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《沼男》アイリスフィール&セイバー ◆HOMU.DM5Ns





私は、いったい何を見ているのだろうか。
目の前で起きていることを、私はただただ信じられないでいた。


伝え聞く異界の聖杯戦争。
時計塔内でも俄かに噂になっているその儀式に、私は踏み入れた。
高騰していた参加の証明書である『銀色の鍵』を首尾よく入手し、片田舎風の世界へと転移を果たす。
これだけでも魔術史に名を残す体験だが、それがただの前提でしかないというのが
ここにある聖杯が「本物」であるという何よりの証左となった。

宛がわれたサーヴァントと契約を交わし、戦術を構築し、使い魔を放ち状況を分析し、夜の街に繰り出す。
そこで示し合わせたように人気の消えた―――当然人避けの結界の作用である―――一角で、私は戦いの相手と対面した。


絹糸の如し柔らかに流れる銀髪。
特大のルビーすら劣る紅の瞳。
人形じみた、というより、人外じみた見惚れるほどの美貌。

間違いない。
事前調査として知っていた冬木での聖杯戦争に出てくる御三家が一、アインツベルン製のホムンクルスだ。
かの錬金術の大家もこの参じたとは、ますますこの儀式の神秘の濃さを計れるというものだった。

出会った女は自らの名を名乗り、家名を語り、こちらもまた存分に礼を尽くした宣誓を紡ぐ。
これこそ魔術合戦の醍醐味。互いの秘術を競い合う高貴なる紳士のゲームだ。

自らのサーヴァントを現界させ、当然相手方もその英霊に命を下す。
現れた男は青い基調の服を纏う、まさに英傑に相応しい相貌をしていた。
マスターと同じ銀の髪を後ろに上げていたので、私はその表情をはっきりと視認する。してしまった。



そこで―――私は決定的な思い違いをしていた事に気付いたのだ。



英霊同士の戦いがどれだけ人智を、魔術師の認識すらも超越しているのかを。
彼の冬木で起きた災厄を知らぬわけではないのに、愚かにも私はその意味の重さおぞましさを見誤っていたのだ。



そこからは正しく、怪異と呼ぶ他ない光景だった。
我が従僕が敵へと肉薄し、手に持つ武器が男の頭蓋に達し内容物をこぼれさせようとした寸前。
二者の間の地面が、埋められていた地雷が起動したかのように破裂したのだ。

無論の事、この破壊は爆弾によるものでは断じてない。
恐らくは……強化した視力でも光の軌跡しか追いかけられない速度ではあったが。
一瞬。一閃。
手にした一刀を勢いよく円陣形に振り回す。
それだけの行為で、振り下ろされた凶器は押し返され、空気が膨張したのだ。

怜悧にして熾烈。
鞘から抜き放たれたのは、東洋文明に伝わる造りをした剣であった。
刀身から溢れんばかりの濃密な魔力の束。男の精神をそのまま刀に嵌めこんだかのようなそれは、
紛れもなくこのサーヴァント―――セイバーの「宝具」であろう。

見た者の視線を離さない美しさと、触れる者を一切区別無く斬り飛ばす凄惨さとが渾然一体となっている。
可憐にして玲瓏。風光明媚の限りを尽くした趣向はとても人間の手による業とは思えない。



だからこそ―――ひたすらに恐ろしい!!



あの敵は危険。あの敵は脅威。
あの敵は、こちらの「死」そのものだ。


セイバーの剣裁きは、それこそ青い嵐のようであった。
あらゆる無駄を排し、敵を定めたモノをただ敵として葬るだけに培われた技術。
刀の反射光が線を刻む度敵は裂かれ、ちぎれ、抹消される。
時には腰に挿した鞘で斬撃を弾き、生まれた隙に遠慮なく刃を通していく。
生まれるのは敵者の落とす血だまりや肉片のみ。
嵐の中心たる剣士は些かの消耗も見られない。


秀逸なる業物の宝具のみならず、セイバーの技量もまた卓越したものだ。
剣は男の持つ力を最大に引き上げ。
男は剣の持つ力の最上を引き出す。
サーヴァントと昇華される前から、この宝具は壮絶な歴史を持つ魔道具だったのだろう。
人刃一体。
宝具をサーヴァントの象徴と呼ぶのなら、『彼ら』は紛れもなく互いを合一させていた。




伝説の英雄?人の到達点にして超越者?馬鹿を言うな。
「あれ」はそんなものではない。人ではない、悪魔だ。
あんなものが人であってたまるものか!
「あれ」が人であるなら、我々魔術師など水桶に浮かぶ孑孑(ぼうふら)にも等しい無価値さだ。




剣風が止む。
鮮やかな動作で刀を鞘に仕舞う。
斬殺の凶器たる日本刀は、穢れた血に濡れていても流麗なままでいる。
そして、殺戮の凶手たる剣士には、当然の如くかすり傷のひとつもない。


剣士の目にも映らぬ動きと妖美故の畏怖のみに注視していた私は、
そこで自分のサーヴァントが如何なる状態だったのかを失念していたのに気付く。
辺りを見回すが、目の前にいるのは敵方のセイバーと後ろで控えたアインツベルンのみ。
はて、我が従者は何処に消えたのだろうか。

後ろに振り返り、左右に首を振って、最後にしたに意識を向けて、ようやく私は見つけた。
乾いた地面に飛び散り、バケツ一杯の水をこぼしたように版図を描く血。
どうやらこれが、私が一命を賭して招いたサーヴァントの成れの果てらしい。

成る程。
つまり彼らに出会った時点で、私は敗北を認めていたという事だ。



敗北には何の感慨も湧かなかった。
あれほど神秘に傾けていた情熱は、いまや燃え尽きた紙屑のように立ち消えていた。



もういい。もう十分だ。
如何に人間がみじめでちっぽけな存在なのかはまざまざと理解させられた。
我々は一生あの位置には辿り着けない。辿り着きたいとすら思いたくない。
探究の旅をここで締め括ろう。我が家系は自分の代で終わらせよう。
取得した特許、魔術書、魔術刻印全てを売り払えば、一族で慎ましく生きていくだけの額はあるだろう。
家族は反対するだろうが死に物狂いで説得するしかない。
今しかない。今しかないのだ。
これ以上魔導の世界の奥底に沈んで抜け出せなくなる前に、逃げ出さなければ。逃げ出して――――



小さく鍔を鳴らす音が、鋭敏になっていた私の耳朶を刺し貫いた。
美しく強くそして恐ろしいセイバーだ。
怪物(サーヴァント)を屠り血を吸った刀が空気に触れて鳴いている。

足りないのか。
あれだけ斬っておいてまだ血が要るのか。
アレはどうしようもなく飢えている。
一匹を血祭りに上げて味を占め、次なる獲物を見咎めて舌なめずりしているのだ……。

アインツベルンよ何をしている。敗者に鞭打つとはそれでも貴族の一端か。
私はもう降伏している。戦う意志はない。早く自分のサーヴァントを諌めよ。
使い魔一体御せずして何が魔術の名門か―――――――








待て。




誰だ、あれは。

あの女は何だ。




白の聖女がいたはずの場所に、代わるように女が立っている。
同じ顔をした、黒いドレスを着た女が立っている。
戦いに巻き込まれぬよう十分な距離を取っていて、本来ならそこからは顔を窺い知る事など出来ないはずだった。
だが私は浅ましくも遠見の術を起動して視力を強化してしまっていた。


ああ。

あああ。

そんな、そんなまさか!


何故見てしまった。
何故あんなものを見てしまったのか。
たとえこれからあの怪物の手にかかって死ぬとしても、それはただ殺される恐怖しか感じなかったというのに。
もう遅い。
記憶を消す事も許されず、私は死ぬ前の刹那までこの絶望を抱いたまま死ぬしかないのだ。



なぜなら私を見ているあの顔は。


これから死ぬ私を見つめている、あの女の表情は!




  • ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
この世の全ての悪が集まっているかのように笑っていて!!!






 ◆ 

 ◆

 ◆




鮮やかな動作で血露を払い、手に持つ『閻魔刀(やまと)』 を鞘に仕舞う。
誰とも知れず、何を願いこの場に参じたかも顧みられず、結局玩弄の運命からは逃れられず。
何の救済も送られないまま、ある魔術師の聖杯戦争は、ここに幕を閉じた。

「ご苦労様ね、セイバー」

セイバーのサーヴァントである己を呼ぶのは、マスターであるアイリスフィール・フォン・アインツベルンだ。
労いの言葉には、僅かに非難の色をした棘があるのを感じる。
人の情など不要と判断しているセイバーには、どうでもいい話だが。

「あなたの力は分かりました。伝説の魔剣士の息子に偽りはないと確かめさせてもらいました」

かつて魔界の軍勢を退け封印せしもの、スパーダの息子、バージル。
それがこのサーヴァントの真名だった。

「今後もその力を私の勝利の為に捧げて下さい。
 ……けれど答えて。彼を、殺す必要まではあったの?」

彼女を知る物であれば、普段とは印象を違えた物言いに違和感を覚える者もいたかもしれない。
アイリスフィールの天真爛漫さは衛宮切嗣と過ごした九年間で得た情緒が全てだ。
それ以前、アインツベルン千年の妄執を背負うホムンクルスとしての面を出せば、
元の美貌と相まってさながら女帝の貫録を押し出してくる。

「敵を斬らない理由が何処にある」
「あの時点で彼はサーヴァントを喪失したわ。本人が言った通り戦う力はないの。
 無駄に血を流してなんになるというの?」
「無駄になるから殺したと言っている。生きていたところで奴らは邪魔にしかならない。
 この戦いに敗者が残る余地などない」

そうした態度を取るのも、このセイバーに対して危機感を覚えているからに他ならない。
実力は疑いなく、始めに自分に使えてくれたセイバーの少女に抗し得るかという存在。
だがその性格は騎士とは程遠い、敵であれば無慈悲に斬り捨てる悪鬼であった。
対応を甘くしては即座に手を噛まれる。そう判断したアイリスフィールはなるべく感情を排し、
毅然としてセイバーを御しようと奔走しているのだ。



一方のバージルもまた同様に、マスターには苛立ちを募らせていた。
自らに指図する者をバージルは認めない。それが戦いに制限を課すようなものであればなおさらだ。
主に傅くという選択そのものが彼には欠けていた。
しかも、勝手に向うから語って来たその素性が一層神経を逆撫でさせる。
我が子を思う母など、バージルにとっては最悪の要素でしかない。

「それともうひとつ言っておく。俺が戦うのは俺自身の理由からだ。貴様が勝利するかどうかなど関係がない。
 魔力を供給しているからといって調子に乗るなよ、人形が」

今もアイリスフィールの首が繋がっているのは、ひとえにその優れた魔術回路があってのものだ。
これだけの魔力を練れる代替などそうは見つかるまい。
戦闘力の高さ故に多くの魔力を必要とするバージルにとって、マスターというシステム自体が大きな枷だ。
もし力を損ねぬまま別の魔力原を確保する手段が見つかったならば。その時アイリスフィールを生かす理由は消える。
そんな低確率なギャンブルが当たるのを静かに待つしかない我が身が恨めしかった。





「今度余計な事を言えば、令呪のついてない方の腕をもらう。覚えておけ」

マスターに向けた発言としてはあまりに剣呑を言ってから、魔が差したような考えが浮かぶ。
忠告などせず、今すぐ片腕を斬り落としてしまうべきではないのか。
そもそも思考するまでもなく決行しておかなければならなかったのではないのか。
自由意思の猶予を与えるなど、それはバージルの求める悪魔の冷酷さとは程遠い。

ひょっとしてあるいは……娘への慈愛を見せる女に対し、過去の懐旧の念を抱いているのだろうか?
いや、それはない。それだけはないと断言できる。
感じているのはむしろ―――この女の胎の底の見えなさだ。
聖女の如き振る舞いをしておきながら、何故かバージルはそこに違うものを見る。
英霊の情報としてのみで知っている、救世主の顔で悪逆を積み重ねて御子を侮辱しているような。
他愛もないざわつきが。他愛もない事なので、そこで考えは打ち切った。




渦巻く邪気。
戦争の為の街。
この街には多くの英霊がいる。伝説の偉業を成した力ある戦士が。
それらを全て打ち倒す事は隠し様のない力の証明。
そして己が望みを開く鍵となるだろう。


聖杯という極限の「力」。
それを手にし、バージルは父の伝説を塗り替える。





  It  begins
「―――始めるか」







 ◆ 

 ◆

 ◆







「飼育箱で夢を見る。


 虚ろな楽園。


 不実の空白。


 目を覚ます事のない、揺籃の赤い箱庭」










「さあ、聖杯戦争を続けましょう―――?」








 ◆ 

 ◆

 ◆



【出展】
Devil may cry3

【CLASS】
セイバー

【真名】
バージル

【ステータス】
筋力A 耐久C 敏捷A+ 魔力B 幸運D 宝具A+

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:B
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
 魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
半人半魔:A
 神ではなく悪魔との混血度を表す。
 伝説と謳われる魔剣士と人間の女性との間に生まれた双子の兄。
 体のつくりが人間と異なるため、人間では致命傷となるような傷でも死に至ることがない。
 自ら悪魔であることを望み、死後は完全に悪魔に堕ちた。

集中力:A
 研ぎ澄まされた集中力により、攻撃力を増加させる。
 攻撃以外の無駄な行動(移動、被弾、攻撃の失敗)をすると効果は発揮されない。

【宝具】
『次元斬・絶』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~20、40、60 最大捕捉:40、60、100人
 宝具『閻魔刀』の力を解放した必殺奥義。
 分身を生み出すほどの超高速で周囲一帯の敵を空間ごと斬り刻む。
 『餓える蒼血の魔刃』と同時に解放すれば、全てを巻き込む斬撃の乱気流を発生させる。

『餓える蒼血の魔刃(デビルトリガー・ネロアンジェロ)』
ランク:B 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
 ―――悪魔の力を解放し、肉体を魔人と化す。
 戦闘力と治癒力の増幅のほか、攻撃が始動したらどれだけダメージを受けようと
 行動が一切阻害されなくなるハイパーアーマー効果が付与される。

【weapon】
『閻魔刀(やまと)』
 父から受け継いだ一振りの日本刀。「人と魔を分かつ」太刀。Aランク相当宝具。
 「斬る」という刀剣として当然の性質を極限まで研ぎ澄ましたもので、  
 その鋭利さは空間の切断、概念の破壊にまで至る。
 バージルは鞘を組み合わせた居合抜き、可視化された斬撃を周囲に飛ばすことを基本戦術とする。

『幻影剣』
 バージルの魔力から生み出される浅葱色の剣。
銃火器を好まないバージル唯一の遠距離攻撃手段。
 複数を一度に射出したり、自身の周囲に円環状に配置、回転させることで連続攻撃を可能とする。

『アミュレット』
 母エヴァの形見でもあるアミュレット。
 これ自体に特殊な力はないが、弟の持つ片割れのアミュレットとを合わせると
 父スパーダの名を冠する最強の魔剣を手にするための鍵となる。

【人物背景】
母を奪われたたことで、少年は己と愛の無力を知る。
力こそが全て。少年は人の心、魂の誇りを捨て去り、悪魔として生きる道を選んだ。
残された父の遺物を求め血を分けた弟と相争い、その身と魂は父の故郷の魔界に落ちていった。

【サーヴァントとしての願い】
更なる力を。

【基本戦術、方針、運用法】
見敵必殺。、超攻撃的性能のサーヴァント。
スキル構成と宝具もシンプルに極まっている。故に隙が無い。
あえて弱所挙げるなら、悪魔の属性が強いため対魔特効の武器には弱い事。
集中力スキルからして受けに回ると後手になりやすい。
最大限運用するためにはとにかく攻め続けることが肝要。


【出展】
Fate/zero

【マスター】
アイリスフィール・フォン・アインツベルン

【マスターとしての願い】
夫の願いが叶う場所。愛娘の幸福な未来予想図。
恒久的世界平和。己を呼ぶ声はそう答えた。斯く在ることを望んだ。
―――たとえ孵った雛に殻を飲み込まれて偶然生まれた別人(スワンプマン)だとしても、『ソレ』がアイリスフィールであることに違いはない。

【能力・技能】
聖杯戦争用に調整されたホムンクルスであり、魔術師としての力量は非常に高い。
アインツベルンの魔術体系は戦闘向きではないが、錬金術の応用で金属を即席ホムンクルスに鋳造させて攻撃に用いる。
第四次聖杯戦争における「聖杯の器」であり、聖杯を胎内に埋め込んでいたが、既にそこにはないようだ。

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【人物背景】
人形は男と妻となることで情緒を育み、母となることで慈愛を得た。
始まる聖杯戦争。勝利に近づく度に失われる自我。
最期は敵の手にかかり聖杯の降臨を待たずしてその命は潰えたが―――――――――――――――。

【方針】
聖杯狙い。
夫にして母とて魔術師でありホムンクルス、命の遣り取りに忌避はない。
ただそれは戦う意志を持つ者との間のみの話。
子供の、それも巻き込まれただけの力も意思もない相手に非情になりきれるかは分からない。
バージルとは衝突の危険に満ち、主従的な相性はかなり悪い。
―――本来はそう。そうであるはずだ。