USS 小説02


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

付与魔術を覚えよう02  ... 著 / 優有


ここは探索者ギルド。
ダンジョンと探索者の管理を目的として作られた、半国営組織。
寄せられる依頼は多岐に渡り、魔物の討伐から物品の調達、家事手伝いまで幅
広い。
それらの依頼を各地域の冒険者の宿に振り分け、進捗を確認したり、成功率を
しらべたり。
書類仕事だから楽だと思っていたのに、やるべき事は山のようにある。
書類まみれで前も見えず、ストレスでキレそうな時に探索者になりたいなんて
奴が訪れた。

しかもギフトチェックもしてほしいなんて、面倒くさいったらありゃしない。
どーせ頭の足りない犬系獣人に決まってる。

たまにいるんだ。勘違いしてウチに来る奴。
ここで登録されると冒険者の宿への引き渡し業務が発生する。
直接、冒険者の宿に行けっての。

仕事を更に増やされてたまるか。とっとと帰りやがれ。

そう言いたくなるのを堪えて、カウンターの飾りのガラス玉に手を置くように
伝える。
目の端で従ったのを確認して、無理やり笑顔を作る。
決まり文句を投げつけて、間抜け面を拝んでやる。

「あんた何の才能も無いわ」

そう言われて諦めるようなら根性無しなら、それこそ帰ったほうがいい。
探索者になって死なれると仕事も増えるし。

でも今回は後悔した。
カウンターの前では、あたし好みの美少年がショックを受けて呆然としている。
こんな綺麗な子がここに来たのは何年ぶりだろう。

サラサラした短い黒髪から小さくて柔らかそうな耳が覗いている。
あぁ、ショックのせいで垂れちゃった。
猫系の獣人なのかしら。
緑の混じった大きな瞳が潤んでいて、とても綺麗。
きっと探索者になることを夢見て田舎から出てきたのね。
少し日に焼けているけれど、それでも頬はスベスベしてそう。
世慣れてなさそうで、素直そうな可愛い子。
こういう子を見てると、なんだかイケナイ気分になってくる。
旅装がそれなりに様になってるけど…ワンピースとか似合いそうよね、この子。

「あの…でも、術も使えるんです。僕じゃダメですか?」
「そんなこと無ぇ! むしろストライク!」
潤んだ瞳で上目遣いに言われて、なんか口走った気がする。
背中に刺さる先輩の視線が痛いわ。
「な、何の術が使えんの?」
頭を撫でたくなるのをこらえて、出来る限りマニュアル通りに進める。
「ふよふよ術です。一番適性があるって、村に来た探索者の人に教わりました」
ふよふよ?

「それ、付与魔術のこと…? えっ? 他には?」
ふるふると横に首を振る姿を見て、私は思わず頭を抱えた。

なんてことだろう。
その探索者はなんて残酷なことをしたんだろう。
魔術師系は得意な魔術に特化する事でその力を強めていく。
だけど付与魔術しか使えない魔術師なんて、探索者としてはお荷物に近い。
そもそも付与魔術は接触魔術だ。

攻撃魔術のように離れた対象には掛けられない。
結界魔術のように範囲や集団にも掛けられない。
しかも触媒がないと効果は長続きしない上に、使うだけで反動がくる。

それなのに、効果はアイテムで代用が出来てしまう程度だから、
好んで使う魔術師も少ない。

更に言えば魔術師系の才能が高い奴で戦士系の才能がある奴は少ない。
あっても筋力がほとんど伸びないから、剣を振るう事さえ難しい。
こんな幼い美少年なら、事務員のあたしでさえ押し倒せる。

……押し倒せるな。

「ほら後輩。さっさと登録させてやれ」
ぐぼぁっ!?
せ、先輩、ツッコミにリバーブローはキツイッス。

探索者としての彼の将来は真っ暗な気がしながらも、必要な書類を出して手続
き準備をする。
「字ぃ書けんの?」
「あ、はい。村長が読み書きは出来なきゃダメだって、教えてくれました」
村長、あんたも気づいてたんなら止めてやれよ。探索者になっても付与魔術師
じゃどうしようもないって。
「これでいいですか?」
あー。なんて嬉しそうな顔をすんのよ。こりゃダメだって言えないじゃない。
村長め、あたしの同類だな。いつか酒を飲もう。
「猫系獣人、じゃなくて何の獣人か書かないとダメだぞ」
あっ、先輩酷ぇ。犬系獣人は杓子定規でやだね。男のくせに細かいったらねぇ
や。
「え? わかんないです」
「…調べたことないのか。どこの田舎から来たんだ?」
「ココラ村です」
うわー。獣人くらいしか住まないくらいの超ド田舎じゃん。よくここまで来た
ね。
「じゃあ、こっちこい。ついでだから調べてやる」
「あ、はい。お願いします」
獣人の場合、獣の種類で才能に偏りが出やすいから、思い込みで自分の才能に
気づいてない事がある。
探索者ギルドならどこにでも設置されている魔方陣で、生まれたばかりの子供
の適性判別をする事は珍しい事ではない。
本来は鑑定用の魔方陣らしいけど、便利な魔方陣を作る奴がいたもんだ。
獣人が魔方陣に乗ると、縁に獣の種類が表示されるらしい。
田舎だと魔術師自体がいないせいで魔方陣のことを知らない、なんて地域もあ
るけど。
付与魔術師なんていうイバラの道に進もうとする美少年を救えるかも、と即座
に判断したのだろう。
犬系獣人の先輩にしちゃあ、良い事を思いついたもんだね。

…あれ? あの魔方陣って裸にならなきゃいけなかったよね?

い、犬系獣人の先輩さんよぉ、良い事思いつくじゃねぇか!
あ、よだれ出た。

「お前は仕事をしてろ」
ぶるぅぅぁぁっ!?



今回の付与魔術


【おばあちゃんの知恵袋】
(アンサー・トーカー)

素材:賢者の血液。半径1メートルの円が描ける平らな同一素材の床(設置場所)。
効果:鑑定能力付与。魔方陣の上に一つだけ置いた状態で10分経過すると発動する。
   複数のものが置いてあると発動しない。
   置かれたものの情報が魔方陣の縁に表示される。
   たまに魔方陣の設置年数が表示される事がある。
代価:置かれたものの魔力を使用して発動するため、物品類は魔力を使い尽くされて破損する事がある。
   経過年数が長いほど設置年数が表示される比率が高くなる。