USS 小説06

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&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう06} ... 著 / 優有 可愛い物が好き。 静かな場所は落ち着く。 良い匂いのするもの、花や料理、子供、香水は好き。 最近の常宿、『カポナータ・カウポーナ』は良い匂いがする物が多い。 出される料理。ウェイトレスの娘たち。店主の香水に、 私をお姉様と慕ってパーティを組んだ変わった娘。 最近、討伐や採取の依頼をこなして宿に戻り、 店の匂いを確認すると帰って来た気分になる。 悪くない。 でも嫌いな物もある。 臭い物。汚い物。 うるさい奴。バカ。 宿に帰って来て、いつもの匂いに包まれて、 ほっと一息ついたときに、バカが大声で騒いでいた。 しかも、食事を乗せるテーブルの上で。 臭くて汚い腰みのを3つもつけた男。 たまにこの店で騒いでいるバカ。 しかも酒に溺れて、可愛い女の子たちに絡んでいるようだった。 これだから男は嫌だ。 臭くて汚くてバカで無思慮でやかましい。 消えてなくなればいい。 消えないのなら、消せばいい。 ちょっと…いや、かなり腹が立ったので、つい手加減を忘れた。 死んでないといいけど。 まぁ、これに懲りてこの店からいなくなればいい。 女の子たちがいなくなるより、そっちの方が断然良い。 「…大丈夫?」 絡まれていたのは、この店のウェイトレスと初めて見る娘…娘? 「ありがとうございます。バカがいなくなってスッキリしました」 ウェイトレスがニヤリと笑う。 あなた、あのバカに最愛の人とか呼ばれてなかったっけ? 「あ、ありがとうございます。助かりました」 見慣れない娘…娘? が礼を言ってくる。 ど、どっちだろう。見た目も声もどっちでもあるような無いような。 「彼は新しくこの店に登録した新入りです」 「よろしくお願いします」 彼! 今、彼って言った! え? 男? これ男? 臭くて汚くてバカな男? 可愛い? いや、汚い男がこんな近くに? なんで? 臭くない? え? あれ? あー、もう、後ろでバカがうるさい。 考えがまとまらない。 「おいクソ悪魔! 白くて気色悪いテメェ! アニキ以上にズタボロにしてやる! かかってこい!」 ……一気に気分が沈んでいく。 これだから男は。 バカで、臭くて、汚くて、バカで! どうしようもなく、目障りなバカ! 「あんなバカの言うことはお気になさらずに」 ウェイトレスの娘がバカを睨みながら諭してくる。 「こんなに透き通るように白くて、雪みたいに綺麗なのに」 うるさい。シロクマの獣人なんだ。白いことの何が悪い。 男なんてバカしかいない。 目障りで、イラつく。 右手に力が篭っていく。 「耳だって白くて丸くて、とっても可愛いのに」 白いだけで忌避するようなバカどもが、悪魔だ悪魔だと囁く。 なんて耳障り。 悪魔扱いされるようになったのも、元々はお前らバカのせいだ、 報酬を上乗せすると言って裸になって襲ってきたバカ依頼主。 珍しい毛色だから飼ってやろうと金を投げつけてきたバカ貴族。 男なんてのは、醜くて汚いクズばっかりだ。 拳を握り、構える。 目の前にいるのも、結局はあいつらと同じ薄汚いクズなんだろう、 白い白いと貶してくる。 シロクマじゃなく普通のクマなら良かったのに。 もういい。いつものように、黙らせればいい。 どうせ何をしたって白い悪魔なんだろう。 「きっと凄く柔らかいんだろうなー。 その可愛い耳、モフモフしても良いですか?」 この一見可愛いのも、いつかあんな薄汚いクズになる。 それなら、いっそひと思いにモフ? あれ? なんかおかしい。 ほとんどの奴は私が拳を握ると逃げる。 逃げない奴は襲いかかってくるか、絶望で歪んだ醜い顔になる。 なんで笑顔? 酒で緩んだような、溶けたような笑顔。 頬が薄っすらと赤くなっている。 何この可愛いの? 男だよね? それにさっきなんて? 白い…綺麗? 可愛い? モフモフ? 何が? …私? 「とっても可愛いなぁ」 「……かっ…!?」 か、可愛い!? わ、私に言ったのか? 白くて綺麗とか、 可愛いとか、モフッ!? ~~!? か、かわっ、わた!? ~~~~!! …気がついたら、ベッドの上で枕を抱いて固まっていた。 いつの間にか日は傾いて、窓から夕日が差していた。まだ顔が熱い。 自分より遥かに可愛い相手に褒めちぎられたことを思い出すと、 それだけで身悶えそうになる。 し、しかも、男? あれ男? お、男にあんな風に女の子扱いされ、あぁぁぁぁ! 「お姉様、あれは女の子でしてよ? 仮に男だとしても、 いい加減慣れていただきませんと困りますわ」 いつからいたのか、私のせいで周りから小悪魔扱いされている娘がため息を漏らす。 え? あれ女の子? え? どっち? 「…今日はもうお休みになってくださいませね」 え? あれ? えぇ? ---- ***今回の付与魔術 &bold(){【悪魔の一撃】} (クリティカル・アップ) 素材:粉砕された腰骨。3㎝四方の魔術陣を描ける物品(付与対象)。 効果:一定確率で物理攻撃の威力が上昇。確率は施術者の力量による。 詠唱:「矜持も誇りも魂すらも打ち砕く【悪魔の一撃】」 代価:付与された物品を装備していると謂れのない汚名を着せられることがある。 また施術者は効力に比例したぎっくり腰にかかる。 ----
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう06} ... 著 / 優有 可愛い物が好き。 静かな場所は落ち着く。 良い匂いのするもの、花や料理、子供、香水は好き。 最近の常宿、『カポナータ・カウポーナ』は良い匂いがする物が多い。 出される料理。ウェイトレスの娘たち。店主の香水に、 私をお姉様と慕ってパーティを組んだ変わった娘。 最近、討伐や採取の依頼をこなして宿に戻り、 店の匂いを確認すると帰って来た気分になる。 悪くない。 でも嫌いな物もある。 臭い物。汚い物。 うるさい奴。バカ。 宿に帰って来て、いつもの匂いに包まれて、 ほっと一息ついたときに、バカが大声で騒いでいた。 しかも、食事を乗せるテーブルの上で。 臭くて汚い腰みのを3つもつけた男。 たまにこの店で騒いでいるバカ。 しかも酒に溺れて、可愛い女の子たちに絡んでいるようだった。 これだから男は嫌だ。 臭くて汚くてバカで無思慮でやかましい。 消えてなくなればいい。 消えないのなら、消せばいい。 ちょっと…いや、かなり腹が立ったので、つい手加減を忘れた。 死んでないといいけど。 まぁ、これに懲りてこの店からいなくなればいい。 女の子たちがいなくなるより、そっちの方が断然良い。 「…大丈夫?」 絡まれていたのは、この店のウェイトレスと初めて見る娘…娘? 「ありがとうございます。バカがいなくなってスッキリしました」 ウェイトレスがニヤリと笑う。 あなた、あのバカに最愛の人とか呼ばれてなかったっけ? 「あ、ありがとうございます。助かりました」 見慣れない娘…娘? が礼を言ってくる。 ど、どっちだろう。見た目も声もどっちでもあるような無いような。 「彼は新しくこの店に登録した新入りです」 「よろしくお願いします」 彼! 今、彼って言った! え? 男? これ男? 臭くて汚くてバカな男? 可愛い? いや、汚い男がこんな近くに? なんで? 臭くない? え? あれ? あー、もう、後ろでバカがうるさい。 考えがまとまらない。 「おいクソ悪魔! 白くて気色悪いテメェ! アニキ以上にズタボロにしてやる! かかってこい!」 ……一気に気分が沈んでいく。 これだから男は。 バカで、臭くて、汚くて、バカで! どうしようもなく、目障りなバカ! 「あんなバカの言うことはお気になさらずに」 ウェイトレスの娘がバカを睨みながら諭してくる。 「こんなに透き通るように白くて、雪みたいに綺麗なのに」 うるさい。シロクマの獣人なんだ。白いことの何が悪い。 男なんてバカしかいない。 目障りで、イラつく。 右手に力が篭っていく。 「耳だって白くて丸くて、とっても可愛いのに」 白いだけで忌避するようなバカどもが、悪魔だ悪魔だと囁く。 なんて耳障り。 悪魔扱いされるようになったのも、元々はお前らバカのせいだ、 報酬を上乗せすると言って裸になって襲ってきたバカ依頼主。 珍しい毛色だから飼ってやろうと金を投げつけてきたバカ貴族。 男なんてのは、醜くて汚いクズばっかりだ。 拳を握り、構える。 目の前にいるのも、結局はあいつらと同じ薄汚いクズなんだろう、 白い白いと貶してくる。 シロクマじゃなく普通のクマなら良かったのに。 もういい。いつものように、黙らせればいい。 どうせ何をしたって白い悪魔なんだろう。 「きっと凄く柔らかいんだろうなー。 その可愛い耳、モフモフしても良いですか?」 この一見可愛いのも、いつかあんな薄汚いクズになる。 それなら、いっそひと思いにモフ? あれ? なんかおかしい。 ほとんどの奴は私が拳を握ると逃げる。 逃げない奴は襲いかかってくるか、絶望で歪んだ醜い顔になる。 なんで笑顔? 酒で緩んだような、溶けたような笑顔。 頬が薄っすらと赤くなっている。 何この可愛いの? 男だよね? それにさっきなんて? 白い…綺麗? 可愛い? モフモフ? 何が? …私? 「とっても可愛いなぁ」 「……かっ…!?」 か、可愛い!? わ、私に言ったのか? 白くて綺麗とか、 可愛いとか、モフッ!? ~~!? か、かわっ、わた!? ~~~~!! …気がついたら、ベッドの上で枕を抱いて固まっていた。 いつの間にか日は傾いて、窓から夕日が差していた。まだ顔が熱い。 自分より遥かに可愛い相手に褒めちぎられたことを思い出すと、 それだけで身悶えそうになる。 し、しかも、男? あれ男? お、男にあんな風に女の子扱いされ、あぁぁぁぁ! 「お姉様、あれは女の子でしてよ? 仮に男だとしても、 いい加減慣れていただきませんと困りますわ」 いつからいたのか、私のせいで周りから小悪魔扱いされている娘がため息を漏らす。 え? あれ女の子? え? どっち? 「…今日はもうお休みになってくださいませね」 え? あれ? えぇ? ---- ***今回の付与魔術 &bold(){【悪魔の一撃】} (クリティカル・アップ) 素材:粉砕された腰骨。3㎝四方の魔術陣を描ける物品(付与対象)。 効果:一定確率で物理攻撃の威力が上昇。確率は施術者の力量による。 詠唱:「矜持も誇りも魂すらも打ち砕く【悪魔の一撃】」 代価:付与された物品を装備していると謂れのない汚名を着せられることがある。 また施術者は効力に比例したぎっくり腰にかかる。 ---- [[←05に戻る>http://www8.atwiki.jp/uss_trpg/pages/36.html]] [[07へ進む→>http://www8.atwiki.jp/uss_trpg/pages/41.html]] ----  

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