USS(ウシシステム) @ wiki
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USS(ウシシステム) @ wiki
ja
2016-03-09T04:34:38+09:00
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いおん
https://w.atwiki.jp/uss_trpg/pages/23.html
***Character Data ... いおん
#image(http://cdn8.atwikiimg.com/uss_trpg/?cmd=upload&act=open&pageid=23&file=%E3%81%84%E3%81%8A%E3%82%93%E3%83%BB%E3%81%8A%E5%AC%A2%E3%83%BB%E6%9D%96W%E3%81%9B%E3%81%A3%E3%81%A8.jpg)
|BGCOLOR(#f4ffff):RIGHT: プレイヤー名:|LEFT: いおん |
|BGCOLOR(#f4fff9):RIGHT: キャラクター名:|LEFT: いおん |
|BGCOLOR(#f4fff4):RIGHT: 種族:|LEFT: 人間 |
|BGCOLOR(#f9fff4):RIGHT: 性別 / 年齢:|LEFT: 女性 / 17(まだ不確定・悩み中) |
|BGCOLOR(#fffff4):RIGHT: 身長 / 体重:|LEFT: 167 / 乙女の秘密(笑 |
|BGCOLOR(#fff9f4):RIGHT: 職業:|LEFT: 棒術(杖術)使い |
|BGCOLOR(#fff4f4):RIGHT: HP:|LEFT: 5 &font(#808080){(初期値:3)} |
|BGCOLOR(#fff4f9):RIGHT: 攻撃回数:|LEFT: 5回 &font(#808080){(初期値:4回)} |
|BGCOLOR(#fff4ff):RIGHT: 成長ポイント貯蓄:|LEFT: 1 |
|BGCOLOR(#f9f4ff):RIGHT: 特技:|LEFT: 長い杖のリーチを活かした後衛からの攻撃。 |
|BGCOLOR(#f4f4ff):RIGHT: 技能:|LEFT: -- |
|BGCOLOR(#f8f8ff):RIGHT: 特殊:|LEFT: 魔法の杖 &br() .. 明かりになる魔法石付きの杖。冒険者だった祖父の形見 |
|BGCOLOR(#f5fdff):RIGHT: 持ち物:|LEFT: HP全回復2 MP全回復0 特殊アイテム回復0 保存食1日分 &br() 高級牛肉(100st相当 魔法の紙で包まれているため開封しない限り鮮度は落ちない &br() 真紅の温泉タマゴダケ(100St相当 全回復 バッドステータス回復)) |
|BGCOLOR(#f5fffc):RIGHT: 獲得粗品:|LEFT: 赤いカーペットの切れ端1 ゴブリンの茶色く煮染めたような臭い例の紐1 |
|BGCOLOR(#fcfff5):RIGHT: 所持金:|LEFT: 154st |
|BGCOLOR(#fff8f5):RIGHT:TOP: キャラクター背景:|LEFT: 本名、イオン・セレニティアス。とある貴族のお嬢様。祖父が冒険者であった。 &br() 小さい頃から祖父に自身の冒険譚を聴かされ、「いつか私も…!」と憧れながら育つ。 &br() 両親は「女性としての幸せ」を願いお嫁に行ってほしいとお見合いを沢山持ってくるが、全部拒否してきた。&br() しかし次第に我慢ができなくなり、ついに家出。 &br() 残念ながら魔法使いとしての才能は持っていなかったが、どうにかして形見の杖を使えないかと&br() 考えぬいたところ、護身術として小さい頃から習っていた武術と組み合わせて、&br() 独学で現在の戦闘スタイルへと辿り着く。&br() 元がお嬢様なので、ほんのり(?)常識がずれているというか疎い部分も…? &br() ちなみに料理の腕は、実家のコックに料理禁止を言い渡されるほどであったとか。 |
|BGCOLOR(#fff5fc):RIGHT:TOP: 一言:|LEFT: 「自分の幸せは、自分で掴み取るものですわ!!」 |
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2016-03-09T04:34:38+09:00
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USS 小説22
https://w.atwiki.jp/uss_trpg/pages/59.html
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう22} ... 著 / 優有
この屋敷の下男と一頻り談笑し、昔話に花を咲かせる。
その内容はほとんどが
「昔はワルだったなぁ」
「随分と丸くなったなぁ」
のどちらかだった。
鹿の獣人は元々この街の住人だ。
悪さをしていた頃の仲間が、真面目に仕事をしている現場を見つけた。
それは喜ばしい事でもあり、気恥ずかしいものでもあるようだ。
照れ隠しもあって、だんだん話がお互いの過去の暴露が混ざってくる。
「金持ち狙いのスリやってた奴が、こんなとこでなぁ。なんか盗んでんのか?」
「恩人を背中から刺した奴が女を仲間にしてんのか。ウリか?」
仲良く笑いあっているような、今にも掴みかかりそうな笑みを浮かべている二人に対して、
彼らの反応は様々だ。
猫の獣人は引いているし、白熊娘は眠りかけている。
当時を知る馬の獣人は懐かしそうにしながら、無意識に背中に手を当てていた。
「で、貴方は依頼についてご存知ですの?」
若干苛立ち混じりに狐娘が問う。
「あ? 知らねえな。つうかお前、胸ねぇな? 売れねぇだろ?」
苛立ちが殺意に変わるのを感じても、彼らの反応は変わらない。
「待ちたまえ、槍は良くない」
「大丈夫、死ななければ直せますわ」
「…何をしてるんですか」
メイドの呆れた声で、一同が止まる。
依頼主の
「獣人なんぞに納得のいく仕事を出来るとは思えん」
という言葉を裏付けるような様子に触れる事なく、メイドは去って行った。
下男に対しては蔑むような目をしていたが。
食事は簡素なもので、彼らには物足りない量だった。
普段携帯している保存食をつまみながら、音が鳴るのを待つ。
「明日も仕事があるからな」
と言って下男が食器を持ち去って少し。
白熊娘が完全に熟睡し、狐娘と猫の獣人が船を漕ぎ始めた頃。
ピピピピッ。
ピピピピッ。
ピピピピピピピピピピピピッ。
音が鳴った。
音量はそれほどには大きくないが、彼らの目を覚ますのには充分だった。
「鳥?」
その音は鳥の鳴き声に似ていたが、抑揚も無く同じリズムを繰り返す。
どうやらリズムを繰り返す毎に、少しずつ音量が大きくなっているようだ。
特に物が無い部屋の中には、その音源となるような物は無い。
反響しているため音源がわかりにくいが、動いている気配も無く生き物の気配も無い。
「…地下?」
それでも聞き分けたのは白熊娘に、馬の獣人が同意を返す。
「そこと、他にも空いているが、床の隙間から音が漏れているな」
五回同じリズムを繰り返し、次のリズムの途中で、
カシッ。
と強めの音が鳴った。
同時に鳥の声のような音は止まり、静寂に包まれる。
「…止みましたね」
「みてぇだな。床に穴空けりゃ、何が鳴ってんのかわかりそうだな」
「そんなこと、依頼主が許可しませんわよ」
「んじゃあ、音が漏れねぇように穴を塞ぐか?」
「いや、それは根本的な解決じゃないと思います」
「この下には何処かから入れるのだろうか?」
「階段は無かったと思いますけど」
一般的には地下は一階までしか造らない。
だが、屋敷の規模や家主の嗜好などで、更に下の階層が造られる場合がある。
「依頼人に穴を開けて良いか聞きますか?」
「あー、だとしても、明日にしようぜ。もう寝てんだろうし、急ぐ理由もねぇしな」
依頼を早く解決した方が、依頼主は早く安心出来るだろう。
だが、そうなれば再び酔客の相手をさせられる事になる。
心の中で、
「ごめんなさい。もう少し時間をかけて仕事をします」
と猫の獣人が謝っていたが、気づく者はいなかった。
野営をしている訳では無いので、見張りはいらないだろう。
そう結論づけ、その部屋の中で雑魚寝をする事になった。
早くも寝直して熟睡してしまった白熊娘を運ぶのが難しいという理由もあったが、
寝床の提供自体が無かった。
夜間に音が鳴る原因の調査なのだから、現場を離れる訳にもいかない。
一応、日が登れば外の井戸を使って良いと言われている。
普段は宿で湯浴みをしている狐娘にとっては文句の言いたいところではあったが、
依頼である以上は口に出さなかった。
代わりに猫の獣人を睨んでいたが。
皆よりも早く寝入っていた白熊娘が目を覚まし、ぼんやりした頭で
「ここどこだっけ?」
と寝ぼけながら猫の獣人を抱きしめて二度寝。
その力に猫の獣人がうなされ始めた頃、
一同を目覚めさせたのは昨夜聞こえた鳥の鳴き声のような音では無く、
屋敷中に響くほどの怒声だった。
今回の付与魔術
【昔々あるところに】
(ロンロン・タイム・アゴー)
素材:対象の所有物
効果:所有物を持っていた時の思い出を語らせる。
黒歴史や忘れていた記憶なども語らせる事がある。
詠唱:「【昔々あるところに】斧を手にした血気盛んな青年がいました」
代価:対象の記憶力によっては思い出が美化されていたり、
創作が混ざる事がある。
2015-11-14T02:03:12+09:00
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2015-11-14T02:01:16+09:00
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USS 小説21
https://w.atwiki.jp/uss_trpg/pages/58.html
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう21} ... 著 / 優有
パーティとして初めての依頼から3日が過ぎた。
パーティになったからと言って特に変わる事もなく、相変わらず馬鹿兄弟、悪魔姉妹として他の客たちに認識されている。
変化があったのは猫の獣人についてだが、そもそも彼が増えた事自体が変化だ。
「なんで女性用の服を着せたがるんですかっ!」
今朝もホールには猫の獣人の嘆きが響く。
宿代と食事を無料にするという条件で、彼はこの店の手伝いをしている。
その交渉をした狐娘は1日1回デザートを1品無料で貰う事になっており、
「誰も損をしない契約でしょう?」
と言っていた。
確かに損はしていないが、何かを失っている気がする。
ウェイトレス服やメイド服を着せられた猫の獣人はそう嘆いていたが。
「男性用の制服もあるじゃないですかっ。なんの嫌がらせですかっ!」
「嫌がらせではなく、お客様からのリクエストです。
因みに昨日着ていただいたメイド服はお客様からのプレゼントなので、いつでも」
「着ませんよっ!?」
何故サイズの合うメイド服が用意出来たのか、誰が用意したのか。
ツッコミどころは多いのだが、客のほとんどは気にしない。
むしろ、どんな服が似合うか? と真面目に語りあうような客層が増えた。
だが、彼は一応男の子である。
温厚な性格で根が善良なのか、怒りを持続するのが苦手なようだが。
連日、女装させられて酌をさせられたり、尻や尻尾を撫でられれば彼とて我慢が限度を超える。
「この依頼を受けますっ! 泊まり込みですよねっ!」
そして忘れている店員も多いが、彼は冒険者だ。
依頼を受けるのを拒むには、それなりに正当な理由がいる。
一部の客から、
「なんで彼女を危険な目にあわせるんだ」
と批難の声も上がったが、いろいろ間違っているため聞き入れては貰えなかった。
依頼は、ある屋敷の地下調査だ。
夜毎に何か聞こえる音が、だんだん大きくなっているという。
ヴォダースカヤという街は乱開発とダンジョン発生により、地下の状況が変化してきた。
地下にはどこに何があるのか、正確な把握がされていない。
一応、探索者ギルドが魔術探査などで空間が出来ていないか、
魔物などの大型生物が沸いていないかなどの確認を定期的に行っている。
だが街の規模が大きくなるにつれ、その周期が長くなっているのも実状だ。
そのため時折住人や地主などが、調査を待っているよりも依頼をした方が早いと感じる事もある。
今回の依頼もそんなケースだ。
少し偏屈さを感じさせる老人は、不快さを隠そうともしない。
「獣人なんぞに、納得の行く仕事ができるとも思えんが」
と言い捨て、メイドに後を任せて去ってしまった。
メイドの衣装に見覚えがある事には気がつかないフリをしながら、猫の獣人が依頼内容を確認する。
ここ一月ほど、夜中になると地下から音がするが、音源が見つからない。
決まった時間に聞こえるだけで、他には何の現象もない。
特に魔物の姿を見ることも無く、気にしなくても良いくらいに彼女は思っているようだ。
依頼主である老人は、孫娘が心配なために依頼を出したらしい。
息子夫婦も同居しているらしいのだが、基本的には家にいる事が少ないため、
現象にも気づいていないだろうとのことだった。
老人は息子に仕事を譲り引退した商人で、この屋敷は息子がこの街に移り住む際に建てたらしい。
まだ幼い孫娘が珍しい生き物を見るように彼らを見ていたが、
老人から近寄らないように言われているのだろう。
抱えた人形に話しかけながら逃げて行った。
ツギハギだらけの不気味な人形なのは見なかった事にする。
「で? 音はどこからしてんだ?」
「…それを調べていただきたいのですが」
鹿の獣人の言葉に呆れた顔を見せるが、屋敷の地下へと向かうメイド。
商人の家だけあり、地下は貯蔵庫になっていた。
地下室は3つあり、商品の種類や移送の時期などで使い分けている。
全てを使う事は少なく、1つは半ば空き部屋となっている。
最初に音に気づいたのは孫娘らしい。
「最初はこの部屋にいると聞こえる程度でしたが、最近は上にも音が漏れるようになりました」
音は夜中、日が変わった頃に鳴る。
何故そんな時間に孫娘が空き部屋にいたのか? という問いには、悪さをして閉じ込められていた、と返って来た。
「あんな小さな子に、やり過ぎではないかね?」
商品を勝手に開けた事に怒った母親が躾として行なったらしい。
結果、商品に勝手に触れる事は無くなったが、母親が帰ると逃げるようになったそうだ。
「皆様には、この部屋にお泊まりいただきます。食事は後ほどお持ちいたします。
屋敷内を移動される際は、彼にお申し付けください」
と、荷運び担当らしい偉丈夫を紹介された。
「「あ?」」
彼と鹿の獣人が同時に声を漏らした。
知り合いらしい。
今回の付与魔術
【私の人形は良い人形】
(マイドール・イズ・グッドール)
素材:効果対象に似た人形
効果:人形に似た相手の動きと発声を封じ、目を開けたままにする。
人形が破壊されるところを効果対象に見せないと効果がない。五分程で効果は切れる。
詠唱:「【私の人形は良い人形】。悪い人形には罰を」
代価:対象に効果が発揮されなかった場合、効果時間が切れるまで全ての人間がその人形に見える。
2015-10-20T19:13:50+09:00
1445336030
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USS 小説20
https://w.atwiki.jp/uss_trpg/pages/57.html
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう20} ... 著 / 優有
貴族達が去った後、再びヴォダースカヤへの移動を再開した。
再開するまでに狐娘の説教と回復魔術があり、多少時間が経過していた。
どうやら猫の獣人は金の入った袋を蹴った際に足を痛めたらしい。
金属の詰まった袋はそれなりに頑強だったようだ。
金のありがたみを説教され、話が金の妖精に逸れた頃に彼は力尽きた。
単に緊張の糸が切れたのもあるが、説教しながら狐娘が足を踏んだりしていたのもあるだろう。
足を踏む度に森のほうから、
「やれっ。そこだっ。懲らしめろっ」
と小さな声が聞こえたらしく、白熊娘が声の主を探していたが。
「全部受け取るほど恥知らずではありませんわよ」
「袋を拾ったら受け取ったことになっちゃうから」
「あぁ? 金に汚くねぇ振りとか、まぁたなんか企んでんのか?」
「ちょっとお待ちなさい。汚いってなんですの? そもそも人をなんだと思ってますの?」
「小悪魔、さっきのあれ妖精かな?」
「お姉さま!? あぁもう! バカの方々に毒されてお姉さままで!」
「バッ…テメェ、他人のこと言えねぇだろ」
「ひゃっ!? し、尻尾掴まないでっ」
和気藹々と、あるいは喧々諤々と街道を歩く彼らの姿に、動物達が逃げていく。
変わらず斥候と周辺警戒をしている馬の獣人にはその様子もわかっていたが、
それより彼には気になっていることがあった。
「彼は知り合いかね?」
その問いに一同が言葉を止めるが、
「ぶん殴った」
白熊娘は迷いなく答えを返す。
「…よくそんな機会があったな? あんな取り巻き引き連れた奴相手に」
「いや、豚氏のほうではなく、部下のほうだ。何やら因縁でもありそうに感じたのだが?」
訂正しながら猫の獣人へと目を向ける。
猫の獣人は尻尾を奪い返して、狐娘に背を見せないように警戒しながら返す。
「昔、村に来た探索者の人です。次に来た時には冒険者になってましたけど」
「探索者ギルドを辞めて冒険者になったということですの?」
「さぁ。その辺はよくわかりません」
「うむ。問題はそこではないからね。彼は君とどういう知り合いかね?
どんなものかは知らないが、見知った相手の連れにいきなり魔術を使うというのは、
あまり普通ではないよ?」
指摘にうつむき、猫の獣人は思い返す。
「あの人は…獣人狩りです」
獣人狩り。
人は獣より優れた存在であり、獣人は獣より悪しき存在とするもの達だ。
その思想を持つものは人神信仰の一派に多い。
人神とは異なる姿である獣人は人ではなく、異界の生き物に毒されたものであり
、駆逐する事は救済であると公言している。
当然、獣人などの反感を買う事が多いが、一部の国で国教としている事もあり、
政治的には一般的な宗派として扱われている。
「獣人狩りが豚といるというのは奇妙な話だが。
スポンサーは狩らないということだろうか?」
「気持ちはわかりますけれど、先程の貴族は一応純粋な人間種ですわよ」
「下衆豚、人か?」
「まぁ、豚でも人でもクズには変わんねぇよな」
「ふむ。獣人狩りがこの辺りにいたとは。冒険者の宿と探索者ギルドにも、
注意しておいたほうが良いな」
明らかに差別を公言している一派ではあるが、街中でそうした行動に出る事は少ない。
思想の中に、獣は獣の住む場所で土に還すべき、というものがあるからだ。
それほど詳しく知らない彼等にすれば、いきなり襲って来る危険集団が街中にいる、
としか思えない。
最初に会った時は、獣耳が好きな探索者だった。
再び村に来た時は冒険者になっていて、そして…。
「よしよし」
「ふゃぁぁ~ッ!?」
昔を思い出して暗くなっているのを見て、白熊娘が頭を撫でる。
かなり振られたようで、考えも平衡感覚も吹き飛んだようだ。
ぐるぐると目を回して、ふらふらと歩く。
ヴォダースカヤの関所が見えて、少し様子を伺ってみたが、
既に私兵団はいなくなっていた。
普段詰めている兵士達が愚痴混じりに酒を飲みつつ、
冒険者らしい集団と話している。
「お、バカども。帰って来たか。お前も飲むか?」
「バカの連れの猫ってあんたか? ギルド職員の犬野郎が探してたぜ」
「誰がバカだ? テメェこら。瓶ごと寄越せ」
迷いなく酒を飲み始める前衛トリオ。
「酌してくれよ~」と絡まんでくる冒険者にため息をついて、
「私は獣人居酒屋に報告に向かいますわ」
と狐娘は距離を置く。
探索者ギルドの犬の獣人に、人探しをしている事を伝えていたのを思い出す。
その結果かな? でももう会っちゃったなぁ。
犬の獣人に無駄足を踏ませた気分になりながらも、素直にギルドへと彼は向かった。
今回の付与魔術
【特別なんだからねっ】
(エクストラ・チャージ)
素材:ダメージを受けた身体部位。
効果:同一箇所へのダメージを無くす代わりに対象が受ける痛みが倍増する。
効果中、素材となった身体部位は麻酔状態となる。
詠唱:「別にあんたのためじゃないんだから! 今回だけ、【特別なんだからねっ】!」
代価:効果終了後、対象の痛みに対する耐性が少し強くなる。
稀に対象が、痛みを受ける事で喜びを感じるようになることがある。
2015-10-06T22:44:03+09:00
1444139043
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USS 小説19
https://w.atwiki.jp/uss_trpg/pages/56.html
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう19} ... 著 / 優有
豚と呼ばれた貴族は一瞬、その笑みを凍らせて不快気な表情を見せた。
だが、それを言った相手を確認して、さらに顔色を変える。
「ぶほほっっ! お久しぶりですねぇ、白熊さん」
「おや、知り合いかね?」
「ぶん殴った」
「お前、マジで貴族をぶん殴ってんのな」
「なんでそんな事に?」
「ダンジョン踏破、おめでとうございますわ」
貴族と冒険者の接点は意外と少ない。
冒険者に会おうとする酔狂な貴族が少ないというのもある。
また、冒険者を使わずとも私兵で用が足りることも接点の少ない理由だ。
権力者でもある貴族を毛嫌いした冒険者が、
機会があれば殴ってやる、と酒の肴にすることもある。
だが実際に殴った者がいれば、猫の獣人のように尋ねるだろう。
その原因とも言える狐娘が話をそらしているのは、後ろめたいからか。
「ぶほほ。奇遇ですねぇ。お二人とこんな所で出逢うとは」
ソファの上で腹を揺らし笑う貴族に、笑顔を返す狐娘と睨み返す白熊娘。
「ちょうど今、ダンジョンを踏破しましてねぇ。非常に気分が良いのですよ」
彼が指を立てると、私兵団の兵士長らしき男が前に出てくる。
「なんでも兵の治療をなさったとか。ささやかですがお礼をしましょう。
受け取りなさい」
貴族から渡された袋を彼らの方に放って、兵士長は笑みを浮かべた。
兜の真庇で顔半分が隠されているが、覗く口元には笑みが浮かんでいる。
地面に打ち付けられた袋からは、小さな金属の擦れる音がした。
中身が相応の量の硬貨であろうことは容易に想像できる。
兵士長の笑みが歪に見えたのは、彼だけだった。
そして彼以外、その言葉の意味が理解出来る者はいなかった。
「【その身をひさげよ】」
狐娘の手が、地に落ちた袋を拾い上げようと伸びた時。
兵士長の発した言葉は、彼女に向けられていた。
「取っちゃダメっ!」
術の対象となった狐娘に叫びつつ、袋を蹴り飛ばす。
袋は重い音を立てて少しだけ飛び、再び地面に打ち付けられた。
「な、何をしてますのっ!?」
「何をするんだっ!」
金を蹴るとは何事かと狐娘が怒鳴るのと同時に、
猫の獣人も兵士長へと怒鳴りつけていた。
「ほう、こんな希少魔術を知っているのか。珍しい奴だ」
魔術というのは技術でもあり、知識でもある。
広く大衆に知られる魔術は、ギルドや協会などで教わることが出来る。
だが冒険者などが独自に開発したものや、ダンジョンなどから得られた魔術の場合は、
秘匿性が高く出回り難い物もある。
【その身をひさげよ】はそうした魔術の一つだが、特に出回らない理由がある。
施術の媒介である対象の年齢以上の枚数の金貨。まずこれが用意できない。
貴族なら用意出来るが、それなら普通に雇うことを考える。
使用条件が満たされ難い上、満たす者は使う理由が少ない魔術のため、廃れた魔術なのだ。
そんな魔術を知らない面々には、猫の獣人が何を憤っているのかわからない。
仕掛けた本人は面白そうに笑っているし、
その金を出した貴族は余興を楽しんでいるようだ。
「お礼と言って、あんなものを使うなんてどういうつもひッ!?」
「お金を蹴るとはなんてことをしますのっ!」
憤って逆立ち膨らんでいた尻尾が掴まれ、後頭部に凄まじい怒気が叩きつけられる。
守ったのに怒られるという理不尽な状況は、側から見ている者には非常に愉快に見えるのだろう。
「ぶほほっ! 頼もしい騎士ですねぇ。実に面白いものを見せて貰いましたよ。
それでは今日は帰るとしましょう。宝の処理も必要ですからね」
「かしこまりました。すまないが、謝礼はこちらにさせて貰う」
貴族の笑いに合わせてソファが移動を始め、兵士長が袋を回収する。
それとは別に数枚の銀貨をその手から溢す。
今度は魔術を使っていないか、猫の獣人は警戒を緩めない。
その耳が後ろを向いているのは、後ろを見たくないからか。
「良い冒険者になったもんだ」
去り際に残された言葉は、彼に向けられていた。
記憶とは大分変わった老いた姿。
それでもその笑みには、あの時の面影が残っている。
笑みから感じた歪さと懐かしさ。
かつて、彼の耳をモフモフしながら冒険者が言った言葉。
「良い探索者になるよ」
冒険者と探索者。
違う言葉に込められた、眩しいものを見守るような感情。
「まさか、あの時の」
その言葉の意味の違い。
目指したものと辿り着いたものの違いがなんなのか。
背を向けて歩き出す兵士長の背を追おうとして、尻尾が引かれる。
それ以上足が進まず、何を言えばいいのかわからずにいるうちに、
兵士長は去ってしまった。
そんな彼の気持ちなど知る由もなく、掴んだ尻尾を離さないままで彼女は笑顔を見せる。
「どこに行きますの?」
背筋に寒気を感じた彼の尻尾は、恐怖と寒気でピンと硬直していた。
今回の付与魔術
【蹴球友誼】
(シュートザ・フレンズボール)
素材:球状または袋状のもの。
効果:素材を蹴った際に飛距離や威力が増す。
熟練すると球状にした布で岩壁にヒビをいれることも出来る。
詠唱:「友達だもん、顔で受けてよ!【蹴球友誼】!」
代価:素材の中身が威力に応じて破壊される。
中身が全て破損するまで素材が破壊出来なくなる。
iPhoneから送信
2015-09-15T00:52:33+09:00
1442245953
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USS 小説18
https://w.atwiki.jp/uss_trpg/pages/55.html
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう18} ... 著 / 優有
肉華は捕食により花弁を増やし、
それが離れることで肉蛇が溢れていたらしい。
犠牲になった兵士と同量の体積が増した分が肉蛇となり、
近くにいた他の兵士たちの足下へと這い寄る。
先ほどまでとは違い、兵士たちはそれらを打ち払い、
自身の身を守っている。
ここまでの進軍によって、肉華にも陽の光が差している。
洞穴は既に切り拓かれ、ただの窪地のように名残だけを残していた。
壁などを含め、全てを破壊した訳ではないが。
治療中だったを除く全てが、かつて洞穴だった場所で待機していた。
ダンジョンの残骸とも言える肉壁。
あるいはその床に触れ、その瞬間を待っている。
その緊迫した前線の様子も見方によっては、
「なんでこんなところに行列ができてますの?」
という狐娘の感想がしっくりくる状態だ。
それでも、彼らが運んできた負傷兵たちは、その行列に並ぼうと身を捩る。
先程まで治療に当たっていた兵士や治癒術師たちは、
ダンジョンの核発見の報を受けて治療を中止。
負傷兵を見捨てて、その行列に並んでいる。
「なんだか楽しそうだな。私たちも並ぶか?」
その姿に不快感を示す鹿の獣人とは違い、馬の獣人は楽しそうだ。
「あ」
両手に人をぶら下げた状態の白熊娘が声を漏らした直後、
行列の奥で何かが弾けた音が響く。
行列が騒ぎ出し周囲から隠すように身を丸める。
各々手にした物を確認しているようだ。
「…ダンジョンが踏破されたみたいですね」
ダンジョンを踏破した時、外への転移が起こる。
これは異世界の産物であるダンジョンが、
元々ある場所に帰るために起こる副作用だと言われる。
だが今回のように、既に外との境が無い場合は、転移は起こらない。
この世界との境界が曖昧になるため、
戻すべき対象が定義できなくなるためなのかもしれない。
もちろん、そこまでダンジョンを破壊することは容易ではないため、
ほとんどの冒険者たちはそんなことはしない。
そのためダンジョンが破壊された時、
残されたダンジョンの欠片が魔力の篭った石と化す事を冒険者で知る者はほとんどいない。
「ちくしょうっ! ハズレかよ!」
「くそっ! なんでだっ!」
ダンジョンが消え去り、手にした物を確認した兵士たちから嘆きとも怒号とも取れる叫びがあがる。
声をあげた者たちは手にした者を捨て、周囲の石を拾い集めてながら、
奥へと進んで行く。
行列はゆっくりと移動しており、奥で順番に確認をされているようだ。
少し時間が過ぎ、おそらくはハズレだと叫んだ兵士なのだろう。窪みの縁を歩いてくる者がいる。
窪みに並んだ行列を避けるためか、どこからかよじ登ったらしい。
数人は彼らと目があったり、声をかけられたりもしたのだが返答は無く、
開けた場所に並んで行く。
疲弊しているだけでなく、落胆のせいもありやつれて見える。
「で、何をやってんだ? こいつら?」
鹿の獣人の問いに答えた訳では無いのだろうが、
行列をかき分けるように1人の兵士が抜け出てくる。
他の兵士同様に疲弊しており、傷も負ったままだが、
石を詰めた袋どころか何の荷物も持っていない。
彼は整列する兵士たちから目をそらし、ゆっくりと去って行った。
その間にも兵士は並び、静寂を保っている。
傷の治療をせず、ただ並んでいる姿は不気味でさえある。
やがて行列がなくなり、質の良い鎧姿の兵士にソファを担がせた貴族が姿を見せた。
彼はソファの上で満足気な笑みを浮かべ、手にした赤い果実のような物を眺めている。
「ぶほほっっ! 今回は当たりでしたね~。皆さんにも特別褒賞を出しますよ?」
並んだ兵士たちに目を向けることなく、その物品を見つめながら、
貴族は喜びの声を漏らす。
ダンジョンが消える時に残される、遺物とも言われる宝物。
踏破に挑んだ者には等しく機会が与えられ、何かを得ることが出来る。
当たり外れがあるが。
具体的にハズレを上げれば、捨てても勝手に戻って来る魔力の篭った腰みのやカーペットの切れ端などがある。
当たりであっても、子供大のセミの抜け殻など使い道がわからない物もある。
だが好事家には良い値段で売れるため、冒険者にすれば当たりであることは間違いない。
ダンジョンは異界の神からの、この世界の神への嫌がらせ。
この世界の神への悪意が強くなればなるほどダンジョンは危険性を増していき、
比例して遺物の異常性も増して行く。
だからと言って迷わず人を生贄に捧げるのは、この貴族くらいだろうが。
負傷し汚れて疲弊した兵士たち。
負傷は無く汚れも少ないが、ソファを担がされる兵士。
無感情な表情でそれに付き従う魔術師たち。
それらの上で踏ん反り返って、悦に入っている姿。
高価な装飾品を身に付けた汚れ一つ無い貴族へと、白熊娘が呟いた言葉。
「豚」
それは実にしっくり来る言葉だった。
今回の付与魔術
【地獄へ堕ちろ】
(ステアウェイ・トゥ・ヘル)
素材:術者の身体。一部でも可。
効果:素材量に応じて対象を不運にさせる。
詠唱:「神様、一生に一度のお願いです。【地獄へ堕ちろ】」
代価:素材にした箇所は魔術による治療を行っても二度と動かせない。
この世界から排斥される覚悟がある場合、魔術師で無くても施術可能だが、全身と生命が発動の代価となる。
2015-09-02T11:53:13+09:00
1441162393
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USS 小説17
https://w.atwiki.jp/uss_trpg/pages/54.html
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう17} ... 著 / 優有
冒険者がダンジョンを踏破することは容易ではない。
限られた人数で、少ない情報を元にダンジョンへと挑む。
資金も少なく、食料や回復薬にも持てる限度がある。
体力と魔力が尽きれば、生きて帰ることさえ難しい。
だが、貴族のダンジョン踏破は根本から違う。
貴族には冒険者には無い資金力という力がある。
兵士の数と装備を整え、物資を満たす。
斥候も使い情報を集め、対策を講じる。
踏破の下準備に費やせる金額と人脈の違い。
それが最も大きな冒険者との違いだが、本質的な違いがある。
貴族は自らの命を賭けない。
そして、他者の命には頓着しない。
それが目に見える形で、今このダンジョンは踏破されつつあった。
私兵団らしき者達は、軽装とも言える程度の鎧を纏い、
魔物の群れへと突っ込んで行く。
腰に下げた剣は粗悪品で斬撃武器より打撃武器のように不恰好だ。
形状も整っていないため、どれだけ戦いに耐えられるかわからない。
剣を手に取っていない理由はそれもあるが、
既に両手が塞がれているからだ。
抱えた木箱や袋に詰まった食料を、魔物の群れへと放り投げる。
なるべく奥の魔物も食いつく様に、出来る限り近くに寄って。
斥候が得た情報では、このダンジョンの魔物は動物的だ。
魔術的な生物でもなく、ただの異形の群れだ。
他の生物に食いついて寄生する習性があることもわかった。
ダンジョンの作りも、ある程度は把握した。
それらの情報を得るために何人の斥候が犠牲になったのかは知らない。
貴族である彼には無駄な情報だからだ。
洞穴がさほど深くは無く、崩れたとしても掘り返すのも難しくない事が分かれば、それで良い。
元々は熊や盗賊などが住んでいた洞穴だったのだろう。
水場から森林地帯に分け入り、それでも街道側には背を向けた穴。
斜面が緩やかに入り口へと向かっているのは、
盗賊が荷物を運びやすい様にした名残か。
木々に囲まれていたその場所は、彼らの手によって切り拓かれ、
日の光を浴びている。
土であるはずの壁も肉色に変わり、這い出てくる蛇の様な魔物同様に蠢く。
撒き散らされた食べ物へと群がる姿に、貴族は鼻を鳴らし不快感を示す。
こんな場所だというのにソファの上に寝そべり、果物を齧りながら。
魔物が群がるのを確認し、ローブ姿の青年が魔術を放つ。
異形の洞穴内に霜が降り、肉色が白く染まって行く。
魔物達が異変に逃げようとするより先に、その身体が凍りつく。
当然、周囲にいた兵士達もその影響を受けている。
だが生物としての体格差と、服や鎧に守られている分、影響は少ない。
寒さに白い息を吐き身体を震わせ、彼らは剣を抜く。
足元を埋める凍りついた魔物と、ダンジョンの肉壁を砕きはじめる。
そこに無かった物が現れるのがダンジョンの基本とはいえ、
そこにある以上は破壊出来る。
洞穴が元になっているため崩落の危険もあるが、それは兵士達のみ。
先ほどの魔術を使った青年や、彼らを使う貴族には関係ない。
それに崩れたとしても彼らに掘らせれば良い。
死んでいれば餌になる。生きていれば続きをさせるだけだ。
砕いたダンジョンと魔物は用意された袋に詰められ、
切り拓かれた森林跡に運びだされる。
集められたそれらは先ほどとは別の魔術師により融かされ、
様々な液体が滲み出る。
その袋を再び担ぎ、ダンジョンから溢れる魔物の群れへと放り投げ、
凍りつかせて砕く。
それを繰り返しながらダンジョンそのものを破壊していく。
当然ではあるが、このやり方は効率的ではない。
魔術師達は魔力回復薬を飲んで魔力を回復しないと追いつかない。
兵士達は命懸けだ。
魔物に食いつかれたまま凍らされる者や、
振り払って肉が食いちぎられる者もいる。
魔物の餌になる者の隣で、時に崩落に巻き込まれながらも、
彼らは持ち場を離れない。
撤退の指示を受けて初めて彼らはダンジョンからその身を現世へと戻す。
入れ替わりに別の兵士達がダンジョンに向かうのと引き換えに。
傷を負い、腕を上げることすら出来ない兵士は後衛部隊へと送られ、
治療を受ける。
もしこの場に彼ら以外の者がいたならば、目を瞑り耳を塞ぐだろう。
ダンジョン踏破に必要な犠牲。
貴族である彼がそう決めた、生死を問わない兵士たち。
彼らは皆、自らの身体を震わせ絶望しながら、
ただひたすらにダンジョンを破壊していく。
恐怖に顔を強張らせ。
憤怒に雄叫びを上げ。
絶望に涙し。
ソファの上で退屈そうに眺める貴族と、破滅への運命を用意した神に、
怨嗟の声と命乞いを送りながら。
「最深部確認」
「核を視認」
魔術師達から無機質な報告があがる。
ダンジョンの肉壁はほとんどが砕かれ、疎らに残骸を残している。
最深部は魔物達が一つとなり、まるで華のように形を成していた。
その花弁の中央では無数の牙が誘うように揺れている。
それに応えたように、兵士の1人が近づいていく。
周囲の兵士が安堵の息を漏らす中、悲鳴をあげながら。
「生贄供与」
「供物捧呈」
無感情な言葉が捧げられ、彼の姿は肉華の中で砕かれていく。
痛みと恐怖で最後の言葉すら満足に残す事も出来ず、
食い千切られた腰袋から金貨をばらまいて。
「今度はどんなものが手に入るかのう?」
ソファの上で笑みを浮かべる貴族に、良心の呵責など欠片も無かった。
今回の付与魔術
【その身をひさげよ】
(バイアップ・スプリングセール)
素材:対象の年齢以上の枚数の金貨。
効果:金貨を受け取った相手の身体を自在に操れる。
自身の金でなくても施術可能だが、命令権は金の所有者になる。
施術時は対象と目が合った状態で詠唱が聞こえている必要がある。
詠唱:「充分な対価だろう? さあ【その身をひさげよ】」
代価:素材の半分を返されると効果が消える。
施術対象以外が素材を受け取った場合や、
施術対象が素材全てを受け取らないと発動しない。
2015-08-17T22:56:54+09:00
1439819814
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USS 小説16
https://w.atwiki.jp/uss_trpg/pages/53.html
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう16} ... 著 / 優有
近くにあった冒険者の宿には、多くの冒険者たちがいた。
依頼を探してみたものの、ヴォダースカヤへと向かうような依頼は無く、
ダンジョン踏破に関するものも無かった。
ダンジョン踏破中の貴族について話を聞きたかったが、
店員は冒険者たちの相手で忙しい。
鹿の獣人と白熊娘もそれに混ざっていたが、早々に引き上げる。
「準備運動くらいにはなったな」
「雑魚」
ろくな事をしてないのは明らかだが、
狐娘はホクホク笑顔のためツッコミが入らない。
猫の獣人は髪も服も乱れていて半泣きになっているが、
「彼らはスキンシップが激しいな」
と馬の獣人に一蹴された。
再び関所に訪れた彼らの前には、この街に来た時とは違い、
私兵団らしきもの達がいた。
関所に普段詰めている兵士職員もいるが、明らかに機嫌が悪い。
不満を抱えながらも何も言えない兵士職員に憐れみを感じながら、
私兵の指示に従う。
荷物のチェックなどはなく、人数を数えた程度だ。
それしかせずに、
「こんな簡単な仕事に何で時間がかかるんだ?」
などと後ろで聞こえたが、彼らは関所を素通りする。
楽に済むならそのほうが彼らも良いのだ。
険悪さが増して、誰も近寄らない関所を後にして街道を進む。
来た時とは違い護衛対象がいないため、多少気楽に構えているようだ。
天気の良さもあり、のんびりと周辺で取れる動植物や先ほどの露店、
これまでに経験したダンジョンなどの話が交わされる。
「本を買おうなんて、珍しいですわね?」
「結局、何も買いませんでした」
「転売するには露店の本は不向きですわよ?」
「いや、お金目的じゃないです」
金儲けが基本行動の狐娘には、彼の行動はあまり理解できない。
露店売りの本や巻物は大抵が写本を繰り返された粗悪品のため、希少性など無い。
内容も生活に根差したものに偏る。
料理や農作業のノウハウならマシなほうで、日記や家系図なども混ざる。
あまり冒険者には意味の無いものばかりだ。
「昨日も本を読んでらしたけれど、何か調べてますの?」
だがそこに金儲けの匂いがすると、彼女は敏感に反応する。
「付与魔術の勉強…かな?」
「その本、見せてくださいません?」
「…え」
明らかに嫌そうな彼の反応に、彼女は確信する。
「私も魔術は勉強中ですから、参考にしたいのですわ」
「浄化結界が出来るのに、まだ勉強を?」
昨日の依頼中に魔物討伐を行ったが、その後処理として周辺の清浄化を行ったのは狐娘だ。
彼女が使う術の系統は一般的に僧侶系と言われる。神聖魔術や祈祷魔術などとも呼ばれるが、
基本的には神の力を借りて効果を成すものだ。
神の力が行使された結界は強力で、魔物だけでなく野生生物も寄り付かず、その効果期間も長い。
彼の場合は僧侶系ではなく魔術師系に区分される。
魔術師系の術は自身や自然、物品などに宿る魔力を用いるものが多い。
どちらも混雑している部分があるため、別系統の使い方を知ることは無駄にはならない。
「幅が広がれば、出来る事が増えますでしょう?」
「そうですね。僕もなんとか幅を広げたいんですけど…」
通常の魔術師系ならば、様々な攻撃魔術を扱い、威力や範囲も自由度が高い。
だが彼の場合は付与魔術に特化したため、攻撃魔術が使えない。
攻撃力や防御力を変動させたり、特殊な効果をもたらすことには長けている。
万屋のほうが向いている能力で冒険者稼業を務める以上、工夫は怠れない。
話をそらそうとしているのを感じたのだろう。
「見せていただけないなら、あらゆる手を尽くしますわよ?」
「何する気!?」
釘を刺した瞬間、先ほどの冒険者の宿の様子を思い出したのか、青くなり耳を伏せる。
そんな話をしながら進んでいたが、水場に着いた彼らの足が止まる。
昨日の浄化結界がまだ残っているため、水場だというのに動物の気配はない。
元々森に近い静かな場所に浄化結界が使われているため、更に静寂は濃くなるはずなのだが。
周囲の様子は全く静寂とは言えない状態になっていた。
「回復が済んだやつらは3人1組で現場に戻れ! 回復役はもっと手早く回復しろ!」
一番近い光景は野戦病院だろうか。
土の上にはマントが敷かれ、その上では怪我人が呻いている。
周囲にいるのは僧侶系らしい。回復魔術をかけたり、傷口の処置をしている。
手足などを魔物に食いつかれたのだろう。
血塗れで倒れている彼らの姿は痛々しい。
それでも治療が済んだ者から立ち上がり、再び森の奥へと駆けていく。
ダンジョン踏破のために作られた道なのか、それとも獣道を切り開いたのか。
勇ましいその姿を目で追うと、すれ違いこちらへと向かう新たな怪我人の姿が見えた。
「おいおい、なんだありゃ?」
「魔術によるものかな? だが少し悪趣味だね」
「多分、【世界樹の歩き方】です。こういう使い方もあるんですね」
気味の悪い物を見た。
そんな感想を持った彼らのことは気にもとめず、
「次が来たぞ! 早く回収して並べろ!」
回復担当は自分たちの仕事を全うしていた。
今回の付与魔術
【世界樹の歩き方】
(オートパイロット)
素材:目的地までの道のりを記した地図。
効果:地図に記した目的地まで、施術対象を強制的に移動させる。
移動速度は施術者が全力で走る速度。途中で障害物などにぶつかるか目的地に到着すると術が解ける。
詠唱:「危険な道でも突き進む。それが【世界樹の歩き方】」
代価:地面を引きずられて移動するため、対象が汚れたり壊れたりする事がある。
対象が生物の場合、頑張れば走れるかも。
2015-08-08T23:56:38+09:00
1439045798
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USS 小説15
https://w.atwiki.jp/uss_trpg/pages/52.html
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう15} ... 著 / 優有
ヴォダースカヤに戻るついでに護衛依頼でも探しておこう。
そう決めた彼らだが、急ぐ理由がないため、
のんびりと見慣れない街を散策していた。
途中で冒険者の宿や探索者ギルドがあれば寄れば良いだろうと思いながら、
露天を冷やかしている。
「いやー、朝から食ったなぁ」
「満腹」
宿の朝食を目一杯食べて上機嫌な二人は、
それでも商品よりも食品に目が向いている。
職人の手による物か、装飾品などを扱う店には狐娘が。
書籍や巻物などを扱う店には猫の獣人が、
それぞれ店員と話し込んでいる。
馬の獣人は商品には興味がないのか、
道行く人々に声をかけ、ふらふらとしている。
店が開いて間もない時間だが、
それなりに客たちが集まっている。
店舗と違い露天商の場合は営業時間が定まらない。
今日ある店が明日には別の店になっていることもあるし、
同じ店でも同じ商品があるとは限らない。
大抵の場合は日用品や食料品を扱う店が多く、
売り手もそれらの職人や農家などが多い。
当然、商売が本業ではないため、
売買価格や量などは安定しない。
気分と客で値段を決めているようなものだ。
そして今日の露天商には機嫌の悪い者が多く、
商品も少ないようだった。
「オメェにゃ関係ねぇだろ」
「うるせぇ。帰れ」
「余計なお世話だよ」
どうやら馬の獣人は露天商と客が喧嘩になりそうなところに首を突っ込んでは、
追い払われているようだ。
「なんでこんなに高いんですか?」
通常の3倍以上の値段を言われて、猫の獣人が首を傾げる。
「食い物を買い占めた奴がいたせいで品薄なんだよ」
この街の住人ではない彼らには気付けなかったが、
露天商の数は普段よりも遥かに少ない。
特に食品を扱う店は、普段の半分もない。
そのため、残った食品店に客が集中して物価を引き上げていた。
ただ、中には書籍の値段を便乗して値上げしている、
この商人のような者もいるようだが。
「買い占め? そんなにたくさん?」
状況説明を受けたことで疑問は更に深くなる。
買われたのは相当な量になるだろう。
まるで軍の遠征でもあるような量だ。
「あ、もしかして、ダンジョン探索?」
彼にはこの街から戦争に行くような先は思いつかなかったが、
別の可能性に思い至る。
「あぁ。なんとか言う貴族がダンジョン踏破するんだと。迷惑なもんだよ」
貴族が荒事に関わると、影響は大きくなる。
体面のために事を大きくしたり、顕示欲で金を使ったり、
プライドのために他者を犠牲にすることもある。
つまり、大体ロクなことにならない。
聞くと、やはりヴォダースカヤとこの街を繋ぐ街道付近に、
ダンジョンが見つかったらしい。
その調査を行った結果、冒険者では手に余ると判断されたようだ。
街の外にできるダンジョンは人目につく機会が少ないため、
巨大化していることがある。
比例して魔物の量が増えやすく、危険性は高くなる。
少人数でダンジョンの核を破壊する手段が取れるなら冒険者や探索者に対応が回る。
しかし今回のダンジョンでは無理だと判断されたのだろう。
「では街道が封鎖されているのかね?」
「いや、むしろ素通りになってる。
代わりにその貴族が余計なことをしてるがな」
馬の獣人の問いを露天商が否定する。
街の周辺でダンジョンが発生した場合、
緊急避難のために関所が解放されることがある。
魔物がそこまで来ないことが前提にはなるが、
避難者を足止めして余計な死傷者を増やさないための措置だ。
こうした判断は請け負った貴族に委ねられる。
私兵団などの移動を楽にする意図もあるが、
その際には関所に私兵団が一部駐留するのが基本だ。
「? 昨日は何も無かったですよ?」
「昨日まで食品を買い占めて、今日から踏破に向かってんだと。
今朝に外から帰ってきた奴が貴族の犠牲になったって愚痴ってたよ」
「…悪い予感しかしませんわね。出発を延期いたしません?」
立ち止まって話し込んでいた彼らに、二人を連れて来た狐娘が提案する。
買い食い交渉が恫喝に変わったのを見て連れ戻したためか、若干疲労の色が滲んでいた。
当の二人は抓られた耳を抑え、反省せずに不貞腐れているが。
「いや、最愛の人を待たせているからね。すぐにでも帰ろう」
「待ってないと思いますわよ…?」
「小悪魔さんにはわからないかもしれないが、
彼女の笑顔を見れるなら待っているかどうかなど些細なことなのだよ」
「破綻した理屈は理解しようがありませんわよ」
二人とも同じ人物の笑顔を思う。
だが狐娘には出がけに一服盛ったウェイトレスの、
ニヤリとした笑顔しか思い出せ無かった。
冒険者の宿と探索者ギルドの場所を露天商に確認し、通りを外れる。
裏路地にも数人の露天商がいるが、やる気も品も少なそうだ。
遊ぶ子供や洗濯物を干している主婦などの合間を縫い、
別の通りへと抜ける。
関所のほうが近くにあったため、少しそちらの様子を見ると、
確かに貴族お抱えの私兵団が待機していた。
その様子を見た彼が、
「なんで豚が木の上に?」
と疑問を持ったが口には出さなかった。
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***今回の付与魔術
&bold(){【宿題を写させて】}
(オート・マニュスクリプト)
素材:白紙の書籍や巻物。転写対象の絵や文章。
効果:白紙の書籍や巻物に絵や文章などを転写する。
詠唱:「もう時間が無いんだ! 頼むから【宿題を写させて】!」
代価:原本のシミや汚れなども転写される。たまに文字化けしたり、
色調が変化する事がある。施術者の力量が不足していると
転写位置がズレたり抜けが出る事がある。
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[[←14に戻る>http://www8.atwiki.jp/uss_trpg/pages/51.html]]
16へ続く→to be continued...
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2015-08-06T08:35:05+09:00
1438817705