USS 小説14

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&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう14} ... 著 / 優有 いつの間に済ませたのか、宿を取ってあるという馬の獣人に連れられて訪れたのは、 冒険者の宿ではなかった。 冒険者の宿はそのほとんどが酒場と兼業だ。 その客たちは酒を飲んで一晩中騒いでることもあるため、 何のために宿を取っているのかわからない者もいる程だ。 簡易宿泊施設とでもいうべき物もある。 大部屋に雑魚寝するだけの、毛布があれば上等という宿。 だが、彼らが訪れたのはそのどちらとも違う。 「場違い」 白熊娘が呟くのを聞き、鹿の獣人が呻く。 「認めたくねぇが、宿を間違えてねぇかアニキ?」 目の前で笑顔を見せる青年を睨みつけているのは、 居心地の悪さを隠すためだろう。 二人に睨まれながらも笑顔を見せる青年は、 うやうやしくドアを開けて中へと彼らを促す。 「あ、どうも」 猫の獣人が反射的に頭を下げるが、 狐娘と馬の獣人は目もくれずに通りすぎる。 中に入ると柔らかな絨毯が敷き詰められており、 品の良い革製のソファとテーブルが置かれている。 その上にあるのはシガーケースと灰皿。 何の本かはわからないが、数冊の本も詰まれている。 カウンターには絵に描いたような老執事がいた。 「お帰りなさいませ」 「ご苦労」 当たり前のように受け答えをし、 部屋の鍵を受け取る姿に一同がツッコミたくなる。 「朝食は8時に。後ほど私の部屋にはワインを。 では諸君、まずは部屋に荷物を置いて来よう」 老執事に背を向けて指示を出し、当然のように彼は歩き出す。 何故か様になっているのが一同を不安にさせるが、 場の雰囲気に呑まれたのか何も言葉が出ない。 「私の部屋にはフルーツを願いますわ。朝食はパンにしてくださいな」 老執事が頭を下げるのを全く無視したままで歩いていく二人。 何故か肩をいからせて周囲を睨みながらついて行く二人。 その四人に囲まれてビクビクしている猫の獣人。 明らかにこの宿には奇異な集団だが、態度に出す従業員はいなかった。 しばらくのち、狐娘は頭を抱えていた。 フルーツを摘む白熊娘にツッコミを入れる気力が無いほど、 後悔をしていた。 「迂闊なことを言う物ではありませんわね」 ベッドの上で壁に押し付けた頭の上では、 狐耳が何も聞きたく無いと言いたげに伏せられている。 風呂上がりのためか顔が赤く、 頭から湯気が出ているようにも見える。 だが二人でフルーツを食べる白熊娘には気にした様子もない。 狐娘と同じように真っ赤になり、声をかけられずにいるのは猫の獣人だ。 何故彼がこの部屋にいるのかというと、性別で部屋が分かれたためだ。 白熊娘は彼が女性だと思いこんでいる。 そうさせたのは狐娘が誤魔化したためなのだが、 馬の獣人も鹿の獣人も彼を女性扱いしていたため、このような部屋割りになった。 「あ、あの…」 「聞こえませんわ。全く聞こえませんわ。 何にも聞こえませんから、振り向きませんわよ」 猫の獣人の声にぷるぷると首を振り、耳を塞いで答える。 自分で蒔いた種ではあるが、その結果を見て顔色を変えない程に彼女も太々しくはない。 彼女が頭を抱えているのは、風呂が一つの原因だ。 この宿のように、部屋毎に風呂がある宿はあまり多くはない。 大抵の宿は共有浴場や、近くの公衆浴場を使わせる。 部屋に風呂が付いていると確認した白熊娘は迷わず一番風呂を宣言。 一緒に入ろうと猫の獣人を誘ったが、これには二人とも慌てた。 もし男だとバレたら流石に殺されかねない。 どうにか食い止めて風呂へと白熊娘を追いやり、 訪れた従業員からフルーツを受け取る。 それに手をつけるよりも猫の獣人を男部屋に移すべきと思い、 どうやって馬鹿二人を納得させようかと二人で思案を巡らす。 だが答えが出るより早く、白熊娘が風呂から出てきた。 身体を拭いもせずに出てきた白熊娘を目にして、 真っ赤になった猫の獣人を追い出そうと考えたが、 「風呂空いた」 という白熊娘の言葉に逃げるように風呂へと向かわれてしまった。 状況を改善しようと努力するが、成果が出る兆しもないうちに着替えを済ませた猫の獣人が戻った。 赤いままの顔にツッコミを入れる前に、身体を拭かれてさっぱりした白熊娘に風呂へと促される。 二人を残して風呂に行くのは不安しかなかったが、折角の良い宿の風呂。 何より徒労感に囚われていた彼女は、 考えないことにしてゆっくりと風呂を楽しむことにした。 そして風呂から上がった彼女は、その様を見せられて頭を抱えた。 白熊娘は可愛いもの、良い香りのものが好きだ。 普段二人で宿を取った際の定位置には、猫の獣人がいる。 いつも活用している労いとして多少相手をしているのだが、 今日は猫の獣人がその役を担っている。 風呂上がりで何も纏っていない白熊娘の膝の上、抱きしめられて頭を撫でられている猫の獣人。 その状況から逃げることも出来ず、赤い顔で身体を縮こませている。 男である彼を同じ状況にした後ろめたさと、 普段の自分の姿を見せられた恥ずかしさ。 「この辱めは、必ず猫の方にお返ししますわ」 その理不尽な誓いはあまりに小声で、二人の耳には届かなかった。 ---- ***今回の付与魔術 &bold(){【品位は香りに現れる】} (ウェア・ア・フレグランス) 素材:果実や草花、オイルなど。 効果:対処の液体に素材の香りをつける。 詠唱:「泥濘、土塊、草花、果実。【品位は香りに現れる】」 代価:素材が消滅する。効果中、施術者はその素材の香りにアレルギー反応を起こし、    くしゃみが出るようになる。 ---- [[←13に戻る>http://www8.atwiki.jp/uss_trpg/pages/50.html]] 15へ進む→to be continued... ----  
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう14} ... 著 / 優有 いつの間に済ませたのか、宿を取ってあるという馬の獣人に連れられて訪れたのは、 冒険者の宿ではなかった。 冒険者の宿はそのほとんどが酒場と兼業だ。 その客たちは酒を飲んで一晩中騒いでることもあるため、 何のために宿を取っているのかわからない者もいる程だ。 簡易宿泊施設とでもいうべき物もある。 大部屋に雑魚寝するだけの、毛布があれば上等という宿。 だが、彼らが訪れたのはそのどちらとも違う。 「場違い」 白熊娘が呟くのを聞き、鹿の獣人が呻く。 「認めたくねぇが、宿を間違えてねぇかアニキ?」 目の前で笑顔を見せる青年を睨みつけているのは、 居心地の悪さを隠すためだろう。 二人に睨まれながらも笑顔を見せる青年は、 うやうやしくドアを開けて中へと彼らを促す。 「あ、どうも」 猫の獣人が反射的に頭を下げるが、 狐娘と馬の獣人は目もくれずに通りすぎる。 中に入ると柔らかな絨毯が敷き詰められており、 品の良い革製のソファとテーブルが置かれている。 その上にあるのはシガーケースと灰皿。 何の本かはわからないが、数冊の本も詰まれている。 カウンターには絵に描いたような老執事がいた。 「お帰りなさいませ」 「ご苦労」 当たり前のように受け答えをし、 部屋の鍵を受け取る姿に一同がツッコミたくなる。 「朝食は8時に。後ほど私の部屋にはワインを。 では諸君、まずは部屋に荷物を置いて来よう」 老執事に背を向けて指示を出し、当然のように彼は歩き出す。 何故か様になっているのが一同を不安にさせるが、 場の雰囲気に呑まれたのか何も言葉が出ない。 「私の部屋にはフルーツを願いますわ。朝食はパンにしてくださいな」 老執事が頭を下げるのを全く無視したままで歩いていく二人。 何故か肩をいからせて周囲を睨みながらついて行く二人。 その四人に囲まれてビクビクしている猫の獣人。 明らかにこの宿には奇異な集団だが、態度に出す従業員はいなかった。 しばらくのち、狐娘は頭を抱えていた。 フルーツを摘む白熊娘にツッコミを入れる気力が無いほど、 後悔をしていた。 「迂闊なことを言う物ではありませんわね」 ベッドの上で壁に押し付けた頭の上では、 狐耳が何も聞きたく無いと言いたげに伏せられている。 風呂上がりのためか顔が赤く、 頭から湯気が出ているようにも見える。 だが二人でフルーツを食べる白熊娘には気にした様子もない。 狐娘と同じように真っ赤になり、声をかけられずにいるのは猫の獣人だ。 何故彼がこの部屋にいるのかというと、性別で部屋が分かれたためだ。 白熊娘は彼が女性だと思いこんでいる。 そうさせたのは狐娘が誤魔化したためなのだが、 馬の獣人も鹿の獣人も彼を女性扱いしていたため、このような部屋割りになった。 「あ、あの…」 「聞こえませんわ。全く聞こえませんわ。 何にも聞こえませんから、振り向きませんわよ」 猫の獣人の声にぷるぷると首を振り、耳を塞いで答える。 自分で蒔いた種ではあるが、その結果を見て顔色を変えない程に彼女も太々しくはない。 彼女が頭を抱えているのは、風呂が一つの原因だ。 この宿のように、部屋毎に風呂がある宿はあまり多くはない。 大抵の宿は共有浴場や、近くの公衆浴場を使わせる。 部屋に風呂が付いていると確認した白熊娘は迷わず一番風呂を宣言。 一緒に入ろうと猫の獣人を誘ったが、これには二人とも慌てた。 もし男だとバレたら流石に殺されかねない。 どうにか食い止めて風呂へと白熊娘を追いやり、 訪れた従業員からフルーツを受け取る。 それに手をつけるよりも猫の獣人を男部屋に移すべきと思い、 どうやって馬鹿二人を納得させようかと二人で思案を巡らす。 だが答えが出るより早く、白熊娘が風呂から出てきた。 身体を拭いもせずに出てきた白熊娘を目にして、 真っ赤になった猫の獣人を追い出そうと考えたが、 「風呂空いた」 という白熊娘の言葉に逃げるように風呂へと向かわれてしまった。 状況を改善しようと努力するが、成果が出る兆しもないうちに着替えを済ませた猫の獣人が戻った。 赤いままの顔にツッコミを入れる前に、身体を拭かれてさっぱりした白熊娘に風呂へと促される。 二人を残して風呂に行くのは不安しかなかったが、折角の良い宿の風呂。 何より徒労感に囚われていた彼女は、 考えないことにしてゆっくりと風呂を楽しむことにした。 そして風呂から上がった彼女は、その様を見せられて頭を抱えた。 白熊娘は可愛いもの、良い香りのものが好きだ。 普段二人で宿を取った際の定位置には、猫の獣人がいる。 いつも活用している労いとして多少相手をしているのだが、 今日は猫の獣人がその役を担っている。 風呂上がりで何も纏っていない白熊娘の膝の上、抱きしめられて頭を撫でられている猫の獣人。 その状況から逃げることも出来ず、赤い顔で身体を縮こませている。 男である彼を同じ状況にした後ろめたさと、 普段の自分の姿を見せられた恥ずかしさ。 「この辱めは、必ず猫の方にお返ししますわ」 その理不尽な誓いはあまりに小声で、二人の耳には届かなかった。 ---- ***今回の付与魔術 &bold(){【品位は香りに現れる】} (ウェア・ア・フレグランス) 素材:果実や草花、オイルなど。 効果:対処の液体に素材の香りをつける。 詠唱:「泥濘、土塊、草花、果実。【品位は香りに現れる】」 代価:素材が消滅する。効果中、施術者はその素材の香りにアレルギー反応を起こし、    くしゃみが出るようになる。 ---- [[←13に戻る>http://www8.atwiki.jp/uss_trpg/pages/50.html]] [[15へ進む→>http://www8.atwiki.jp/uss_trpg/pages/52.html]] ----  

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