USS 小説21

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font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう21} ... 著 / 優有 パーティとして初めての依頼から3日が過ぎた。 パーティになったからと言って特に変わる事もなく、相変わらず馬鹿兄弟、悪魔姉妹として他の客たちに認識されている。 変化があったのは猫の獣人についてだが、そもそも彼が増えた事自体が変化だ。 「なんで女性用の服を着せたがるんですかっ!」 今朝もホールには猫の獣人の嘆きが響く。 宿代と食事を無料にするという条件で、彼はこの店の手伝いをしている。 その交渉をした狐娘は1日1回デザートを1品無料で貰う事になっており、 「誰も損をしない契約でしょう?」 と言っていた。 確かに損はしていないが、何かを失っている気がする。 ウェイトレス服やメイド服を着せられた猫の獣人はそう嘆いていたが。 「男性用の制服もあるじゃないですかっ。なんの嫌がらせですかっ!」 「嫌がらせではなく、お客様からのリクエストです。 因みに昨日着ていただいたメイド服はお客様からのプレゼントなので、いつでも」 「着ませんよっ!?」 何故サイズの合うメイド服が用意出来たのか、誰が用意したのか。 ツッコミどころは多いのだが、客のほとんどは気にしない。 むしろ、どんな服が似合うか? と真面目に語りあうような客層が増えた。 だが、彼は一応男の子である。 温厚な性格で根が善良なのか、怒りを持続するのが苦手なようだが。 連日、女装させられて酌をさせられたり、尻や尻尾を撫でられれば彼とて我慢が限度を超える。 「この依頼を受けますっ! 泊まり込みですよねっ!」 そして忘れている店員も多いが、彼は冒険者だ。 依頼を受けるのを拒むには、それなりに正当な理由がいる。 一部の客から、 「なんで彼女を危険な目にあわせるんだ」 と批難の声も上がったが、いろいろ間違っているため聞き入れては貰えなかった。 依頼は、ある屋敷の地下調査だ。 夜毎に何か聞こえる音が、だんだん大きくなっているという。 ヴォダースカヤという街は乱開発とダンジョン発生により、地下の状況が変化してきた。 地下にはどこに何があるのか、正確な把握がされていない。 一応、探索者ギルドが魔術探査などで空間が出来ていないか、 魔物などの大型生物が沸いていないかなどの確認を定期的に行っている。 だが街の規模が大きくなるにつれ、その周期が長くなっているのも実状だ。 そのため時折住人や地主などが、調査を待っているよりも依頼をした方が早いと感じる事もある。 今回の依頼もそんなケースだ。 少し偏屈さを感じさせる老人は、不快さを隠そうともしない。 「獣人なんぞに、納得の行く仕事ができるとも思えんが」 と言い捨て、メイドに後を任せて去ってしまった。 メイドの衣装に見覚えがある事には気がつかないフリをしながら、猫の獣人が依頼内容を確認する。 ここ一月ほど、夜中になると地下から音がするが、音源が見つからない。 決まった時間に聞こえるだけで、他には何の現象もない。 特に魔物の姿を見ることも無く、気にしなくても良いくらいに彼女は思っているようだ。 依頼主である老人は、孫娘が心配なために依頼を出したらしい。 息子夫婦も同居しているらしいのだが、基本的には家にいる事が少ないため、 現象にも気づいていないだろうとのことだった。 老人は息子に仕事を譲り引退した商人で、この屋敷は息子がこの街に移り住む際に建てたらしい。 まだ幼い孫娘が珍しい生き物を見るように彼らを見ていたが、 老人から近寄らないように言われているのだろう。 抱えた人形に話しかけながら逃げて行った。 ツギハギだらけの不気味な人形なのは見なかった事にする。 「で? 音はどこからしてんだ?」 「…それを調べていただきたいのですが」 鹿の獣人の言葉に呆れた顔を見せるが、屋敷の地下へと向かうメイド。 商人の家だけあり、地下は貯蔵庫になっていた。 地下室は3つあり、商品の種類や移送の時期などで使い分けている。 全てを使う事は少なく、1つは半ば空き部屋となっている。 最初に音に気づいたのは孫娘らしい。 「最初はこの部屋にいると聞こえる程度でしたが、最近は上にも音が漏れるようになりました」 音は夜中、日が変わった頃に鳴る。 何故そんな時間に孫娘が空き部屋にいたのか? という問いには、悪さをして閉じ込められていた、と返って来た。 「あんな小さな子に、やり過ぎではないかね?」 商品を勝手に開けた事に怒った母親が躾として行なったらしい。 結果、商品に勝手に触れる事は無くなったが、母親が帰ると逃げるようになったそうだ。 「皆様には、この部屋にお泊まりいただきます。食事は後ほどお持ちいたします。 屋敷内を移動される際は、彼にお申し付けください」 と、荷運び担当らしい偉丈夫を紹介された。 「「あ?」」 彼と鹿の獣人が同時に声を漏らした。 知り合いらしい。 今回の付与魔術 【私の人形は良い人形】 (マイドール・イズ・グッドール) 素材:効果対象に似た人形 効果:人形に似た相手の動きと発声を封じ、目を開けたままにする。 人形が破壊されるところを効果対象に見せないと効果がない。五分程で効果は切れる。 詠唱:「【私の人形は良い人形】。悪い人形には罰を」 代価:対象に効果が発揮されなかった場合、効果時間が切れるまで全ての人間がその人形に見える。
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう21} ... 著 / 優有 パーティとして初めての依頼から3日が過ぎた。 パーティになったからと言って特に変わる事もなく、相変わらず馬鹿兄弟、悪魔姉妹として他の客たちに認識されている。 変化があったのは猫の獣人についてだが、そもそも彼が増えた事自体が変化だ。 「なんで女性用の服を着せたがるんですかっ!」 今朝もホールには猫の獣人の嘆きが響く。 宿代と食事を無料にするという条件で、彼はこの店の手伝いをしている。 その交渉をした狐娘は1日1回デザートを1品無料で貰う事になっており、 「誰も損をしない契約でしょう?」 と言っていた。 確かに損はしていないが、何かを失っている気がする。 ウェイトレス服やメイド服を着せられた猫の獣人はそう嘆いていたが。 「男性用の制服もあるじゃないですかっ。なんの嫌がらせですかっ!」 「嫌がらせではなく、お客様からのリクエストです。 因みに昨日着ていただいたメイド服はお客様からのプレゼントなので、いつでも」 「着ませんよっ!?」 何故サイズの合うメイド服が用意出来たのか、誰が用意したのか。 ツッコミどころは多いのだが、客のほとんどは気にしない。 むしろ、どんな服が似合うか? と真面目に語りあうような客層が増えた。 だが、彼は一応男の子である。 温厚な性格で根が善良なのか、怒りを持続するのが苦手なようだが。 連日、女装させられて酌をさせられたり、尻や尻尾を撫でられれば彼とて我慢が限度を超える。 「この依頼を受けますっ! 泊まり込みですよねっ!」 そして忘れている店員も多いが、彼は冒険者だ。 依頼を受けるのを拒むには、それなりに正当な理由がいる。 一部の客から、 「なんで彼女を危険な目にあわせるんだ」 と批難の声も上がったが、いろいろ間違っているため聞き入れては貰えなかった。 依頼は、ある屋敷の地下調査だ。 夜毎に何か聞こえる音が、だんだん大きくなっているという。 ヴォダースカヤという街は乱開発とダンジョン発生により、地下の状況が変化してきた。 地下にはどこに何があるのか、正確な把握がされていない。 一応、探索者ギルドが魔術探査などで空間が出来ていないか、 魔物などの大型生物が沸いていないかなどの確認を定期的に行っている。 だが街の規模が大きくなるにつれ、その周期が長くなっているのも実状だ。 そのため時折住人や地主などが、調査を待っているよりも依頼をした方が早いと感じる事もある。 今回の依頼もそんなケースだ。 少し偏屈さを感じさせる老人は、不快さを隠そうともしない。 「獣人なんぞに、納得の行く仕事ができるとも思えんが」 と言い捨て、メイドに後を任せて去ってしまった。 メイドの衣装に見覚えがある事には気がつかないフリをしながら、猫の獣人が依頼内容を確認する。 ここ一月ほど、夜中になると地下から音がするが、音源が見つからない。 決まった時間に聞こえるだけで、他には何の現象もない。 特に魔物の姿を見ることも無く、気にしなくても良いくらいに彼女は思っているようだ。 依頼主である老人は、孫娘が心配なために依頼を出したらしい。 息子夫婦も同居しているらしいのだが、基本的には家にいる事が少ないため、 現象にも気づいていないだろうとのことだった。 老人は息子に仕事を譲り引退した商人で、この屋敷は息子がこの街に移り住む際に建てたらしい。 まだ幼い孫娘が珍しい生き物を見るように彼らを見ていたが、 老人から近寄らないように言われているのだろう。 抱えた人形に話しかけながら逃げて行った。 ツギハギだらけの不気味な人形なのは見なかった事にする。 「で? 音はどこからしてんだ?」 「…それを調べていただきたいのですが」 鹿の獣人の言葉に呆れた顔を見せるが、屋敷の地下へと向かうメイド。 商人の家だけあり、地下は貯蔵庫になっていた。 地下室は3つあり、商品の種類や移送の時期などで使い分けている。 全てを使う事は少なく、1つは半ば空き部屋となっている。 最初に音に気づいたのは孫娘らしい。 「最初はこの部屋にいると聞こえる程度でしたが、最近は上にも音が漏れるようになりました」 音は夜中、日が変わった頃に鳴る。 何故そんな時間に孫娘が空き部屋にいたのか? という問いには、悪さをして閉じ込められていた、と返って来た。 「あんな小さな子に、やり過ぎではないかね?」 商品を勝手に開けた事に怒った母親が躾として行なったらしい。 結果、商品に勝手に触れる事は無くなったが、母親が帰ると逃げるようになったそうだ。 「皆様には、この部屋にお泊まりいただきます。食事は後ほどお持ちいたします。 屋敷内を移動される際は、彼にお申し付けください」 と、荷運び担当らしい偉丈夫を紹介された。 「「あ?」」 彼と鹿の獣人が同時に声を漏らした。 知り合いらしい。 今回の付与魔術 【私の人形は良い人形】 (マイドール・イズ・グッドール) 素材:効果対象に似た人形 効果:人形に似た相手の動きと発声を封じ、目を開けたままにする。 人形が破壊されるところを効果対象に見せないと効果がない。五分程で効果は切れる。 詠唱:「【私の人形は良い人形】。悪い人形には罰を」 代価:対象に効果が発揮されなかった場合、効果時間が切れるまで全ての人間がその人形に見える。

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