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其の六かしら~?」(2006/03/24 (金) 14:42:33) の最新版変更点

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<p>「久しぶりだね」</p> <p> ・・・・・・いえ、今日昼間に、お会いしたばかりですよ。</p> <p><br> また俺は夢の中にいた。夢だと自覚出来る、夢の中に。<br> 今夜の夢は珍しいことに、色つきだった。<br> 風景もはっきり記憶していて、それは初めてのことだった。<br> 何処か・・・目の前に青い海の広がる、白い手摺りに手を掛けて、海を眺めていた。<br> しかし見ている映像は鮮明なのに、意識は朦朧としていた。<br> 先生の声が背中越しに聞こえたが、俺は振り返らなかった。<br> 今にも倒れそうで、手摺りを離したら倒れてしまいそうで、<br> 先生を振り返ることが出来なかった。</p> <p><br> 「さっきは、災難だったね」</p> <p>・・・・・・ええ、全くです。</p> <p>「楽しい旅の途中なのにね」</p> <p> ・・・・・・ええ、そうですね。でも、別に構いはしません。</p> <p> 「そうだね、どうしてお友達に、さっきのこと言わなかったのかな?」</p> <p> ・・・・・・そんなこと。だって、普通に白けるでしょ?</p> <p>「本当はこわかったんじゃない?」</p> <p> ・・・・・・馬鹿にしないで下さい。随分腹は立ちましたけどね。</p> <p><br> 先生が、さも可笑しそうにクスクス笑うのが気配で感じられた。<br> 馬鹿にしやがってこの○○○○、と心の中で少し汚い言葉で罵ってみた。<br> それがまるで聞こえたかのように、先生は急に笑うのをやめ、<br> ゆっくりと近付いて来た。俺のすぐ背後で、先生は足を止めた。<br> 俺の肩に先生のサラサラと長い髪が触れ、耳には吐息がかかるほど、近くに。<br> そして、先生の躰のいい匂いがした。香水、かな・・・?<br> でもこの匂い、何処かで・・・感覚はそれ程はっきり知覚しているのに、<br> 俺の意識はすぐにでも飛んでしまいそうだった。</p> <p><br> 「キミ、自分の所為だって思ってるんじゃない?」</p> <p>・・・・・・は?</p> <p> 「自分がいるから、こんな事件が起こったと思ってるんじゃない?<br> だからお友達にも、言えなかった」</p> <p> ・・・・・・そんな被害妄想的な発想、僕にはありませんよ。</p> <p>「わかってるくせに、キミは」</p> <p>・・・・・・帰って下さい先生、僕は、</p> <p><br> 先生の言葉を遮り、振り返ろうとして手摺りから手を離したその瞬間、<br> 俺の躰は大きくぐらりと揺れ、手摺りの向こうへ落ちた。<br> あ、と叫ぶまもなく、意識は深い闇の底に沈んで行った。</p> <br> <p>「オイ、大丈夫かよ、オイ!」</p> <p> その声と、自分の躰を揺さぶる手によって目を覚まし、<br> 俺は反射的に、目の前に伸ばされた手を力一杯掴んだ。</p> <p>「なんだか、うなされてたぞ。大丈夫か?」</p> <p>不幸にも、その手は石坂の手だった。うわ、キモ。<br> 慌てて手を離したが、石坂は特に気にしていないようだ。よかった。<br> 大丈夫だ、起こして済まなかったと謝ると、石坂はそんなこともあるさ、と言い、<br> また自分の布団に戻って行った。・・・それにしても。<br> 夢がだんだん、近付いている。ホテルの仄白い天井を眺めながら、そう思った。<br> もう一度目を閉じる気には、とてもなれなかった。<br>  <br></p>

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