USS 小説03


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付与魔術を覚えよう03  ... 著 / 優有


一度この部屋も整理しないといけないな。
廃棄待ちの古い書類や書物が積み上げられた部屋の中、
仕事量を推定して溜息が漏れる。
今度後輩にやらせよう。あいつすぐサボるし。
猫系獣人は集中力が続かないから困る。

「あ、あの、どうでしたか?」
おっと、今はバカ猫より客のほうだな。

「魔術師の才能があるのは確かなようだ。
付与魔術に特化したようだが、どんな能力も使い方次第だな」
この客も猫系獣人ではあるが、
少なくとも他人の話を真面目に聞くタイプではあるらしい。
モソモソと服を着ながらではあるが、耳を揃えてこちらの話を聞いている。
バカ猫に見習わせたいものだ。
「ダンジョン探索者になるのなら、直接戦闘に長けた者と組んだほうがいい。
よければ冒険者の宿までは案内しよう」
「はい。よろしくお願いします」
うむ。いい返事だ。
バカ猫と交換できないだろうか。

カウンターに戻るとバカ猫が呪うような目でこちらを睨みつけてきた。
普段は、

「男相手に仕事なんかやってらんねぇ」

と文句ばかりの癖に、なんだと言うのか。
全くバカ猫の考えることはわからない。

「次の仲介先は?」
「…『カポナータ・カウポーナ』っす」
あの店主のところか。
気は進まないが、仕方ない。
バカ猫から引き渡しに必要な書類を取り上げ、内容を確認する。
一応、不備は無いようだな。
「行くぞ」
「あ、はい。あ、ありがとうございました」
何もしてないバカ猫にわざわざ礼を言うとは。
こいつは違う意味でバカなのかもしれん。
猫系獣人だから仕方ないか。

『カポナータ・カウポーナ』、通称『獣人居酒屋』は探索者ギルドからは南。
南大通りから三つ目の通りに店を構えている居酒屋件冒険者の宿だ。

野菜を主とした料理が多いため、獣人に限らず食肉に制限があるもの達に重宝
されている。

一階の半分が居酒屋スペースになっており、探索者用のカウンターはない。
壁には無造作に依頼が貼り出されていて、好き勝手に探索者が依頼書を剥がす。

そのやり方はやめろと言ったはずたが改善されていない。まぁ、今は後にする
か。

カウンター越しに店員に渡して依頼受領。
宿の予約や外出のやり取りも同じカウンターで行う。
昼間だと言うのに仕事をせずに呑んだくれているバカどもを無視して、
大まかな説明を済ませる。
隣で真面目な顔で頷いているその姿は、
実年齢より幼く見える。

書類に受領印を貰えば引き渡しは終了だ。
後は彼自身の問題で、俺の仕事とは関係がなくなる。
ウェイトレスを呼び止め、店主を呼んでもらう。

「とりあえず座るか」
「はい」

人間が珍しいのか、ウェイトレスが珍しいのか。
動き回る姿を目で追っては、店内のあちこちに目移りしている。
田舎から出てきたことを全身で表現していることに気づいていないらしい。
周りのバカどもが、からかいたくてウズウズしているのがわかる。

「お待たせ致しました。店主がお会いになります。こちらへ」
「じゃあな。後は自分で頑張れ」
周りの連中に可愛がられるだろうが、俺の仕事とは関係ない。
まぁ、殺されはしないだろう。

通された部屋の中では、俺の倍の重さがありそうな女がソファに寝そべってい
た。
先月来店した時よりも更に重くなったんじゃないだろうか。
その時よりもソファが頑丈そうな物に変わっている。
「ここにサインを貰おう」
香水の匂いが鼻について気持ち悪い。
なんで人間は香水を浴びるように使うのか理解に苦しむ。
「フゥン。付与魔術師なんて、珍しい職業だね? 師匠はどこのバカだい?」
「まともに師匠にはつけなかったようだな。ここにサインを」
引き渡し書類を受け取りもせずに、俺が持ったままの状態で内容を確認する。
不遜としか言いようがない。
「ココラ村ってことは魔術師もいないね。独力で覚えたんなら大したもんだ」
「才能自体は並程度にあるようだ。ここに、サインを、しろ」
この贅肉の塊は動くという機能がなくなってるのか?
「はいよ。帰りにそこの本を持って行っておくれな。
あ、あと地下から新しいワインを持ってきとくれ」
「自分でやれ」
書類を取り上げ、部屋から立ち去ろうとした肩が掴まれる。
いつの間に立ち上がったんだ? なんの音もしなかったぞ?
「苦難の道を歩む若人に選別を贈ろうってんだ。
その程度の手伝いはしてもいいんじゃないかい?」
うぐぁぁっ! 肩、肩が潰れる!
なんてバカ力してんだこの贅肉!
「わかったから離せ!」
「最初からそう言えば良いさね。さ。さっさとワイン持っておいで。
あたしは貫禄つけるのに忙しいんだよ」
わざわざ魔術を使ってまで贅肉を増やしてるのか。
この店主にしろバカ猫にしろ、この街にはマトモな奴が少なすぎる。
「貫禄より先に腕力がついちまったよ」
うぐぁぁっ! 肩がぁぁっ!



今回の付与魔術


【明日から痩せる】
(カロリーオフ)

効果:対象一人の摂取するカロリーを一定時間半分にする。
詠唱:「今度こそ成し遂げる! 本気で【明日から痩せる】!」
代価:効果終了から24時間の間、対象が摂取したカロリーが倍になる。