「ちょっと、また図書館に入り浸ってるわけ?」
「仕方ないだろう。ここしか調べる場所がないんだから」
山ほど積んだ本の隙間から、彼の顔が僅かに見えた。
ルイズは呆れたように頭を振る。
「毎日毎日毎日。いくら調べたって帰る方法なんて見つかりっこないのに」
「それでもだ。君のせいではないにしろ、俺はここにいるわけにはいかないんだ」
端正な顔を歪めるが、すぐ本に没頭する。
諦めの悪い性格である。
「まぁ好きにしたら?」
椅子に腰掛けると、ルイズは偉そうに腕を組んだ。
この一見平民に見える使い魔は、実のところとんでもない存在である。
銃の腕は百発百中。所持していた拳銃で百メイル以上離れた場所の動く的を撃ち抜く。しかも走りながら。
剣を使わせればルーンの効果もあって百人力以上。
頭もいいから、ワルドの策略もあっさり見抜き、ウェールズを強引に救い出す事にも成功した。
まさに完璧なのだが、実は致命的な欠点がある。それもたくさん。
行動を起こせば凄いくせに、悩む時間が長すぎるのだ。
それともう一つ。
「そういえば、シエスタが探してたんだけど」
「……ああ」
苦い声でつぶやく使い魔。
「アンタ、女の子なら誰にでも優しくするのはよくないわよ」
「そんなことを言われても」
ぼそぼそと呻くが、言い訳する声は極めて情けない。
「優柔不断」
「うっ」
「女性に甘い女たらし」
「ちょ、君ね」
「でも一番大事なのは親友だから、実は男の方が好きだとか」
「ま、待ってくれ、それは」
「だけど、それを全部ひっくるめてアンタよね」
情けない顔でこちらを見る彼の様子に、ルイズは楽しそうに笑った。
最終更新:2008年08月16日 14:48