USS 小説09


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付与魔術を覚えよう09  ... 著 / 優有


探索者はエリート。
冒険者は叩き上げ。
あたしが現役の頃はそんな違いがあった。

探索者ってのは国に雇われて、ダンジョン踏破を生業にする。
国に雇われるってことは、それなりに身元の保証がある奴らばかり。
ほとんどの奴らは騎士や、その見習いだった。

冒険者ってのは国とは関係なく、勝手にダンジョンに潜り込んでた奴ら。
食い扶持稼ぐのに他の事が出来ない奴らばっかりだったねぇ。
まぁ、今の冒険者とそのへんはあんまり変わってないかね。

やがてダンジョンの数が増え始めて、国が探索者ギルドを作る事にした。
冒険者って呼び名が定着したのはその頃だね。
冒険者にもダンジョン踏破をやらせるようになるのはすぐだったよ。
あたしが冒険者になったのもその頃だったねぇ。

今じゃ探索者と冒険者の違いなんて知ってる奴もほとんどいないだろうね。
最近じゃあ探索者ギルド自体、ダンジョン調査だけで踏破する事はほとんど無いようだし。
探索者と冒険者の区別をする意味も必要も無くなったのさ。

まぁ、ダンジョン自体が昔とは違っているというのもあるけどねぇ。

あたしらの時代、ダンジョンってのは未開の地や過疎の地域に出来るものだった。
洞穴や遺跡、巨大建造物なんてのもあった。

そのうちの幾つかは巨大すぎたり危険過ぎたりで、まだ完全な踏破がされていない物もある。
昔からあった山が踏破されて、ダンジョンだったとわかったなんて話もあったね。

ダンジョン踏破ってのは自然に打ち勝つって事でもあったんだよ。当時はね。

無かったはずの物が現れる、ダンジョン自体の性質は今も変わっていない。
でもねぇ。今のダンジョンは自然だけでは無くなった。

区画整理途中の空き地に、一晩で屋敷が出来たり。
地下が無い家に地下への階段が出来たり。

昔は人の居ない場所にしか出来ない物だったけど、今は街中にも出来るんだ。
数で魔物を討伐していた時代とは、随分と変わっちまったもんさね。

そもそもダンジョンが出来るのは、他の世界の神が、
この世界の神に嫌がらせをしてるせいなんだとさ。
全く、迷惑な話じゃないかい。
嫌がらせなら神に直接して貰いたいね。

それが事実じゃないとしても、ダンジョンは湧く。
そして、それだけで人の生活は脅かされる。

街中でもダンジョンを放置すれば魔物が溢れ出てくる。
近年、魔物の被害も増えてはいるけれど、
比例して冒険者になりたがる奴も増えた。

けどねぇ、世の中はそんなに甘くは無いんだよ。

冒険者の死亡率は、成り立ての頃ほど高い。

探索者ギルドの統計では、登録してから一週間以内に二割。
それを越えれば少しはしぶとくなるようだけど、
それでも一ヶ月しないうちに三割が。

最初は自分の限界がわからずに。
やがて限界を知っても調子に乗って。
稀に引退で済む奴もいるが、そのくらいの数は死んでいく。

あいつらはどうだろうね?

うちの宿に登録されている冒険者の資料をながめ、チーズをつまむ。

白い悪魔と呼ばれる白熊の獣人。
拳での近接戦闘に長け、ゴブリン程度なら一撃で吹き飛ばす。
人付き合いが苦手ですぐに腕力に頼る短慮な面がある娘。

それに付きまとう、赤い小悪魔と呼ばれる狐の獣人。
回復魔術の才があり住人にも救われた者は多いが、金にうるさい。
全てが金に換えられると断言する、ある意味冒険者らしい娘。

カリスマを自称するバ…馬の獣人。
鼻筋の通った栗毛の美男子で、短槍を使い狩猟などに長ける。
回避能力が高いのは頭が軽いからかね。

そいつの弟分の鹿の獣人。
元々はこの街のチンピラ。体格と腕力任せに攻撃をいなし片手斧を叩きつける。
この四人の中では一番殺し合いの経験があるね。

付与魔術特化の猫の獣人。
独学で魔術を学び、自力でこの街まで辿り着いた。
戦闘能力は皆無だろうに、なんで探索者になりたがるのかねぇ。

まぁ、全ては牛の神のコイン次第。
運が良ければ生き残るし、悪ければ死ぬだけさね。

そういやギルドの犬はちゃんと本を渡したのかね?
まさか本当に付与魔術特化の猫が来るとは思って無かったからねぇ。
倉庫に突っ込んだままにしてたから保管状態も悪かったけど。
何にも書いてない白紙の本を何年も保管させられたんだから仕方ないやね。

あいつはなんであんなモンを保管させたのかねぇ。
昔から何を考えているのか、よくわからない奴だったけど。
まぁ、どうせロクなもんじゃないんだろ。
あいつが笑顔でいる時は大体誰かが不幸になったからねぇ。

ちゃんと渡したことの報告もしなきゃだろうし、昔馴染みの顔でも拝みに行くかね。
…あんな奴でも、数少ない生き残りだからね。




今回の付与魔術


【ふっかつのじゅもんをいれてください】
(パスコードロック)

素材:中身の入った鍵付きの金庫。
効果:書籍にのみ施術可能。条件設定を解除しないと全ページが白紙に見える。
条件設定の解除方法は合言葉、アイテム所有など施術者が自由に設定出来る。
詠唱:「再び旅路に着くために【ふっかつのじゅもんをいれてください】」
代価:素材が中身ごと消滅する。設定解除の際に書籍自体が消滅することがある。
施術時の魔力消費が多いほど消滅のリスクは少なくなる。