USS 小説18

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&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう18} ... 著 / 優有 肉華は捕食により花弁を増やし、 それが離れることで肉蛇が溢れていたらしい。 犠牲になった兵士と同量の体積が増した分が肉蛇となり、 近くにいた他の兵士たちの足下へと這い寄る。 先ほどまでとは違い、兵士たちはそれらを打ち払い、 自身の身を守っている。 ここまでの進軍によって、肉華にも陽の光が差している。 洞穴は既に切り拓かれ、ただの窪地のように名残だけを残していた。 壁などを含め、全てを破壊した訳ではないが。 治療中だったを除く全てが、かつて洞穴だった場所で待機していた。 ダンジョンの残骸とも言える肉壁。 あるいはその床に触れ、その瞬間を待っている。 その緊迫した前線の様子も見方によっては、 「なんでこんなところに行列ができてますの?」 という狐娘の感想がしっくりくる状態だ。 それでも、彼らが運んできた負傷兵たちは、その行列に並ぼうと身を捩る。 先程まで治療に当たっていた兵士や治癒術師たちは、 ダンジョンの核発見の報を受けて治療を中止。 負傷兵を見捨てて、その行列に並んでいる。 「なんだか楽しそうだな。私たちも並ぶか?」 その姿に不快感を示す鹿の獣人とは違い、馬の獣人は楽しそうだ。 「あ」 両手に人をぶら下げた状態の白熊娘が声を漏らした直後、 行列の奥で何かが弾けた音が響く。 行列が騒ぎ出し周囲から隠すように身を丸める。 各々手にした物を確認しているようだ。 「…ダンジョンが踏破されたみたいですね」 ダンジョンを踏破した時、外への転移が起こる。 これは異世界の産物であるダンジョンが、 元々ある場所に帰るために起こる副作用だと言われる。 だが今回のように、既に外との境が無い場合は、転移は起こらない。 この世界との境界が曖昧になるため、 戻すべき対象が定義できなくなるためなのかもしれない。 もちろん、そこまでダンジョンを破壊することは容易ではないため、 ほとんどの冒険者たちはそんなことはしない。 そのためダンジョンが破壊された時、 残されたダンジョンの欠片が魔力の篭った石と化す事を冒険者で知る者はほとんどいない。 「ちくしょうっ! ハズレかよ!」 「くそっ! なんでだっ!」 ダンジョンが消え去り、手にした物を確認した兵士たちから嘆きとも怒号とも取れる叫びがあがる。 声をあげた者たちは手にした者を捨て、周囲の石を拾い集めてながら、 奥へと進んで行く。 行列はゆっくりと移動しており、奥で順番に確認をされているようだ。 少し時間が過ぎ、おそらくはハズレだと叫んだ兵士なのだろう。窪みの縁を歩いてくる者がいる。 窪みに並んだ行列を避けるためか、どこからかよじ登ったらしい。 数人は彼らと目があったり、声をかけられたりもしたのだが返答は無く、 開けた場所に並んで行く。 疲弊しているだけでなく、落胆のせいもありやつれて見える。 「で、何をやってんだ? こいつら?」 鹿の獣人の問いに答えた訳では無いのだろうが、 行列をかき分けるように1人の兵士が抜け出てくる。 他の兵士同様に疲弊しており、傷も負ったままだが、 石を詰めた袋どころか何の荷物も持っていない。 彼は整列する兵士たちから目をそらし、ゆっくりと去って行った。 その間にも兵士は並び、静寂を保っている。 傷の治療をせず、ただ並んでいる姿は不気味でさえある。 やがて行列がなくなり、質の良い鎧姿の兵士にソファを担がせた貴族が姿を見せた。 彼はソファの上で満足気な笑みを浮かべ、手にした赤い果実のような物を眺めている。 「ぶほほっっ! 今回は当たりでしたね~。皆さんにも特別褒賞を出しますよ?」 並んだ兵士たちに目を向けることなく、その物品を見つめながら、 貴族は喜びの声を漏らす。 ダンジョンが消える時に残される、遺物とも言われる宝物。 踏破に挑んだ者には等しく機会が与えられ、何かを得ることが出来る。 当たり外れがあるが。 具体的にハズレを上げれば、捨てても勝手に戻って来る魔力の篭った腰みのやカーペットの切れ端などがある。 当たりであっても、子供大のセミの抜け殻など使い道がわからない物もある。 だが好事家には良い値段で売れるため、冒険者にすれば当たりであることは間違いない。 ダンジョンは異界の神からの、この世界の神への嫌がらせ。 この世界の神への悪意が強くなればなるほどダンジョンは危険性を増していき、 比例して遺物の異常性も増して行く。 だからと言って迷わず人を生贄に捧げるのは、この貴族くらいだろうが。 負傷し汚れて疲弊した兵士たち。 負傷は無く汚れも少ないが、ソファを担がされる兵士。 無感情な表情でそれに付き従う魔術師たち。 それらの上で踏ん反り返って、悦に入っている姿。 高価な装飾品を身に付けた汚れ一つ無い貴族へと、白熊娘が呟いた言葉。 「豚」 それは実にしっくり来る言葉だった。 今回の付与魔術 【地獄へ堕ちろ】 (ステアウェイ・トゥ・ヘル) 素材:術者の身体。一部でも可。 効果:素材量に応じて対象を不運にさせる。 詠唱:「神様、一生に一度のお願いです。【地獄へ堕ちろ】」 代価:素材にした箇所は魔術による治療を行っても二度と動かせない。 この世界から排斥される覚悟がある場合、魔術師で無くても施術可能だが、全身と生命が発動の代価となる。

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