと寝ろよ。明日も出勤で実地訓練をするからな、とりあえず当面は俺がお前達のシフト決めるし、俺の家で生活を送ってもらう。明日の勤務が終わってから学校で予定表を渡してやる」

    「え~っ!! そりゃないですよ!!!」

    「そうですよ、俺たちだって予定があるのに・・それに家庭の都合もあるんだあぜ?」

    「既に宮守と佐方の両親には当面の許可を貰ってるし、こっちに着替えも送ってもらってる。それに学校に関しても俺が送ってやるから心配する事はない」

    (飯うめぇwwwwwwwwんなスペックあるならキャバ嬢するなよwwwwwwwwwwwww)

    京香の抜け目のなさと行動力には由宇奈と陽痲もすでにわかっていたことではあるが、改めて恐ろしく思えるものだ。両親が京香に懐柔されているとなれば何を言ったところで無駄なことだし大人しく従わなければいけないだろう、それに2人には京香へドレスと靴代の借金があるのでそれらを返さないといけないのだ。

    「んで当然のように茅葺にも手伝ってもらうからな。お前も着替えとかあればこっちにもってこい」

    「(逆らったら怖いお・・)・・わかりました」

    「そんで一応お前達にはこいつを渡しておこう。一応今日の分の給料だ、受け取れ」

    京香から3人に給料が手渡されると由宇奈と陽痲はその分厚さに思わず心が躍るが莢は既に手馴れているのでありがたく受け取る。

    「とりあえず宮守と佐方は俺の支払い分を差し引いた金額だ。茅葺は今回の店の移転に伴った手数料と紹介料を差し引かせ貰ったからな」

    「よ、陽太郎・・この金額凄いよ!!!」

    「ああ・・諭吉さんが10枚以上あるぜ!!!!」

    (うはwwwwwホストやってた時より少ねぇwwwwwwwwだけど最初はこんなものかwwwwwwwwww)

    いくらかは差し引かれたとはいっても給料の金額はそれでも凄いものでどんな形にしても自分で始めてお金を稼いだ由宇奈と陽痲は興奮を抑えられずに思わず小喜びしてしまう。

    「これだけあれば服はもちろん何でも買えちゃうよ!!」

    「だ、だけど惑わされないようにしっかり貯金もしないとな・・」

    「・・」

    三者三様の反応に京香もとりあえずは満足したのか、タバコを吸いながら今後の説明を始める。

    「とりあず、バイトの申請書類は俺が手はずするから心配しなくても大丈夫だ。わかってることだけど他の奴には絶対話すなよ、ばれて噂にでもなったらめんどいからな」

    「「は、はい・・」」

    「んで、茅葺が持ってた書類は女体化の登録が終わった書類だろ? あれこっちによこせ、バイトの申請と一緒に俺が手続きしてやるし制服も手配してやる」

    「・・了解です」

    莢はそのまま役所の書類を京香に手渡す、どっちにしてもこの書類は学校の手続き上においては必要なものなので京香に渡すだけでもかなり手間が省けたものだ、黒羽根高は京香の支配下にあるので彼女さえ何とかすればどうとでもなるのだ。

    「それじゃ説明が終わったところでさっさと寝ろよ。お前達の部屋は用意してあるからそこで寝とけ、着替えも置いてある。茅葺の着替えを取りに行き次第、訓練を始めるから覚悟して置けよ」

    「えっと、何時から・・?」

    「時間も惜しいからな。とりあえずは3時過ぎで良いだろ?」

    「ちょっと待て!! 今はもう朝の6時だから・・ゲッ、寝る時間ないぞ!!!」

    (うはwwwwww)

    そのまま3人は急いでご飯を駆け込むように食べると京香に部屋を案内されると客間用の布団がぎっちりと敷かれておりカーテンからは朝日が零れている。

    「ハァ~、とりあえず寝るぞ」

    「賛成・・今日の為にもゆっくりと休まないとね」

    「・・おやすみなさい」

    そのまま部屋の電気が切られると3人とも就寝に付く、その中で陽痲は寝付くが良いのかすぐに寝息を立てる中で寝付けないのは由宇奈と莢・・どうやら2人とも同じ悩みで頭が押しつぶされてしまって寝付けないようである。

    「龍之介君、寝た?」

    「・・いいや」

    「よかった、私も寝れなかったんだ」

    由宇奈は少し照れくさそうにしながら陽痲が起きないように小声で莢と話し始める、お互いに今まで喋った事はなかったから少しばかりぎこちなかったがそれでも2人だけの会話を楽しんでいくが、自然と話題は昨日のことへとなってしまう。

    「龍之介君・・陽太郎から色々言われて他と思うけど、私は龍之介君が答えを決めてくれるまで待っているから」

    「・・宮守、今から答えだしてもいいか?」

    「う、うん!!」

    思わず由宇奈は身構えてしまう、そして莢もこれまで考え抜いた答えを導き出す。人にたくさん相談して言われて・・そして不器用で逃げている自分にようやく追いついてたたき出したこの回答を今度は勇気を出して莢が伝える番だ。

    「俺は・・お前の想いにはっきり応えられてるかわからないけど。・・友達でいるってのはダメかな?」

    「・・そっか、友達か。応えでぐれでありがどぅぅ・・それじゃ、おやずみ・・」

    「ごめん」

    こうして由宇奈の恋は終わり、誰にも聞こえないように1人布団でむせび泣いていた・・

    更に日は過ぎて月曜日・・京香からの地獄の特訓と普段とは違って鬼のように忙しかった仕事を耐え抜いた3人は京香に送られて黒羽根高へと登校する。

    「んじゃ、予定表渡すからちゃんと職員室に来いよ」

    「は、はい・・」

    「んなことより神林先生にはなんて言えばいいんだ? 一応俺たちの担任だぜ?」

    とりあえず由宇奈と陽痲は真帆にはバイトに関して相談した身なのである程度は話しておかないと収拾が付かないのだ、それに自分達のことも気にしてくれてるようなので話しておかないと心も痛む。

    「ま、そこは俺に任せておけ。逆らえる度胸なんてないしな」

    ((神林先生・・すみません))

    (うはwwwwさすが支配者wwwwww)

    「んじゃ、楽しい学園生活を送りな~」

    そのまま京香は一足早く校舎の中へと入っていくと残された3人も順に入っていくものの教室への階段を境にここで莢と別れる、それにしても京香によって手配された女子の制服を着た莢の姿は本当の良く似合っているので既に周囲から男子中心とにかなり注目を浴びている。

    「おい、茅葺。どうしたんだ?」

    「・・女体化のこと話さなきゃいけないから、また後で会うと思う」

    「そっか、んじゃまた後でな」

    莢と別れた由宇奈と陽痲であるが、あれから平常通りに過ごしている由宇奈が陽痲にはとても痛々しく見える。昨日の仕事でも自分や莢の手助けもなくめきめきと仕事をしていき京香によって始めて1人で客に付いていたほどだ、成長振りとしては確かなものであるもののそれが陽痲にとっては違和感を感じてしまう。

    「・・なぁ、由宇奈。茅葺と何かあったのか?」

    「へっ? 陽太郎、何を言ってんの。龍之介君とは何も・・」

    「あったんだな。・・仕方ない、1時間目はサボろうぜ」

    「ちょ、ちょっと陽太郎!!」

    突然、陽痲に腕を引っ張られた由宇奈はそのまま駆け込むように屋上へと向かい始める、普段なら不良の溜まり場で定評のあるこの屋上であるがそのようなものは全て京香の手によって粛清されて私兵と化しているので安心して行けれる場所なのだ。

    そして屋上へと由宇奈を連れ出した陽痲は改めて口火を切る。

    「・・さて、茅葺と何があったんだ? 長年お前を見てきた俺の目は誤魔化せられんぞ」

    「アハハハ・・流石に陽太郎にはばれちゃったか」

    そのまま由宇奈は屋上の壁にもたれながらゆっくりと莢とのやり取りを語り始める、長年にわたって由宇奈の幼馴染をしてきた陽痲にしてみれば最初は好奇心と小説のネタで関わったものではあるが、次第にそれらの事は忘れて1人の友人として由宇奈を心配していたのだ。

    「以上。見事に振られちゃった・・ハハハ、情けないよね」

    「んなことない!! ・・お前はよくやったよ、俺が認める」

    「よ、陽太郎ぉぉぉ・・」

    由宇奈はその言葉で何かが吹っ切れたのか、必死で溜め込んだ感情を陽痲の胸を借りながらワンワンと大声を上げて泣き叫ぶ、そんな由宇奈を静かに抱き寄せながら陽痲は結果が出たことにとりあえず安堵すると今はとりあえず泣き止むまで由宇奈を優しく抱きしめる。

    「よしよし、辛かっただろうな。今回ばかりは間違えた事は聞かなかったことにする」

    「うん・・」

    (全く、これが男のときだったらよかったんだけどな・・今は少し女体化したことを後悔するぜ)

    少しばかり女体化を憎みながら陽痲は泣き続ける由宇奈をただ黙って抱きしめるのであった。

    職員室

    「「失礼します・・」」

    「ごめんねぇぇぇ!!!!! 僕の力が至らないばかりに・・」

    そのまま校内放送で真帆に呼ばれた2人は恐る恐る職員室へと入って行く、何せ1時間目は真帆の授業である数学・・どんな理由でもサボってしまったのは事実なので少し覚悟を決めて真帆と対峙する2人であったが、そこには涙目になっている真帆の姿で授業をサボった2人に泣きながら謝り始めるので思わず面食らってしまう。

    「あの・・神林先生?」

    「全ては言わなくていいんだよ、あの時僕が強く教頭に言えばこんなことには・・」

    「まさか、先生・・俺たちの仕事を?」

    どうやらあれから京香に何かされたようで真帆は永延と同じように2人に謝罪しながら詫び続ける、真帆の言葉からして自分達の本当のバイトを恐らく知っているのだろう。そう考えたらある意味では京香以外の理解者が増えてくれて嬉しいのだが真帆の心境を察したら結構複雑なものである。

    「とりあえず、何かあればすぐに僕に話してね。経験外のことだけど出来るだけサポートするつもりだから・・」

    「はい・・なるべくご迷惑をお掛けしないように気をつけます」

    「こっちもすみません、俺たちのことでご迷惑を掛けてしまって・・」

    2人は真帆に多大なる同情をしながらとりあえずバイトの承認をしてもらったことに安堵する、そして2人の背後にはタバコを加えた京香が莢と一緒に2人を待ち構えてるかのように巨大な威圧感と共に声を掛ける。

    「おぅ、丁度いいところにいるな。話したいことがあるから顔貸せ」

    「あ、あの・・教頭先生。僕が言うのもなんですけどもし他の先生方が訪問されたら・・」

    (ちょwwwそれ俺も困るwwwwwてか前にあんたが来たときは焦ったわwwwwwwwww)

    「んなもんは俺が何とかするに決まってるだろ、お前は大人しくしてればいい話だ。んなことよりさっさと文化祭の出し物を考えろよ、当然白羽根に勝てるやつな!!」

    「は、はい・・」

    そのまま悲壮感漂う真帆に最大の同情をしながら2人は京香と莢に引き連れられて誰もいない校長室へと案内されると京香から店のシフトを手渡されるのだが、驚愕の日程に驚きを上げるとまず陽痲が抗議を上げる。

    (うはwwwwww週6は鬼過ぎるwwwwwwww)

    「おいっ!! この日程はどういうことだッ!! あんな仕事で週6日なんて出れるわけないだろ!!!」

    「そうですよっ!! いくらなんでも学業との並行は・・」

    「うるせぇ!! これぐらい出ないとてめぇ等が一人前にならないだろ!!!!!!」

    驚くべきことに日程は週6日・・平日の合間合間に休みはあるもののそういった日は実質京香の指導の日に当てはまるので実質休みなどない状態である。

    「でも俺達は勉強やら・・それに今月は期末テストがある!!」

    「そ、そうだった! 勉強もしないといけないんだ・・」

    (勉強なんて予習と復習で充分だろjk)

    これだけの過密スケジュールだと勉強すらままならぬ状態だろう、仕事は出来ても本業である学業を疎かにしては何ら意味はないが・・そんな言い訳が京香に通じるわけがない。

    「この俺は教頭だぜ? キャバの仕事教えながらテストの勉強ぐらい余裕で仕込めるに決まってるだろ、現に茅葺はホストやってても成績は優秀だったからな。要は根性の問題なんだよ!!」

    「んな無茶苦茶な・・」

    「ううっ・・」

    「・・大丈夫、勉強に関しては俺も教える」

    「んじゃ、これからよろしくな・・ネオンの高校生よ」

    こうしてネオンの高校生は誕生した、彼女達の奇妙で妖艶な学生生活は始まったばかりである・・





    fin

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最終更新:2012年06月24日 20:23
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