USS 小説11

「USS 小説11」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

USS 小説11」(2015/07/03 (金) 00:25:54) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう11} ... 著 / 優有 南街道は関所で兵士が退屈する程、利用者の少ない街道だ。 必然的に道の状態もあまり良くはない。 一応踏み固められているし、道としての体裁は整っているのだが、 石畳のように平坦とは言えない。 雨が降れば水溜りもできるし、倒木などで通りにくくなっていることもある。 道自体も歪んでいたり、道幅も一定ではない。 このため視界が常に開けてはおらず、馬車がすれ違うことができない場所も多い。 特に森の近くになると木の根が道にせり出している箇所もあるため、徐行せざるを得ない。 「いや、倒木があると聞いた時は焦りましたよ」 街道の途中にある水場で、彼らは馬車を止めて休息を取っていた。 だが、そこに着く前に道が倒木で塞がれており、馬車を一度止めることになった。 整備の整った道でも、たまに倒木はある。 動物や自然原因のことがほとんどではあるが、人為的な理由の時がある。 山賊や盗賊と言われる者が、馬車の足を止めるために仕掛けた場合などだ。 街道では商人や旅人が襲われることは少なくない。 被害者数は年々増えており、倒木と聞いて不安を感じるのも無理からぬことだった。 「あー、ブッ飛ばしちまったがマズかったかな?」 鹿の獣人が馬の獣人に尋ねる。 「いや、問題ないだろう。あそこまで砕いてあれば、邪魔にもならないだろうしな」 倒木を斧で砕き散らしたため、多少周辺の木々に破損が出ていたが、それだけのことだ。 せいぜい周辺の動物が退避したくらいだろう。 「猪が暴れて倒したようだが、様子が変だったな」 実際に猪を見たわけでもない馬の獣人の言葉だが、確信のこもったものだった。 「蛇のようなものに襲われたようだった。 正確ではないが、少なくとも20匹以上はいただろう。 猪が逃げた方向へ追っていった跡が残っていたが、気をつけた方が良いな」 冒険者といえども得手不得手がある。 鹿の獣人のように戦闘を得意とするものでも、馬の獣人のように痕跡から生物の動きを辿ることは出来ない。 「この辺って、猪もいるんですか?」 「猟の依頼が出ることもある。むしろ問題は蛇っぽい跡の方だな。 集団で猪を襲うというのは異常だ。数も多いし、気をつけたほうが良いな」 野生生物は物量が多いものほど危険だ。 単体の大型獣より蛇玉。蛇玉よりも軍隊アリと、小さな生物のほうが対処は困難になる。 ドラゴンのように、遭遇した時点で死が確定するような生物は別だが。 「美味しい」 そんな会話を全く気にせず、マイペースにオニギリを頬張り白熊娘が嬉しそうな笑顔を見せる。 彼女が食べているのは、今回の依頼でパーティを組んだ猫の獣人が用意した弁当だ。 話ながら配られていたが、早くも手をつけている。 「お姉様、お行儀が良くありませんわよ…あら?」 この世界にも弁当箱は当然ある。 冒険者の場合は冒険者の宿から買う事が多く、大抵は使い捨ての雑な木箱や、大きな葉を巻いた物が多い。 今回用意された物も、冒険者の宿が使っている弁当箱だった。 だが狐娘は中身を確認するよりも前に、普段とは明らかに違う事に気づいた。 「美味しい」 ほくほくと笑顔で食べ続ける白熊娘へのツッコミをやめ、弁当箱を手に取る。 宿を出てからそれなりに時間たっているのに、温かさが伝わってくる。 「あ、これスゲェな」 「うむ、これはたいしたものだな」 弁当が温かい。 これは大事件である。 「あ、良かったら食べてください」 用意した本人は全くそれを理解している様子もなく、商人にも弁当を渡している。 受け取った商人も、温かい弁当に興味を持ち蓋を開く。 まるで作りたてのように、湯気が立ち上った。 中にあったのは色とりどりの食材。 黄色と白のグラデーションが見事な出汁巻き玉子。 赤、白、茶の根菜を炒めた胡麻和え。 ありふれた保存食である魚の干物は、一口サイズに切り揃えられている。 鮮やかな緑の葉は軽く湯通ししてあり、辛味の強い黄色い薬味が添えられている。 五穀米のオニギリは海苔が巻かれ、手にとっても食べやすい。 一口かじると、海苔の風味と米の柔らかさが温かさと共に広がる。 混ぜ込まれた筍と揚げが食感の変化を与え、旨味を伝えてくる。 赤く酸味の強い果実がペーストされて添えられており、それを口に運ぶと改めて料理の味わいを楽しめる。 端に置かれた練り物はデザートだ。 芋と砂糖を練り団子状にしたものと、同様に豆を団子状にしたもの。 それらの料理の詰まった弁当を、猫の獣人が淹れた熱めのお茶とともに平らげていく。 「美味しい」 白熊娘の言葉を否定する者は一人もいなかった。 食べ終わるまで、皆口数が減ってしまった。 片付けをしている猫の獣人を見ながら、なんとなく食後も静かに満足感に浸っていると、 ガサガサッ! 弁当に惹かれて寄ってきたのか、森からそれが姿を見せた。 「…僕の知ってる猪と違う」 耳を伏せて呟いた言葉に、皆が同じ気持ちだった。 ---- ***今回の付与魔術 &bold(){【平坦だからいいんじゃない】} (フラットステータス) 素材:よく撹拌された土や砂など。(付与対象) 効果:地均し用の付与魔術。均した場所に施術対象を散布すると、 その場所をコーティングして植物などが生えなくさせる。 また、地震などによる隆起を防ぐ。撹拌した時間が長いほど効果年数が長くなる。 詠唱:「山とか谷間とか必要ないから! 【平坦だからいいんじゃない】!」 代価:施術した素材を撹拌したのと同じ時間分移動させないと効果が発効されない。 ---- [[←10に戻る>http://www8.atwiki.jp/uss_trpg/pages/46.html]] 12へ進む→To be continued... ----  
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう11} ... 著 / 優有 南街道は関所で兵士が退屈する程、利用者の少ない街道だ。 必然的に道の状態もあまり良くはない。 一応踏み固められているし、道としての体裁は整っているのだが、 石畳のように平坦とは言えない。 雨が降れば水溜りもできるし、倒木などで通りにくくなっていることもある。 道自体も歪んでいたり、道幅も一定ではない。 このため視界が常に開けてはおらず、馬車がすれ違うことができない場所も多い。 特に森の近くになると木の根が道にせり出している箇所もあるため、徐行せざるを得ない。 「いや、倒木があると聞いた時は焦りましたよ」 街道の途中にある水場で、彼らは馬車を止めて休息を取っていた。 だが、そこに着く前に道が倒木で塞がれており、馬車を一度止めることになった。 整備の整った道でも、たまに倒木はある。 動物や自然原因のことがほとんどではあるが、人為的な理由の時がある。 山賊や盗賊と言われる者が、馬車の足を止めるために仕掛けた場合などだ。 街道では商人や旅人が襲われることは少なくない。 被害者数は年々増えており、倒木と聞いて不安を感じるのも無理からぬことだった。 「あー、ブッ飛ばしちまったがマズかったかな?」 鹿の獣人が馬の獣人に尋ねる。 「いや、問題ないだろう。あそこまで砕いてあれば、邪魔にもならないだろうしな」 倒木を斧で砕き散らしたため、多少周辺の木々に破損が出ていたが、それだけのことだ。 せいぜい周辺の動物が退避したくらいだろう。 「猪が暴れて倒したようだが、様子が変だったな」 実際に猪を見たわけでもない馬の獣人の言葉だが、確信のこもったものだった。 「蛇のようなものに襲われたようだった。 正確ではないが、少なくとも20匹以上はいただろう。 猪が逃げた方向へ追っていった跡が残っていたが、気をつけた方が良いな」 冒険者といえども得手不得手がある。 鹿の獣人のように戦闘を得意とするものでも、馬の獣人のように痕跡から生物の動きを辿ることは出来ない。 「この辺って、猪もいるんですか?」 「猟の依頼が出ることもある。むしろ問題は蛇っぽい跡の方だな。 集団で猪を襲うというのは異常だ。数も多いし、気をつけたほうが良いな」 野生生物は物量が多いものほど危険だ。 単体の大型獣より蛇玉。蛇玉よりも軍隊アリと、小さな生物のほうが対処は困難になる。 ドラゴンのように、遭遇した時点で死が確定するような生物は別だが。 「美味しい」 そんな会話を全く気にせず、マイペースにオニギリを頬張り白熊娘が嬉しそうな笑顔を見せる。 彼女が食べているのは、今回の依頼でパーティを組んだ猫の獣人が用意した弁当だ。 話ながら配られていたが、早くも手をつけている。 「お姉様、お行儀が良くありませんわよ…あら?」 この世界にも弁当箱は当然ある。 冒険者の場合は冒険者の宿から買う事が多く、大抵は使い捨ての雑な木箱や、大きな葉を巻いた物が多い。 今回用意された物も、冒険者の宿が使っている弁当箱だった。 だが狐娘は中身を確認するよりも前に、普段とは明らかに違う事に気づいた。 「美味しい」 ほくほくと笑顔で食べ続ける白熊娘へのツッコミをやめ、弁当箱を手に取る。 宿を出てからそれなりに時間たっているのに、温かさが伝わってくる。 「あ、これスゲェな」 「うむ、これはたいしたものだな」 弁当が温かい。 これは大事件である。 「あ、良かったら食べてください」 用意した本人は全くそれを理解している様子もなく、商人にも弁当を渡している。 受け取った商人も、温かい弁当に興味を持ち蓋を開く。 まるで作りたてのように、湯気が立ち上った。 中にあったのは色とりどりの食材。 黄色と白のグラデーションが見事な出汁巻き玉子。 赤、白、茶の根菜を炒めた胡麻和え。 ありふれた保存食である魚の干物は、一口サイズに切り揃えられている。 鮮やかな緑の葉は軽く湯通ししてあり、辛味の強い黄色い薬味が添えられている。 五穀米のオニギリは海苔が巻かれ、手にとっても食べやすい。 一口かじると、海苔の風味と米の柔らかさが温かさと共に広がる。 混ぜ込まれた筍と揚げが食感の変化を与え、旨味を伝えてくる。 赤く酸味の強い果実がペーストされて添えられており、それを口に運ぶと改めて料理の味わいを楽しめる。 端に置かれた練り物はデザートだ。 芋と砂糖を練り団子状にしたものと、同様に豆を団子状にしたもの。 それらの料理の詰まった弁当を、猫の獣人が淹れた熱めのお茶とともに平らげていく。 「美味しい」 白熊娘の言葉を否定する者は一人もいなかった。 食べ終わるまで、皆口数が減ってしまった。 片付けをしている猫の獣人を見ながら、なんとなく食後も静かに満足感に浸っていると、 ガサガサッ! 弁当に惹かれて寄ってきたのか、森からそれが姿を見せた。 「…僕の知ってる猪と違う」 耳を伏せて呟いた言葉に、皆が同じ気持ちだった。 ---- ***今回の付与魔術 &bold(){【平坦だからいいんじゃない】} (フラットステータス) 素材:よく撹拌された土や砂など。(付与対象) 効果:地均し用の付与魔術。均した場所に施術対象を散布すると、 その場所をコーティングして植物などが生えなくさせる。 また、地震などによる隆起を防ぐ。撹拌した時間が長いほど効果年数が長くなる。 詠唱:「山とか谷間とか必要ないから! 【平坦だからいいんじゃない】!」 代価:施術した素材を撹拌したのと同じ時間分移動させないと効果が発効されない。 ---- [[←10に戻る>http://www8.atwiki.jp/uss_trpg/pages/46.html]] [[12へ進む→>http://www8.atwiki.jp/uss_trpg/pages/48.html]] ----  

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: