2009春 夢束本LaTeX2ε組版まとめ (1)-LaTeXの概略とエディタについて(文責:一色靖)
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きちんとした印刷所を通して本を出版しようとすると、組版をどうするかという問題が付いて回ります。市販の組版システムは非常に高価で、同人誌などを出すには不向きです。よほどリッチなパトロンが付いているとかいうなら話は別ですが(笑)
歴代の夢束本はLaTeX(単にTeXと呼ぶ人も多いですが、生TeXと混同しないようにLaTeXと呼んでおきます。生TeXとLaTeXがどう違うのかは今のところ知らなくても大丈夫ですが、LaTeX2ε組版まとめ (5)でそのあたりの事を説明していますので知りたいかたはそちらを見て下さい)で組版してきました。ぼくたちも今回の第八回文学フリマに出展するにあたってLaTeXで組版を行うことにしました。
歴代の夢束本はLaTeX(単にTeXと呼ぶ人も多いですが、生TeXと混同しないようにLaTeXと呼んでおきます。生TeXとLaTeXがどう違うのかは今のところ知らなくても大丈夫ですが、LaTeX2ε組版まとめ (5)でそのあたりの事を説明していますので知りたいかたはそちらを見て下さい)で組版してきました。ぼくたちも今回の第八回文学フリマに出展するにあたってLaTeXで組版を行うことにしました。
その前に……
なぜTeXなのか?(取りあえずTeX=LaTeX2εと思って結構です)
- フリーソフトである。
- 個人でも印刷所にダイレクトに持ち込める完成された製本素材(版下といいます)を作れる。
- 三十年以上に渡って改良を重ねられ、きわめて高い信頼性がある。また世界中の有志による多数のパッケージ(アドインみたいなもの)が存在する。これらにより、化学構造式から、果ては、レ点などのついた漢文、楽譜、将棋の棋譜まで作成できる。
- Windows, Mac OS X, unix, FreeBSD, LINUXなど、あらゆるコンピュータで使用でき、しかもどのようなマシン・環境で作っても寸分狂わぬ同一の印刷出力が得られる。
- TeX文書はテキストファイルなので、簡単に手を入れられ、またデータベース化も可能である。
- TeXで作成した版下ファイルをPDFファイルに変換するツールも含まれている。
- (文芸とは関係ないが)論文、レポートなどの構造的な文書を易しく作ることが出来る。また極めて品質の高い数式を記述できる。
- (これが大事)LaTeX2εに関する情報はインターネット上に膨大に存在し、困った時はネット検索でたいてい解決してしまう。
現状ではPCに携わる人の多くはWindowsユーザーであるため、Windows上でLaTeX2εによる組版を行う事は、現実的選択肢の一つといえる。
WindowsにLaTeX2ε環境を構築して、なおかつLaTeX2εのコマンドについて知り、TeX文書を作れるようになりたい
- 三千円くらいの出費は気にしないというのであれば、奥村靖彦著「 LaTeX2ε美文書作成入門 」を買って付録のCD-ROMをインストールし、本を読むというのが、一番楽な道だと思います。一色は昔からそうしてきました。これがあればLaTeX2εの他、版下ファイル表示アプリケーションであるdvioutや、TeX文書をマウスでワープロちっくに処理するWinshellというアプリケーションもインストールできます。
- もちろんすべてタダで済ませたいというのであれば、ネット経由で上記の環境を構築し、勉強は検索を駆使して知識を培うこともできます。前項で書いた用語をGoogleすれば、色々出てきます。
- その他、できればあった方がいいもの。WindowsのシェルCMDはおバカなのでbashなどを扱えるように、 Cygwin も導入しておくと、先々楽です。
若者よワープロを捨てテキストエディタを使おう
- そもそも小説原稿はテキストエディタで書いた方が良いと思います。執筆・編集速度が断然違うからです。(ただしWindows付属のメモ帳やワードパッドはやめましょう。あまりに非力)たとえば百枚の作品を書き上げたとして、「県警」と「県警察」という言葉を混在してしまっていたとします。「県警」だけを「県警察」に直したい時はどうしますか? 正規表現をサポートしていないエディタやワープロは、ここで失格です。単純置換では「県警察察」という言葉が百出するからです。余計な仕事が増えます。正規表現をサポートしているエディタなら 県警\([^察]\) → 県警察\1 という置換一発で済みます。ぼくもWORDは一応インストールしてありますが、原稿用紙換算器としてしか使用していません。その役目もそのうちPerlでプログラムを組んでやろうと思っています。
- それもEmacs系のエディタならなおよし。Windowsなら Meadow がこれに相当します。もちろんフリーソフト。
- 賞応募などで四百字詰めなどの原稿書式が求められている場合には、最後に書き上げたテキストをワープロに吸い上げて原稿用紙出力すればいいし、LaTeX2εで同様な出力をする事ももちろん可能です。執筆の途中は、エディタを使っていた方が、色々と便利なことが多いということです。
- MeadowにはTeX文書作成のためにYaTeX(やてふ、日本名「野鳥」)モードというモードがあり、LaTeX2ε組版コマンドの省入力化、コンパイル(版下作成)、組版結果の確認がすべてMeadow内から行えます。野鳥は、非Emacs系のエディタ、Vz、Wz、秀丸などにも移植されて無料配布されています。YaTeXの使い方? 「YaTeX コマンド」などでGoogle検索してみましょう。十分後には八割方マスターしていることでしょう。
- 組版結果が問題なければ、Meadow内でシェル(昔のDOSみたいなものです)を呼び出して、dvipdfmxコマンドで版下ファイルをPDF化します。
- つまり流れとしては、abc.txt(元原稿) → abc.tex(組版コマンドを埋め込んだTeX文書) → abc.dvi (LaTeX2εにより作成した版下ファイル) → abc.pdf (dvipdfmxにより変換したPDF文書) となるわけですが、これがすべてMeadowの中から出ずに行えるわけです。