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《機械技術》ニコラス・ハルトゼーカー&ローグ ◆ACfa2i33Dc


 アーカム市・リバータウン。
 『アーカムの下町』とも呼ばれる、歴史ある――あえて言えば、古臭い――建物が並ぶ地区。
 立ち並ぶ家々は質素だが、それは静かさを意味しない。
 むしろ、雑多な人種や、個性様々な職人たちの行き交うこの地区は、賑やかと言っていい。

 そのリバータウン地区の、技師や職人の個人工房が並ぶ通り。そこに建っている工房のひとつ。
 機械義肢や時計、空繰の置かれた店内に、男がいた。

 鉄色の瞳をした男。顔の左半分を、できそこないのヘルメットのような機械――おそらくはゴーグル――で覆った男。
 今はジャンプスーツをきっちりと着込んだ男は、商品の義手を整備しながら、人を待っていた。
 だが、男が玄関口に目を遣ることはない。無駄だから。待つ相手が玄関からはやってこないだろう事を、男は知っていた。

「……よ、っと。頼まれ事は終わったよ」

 男の背後。入口から見れば影となる位置に、いつの間にか。一人の男が立っていた。
 警官の制服を纏った男。知っている者が見れば、その風貌はアーカムの警察署長そのものだとわかるかもしれない。
 だが、真実はそうではない。本物のアーカム警察署長は、今頃ノースサイドで会食を楽しんでいる筈だ。
 ならば、この男は誰なのか。

「そうか。収穫は?」
「特になし。巡回の情報や死体の記録も漁ってみたけど、これは、ってのはなかったよ。……ただ、不審な死は増えてたかな。
 まあ、サーヴァントやマスターの情報に繋がりそうなのはなかった」
「そうか……。ところでローグ。お前いつまでその格好のつもりだ?」
「うん? ああ、そういや警察署の署長の格好のままだっけ」

 そう言って。ローグと呼ばれた、警察署長の姿をした男の姿が、“歪んだ”。

 ――顔が溶ける。
 ――腕が軋む。
 ――胴が歪み、人間の体が『変化』する。

 冒涜的な変身過程に、ゴーグルの男が僅かに顔を歪めた。
 ……ややあって。先程まで警察署長の姿をしていた男は、完全にその姿を別人へと変じていた。
 性別は判然としない。線の細い中性的な顔立ちと、細身の体が合わさって外から判別するのは困難だ。ゴーグルの男も、聞いた事はない。
 警官の制服もいつの間にか脱ぎ棄てられている。今着ているのは、白い、無地の上下だ。

 ――人間離れした『変化』を見せたその存在。
 ――『ローグ(ならず者、或いは盗賊)』と呼ばれた彼は、人間ではない。

 アーカムで夜な夜な繰り広げられる、聖杯を賭けた、血みどろの争奪戦。聖杯戦争――
 その魔術儀式によって呼び出される、サーヴァント。

 ――怪盗Xi(サイ)。
 ――ゴーグルの男に呼び出された彼は、そう名乗った。

「ねえ、ニコラス」

 怪盗Xi――ローグに名を呼ばれて。
 ゴーグルの男――ニコラス・ハルトゼーカーは振り返る。

「どうした」
「生きてた頃もこういうのはやってたから、そこはいいんだけどさ。
 そういう事をしてた身から言わせてもらえば、化ける相手は予め殺しといた方が楽だよ」
「サーヴァント以外の殺しは無し(ノー)だ。契約した時にもそう話した筈だろ」
「マスター相手に殺すのが憚られる、ってのはまだわかるよ。俺はマスターでも殺した方が楽だと思ってるけどさ。
 でもさぁ。NPCまで殺さないで済ませるのは面倒だし、意味がないと思うよ」
「だとしてもだ。サーヴァント以外の、殺しは、しない。
 ……俺は人間だ。兵器なんかじゃない。だから、殺しはできるだけしない」
「……ふうん」

 なにかを考えるかのように、ローグは言葉を切った。
 口を何事かもごつかせて。その『何事か』を、口の中に押し込め。別の内容を吐き出す。

「……もう一度確認させてくれよ。ニコラス、あんたが聖杯を手に入れて願いたい事を」
「なんでまた? 仕事してるのはわかるだろ」
「いいからさ」
「……まあ、いいか」

 観念したように、ニコラスは義手を整備する手を止める。
 そして、ジャンプスーツの上半身を脱いだ。

「この前も見せたな。……俺が聖杯を求めるのは、これの理由を知るためだ」

 ――鋼の軋む音。
 ――上半身裸のニコラス。その左半身は、金属に覆われていた。

 左腕は、肩から指先まで、全てが機械部品で構成された義手。
 左胸から脇腹にかけてまでも、金属部品が鈍く光る。ところどころの隙間から、歯車やピストンが見え隠れしている。その位置は、本来なら内臓や骨格があるべき場所だった。
 ジャンプスーツに隠れた左脚も――機械化された義足である事を、ローグは既に知っている。

「俺には記憶がない。気がついたら倉庫で寝ていて、とある組織に備品として扱われていた。そして誰も俺の身の上を教えてくれないまま、奴らは消えた。
 だから俺達は奴らを追っている。俺が被害者なのか、加害者だったのかを知るために。俺が人間であるために」
「……人間であるために、ね」
「人は、『喪失』を『喪失』したままじゃいられない。なにかを失って、それを何故失ったのかも知らずに生きるのは、つらいもんだろ?
 だから俺は、それを知りたい」
「……一つ質問なんだけどさ」

 なにかを回想するように。ローグは――X(サイ)は、言った。

「もし、その理由を知る機会があったとして――『お前はただの実験動物で、血も涙もない殺戮機械兵器だ。探すような過去も、元々存在しないのさ』って言われたら、どうする?」
「……だとしても、俺は人間であることをあきらめたりはしない」

 いくらか傷ついたような表情で、ニコラスは、そう答えた。

「そっか」

 その返答に、ローグはただ、そう返して。
 少しの静寂が、工房の中を包む。
 数分の後。ニコラスは、静寂に耐えかねたかのように口を開いた。

「……ああ、そうだ。アイはどうした?」
「あんたの頼み通りに、『調達』に行ってるよ。【重蒸気(ヘビィスチーム)】……だっけ? それの」
「オーケー。……にしても、凄いもんだな。この都市にはミアズマはないってのに」
「まあね。二人で一人の『怪盗Xi』だ。その辺は期待しといていいよ」

 まるで自分の事のように、ローグは自分の相棒を自慢する。

「……そういやさっき、『俺達』って言ってたよね。あんたにも、相方とかいたの?」
「いるぜ。一緒に誕生日を祝うような仲のが」
「誕生日って、あんた自分の誕生日わかんないんでしょ?」
「ま、そうなんだけどな」

 冗談めかすように、ニコラスは笑った。

「相棒と俺で、二人で一人の『道化師(バスカーズ)』だ。演じる物語は、怪人(フリークス)の復讐劇(リベンジプレイ)。
 ……俺にとっては、名前をくれて、機械から人間に戻してくれた恩人だよ」
「……ふう、ん」

 気のないように。そんな風を装って、ローグは霊体化し、ニコラスの視界から消えた。

 ……怪盗、『怪物強盗』Xi。

 元は『絶対悪』に作られた生物兵器である、彼。
 何人もの犠牲者を出した怪人である、彼。

 そんな彼が、何故、聖杯戦争という場であるとはいえ。
 令呪によって縛られている立場であるとはいえ。
 ニコラス・ハルトゼーカーに従っているのか。

 その理由は、彼を知っている者ならば――例えば、生前の彼の『中身』を見抜いた探偵ならば――明らかな、話だった。


 ――それが『共感』であるとなど、彼は口にはしないのだが。



【クラス】ローグ
【真名】怪盗Xi@魔人探偵脳噛ネウロ
【パラメーター】
筋力C 耐久B 敏捷B 魔力D 幸運D 宝具E
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
盗用:C
盗み。
戦闘終了後、敵サーヴァントもしくはマスターの『なにか』を盗むことがある。
盗む可能性があるのはサーヴァントに付随する武具や所持品、あるいは情報など。武具や所持品を盗んだ場合は、自らの魔力を消費することでサーヴァント消滅後も盗んだ品の現界を維持できる。
【保有スキル】
変化:A
文字通り、『変身』する。
全身の体細胞を変異させて、どのような人物にもほぼ変身することができる。
変身中は『正体隠蔽:D(サーヴァントとしての気配を断つ。変身中は同ランク以上の感知系スキルを持つサーヴァントでないとサーヴァントだと感知されない。攻撃に移ると解除される)』を得る。
体の一部分だけを変化させ、武器として扱うことも可能。
――また、その冒涜的な変異の過程を目の当たりにした者(NPC、マスター)は、精神にダメージを受ける可能性がある。
怪力:B
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
魔眼(偽):C
脳内変異とプログラムによる偽の魔眼。
他人の顔を見ただけでその脳内に流れる電流(記憶)を読み取れる。
また、劣化電子ドラッグにより他人の脳内を掻き回すこともできる。
NPCに対しては洗脳、マスターに対しては正気度ロールを行わせる事が可能。サーヴァントには通用しない。
再生:C
細胞変異による急速再生。
たとえ戦闘中であってもダメージを再生し、超スピードで回復する。また、待機中のダメージ回復速度を速め、消費する魔力を低減する。
ただし、戦闘中の再生は魔力の消耗を招く。
人間観察:C
人々を観察し、理解する技術。
自分を知るために人間を解体し、人間を解体してきた怪盗Xは、人間について肉体的にも内面的にもよく知っている。
このスキルと『変化』の組み合わせで、他人に成りすます精度を上昇させる事が可能。
芸術審美:D
芸術作品、美術品への執着心。
芸能面における逸話を持つ宝具を目にした場合、低い確率で真名を看破することができる。
【宝具】
『あなたの隣に(アイ)』
ランク:E 種別:対X宝具 レンジ:- 最大補足:一人
もう一人の『怪盗Xi』、相棒のアイ。
戦闘能力は持たないが、かつて怪盗Xをサポートした逸話から派生し、マスターの魔力を消費することにより『物品の調達』を行える。
この『物品の調達』は世界観を問わず、マスターが(あるいはXが)正確に知っている品ならば調達が可能。
ただし、物品によって魔力の消耗は比例する。
戦闘に役立つ事も無く、精神的なダメージを与える事もない。けれど『怪盗Xi』が『怪盗Xi』であるために、もっとも必要な宝具。
【weapon】
『変化』する自らの肉体。
【人物背景】
記憶を持たない、最後に自分を見つけた怪盗。
【サーヴァントとしての願い】
願いくらいはもちろんある。が、生前やりたい事は大体やったし、ニコラスに共感する部分もあるので契約には従う。



【マスター】
ニコラス・ハルトゼーカー@スチームヘヴン・フリークス

【マスターとしての願い】
自分の過去を知る。

【weapon】
幾つもの武器を隠し持っている。
小口径の実弾銃や、出力の低い重蒸気を発射するパルス銃などを主に使用する。
火球を発射する火炎放射器なども持っているが、本人は殺傷性の高い武器を使う事を嫌う。

【能力・技能】
《人とクラフトの融合》
左半身が、《クラフト》と呼ばれる《重蒸気(ヘビィスチーム)》で動作する機械に改造されている。
左腕に仕込まれた《蒸気圧縮砲(スチームレイ)》は生半可な機械ならばスクラップにする火力を持つ。
が、《蒸気圧縮砲(スチームレイ)》で弾丸とする《重蒸気(ヘビィスチーム)》は左胸の人工心肺の動力と共用されており、《蒸気圧縮砲(スチームレイ)》の連射は人工心肺の動作不全を引き起こす。
また、容易く人を殺す《蒸気圧縮砲(スチームレイ)》をニコラスは人に向かって撃つのを嫌う。

機械関連の知識や技術もそれなりに豊富。

【人物背景】
記憶を持たない、自分を探す怪人。

【方針】
聖杯を手に入れる。
サーヴァント以外の殺しは、極力行わない。