記事抜粋
自民党の内閣部会(松村龍二部会長)と青少年特別委員会(高市早苗委員長)は先月後半、合同部会を開いて、18歳未満の青少年がインターネットでセックスや暴力などの有害情報にアクセスするのを防ぐ「有害情報の規制」法案をとりまとめた。
そのポイントは、(1)内閣府に設ける青少年健全育成推進委員会に「有害情報」を判定する権限を与え、(2)有害情報の排除のため、同委員会や総務大臣、経済産業大臣に、インターネットサービスプロバイダーやサイト管理者に対する立ち入り検査や、削除命令を出す権限を付与、(3)命令違反者には、1年以下の懲役刑や100万円以下の罰金といった刑事罰を課す―ことなどである。
ただ、法案を取りまとめる論議が拙速だったうえ、できあがった法案も重要規定の多くを政省令に委ねる乱暴な内容だ。規制対象が青少年向けの情報にとどまらず、大人も含めた国民の「表現の自由」と「知る権利」を阻害する恐れが非常に強いという問題もある。今後、社会的な批判を呼びそうだ。
(中略)
しかし、この法案を冷静に検証すると、青少年向け有害情報と判断される情報が書き込まれた場合、その書き込みが削除されたり、サイトそのものが閉鎖されることになり、成人もその情報を閲覧できなくなる可能性が強い。つまり、憲法で保障された「国民の知る権利」が阻害されるリスクが存在するのだ。また、端から、こうした規制の網にかかりたくないからと自粛ムードが広がり、やはり憲法が保障する「表現の自由」が損なわれる懸念もある。
(中略)
経済失政を繰り返し、株式市場での大幅安が「官制暴落」と、その経済政策が揶揄されている福田政権下で、与党が言論統制に繋がりかねないインターネット関連規制を持ち出してきたのは、単なる偶然のできごとなのだろうか。それとも、何か、もっと大きな政治的野心があるのだろうか。疑われたくなければ、与党は、即座に拙速な法案を焼き捨てて、間違えであったと自ら表明するべきではないだろうか。
最終更新:2008年04月04日 13:36