USS 小説05

「USS 小説05」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

USS 小説05」(2015/06/10 (水) 00:18:27) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう05} ... 著 / 優有 アニキは一見しただけだと、ナンパな優男だ。 少し見たくらいじゃ、ただのバカにしか見えない。 だけどずっと見てきた俺は知ってる。 アニキはバカな色男だけど、スゲェ人なんだってことを。 赤の他人だろうと、何一つ得をしない状況でも、助けることを迷わない。 裏切られても、罠に嵌められて刺されたって、一度信じると決めた相手は信じ抜く。 自分で決めたことは、何があっても曲げたりしない。 アニキはそんなスゲェ男だ。 アニキがいなければ、俺はとっくにドブの中でおっ死んでただろう。 そのアニキが、白い悪魔にぶっ飛ばされた。 スゲェ勢いで回転しながら、テーブルを巻き込んで。 「テメェ! 死ぬ覚悟は出来てんだろぅなぁ!」 俺はアニキと違って、同じ宿の奴だからって身内扱いはしねぇ。 女だからって容赦はしねぇ。悪魔だからってビビってらんねぇ! 悪魔はいつものように顔色を変えない。 俺なんかが凄んでも、なんとも思ってねぇんだろう。 全く興味が無いみてぇに俺に背を向けて、 アニキに奢られてたガキとウェイトレスに話しかけてやがる。 アニキだけじゃなく、そのガキまでぶちのめそうってのか。 白い悪魔の異名は伊達じゃない。 依頼人だろうが貴族だろうが、気紛れで殴り飛ばす。 アニキだって一端の冒険者だが、大鹿の獣人の俺と違ってそんなに打たれ強いわけじゃねぇ。 だが、あそこにいる猫の獣人のガキ。ありゃあ、そこのウェイトレス並みの打たれ弱さだ。 アニキが惚れた女と、この店の新入り。 どちらも悪魔の一撃を喰らったら即死するのは目に見えている。 そんなことアニキが許すわけがねぇ。 アニキが許さねぇことを、俺が見過ごすわけにはいかねぇ! 「うぅ…せ、世界が回る…」 !? 「アニキ! 大丈夫か!」 うっ…酷え。面の半分が3倍くらいに腫れ上がって、ズタボロな顔になっちまってる。 「わ、私の頭が吹き飛ばされてしまった…。探してくれ。その辺に転がってないか?」 「しっかりしてくれアニキ! 首はちゃんと繋がってるよ!」 あのクソ悪魔ぁ。あ、いや、まずはアニキの治療だ。 白い悪魔がいるってことは赤い…いた。 白い悪魔にいっつもついて回ってる小悪魔。 あいつは確か回復魔術を使えたはずだ。 「おいクソ小悪魔! テメェのツレがやらかしたんだから、治療しやがれ!」 小悪魔め、目が合っただけで舌打ちしやがった。 ヒラヒラした真っ赤な服から伸びた細い腕を掴み、アニキの前まで引っ立てる。 「治療費は10stになりますわよ」 この赤い悪魔、人の心ってもんはねぇのか。当たり前のように金を要求しやがって。 「とにかくさっさと治せ! おいクソ悪魔! 白くて気色悪いテメェ! アニキ以上にズタボロにしてやる! かかってこい!」 よし、まだウェイトレスも新入りも無事らしい。 ウェイトレスは相変わらず見下したような目をこっちに向けてやがるが。 …なんで新入りが俺を睨んでんだ? よくわからねぇが、新入りが悪魔に何かを話しかけてる。 いまいち聞き取れねぇ。なんだ? アニキをバカにしてんだったらテメェもぶちのめすぞ? 悪魔はゆっくりとその右手を拳にして、新入りの面を打ち抜くために力を込め出した。 ヤバイ。止めねぇと、確実に死ぬ! 「……かっ…!?」 何が起きたのかわからなかった。 構えた拳から力が抜け、悪魔が聞いたことの無い大声で、短く叫んだ。 そして、全力で逃げた。 「………は?」 間抜けな声があちこちで漏れて、呆然としている自分に気づく。 悪魔が、逃げた? 殴り殺される直前で逃げたやつは多い。 殴られる前に逃げた奴らは数え切れない。 だが、悪魔を追い払った奴は居なかった。 …スゲェ。 あの新入り、スゲェじゃねぇか。 なんだ? 何やったんだ? 殴ったわけじゃねぇな。 あれか? 魔術ってやつか? アニキを一撃で倒せる悪魔を、言葉だけで追い払うって、 そんなこと出来んのか。 「凄いな、少女よ。誰も傷つけることなく全てを収めるとは、 そのスタイル、尊敬に値するっ!」 「アニキ! 復活したのかっ!」 流石アニキだ。回復魔術もあるだろうが、全く何もなかったように復活してやがる。 アニキが尊敬に値するってことは、この新入りはとんでもねぇ人なんだな。 だったら俺も、それなりの呼び方で敬意をしめさねぇと、アニキの顔に泥をぬっちまう。 えーと、アニキくらい凄くて。 アニキが少女って呼ぶ。 親分…は、違うな。女でアニキだから…。 「よしっ。あんたのことはアネキと呼ばせてもらうぜっ!」 「だから僕は男だってばっ!」 ---- ***今回の付与魔術 &bold(){【自分探しの旅に出よう】} (ネバー・エンディング・ストーリー) 素材:対象の全体鏡像が映っている鏡。 効果:対象一体に放浪癖を付与する。 詠唱:「あなたが一番輝く場所はここじゃあない! 今すぐ【自分探しの旅に出よう】」 代価:旅先で対象が術者のことを吹聴して回るようになる。 どのように吹聴されるかはそれまでの関係による。 ----
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう05} ... 著 / 優有 アニキは一見しただけだと、ナンパな優男だ。 少し見たくらいじゃ、ただのバカにしか見えない。 だけどずっと見てきた俺は知ってる。 アニキはバカな色男だけど、スゲェ人なんだってことを。 赤の他人だろうと、何一つ得をしない状況でも、助けることを迷わない。 裏切られても、罠に嵌められて刺されたって、一度信じると決めた相手は信じ抜く。 自分で決めたことは、何があっても曲げたりしない。 アニキはそんなスゲェ男だ。 アニキがいなければ、俺はとっくにドブの中でおっ死んでただろう。 そのアニキが、白い悪魔にぶっ飛ばされた。 スゲェ勢いで回転しながら、テーブルを巻き込んで。 「テメェ! 死ぬ覚悟は出来てんだろぅなぁ!」 俺はアニキと違って、同じ宿の奴だからって身内扱いはしねぇ。 女だからって容赦はしねぇ。悪魔だからってビビってらんねぇ! 悪魔はいつものように顔色を変えない。 俺なんかが凄んでも、なんとも思ってねぇんだろう。 全く興味が無いみてぇに俺に背を向けて、 アニキに奢られてたガキとウェイトレスに話しかけてやがる。 アニキだけじゃなく、そのガキまでぶちのめそうってのか。 白い悪魔の異名は伊達じゃない。 依頼人だろうが貴族だろうが、気紛れで殴り飛ばす。 アニキだって一端の冒険者だが、大鹿の獣人の俺と違ってそんなに打たれ強いわけじゃねぇ。 だが、あそこにいる猫の獣人のガキ。ありゃあ、そこのウェイトレス並みの打たれ弱さだ。 アニキが惚れた女と、この店の新入り。 どちらも悪魔の一撃を喰らったら即死するのは目に見えている。 そんなことアニキが許すわけがねぇ。 アニキが許さねぇことを、俺が見過ごすわけにはいかねぇ! 「うぅ…せ、世界が回る…」 !? 「アニキ! 大丈夫か!」 うっ…酷え。面の半分が3倍くらいに腫れ上がって、ズタボロな顔になっちまってる。 「わ、私の頭が吹き飛ばされてしまった…。探してくれ。その辺に転がってないか?」 「しっかりしてくれアニキ! 首はちゃんと繋がってるよ!」 あのクソ悪魔ぁ。あ、いや、まずはアニキの治療だ。 白い悪魔がいるってことは赤い…いた。 白い悪魔にいっつもついて回ってる小悪魔。 あいつは確か回復魔術を使えたはずだ。 「おいクソ小悪魔! テメェのツレがやらかしたんだから、治療しやがれ!」 小悪魔め、目が合っただけで舌打ちしやがった。 ヒラヒラした真っ赤な服から伸びた細い腕を掴み、アニキの前まで引っ立てる。 「治療費は10stになりますわよ」 この赤い悪魔、人の心ってもんはねぇのか。当たり前のように金を要求しやがって。 「とにかくさっさと治せ! おいクソ悪魔! 白くて気色悪いテメェ! アニキ以上にズタボロにしてやる! かかってこい!」 よし、まだウェイトレスも新入りも無事らしい。 ウェイトレスは相変わらず見下したような目をこっちに向けてやがるが。 …なんで新入りが俺を睨んでんだ? よくわからねぇが、新入りが悪魔に何かを話しかけてる。 いまいち聞き取れねぇ。なんだ? アニキをバカにしてんだったらテメェもぶちのめすぞ? 悪魔はゆっくりとその右手を拳にして、新入りの面を打ち抜くために力を込め出した。 ヤバイ。止めねぇと、確実に死ぬ! 「……かっ…!?」 何が起きたのかわからなかった。 構えた拳から力が抜け、悪魔が聞いたことの無い大声で、短く叫んだ。 そして、全力で逃げた。 「………は?」 間抜けな声があちこちで漏れて、呆然としている自分に気づく。 悪魔が、逃げた? 殴り殺される直前で逃げたやつは多い。 殴られる前に逃げた奴らは数え切れない。 だが、悪魔を追い払った奴は居なかった。 …スゲェ。 あの新入り、スゲェじゃねぇか。 なんだ? 何やったんだ? 殴ったわけじゃねぇな。 あれか? 魔術ってやつか? アニキを一撃で倒せる悪魔を、言葉だけで追い払うって、 そんなこと出来んのか。 「凄いな、少女よ。誰も傷つけることなく全てを収めるとは、 そのスタイル、尊敬に値するっ!」 「アニキ! 復活したのかっ!」 流石アニキだ。回復魔術もあるだろうが、全く何もなかったように復活してやがる。 アニキが尊敬に値するってことは、この新入りはとんでもねぇ人なんだな。 だったら俺も、それなりの呼び方で敬意をしめさねぇと、アニキの顔に泥をぬっちまう。 えーと、アニキくらい凄くて。 アニキが少女って呼ぶ。 親分…は、違うな。女でアニキだから…。 「よしっ。あんたのことはアネキと呼ばせてもらうぜっ!」 「だから僕は男だってばっ!」 ---- ***今回の付与魔術 &bold(){【自分探しの旅に出よう】} (ネバー・エンディング・ストーリー) 素材:対象の全体鏡像が映っている鏡。 効果:対象一体に放浪癖を付与する。 詠唱:「あなたが一番輝く場所はここじゃあない! 今すぐ【自分探しの旅に出よう】」 代価:旅先で対象が術者のことを吹聴して回るようになる。 どのように吹聴されるかはそれまでの関係による。 ---- [[←04に戻る>http://www8.atwiki.jp/uss_trpg/pages/35.html]] [[06へ進む→>http://www8.atwiki.jp/uss_trpg/pages/37.html]] ----  

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: