USS(ウシシステム) @ wiki
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USS(ウシシステム) @ wiki
ja
2015-11-14T02:03:12+09:00
1447434192
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USS 小説22
https://w.atwiki.jp/uss_trpg/pages/59.html
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう22} ... 著 / 優有
この屋敷の下男と一頻り談笑し、昔話に花を咲かせる。
その内容はほとんどが
「昔はワルだったなぁ」
「随分と丸くなったなぁ」
のどちらかだった。
鹿の獣人は元々この街の住人だ。
悪さをしていた頃の仲間が、真面目に仕事をしている現場を見つけた。
それは喜ばしい事でもあり、気恥ずかしいものでもあるようだ。
照れ隠しもあって、だんだん話がお互いの過去の暴露が混ざってくる。
「金持ち狙いのスリやってた奴が、こんなとこでなぁ。なんか盗んでんのか?」
「恩人を背中から刺した奴が女を仲間にしてんのか。ウリか?」
仲良く笑いあっているような、今にも掴みかかりそうな笑みを浮かべている二人に対して、
彼らの反応は様々だ。
猫の獣人は引いているし、白熊娘は眠りかけている。
当時を知る馬の獣人は懐かしそうにしながら、無意識に背中に手を当てていた。
「で、貴方は依頼についてご存知ですの?」
若干苛立ち混じりに狐娘が問う。
「あ? 知らねえな。つうかお前、胸ねぇな? 売れねぇだろ?」
苛立ちが殺意に変わるのを感じても、彼らの反応は変わらない。
「待ちたまえ、槍は良くない」
「大丈夫、死ななければ直せますわ」
「…何をしてるんですか」
メイドの呆れた声で、一同が止まる。
依頼主の
「獣人なんぞに納得のいく仕事を出来るとは思えん」
という言葉を裏付けるような様子に触れる事なく、メイドは去って行った。
下男に対しては蔑むような目をしていたが。
食事は簡素なもので、彼らには物足りない量だった。
普段携帯している保存食をつまみながら、音が鳴るのを待つ。
「明日も仕事があるからな」
と言って下男が食器を持ち去って少し。
白熊娘が完全に熟睡し、狐娘と猫の獣人が船を漕ぎ始めた頃。
ピピピピッ。
ピピピピッ。
ピピピピピピピピピピピピッ。
音が鳴った。
音量はそれほどには大きくないが、彼らの目を覚ますのには充分だった。
「鳥?」
その音は鳥の鳴き声に似ていたが、抑揚も無く同じリズムを繰り返す。
どうやらリズムを繰り返す毎に、少しずつ音量が大きくなっているようだ。
特に物が無い部屋の中には、その音源となるような物は無い。
2015-11-14T02:03:12+09:00
1447434192
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USS 小説21
https://w.atwiki.jp/uss_trpg/pages/58.html
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう21} ... 著 / 優有
パーティとして初めての依頼から3日が過ぎた。
パーティになったからと言って特に変わる事もなく、相変わらず馬鹿兄弟、悪魔姉妹として他の客たちに認識されている。
変化があったのは猫の獣人についてだが、そもそも彼が増えた事自体が変化だ。
「なんで女性用の服を着せたがるんですかっ!」
今朝もホールには猫の獣人の嘆きが響く。
宿代と食事を無料にするという条件で、彼はこの店の手伝いをしている。
その交渉をした狐娘は1日1回デザートを1品無料で貰う事になっており、
「誰も損をしない契約でしょう?」
と言っていた。
確かに損はしていないが、何かを失っている気がする。
ウェイトレス服やメイド服を着せられた猫の獣人はそう嘆いていたが。
「男性用の制服もあるじゃないですかっ。なんの嫌がらせですかっ!」
「嫌がらせではなく、お客様からのリクエストです。
因みに昨日着ていただいたメイド服はお客様からのプレゼントなので、いつでも」
「着ませんよっ!?」
何故サイズの合うメイド服が用意出来たのか、誰が用意したのか。
ツッコミどころは多いのだが、客のほとんどは気にしない。
むしろ、どんな服が似合うか? と真面目に語りあうような客層が増えた。
だが、彼は一応男の子である。
温厚な性格で根が善良なのか、怒りを持続するのが苦手なようだが。
連日、女装させられて酌をさせられたり、尻や尻尾を撫でられれば彼とて我慢が限度を超える。
「この依頼を受けますっ! 泊まり込みですよねっ!」
そして忘れている店員も多いが、彼は冒険者だ。
依頼を受けるのを拒むには、それなりに正当な理由がいる。
一部の客から、
「なんで彼女を危険な目にあわせるんだ」
と批難の声も上がったが、いろいろ間違っているため聞き入れては貰えなかった。
依頼は、ある屋敷の地下調査だ。
夜毎に何か聞こえる音が、だんだん大きくなっているという。
ヴォダースカヤという街は乱開発とダンジョン発生により、地下の状況が変化してきた。
地下にはどこに何があるのか、正確な把握がされていない。
一応、探索者ギルドが魔術探査などで空間が出来ていないか、
魔物などの大型生物が沸いていないかなど
2015-10-20T19:13:50+09:00
1445336030
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USS 小説20
https://w.atwiki.jp/uss_trpg/pages/57.html
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう20} ... 著 / 優有
貴族達が去った後、再びヴォダースカヤへの移動を再開した。
再開するまでに狐娘の説教と回復魔術があり、多少時間が経過していた。
どうやら猫の獣人は金の入った袋を蹴った際に足を痛めたらしい。
金属の詰まった袋はそれなりに頑強だったようだ。
金のありがたみを説教され、話が金の妖精に逸れた頃に彼は力尽きた。
単に緊張の糸が切れたのもあるが、説教しながら狐娘が足を踏んだりしていたのもあるだろう。
足を踏む度に森のほうから、
「やれっ。そこだっ。懲らしめろっ」
と小さな声が聞こえたらしく、白熊娘が声の主を探していたが。
「全部受け取るほど恥知らずではありませんわよ」
「袋を拾ったら受け取ったことになっちゃうから」
「あぁ? 金に汚くねぇ振りとか、まぁたなんか企んでんのか?」
「ちょっとお待ちなさい。汚いってなんですの? そもそも人をなんだと思ってますの?」
「小悪魔、さっきのあれ妖精かな?」
「お姉さま!? あぁもう! バカの方々に毒されてお姉さままで!」
「バッ…テメェ、他人のこと言えねぇだろ」
「ひゃっ!? し、尻尾掴まないでっ」
和気藹々と、あるいは喧々諤々と街道を歩く彼らの姿に、動物達が逃げていく。
変わらず斥候と周辺警戒をしている馬の獣人にはその様子もわかっていたが、
それより彼には気になっていることがあった。
「彼は知り合いかね?」
その問いに一同が言葉を止めるが、
「ぶん殴った」
白熊娘は迷いなく答えを返す。
「…よくそんな機会があったな? あんな取り巻き引き連れた奴相手に」
「いや、豚氏のほうではなく、部下のほうだ。何やら因縁でもありそうに感じたのだが?」
訂正しながら猫の獣人へと目を向ける。
猫の獣人は尻尾を奪い返して、狐娘に背を見せないように警戒しながら返す。
「昔、村に来た探索者の人です。次に来た時には冒険者になってましたけど」
「探索者ギルドを辞めて冒険者になったということですの?」
「さぁ。その辺はよくわかりません」
「うむ。問題はそこではないからね。彼は君とどういう知り合いかね?
どんなものかは知らないが、見知った相手の連れにいきなり魔術を使うというのは、
あまり普通ではない
2015-10-06T22:44:03+09:00
1444139043
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USS 小説19
https://w.atwiki.jp/uss_trpg/pages/56.html
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう19} ... 著 / 優有
豚と呼ばれた貴族は一瞬、その笑みを凍らせて不快気な表情を見せた。
だが、それを言った相手を確認して、さらに顔色を変える。
「ぶほほっっ! お久しぶりですねぇ、白熊さん」
「おや、知り合いかね?」
「ぶん殴った」
「お前、マジで貴族をぶん殴ってんのな」
「なんでそんな事に?」
「ダンジョン踏破、おめでとうございますわ」
貴族と冒険者の接点は意外と少ない。
冒険者に会おうとする酔狂な貴族が少ないというのもある。
また、冒険者を使わずとも私兵で用が足りることも接点の少ない理由だ。
権力者でもある貴族を毛嫌いした冒険者が、
機会があれば殴ってやる、と酒の肴にすることもある。
だが実際に殴った者がいれば、猫の獣人のように尋ねるだろう。
その原因とも言える狐娘が話をそらしているのは、後ろめたいからか。
「ぶほほ。奇遇ですねぇ。お二人とこんな所で出逢うとは」
ソファの上で腹を揺らし笑う貴族に、笑顔を返す狐娘と睨み返す白熊娘。
「ちょうど今、ダンジョンを踏破しましてねぇ。非常に気分が良いのですよ」
彼が指を立てると、私兵団の兵士長らしき男が前に出てくる。
「なんでも兵の治療をなさったとか。ささやかですがお礼をしましょう。
受け取りなさい」
貴族から渡された袋を彼らの方に放って、兵士長は笑みを浮かべた。
兜の真庇で顔半分が隠されているが、覗く口元には笑みが浮かんでいる。
地面に打ち付けられた袋からは、小さな金属の擦れる音がした。
中身が相応の量の硬貨であろうことは容易に想像できる。
兵士長の笑みが歪に見えたのは、彼だけだった。
そして彼以外、その言葉の意味が理解出来る者はいなかった。
「【その身をひさげよ】」
狐娘の手が、地に落ちた袋を拾い上げようと伸びた時。
兵士長の発した言葉は、彼女に向けられていた。
「取っちゃダメっ!」
術の対象となった狐娘に叫びつつ、袋を蹴り飛ばす。
袋は重い音を立てて少しだけ飛び、再び地面に打ち付けられた。
「な、何をしてますのっ!?」
「何をするんだっ!」
金を蹴るとは何事かと狐娘が怒鳴るのと同時に、
猫の獣人も兵士長へと怒鳴りつけていた。
2015-09-15T00:52:33+09:00
1442245953
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USS 小説18
https://w.atwiki.jp/uss_trpg/pages/55.html
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう18} ... 著 / 優有
肉華は捕食により花弁を増やし、
それが離れることで肉蛇が溢れていたらしい。
犠牲になった兵士と同量の体積が増した分が肉蛇となり、
近くにいた他の兵士たちの足下へと這い寄る。
先ほどまでとは違い、兵士たちはそれらを打ち払い、
自身の身を守っている。
ここまでの進軍によって、肉華にも陽の光が差している。
洞穴は既に切り拓かれ、ただの窪地のように名残だけを残していた。
壁などを含め、全てを破壊した訳ではないが。
治療中だったを除く全てが、かつて洞穴だった場所で待機していた。
ダンジョンの残骸とも言える肉壁。
あるいはその床に触れ、その瞬間を待っている。
その緊迫した前線の様子も見方によっては、
「なんでこんなところに行列ができてますの?」
という狐娘の感想がしっくりくる状態だ。
それでも、彼らが運んできた負傷兵たちは、その行列に並ぼうと身を捩る。
先程まで治療に当たっていた兵士や治癒術師たちは、
ダンジョンの核発見の報を受けて治療を中止。
負傷兵を見捨てて、その行列に並んでいる。
「なんだか楽しそうだな。私たちも並ぶか?」
その姿に不快感を示す鹿の獣人とは違い、馬の獣人は楽しそうだ。
「あ」
両手に人をぶら下げた状態の白熊娘が声を漏らした直後、
行列の奥で何かが弾けた音が響く。
行列が騒ぎ出し周囲から隠すように身を丸める。
各々手にした物を確認しているようだ。
「…ダンジョンが踏破されたみたいですね」
ダンジョンを踏破した時、外への転移が起こる。
これは異世界の産物であるダンジョンが、
元々ある場所に帰るために起こる副作用だと言われる。
だが今回のように、既に外との境が無い場合は、転移は起こらない。
この世界との境界が曖昧になるため、
戻すべき対象が定義できなくなるためなのかもしれない。
もちろん、そこまでダンジョンを破壊することは容易ではないため、
ほとんどの冒険者たちはそんなことはしない。
そのためダンジョンが破壊された時、
残されたダンジョンの欠片が魔力の篭った石と化す事を冒険者で知る者はほとんどいない。
「ちくしょうっ! ハズレかよ!」
「くそっ! なん
2015-09-02T11:53:13+09:00
1441162393
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USS 小説17
https://w.atwiki.jp/uss_trpg/pages/54.html
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう17} ... 著 / 優有
冒険者がダンジョンを踏破することは容易ではない。
限られた人数で、少ない情報を元にダンジョンへと挑む。
資金も少なく、食料や回復薬にも持てる限度がある。
体力と魔力が尽きれば、生きて帰ることさえ難しい。
だが、貴族のダンジョン踏破は根本から違う。
貴族には冒険者には無い資金力という力がある。
兵士の数と装備を整え、物資を満たす。
斥候も使い情報を集め、対策を講じる。
踏破の下準備に費やせる金額と人脈の違い。
それが最も大きな冒険者との違いだが、本質的な違いがある。
貴族は自らの命を賭けない。
そして、他者の命には頓着しない。
それが目に見える形で、今このダンジョンは踏破されつつあった。
私兵団らしき者達は、軽装とも言える程度の鎧を纏い、
魔物の群れへと突っ込んで行く。
腰に下げた剣は粗悪品で斬撃武器より打撃武器のように不恰好だ。
形状も整っていないため、どれだけ戦いに耐えられるかわからない。
剣を手に取っていない理由はそれもあるが、
既に両手が塞がれているからだ。
抱えた木箱や袋に詰まった食料を、魔物の群れへと放り投げる。
なるべく奥の魔物も食いつく様に、出来る限り近くに寄って。
斥候が得た情報では、このダンジョンの魔物は動物的だ。
魔術的な生物でもなく、ただの異形の群れだ。
他の生物に食いついて寄生する習性があることもわかった。
ダンジョンの作りも、ある程度は把握した。
それらの情報を得るために何人の斥候が犠牲になったのかは知らない。
貴族である彼には無駄な情報だからだ。
洞穴がさほど深くは無く、崩れたとしても掘り返すのも難しくない事が分かれば、それで良い。
元々は熊や盗賊などが住んでいた洞穴だったのだろう。
水場から森林地帯に分け入り、それでも街道側には背を向けた穴。
斜面が緩やかに入り口へと向かっているのは、
盗賊が荷物を運びやすい様にした名残か。
木々に囲まれていたその場所は、彼らの手によって切り拓かれ、
日の光を浴びている。
土であるはずの壁も肉色に変わり、這い出てくる蛇の様な魔物同様に蠢く。
撒き散らされた食べ物へと群がる姿に、貴族は鼻を鳴らし不快感を示す。
こんな場所だとい
2015-08-17T22:56:54+09:00
1439819814
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USS 小説16
https://w.atwiki.jp/uss_trpg/pages/53.html
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう16} ... 著 / 優有
近くにあった冒険者の宿には、多くの冒険者たちがいた。
依頼を探してみたものの、ヴォダースカヤへと向かうような依頼は無く、
ダンジョン踏破に関するものも無かった。
ダンジョン踏破中の貴族について話を聞きたかったが、
店員は冒険者たちの相手で忙しい。
鹿の獣人と白熊娘もそれに混ざっていたが、早々に引き上げる。
「準備運動くらいにはなったな」
「雑魚」
ろくな事をしてないのは明らかだが、
狐娘はホクホク笑顔のためツッコミが入らない。
猫の獣人は髪も服も乱れていて半泣きになっているが、
「彼らはスキンシップが激しいな」
と馬の獣人に一蹴された。
再び関所に訪れた彼らの前には、この街に来た時とは違い、
私兵団らしきもの達がいた。
関所に普段詰めている兵士職員もいるが、明らかに機嫌が悪い。
不満を抱えながらも何も言えない兵士職員に憐れみを感じながら、
私兵の指示に従う。
荷物のチェックなどはなく、人数を数えた程度だ。
それしかせずに、
「こんな簡単な仕事に何で時間がかかるんだ?」
などと後ろで聞こえたが、彼らは関所を素通りする。
楽に済むならそのほうが彼らも良いのだ。
険悪さが増して、誰も近寄らない関所を後にして街道を進む。
来た時とは違い護衛対象がいないため、多少気楽に構えているようだ。
天気の良さもあり、のんびりと周辺で取れる動植物や先ほどの露店、
これまでに経験したダンジョンなどの話が交わされる。
「本を買おうなんて、珍しいですわね?」
「結局、何も買いませんでした」
「転売するには露店の本は不向きですわよ?」
「いや、お金目的じゃないです」
金儲けが基本行動の狐娘には、彼の行動はあまり理解できない。
露店売りの本や巻物は大抵が写本を繰り返された粗悪品のため、希少性など無い。
内容も生活に根差したものに偏る。
料理や農作業のノウハウならマシなほうで、日記や家系図なども混ざる。
あまり冒険者には意味の無いものばかりだ。
「昨日も本を読んでらしたけれど、何か調べてますの?」
だがそこに金儲けの匂いがすると、彼女は敏感に反応する。
「付与魔術の勉強…かな?」
「その本、見せてくださいません?」
2015-08-08T23:56:38+09:00
1439045798
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USS 小説15
https://w.atwiki.jp/uss_trpg/pages/52.html
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう15} ... 著 / 優有
ヴォダースカヤに戻るついでに護衛依頼でも探しておこう。
そう決めた彼らだが、急ぐ理由がないため、
のんびりと見慣れない街を散策していた。
途中で冒険者の宿や探索者ギルドがあれば寄れば良いだろうと思いながら、
露天を冷やかしている。
「いやー、朝から食ったなぁ」
「満腹」
宿の朝食を目一杯食べて上機嫌な二人は、
それでも商品よりも食品に目が向いている。
職人の手による物か、装飾品などを扱う店には狐娘が。
書籍や巻物などを扱う店には猫の獣人が、
それぞれ店員と話し込んでいる。
馬の獣人は商品には興味がないのか、
道行く人々に声をかけ、ふらふらとしている。
店が開いて間もない時間だが、
それなりに客たちが集まっている。
店舗と違い露天商の場合は営業時間が定まらない。
今日ある店が明日には別の店になっていることもあるし、
同じ店でも同じ商品があるとは限らない。
大抵の場合は日用品や食料品を扱う店が多く、
売り手もそれらの職人や農家などが多い。
当然、商売が本業ではないため、
売買価格や量などは安定しない。
気分と客で値段を決めているようなものだ。
そして今日の露天商には機嫌の悪い者が多く、
商品も少ないようだった。
「オメェにゃ関係ねぇだろ」
「うるせぇ。帰れ」
「余計なお世話だよ」
どうやら馬の獣人は露天商と客が喧嘩になりそうなところに首を突っ込んでは、
追い払われているようだ。
「なんでこんなに高いんですか?」
通常の3倍以上の値段を言われて、猫の獣人が首を傾げる。
「食い物を買い占めた奴がいたせいで品薄なんだよ」
この街の住人ではない彼らには気付けなかったが、
露天商の数は普段よりも遥かに少ない。
特に食品を扱う店は、普段の半分もない。
そのため、残った食品店に客が集中して物価を引き上げていた。
ただ、中には書籍の値段を便乗して値上げしている、
この商人のような者もいるようだが。
「買い占め? そんなにたくさん?」
状況説明を受けたことで疑問は更に深くなる。
買われたのは相当な量になるだろう。
まるで軍の遠征でもあるような量だ。
「あ、もしかして、ダンジョン探索?」
彼にはこ
2015-08-06T08:35:05+09:00
1438817705
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USS 小説14
https://w.atwiki.jp/uss_trpg/pages/51.html
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう14} ... 著 / 優有
いつの間に済ませたのか、宿を取ってあるという馬の獣人に連れられて訪れたのは、
冒険者の宿ではなかった。
冒険者の宿はそのほとんどが酒場と兼業だ。
その客たちは酒を飲んで一晩中騒いでることもあるため、
何のために宿を取っているのかわからない者もいる程だ。
簡易宿泊施設とでもいうべき物もある。
大部屋に雑魚寝するだけの、毛布があれば上等という宿。
だが、彼らが訪れたのはそのどちらとも違う。
「場違い」
白熊娘が呟くのを聞き、鹿の獣人が呻く。
「認めたくねぇが、宿を間違えてねぇかアニキ?」
目の前で笑顔を見せる青年を睨みつけているのは、
居心地の悪さを隠すためだろう。
二人に睨まれながらも笑顔を見せる青年は、
うやうやしくドアを開けて中へと彼らを促す。
「あ、どうも」
猫の獣人が反射的に頭を下げるが、
狐娘と馬の獣人は目もくれずに通りすぎる。
中に入ると柔らかな絨毯が敷き詰められており、
品の良い革製のソファとテーブルが置かれている。
その上にあるのはシガーケースと灰皿。
何の本かはわからないが、数冊の本も詰まれている。
カウンターには絵に描いたような老執事がいた。
「お帰りなさいませ」
「ご苦労」
当たり前のように受け答えをし、
部屋の鍵を受け取る姿に一同がツッコミたくなる。
「朝食は8時に。後ほど私の部屋にはワインを。
では諸君、まずは部屋に荷物を置いて来よう」
老執事に背を向けて指示を出し、当然のように彼は歩き出す。
何故か様になっているのが一同を不安にさせるが、
場の雰囲気に呑まれたのか何も言葉が出ない。
「私の部屋にはフルーツを願いますわ。朝食はパンにしてくださいな」
老執事が頭を下げるのを全く無視したままで歩いていく二人。
何故か肩をいからせて周囲を睨みながらついて行く二人。
その四人に囲まれてビクビクしている猫の獣人。
明らかにこの宿には奇異な集団だが、態度に出す従業員はいなかった。
しばらくのち、狐娘は頭を抱えていた。
フルーツを摘む白熊娘にツッコミを入れる気力が無いほど、
後悔をしていた。
「迂闊なことを言う物ではありませんわね」
ベッドの上で壁
2015-07-27T23:54:41+09:00
1438008881
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USS 小説13
https://w.atwiki.jp/uss_trpg/pages/50.html
&font(16pt,b,i){付与魔術を覚えよう13} ... 著 / 優有
依頼を達成した彼らは、報酬を分けるために酒場で
同じテーブルについて食事をしていた。
晩飯には少し早めだが、すでに飲み始めている客もいる。
バーカウンターのような店ではなく、大衆居酒屋だ。
客層も冒険者よりも地元の住人が多いように見える。
「あー、疲れた」
酒をのみ、こぼしたのは鹿の獣人だ。
狐娘から回復魔術を受けて体力は回復したのだが、
疲労感までは回復していない。
猪を埋葬し革鎧を修復。街まで歩き積荷を降ろしたのだから、
多少なり皆に疲れの色が見える。
「いやぁ、労働の後の一杯は実に美味いっ!」
一番動き回っていたはずの者は全く疲れた様子もないが。
食事を済ませ酒を飲みながら、今日はもうこの街で宿を取ろうかと考え始めた頃、
テーブルに硬貨の入った袋が置かれた。
「さて、そろそろ報酬の分配をいたしましょうか」
皆がひと心地ついたのを確認し、狐娘が預かった袋から報酬を取り出す。
この店を選んだのは冒険者が少なく、金を見られてもトラブルが起きにくいためだ。
タチの悪い冒険者の場合、金を見たら奪うか盗むかを考え、実行する際は躊躇がない。
一般人にもそうした考えを持つ者もいるが、冒険者相手に行動に移す者は稀だ。
今回、商人から直接受け取った報酬は25st。
個人の依頼であることを考えれば、高額な部類に入る。
五人で頭割すれば、2日分には足りないが1日分の宿代と食事なら余裕。そのくらいの報酬だ。
実際には依頼が冒険者の宿に出された時に、前金が預けられている。
それも含めると2日暮らすだけの金額に足りる。
そんな金額が目の前にあるため、彼らは割とのんびりと過ごしていた。
「私が15st、猫の方とお姉様が残りを折半ですわね」
迷いなく半分以上を自分の懐に入れようとする。異をとなえたのは鹿の獣人だ。
「バカかテメェは? どういう計算すりゃ、そうなるんだよ?」
「バッ…貴方の治療費を差し引いたのです。それくらい覚えておいてくださいません?」
バカ呼ばわりされたことが不快だったらしく、睨むように返す。
「ふざけんな、アニキの報酬は関係ねぇだろが」
「貴方の分だけでは不足ですのよ? 馬の方が支払うのが筋でしょう
2015-07-14T17:45:17+09:00
1436863517