「ぐぅ、き、貴様……よくも私を……!」

 貫手で胸を抉られた中年の男が血に呻きながら怨嗟の声をあげる。
 常人ならば致命傷であるはずの攻撃を受けてなお光を失わない目は、憎悪を込めて下手人を睨め上げていた。
 それは深夜の繁華街。未だ人の気配が溢れる表通りから外れた路地裏、およそ一般の目が届かない澱みの一角でのこと。
 いくつかの影があった。倒れ伏した女の影、それに寄り添うように倒れる子供の影、腕を振り上げ仁王立ちになる異形の男の影、それに貫かれる法衣姿の男の影。
 さて、この状況を端的に説明するならば、「家路に着こうとしていた親子を襲った法衣の男を、更に異形の男が襲った」という構図になる。法衣の男は親子を襲う直前に名誉の犠牲がどうとか言ってたから、恐らくは魂喰いでもしようとしていたのか……まあそれはどうでもいい。
 文字だけで見るならばさながらヒーロー活劇のようにも思えるが―――しかし、二人の男の顔を見ればそんなことは言えないだろう。

「ここで私を殺せど……すぐに私のサーヴァントが貴様を殺す……!
 やれ、アーチャー……! 今すぐこやつを……」
「あー、生憎だがそいつはできない相談らしいぜ?」

 何故なら―――異形の男は嗤っている。
 へらへらと、けらけらと、血と悪徳が支配する地獄の只中で血潮に塗れながら口元を弦月の形に歪めている。
 笑っている。嗤っているのだ。そんなものかと見下して、弱い弱いと嘲るように。

 そんな異形の男の背後に、もう一つの影が舞い降りる。それは未だ幼い少年のようで、この異形と比するまでもない存在のようにも見えたが……

「ひ……ま、まさか……そんな、私のアーチャーが……こんな子供に……」
「負けたってことだろうな。まあ手前にゃ勿体ない男ではあったが、こんなペテン野郎にこき使われるくらいなら死んだほうがマシだろ。なあ、バーサーカー?」

 喜悦の笑みのまま背後へ振り返り、少年の影に問いかける。返答はない、しかしそんなこと百も承知か、男は満足そうにまた嗤った。
 子供―――確かにバーサーカーは20にもなっていないような線の細い少年の姿をしていた。対する法衣の男に付き従っていたアーチャーは鋼と形容できるほどの巨漢、常識的に考えるならばそもそも勝負にならないだろう。
 しかしそんな常識はサーヴァントには通用しない。ここは魔が跋扈する死の都。異界の法則が働くこの場において、見た目の優劣が何になるだろうか。
 そも、見た目がどうこういうならば見よ、バーサーカーの相貌を。かつて黒かっただろう髪は悲憤により脱色し、憤激に狂乱する瞳は血涙に噎び泣き、ただ憎悪のままに殺すという唯一の感情を除いて全てを投げ捨てた姿はまさしく狂戦士。
 体格よりも技術よりも、まず想念の強さが勝負を決定づけるとするならば。この少年を上回る存在など、三千世界を見渡してもそうはいまい。

「ひ、うぅ……わ、私は敬虔なる神の使徒、メシア教の大司教なるぞ……!
 この私に手を出せばどうなるか、貴様よもや―――!?」

 命乞いにも似た脅迫の言葉はそこで終わりを告げた。
 貫く男の腕から発生した業火は瞬時に法衣の男を包み込み、灰も残さずこの世から消失せしめた。末期の言葉もなく、何をこの世に残すでもなく法衣の男は聖杯戦争という舞台から退場したのだ。
 異形の男―――ヒメネスは返り血さえも蒸発させたはずの腕を、しかし汚いものでも触ったかのように何度か宙に振る。それからバーサーカーに再度振り返り、ただこう言った。

「ったく、糞のせいで余計な手間喰っちまったか。行くぞバーサーカー、早いとこ他のマスターやらサーヴァントやらをぶっ殺してやらねえとな」

 ヒメネスはそれだけを言って、倒れ伏す親子になど頓着せず歩き出す。バーサーカーもそれに続き、哀れな犠牲者には目もくれない。

 補足しておくと、このヒメネスという男は義侠心で親子を救ったわけでは断じてない。
 彼が掲げる信条は弱肉強食。強きが弱きから奪い取り、死んだらテメエで落とし前。なんとも野蛮で醜悪で、それ故に原初の輝きに満ちた思想。
 だからこそ、あの似非宗教家が道行く親子に暴力を振るい命やその他を奪い取ろうが、ヒメネスはなんら義憤を抱かない。強者が自由に生きた結果として弱者が被害を蒙ろうが、それは世界のあるべき当然の姿だと本気で考えているからだ。
 この場においてヒメネスが似非宗教家に喧嘩を売った理由。それは、単にこいつのことが気に入らなかっただけだ。
 筋道だとか良心だとか、そんなものはヒメネスには存在しない。強者(自分)が自由にした結果弱者(ペテン師)がどうなろうと知ったことではないのだから。

「聖杯なんざくだらねえ。クソッタレの天使が絡んでいるならぶっ潰す。聖杯なんざなくてもオレにはメム・アレフがいるんだからな。
 ああ、それとついでに救ってやんなきゃならねえよなぁ。間違って人間なんかに生まれちまった連中をよ」

 故にヒメネスは止まらない。聖杯にかける願いも、人としての義侠も、守るべき信念もない彼は、故にこそ理由もなく他者を殺し食い物にしながら蹂躙劇を続けていく。
 そこに躊躇など一片もありはしない。弱肉強食という単純明快な真理のもと、いつか自分が更なる強者に敗れる日まで停止することなどありえない。
 豪放に笑うヒメネスの後ろで、バーサーカーは鉄のような無表情のままについていく。その心は狂っているが、しかし激烈なまでの信条を胸に秘めて。

 力に狂う悪魔の男と、復讐に狂う嘆きの少年。傍から見れば同じ二人も、しかし蓋を開けてみればその性質は真逆もいいところだ。
 しかし彼らは頓着しない。ヒメネスは力さえあればそれで良しと笑い、バーサーカーはただ殺すだけだ。
 義も理もない子供じみた戦場に彼らは共に舞い踊る。それは比喩でもなんでもなく、血に塗れた悪鬼の行軍だった。






【クラス】
バーサーカー

【真名】
比何ソウマ@トラウマイスタ

【ステータス】
筋力A+ 耐久C 敏捷A+ 魔力C 幸運D 宝具B

【属性】
中立・狂

【クラススキル】
狂化:D
筋力と敏捷をランクアップさせるが、言語能力が不自由になり複雑な思考ができなくなる。

【保有スキル】
戦闘続行:A
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

精神汚染:D
このスキルは狂化と重複する。
殺意により精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。
ただし同ランクの精神汚染がない人物とは意思疎通が成立しない。

蛮勇:B+
無謀な勇気。同ランクの勇猛効果に加え、格闘ダメージを大幅に向上させるが、視野が狭まり冷静さ・大局的な判断力がダウンする。
現状のバーサーカーは完全に殺意に狂っており、既にその身は英雄から堕している。絶対的恐怖を乗り越え勇気の剣を手にした少年の姿はどこにもない。
下記スキル「復讐への憤怒」が発動した場合において+の補正を与える。

復讐への憤怒:A
復讐にかける殺意が昇華したスキル。復讐対象と相対した際、バーサーカーの全ステータスに+補正を与える。
バーサーカーの場合は特定人物がそれに当たるが、狂化により全く関係ない赤の他人であっても復讐対象と誤認する場合がある。
誤認する条件としては、意図した殺人・傷害、もしくは略奪行為を行った場面を目撃すること。他者を虐げる行いを目にしたバーサーカーはその相手を復讐対象と誤認し、何よりも優先して殺害しようする。
その対象には無論自分のマスターも含まれるが、復讐対象であると誤認した相手に対する殺人行為等は黙認される。

【宝具】
『真実の自己・接触嚥下(アートマン・ゲルニカ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:10
人の心の奥に潜むトラウマが具現化した存在。反魂香と呼ばれる線香型の礼装を使用することにより実体を得る。
バーサーカーのアートマンはゲルニカと呼ばれ、鳥類の頭と羽を持った黒い鬼の姿をしている。呑み込んだ物質を原子分解し再配列することで砲弾として撃ち出す固有能力を持つ他、格闘による攻撃やバーサーカーを背に乗せての飛行などが可能。
本来ゲルニカには固有の人格が存在するが、狂化の影響によりゲルニカの思考能力もDランク相当で剥奪されている。

【weapon】
  • 勇気の剣
バーサーカーが手にする長剣。勇気の心の具現であるため物質の縛りに囚われることなく非常に頑強。
しかしその刀身は半ばから罅割れ砕けている。

反魂香
宝具の発動に必要な線香。一度の使用につき10分の時間制限があるが、30分経てば再使用が可能となる。

【人物背景】
復讐に全てを捨てた少年。

【サーヴァントとしての願い】
ダヴィンチを殺す




【マスター】
覚醒人ヒメネス@真・女神転生 STRANGE JOURNEY

【マスターとしての願い】
悪魔が神々に立ち戻り、人類が輝きを取り戻す新世界の創造。

【weapon】
悪魔の肉体。

【能力・技能】
半悪魔であるため非常に強靭な肉体を持つ。そのため人間では生存できない環境にも適応可能。
戦闘では主に肉弾戦を取るが、地獄の業火やダークマターによる魔力攻撃も得意とする。

【人物背景】
20代のヒスパニック系男性。元は某大国で兵曹長として従軍していたが、多額の報酬に惹かれシュバルツバース調査隊に志願した。
斜に構えた性格で協調性に乏しいが、弱った悪魔バガブーを助けたり、自分を助けた主人公とそれなりに仲良くしたりと独自の矜持も持ち合わせる。
とある一件から仲魔であったバガブーと悪魔合体し半悪魔となる。悪魔となって以降は人間の頃に持っていた弱肉強食の思想が更に極端になり、人間的な感情こそ持ち合わせるものの大分悪魔っぽい性格となった。

【方針】
聖杯などという如何にも天使どもが関わってそうなのが気に入らないのでぶっ壊す。それを手に入れようとしている連中も殺す。つまり基本的には皆殺し。
ただし中には悪魔になるに足る奴やタダノのように気に入る奴もいるかもしれないし、そこらへんは臨機応変に。あと弱い奴は相手にしない。