USS 小説10

「USS 小説10」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

USS 小説10」(2015/06/25 (木) 22:46:44) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう10} ... 著 / 優有 それなりに大きな街なら、出入口に関所を設けている。 街道から来る者達を受け入れるために。 そしてまた時に追い払うために。 そこでは兵士たちが街の治安のために日々戦っている。 ヴォダースカヤから伸びる南街道への関所。 ここでもそれは例外ではない。 例外ではないのだが、街道から迷い込む獣は少ない。 不審な者達。例えば盗賊などは関所に来ない。 街に来るのなら、もっとどこか忍び込みやすい場所を使うだろう。 魔物に関しても、ダンジョン踏破依頼が出される。 わざわざダンジョンから出てきて街に辿り着くものは稀だ。 そもそも南街道は街同士を繋ぐためだけのもの。 街の距離が近いこともあり、間には村もない。 必然、関所を利用するものはお互いの街から訪れる。 こうした理由もあり、この関所の兵士達は日々戦っている。 退屈、そして眠気と。 それらの敵と戦うため、様々な策で備える。 ボードゲーム、カード、飲み比べ、素手戦闘。 まぁ、ひらたく言えば当番をギャンブルで決めて、 決まらなければ腕力で決めている。 そうして負けた彼らは、いつも通り酒を片手に敵と戦っていた。 彼らにとって旅人は敵を追い払うものだ。 冒険者達が二頭立ての馬車と現れても、仕事が来た億劫さより、 退屈から解放される喜びのほうが強かった。 「やぁ、兵士さん。また会ったね」 御者をしている商人が軽く手を挙げて声をかける。 「あぁ、今回の仕入れは終わりか。また酒持って来てくれよ」 「覚えていたら持って来よう。手続きを頼むよ」 愛想の良いこの商人は、一定周期で隣街から来て帰っていく。 「今度は何を仕入れたんだ? また変なモン見つけたのか?」 運ばれる物のチェックは門番の仕事だ。ここではあまり無いが、 持ち出しの禁じられている物を見つけて没収したり、捕縛することもある。 「いえ、今回はハズレでした。次に期待ですよ」 この商人は街に来るたびに他の商人とやりとりしている。 街に来るのはそれが目当てのことが多い。 趣味なのか仕入れなのか、彼はたまに奇妙な物を積んでいることがある。 子供大のセミの抜け殻。 髪の長い不気味な人形。 巨大生物の骨。 羽根の生えた猫の彫像。 様々だ。 兵士たちは護衛に距離を取らせて、積荷を調べる。 どうやら今回は本当にハズレらしく、いくつかの家具と、保存の効く食品くらいだった。 「今回は何を狙ってたんだ?」 「かっぱーたんの彫像ですよ。残念ながら先を越されてしまいました」 兵士はその言葉に首を傾げつつも、 「そりゃあ残念だったなー」 などと適当に相槌を返し、積荷のチェックを終える。 かっぱーたんとはstの下の単位の銅の硬貨のことだ。 ct百枚でst一枚の価値になる。 薄い安酒なら10ctで飲めるので、あまり給料の高くない兵士にとっては安酒の代価という印象しかない。 その彫像と言われても、全く想像がつかないのは仕方ないだろう。 「所有者に金運をもたらすと言われている妖精像ですわね」 「ええ。この街の細工師が造ったらしいのです」 冒険者の一人、ヒラヒラと赤い服の娘が答える。 狐耳をピクピクさせているのは、その話に興味をそそられているためだ。 金儲けにまつわる逸話は多い。 持っていると客や金を増やすと言われる、手招きする猫の像や酔っ払った狸の像。 その中の一つに、硬貨の妖精の逸話がある。 硬貨の妖精から加護を受けると、生涯その硬貨に困ることがなくなるというものだ。 ctの妖精の目撃談は多く、幼い少女のような姿と言われている。 その姿を彫像にしたものが、『かっぱーたんの彫像』なのだが、 何故か硬貨単位のctではなく、幼児言葉のような言い方をされることが多い。 うわさ話程度のものだったが、最近はその彫像を求める者が増え、わざわざ作製依頼を出す者さえいる。 だが関所にいる兵士にはそうした街中の変化は伝わり難い。 「あー、まぁ、変なモンを造る奴がいるのはわかった。積荷のチェックはオーケーだ」 変な物を好きな奴が、それについて語り出すと面倒臭くなる。 狐娘にそんな匂いを感じ取り、兵士はチェックを切り上げて割り符を用意するように仲間に告げる。 「では、良い旅を」 他の兵士が商人に割り符を渡す。 この関所の場合は、行き先が限られているため通行証でなくても用をなす。 馬車たちを見送り、また退屈との戦いが始まる。 ゆううつになるのを酒で誤魔化し、何かツマミでも作ろうかとした時、 閉じていく門扉の影に何かが見えた。 手の平に収まるくらいの、小さな少女。 綺麗なドレスに身を包み、その両手には一枚のctが抱えられていた。 門が閉じる瞬間、その小さな少女がctを頭に乗せて、 「か、かっぱ!」 一言叫んだのが見えた。 「…休み取ろう」 一人呟く兵士に仲間達が首を傾げたが、それだけだった。 閉ざされた門扉の向こうでは、複数の声が 「ほら! スベッたじゃん!」 「この罰ゲーム、キッツイわー」 「んじゃ、次はねー」 などと騒いでいたが、聞き取ったものはいなかった。 ---- ***今回の付与魔術 &bold(){【真っ向勝負といこう】} (ワン・オン・ワン) 素材:対象となる建造物を作製する分と同量の資材。 一年以内に建造された建物。(施術対象) 効果:外側からの攻撃に対して倍の耐久性を持たせる。 詠唱:「正々堂々! 正面からかかってこい! 【真っ向勝負といこう】!」 代価:内側からの攻撃に対しては半分の強度しか保てなくなる。 ---- [[←09に戻る>http://www8.atwiki.jp/uss_trpg/pages/45.html]] 11へ進む→To be continued... ----  
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう10} ... 著 / 優有 それなりに大きな街なら、出入口に関所を設けている。 街道から来る者達を受け入れるために。 そしてまた時に追い払うために。 そこでは兵士たちが街の治安のために日々戦っている。 ヴォダースカヤから伸びる南街道への関所。 ここでもそれは例外ではない。 例外ではないのだが、街道から迷い込む獣は少ない。 不審な者達。例えば盗賊などは関所に来ない。 街に来るのなら、もっとどこか忍び込みやすい場所を使うだろう。 魔物に関しても、ダンジョン踏破依頼が出される。 わざわざダンジョンから出てきて街に辿り着くものは稀だ。 そもそも南街道は街同士を繋ぐためだけのもの。 街の距離が近いこともあり、間には村もない。 必然、関所を利用するものはお互いの街から訪れる。 こうした理由もあり、この関所の兵士達は日々戦っている。 退屈、そして眠気と。 それらの敵と戦うため、様々な策で備える。 ボードゲーム、カード、飲み比べ、素手戦闘。 まぁ、ひらたく言えば当番をギャンブルで決めて、 決まらなければ腕力で決めている。 そうして負けた彼らは、いつも通り酒を片手に敵と戦っていた。 彼らにとって旅人は敵を追い払うものだ。 冒険者達が二頭立ての馬車と現れても、仕事が来た億劫さより、 退屈から解放される喜びのほうが強かった。 「やぁ、兵士さん。また会ったね」 御者をしている商人が軽く手を挙げて声をかける。 「あぁ、今回の仕入れは終わりか。また酒持って来てくれよ」 「覚えていたら持って来よう。手続きを頼むよ」 愛想の良いこの商人は、一定周期で隣街から来て帰っていく。 「今度は何を仕入れたんだ? また変なモン見つけたのか?」 運ばれる物のチェックは門番の仕事だ。ここではあまり無いが、 持ち出しの禁じられている物を見つけて没収したり、捕縛することもある。 「いえ、今回はハズレでした。次に期待ですよ」 この商人は街に来るたびに他の商人とやりとりしている。 街に来るのはそれが目当てのことが多い。 趣味なのか仕入れなのか、彼はたまに奇妙な物を積んでいることがある。 子供大のセミの抜け殻。 髪の長い不気味な人形。 巨大生物の骨。 羽根の生えた猫の彫像。 様々だ。 兵士たちは護衛に距離を取らせて、積荷を調べる。 どうやら今回は本当にハズレらしく、いくつかの家具と、保存の効く食品くらいだった。 「今回は何を狙ってたんだ?」 「かっぱーたんの彫像ですよ。残念ながら先を越されてしまいました」 兵士はその言葉に首を傾げつつも、 「そりゃあ残念だったなー」 などと適当に相槌を返し、積荷のチェックを終える。 かっぱーたんとはstの下の単位の銅の硬貨のことだ。 ct百枚でst一枚の価値になる。 薄い安酒なら10ctで飲めるので、あまり給料の高くない兵士にとっては安酒の代価という印象しかない。 その彫像と言われても、全く想像がつかないのは仕方ないだろう。 「所有者に金運をもたらすと言われている妖精像ですわね」 「ええ。この街の細工師が造ったらしいのです」 冒険者の一人、ヒラヒラと赤い服の娘が答える。 狐耳をピクピクさせているのは、その話に興味をそそられているためだ。 金儲けにまつわる逸話は多い。 持っていると客や金を増やすと言われる、手招きする猫の像や酔っ払った狸の像。 その中の一つに、硬貨の妖精の逸話がある。 硬貨の妖精から加護を受けると、生涯その硬貨に困ることがなくなるというものだ。 ctの妖精の目撃談は多く、幼い少女のような姿と言われている。 その姿を彫像にしたものが、『かっぱーたんの彫像』なのだが、 何故か硬貨単位のctではなく、幼児言葉のような言い方をされることが多い。 うわさ話程度のものだったが、最近はその彫像を求める者が増え、わざわざ作製依頼を出す者さえいる。 だが関所にいる兵士にはそうした街中の変化は伝わり難い。 「あー、まぁ、変なモンを造る奴がいるのはわかった。積荷のチェックはオーケーだ」 変な物を好きな奴が、それについて語り出すと面倒臭くなる。 狐娘にそんな匂いを感じ取り、兵士はチェックを切り上げて割り符を用意するように仲間に告げる。 「では、良い旅を」 他の兵士が商人に割り符を渡す。 この関所の場合は、行き先が限られているため通行証でなくても用をなす。 馬車たちを見送り、また退屈との戦いが始まる。 ゆううつになるのを酒で誤魔化し、何かツマミでも作ろうかとした時、 閉じていく門扉の影に何かが見えた。 手の平に収まるくらいの、小さな少女。 綺麗なドレスに身を包み、その両手には一枚のctが抱えられていた。 門が閉じる瞬間、その小さな少女がctを頭に乗せて、 「か、かっぱ!」 一言叫んだのが見えた。 「…休み取ろう」 一人呟く兵士に仲間達が首を傾げたが、それだけだった。 閉ざされた門扉の向こうでは、複数の声が 「ほら! スベッたじゃん!」 「この罰ゲーム、キッツイわー」 「んじゃ、次はねー」 などと騒いでいたが、聞き取ったものはいなかった。 ---- ***今回の付与魔術 &bold(){【真っ向勝負といこう】} (ワン・オン・ワン) 素材:対象となる建造物を作製する分と同量の資材。 一年以内に建造された建物。(施術対象) 効果:外側からの攻撃に対して倍の耐久性を持たせる。 詠唱:「正々堂々! 正面からかかってこい! 【真っ向勝負といこう】!」 代価:内側からの攻撃に対しては半分の強度しか保てなくなる。 ---- [[←09に戻る>http://www8.atwiki.jp/uss_trpg/pages/45.html]] [[11へ進む→>http://www8.atwiki.jp/uss_trpg/pages/47.html]] ----  

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: