第20話 カンナとヤサコ


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ヤサコ「私の古い記憶によると、最初に用意された体は、命のないからっぽの器だったそうです」

ヤサコ&フミエ「あ!……あ」

ヤサコ「あ……ああ!あ……あ」

フミエ「ヤサコ!」

サッチー「ぼくサッチー」

フミエ「ヤサコ!」

メガばあ「お主ら!大丈夫か?」

フミエ「メガばあ!?」

メガばあ「フン」

ヤサコ「ハラケン、どこに行くの?ハラケン?

ハラケン!?」

フミエ「ヤサコ。大丈夫?」

ヤサコ「あ……う!?

なんでうちの中に」

メガばあ「わしが許可したからじゃよ」

キョウコ「うんち……」

フミエ「京子ちゃん、熱もうそみたいに下がっちゃったわ」

ヤサコ「デンスケは?」

メガばあ「心配するでない。おお、電気も戻ったわい」

フミエ「ヤサコはおばちゃんが治してくれたのよ。例のコイルタグでね」

ヤサコ「おばちゃんが」

メガばあ「コイルタグはあと数枚でおしまいじゃ。原料のメタバグがもうなくてな。玉子が持っておったのはわしが4年前に授けたものじゃ」

ヤサコ「ね、おばちゃんは?」

おばちゃん「やはり古い空間の拡散は止まっていない……。因果なものね。上位コマンドにアクセスを要求。やはり、これは最初からあたしの仕事。そして、最後のね」

ヤサコ「あっ」

おばちゃん「ええ、全員無事よ。通路は潰した。この家に何故古い空間があったかは調査中よ。他に被害者は?」

猫目「今のところ、人的被害は見つかっていない」

おばちゃん「そう……。もともとイマーゴを持った子供なんて、滅多にいない」

猫目「待て、いま1件だけ見つけた。少年……11歳だ」

おばちゃん「まさか……」

猫目「玉子」

おばちゃん「フォーマットの指令を出したわ。レベル3で」

猫目「なんだと?」

おばちゃん「ケンちゃんのはずがない。メガネは取り上げて……」

ヤサコ「どうしたの?ハラケンに何か?」

おばちゃん「っ!」

ヤサコ「おばちゃん待って!」

おばちゃん「全員、この家でじっとしてろ!」

ヤサコ「待っておばちゃん!」

メガばあ「なんじゃどうしたんじゃ?」

フミエ「ヤサコ、どこ行くの!?」

おばちゃん「はい、そうですか。やはりケンイチにメガネを……。あ、いえ。こんな時間に失礼しました。やはり、カンナのメガネを」

職員「それは、電脳法12条の違法改造に当たります」

おばちゃん「最近の公務員は、朝まで残業するのね」

職員「メガマスの内部監査のものです」

おばちゃん「これからやることがあるの。邪魔しないでくれる?」

職員「そんなことしたらあんた、首になるぞ!」

おばちゃん「覚悟の上よ

辞令はまだ受け取っていない。この子たちは、私の管理下にある」

職員「あんた、何故そこまでして」

おばちゃん「私が始めたのよ。私が終わらせなくてはならないわ」

職員「この件は、すべてメガマスに報告する」

おばちゃん「ご自由に」

ヤサコ「あの!

ハラケンに、何かあったのね?」

おばちゃん「待て。ここまで走ってきたの?あんた」

ヤサコ「私も行くわ」

おばちゃん「理由を言ってみな」

ヤサコ「私が、場所を教えたの。それに、私多分分かるの!ハラケンがどこに居るか」

おばちゃん「なんだと?」

ヤサコ「前から気になってた。不思議な声がして。昨日気付いたの!方向だけ、なんとなくだけど」

おばちゃん「それだけ?」

ヤサコ「私、ハラケンのこと……」

おばちゃん「危険は知っての上だな」

ヤサコ「うん。……あっ」

おばちゃん「ケンちゃんは、カンナのメガネを使ってる。まずはその位置を目指すわ」

フミエ「一体何が起こってるの?あっちって何なのよ?」

メガばあ「思い出してきたわ。あれは4年前、まさにワシがぶったおれるきっかけになった事件じゃ」

フミエ「4年前?」

おばちゃん「4年前、ある暗号屋の少女が都市伝説を調べ、1つの儀式を導き出した」

ヤサコ「儀式?」

おばちゃん「正確に言えば、暗号の手順だ。ミチコさんを呼び出すためのね」

ヤサコ「え……」

おばちゃん「その時何が起こったのか、誰も正確には知らないわ。その少女本人もね。でも、儀式は成功し、同じような現象が起こった」

ヤサコ「現象?」

おばちゃん「ある条件が揃うと、電脳体が分離する現象。その現象の名前は、電脳コイル」

ヤサコ「電脳、コイル?」

おばちゃん「あのイリーガルもそうだけど、正確な原因は、まだ分かっていない」

ヤサコ「私、イリーガルがあんなことするなんて」

おばちゃん「やつらは最近現れた新顔とは全くの別物よ」

フミエ「あのイリーガルは、一体何なの?」

メガばあ「危険なイリーガルじゃ。わしらはヌルと呼んでおった」

フミエ「ヌル?」

おばちゃん「おそらく、一番古いイリーガルだ。Cドメインという未知の空間からやってきた、最初の電脳生物」

ヤサコ「Cドメイン?」

おばちゃん「コイルドメイン」

おばちゃん「都市伝説では、あっちへの入り口と呼ばれている」

ヤサコ「ミチコさん、ってあの生き物のことなの?」

おばちゃん「そうかもしれない。迷い込んだ子供を連れて行っちゃうってことは同じね

同じ過ちを犯して欲しくなかった」

ヤサコ「同じ、過ち?」

おばちゃん「弟子のしでかしたこととはいえ、あん時はしんどかったわい」

フミエ「弟子?じゃ、その事件を起こした少女って」

おばちゃん「そう、このあたしなの」

ヤサコ「えっ」

おばちゃん「私もキラバグ集めをしたわ。イサコとは違うやり方だった。けどね、まだ当時は世界中古い空間だったから、暗号を使えばキラバグも手で拾い集められたの。そして……通路を開いた。何人か子供が意識を失ったらしいわ。もしメガばあが止めてくれなかったら」

メガばあ「おかげでぶったおれる前の記憶がすっかりなくなってしまったわい」

おばちゃん「あなたたちにはすまないと思っている。こんな事態を避けるのが、私の任務だったのに。フォーマットの開始はあと10分よ。私から、絶対に離れないようにして」

ヤサコ「うん」

おばちゃん「10分前の位置がここよ。干渉が激しくて、ここまでしか探知できない。まだコイル現象に襲われていなければいいが……。あとは、自分の足で探すしか。ヤサコ……おい!ヤサコ!どこだ!

待てヤサコ!何してる!」

ヤサコ「もうこれしかないの!お願い、行かせて!」

おばちゃん「く……お前、追いかけろ!お前と私は、迂回だ!」

ヤサコ「あ。まだだわ。通路を見つけてからでないと……うう!」

おばちゃん「ヤサコ、どこだ!?まずい、これでヤサコもコイル現象が起こったら、犠牲がまた増えてしまう。くそっ、場所が特定できない!あ……待て!

ケンちゃん!間に合わなかった……通路は?通路はどこ?」

イサコ「ここにはない!」

おばちゃん「貴様ー!」

イサコ「やめろ、話しを聞け!」

おばちゃん「お前さえ……お前さえキラバグを集めなければ!」

アイキャッチ

おばちゃん「お前さえ、お前さえいなければ!」

イサコ「話しを聞け!撃つな!」

おばちゃん「もう遅い!ケンちゃんは通路に入ってしまった!

どうした?!……制御リンク!」

イサコ「話しを聞け!私も原川を見つけようとしているんだ!」

おばちゃん「なんだと!?……もう来たのか!」

イサコ「物理フォーマットだな」

おばちゃん「何故それを」

イサコ「まだ方法はある!」

ヤサコ「はあはあ……あっ」

イサコ「電脳体をわざと分離させて連れ戻すんだ

私が行く。ヌルに触れば、すぐに分離できる。深いところに入っていなければ連れ戻せる!協力しろ!」

おばちゃん「ヤサコ……まさか、そのつもりで」

イサコ「小此木が来てるのか?なんのつもりだ!」

おばちゃん「おそらくヤサコは、あんたと同じ考えだわ!」

イサコ「なんだと!?

……あ!まだ分離して間もない。こっちの空間と重なった領域にいるはずだ!」

おばちゃん「来た!」

イサコ「時間は稼げるか?」

おばちゃん「どうする気だ?」

イサコ「できるだけ、フォーマットを遅らせてくれ!

この辺りなんだな?……はっ」

猫目「一体何をする気なんだ。まさか!」

イサコ「そこだ!」

猫目「おおい時間がない、退避するんだ勇子!」

イサコ「反転しない……小此木、聞こえるか?小此木!」

ヤサコ「天沢さん?」

イサコ「小此木か!」

ヤサコ「天沢さん、天沢さんなの?」

イサコ「これで、他の電脳体にも暗号が写せるんだな」

猫目「待て、最後のキラバグを使うつもりか?」

イサコ「小此木、そこにいるな?」

ヤサコ「天沢さん、いるわ。聞こえる」

イサコ「時間がない。声が聞こえる辺りに手を当てろ

これから暗号をそっちに送る。こいつを原川に当てるんだ」

ヤサコ「あっ」

イサコ「いいかよく聞け!これは1人しか転送できない。お前は自分の足で戻るんだ」

ヤサコ「天沢さん、私……」

イサコ「時間がない。急げ!」

ヤサコ「わかったわ!」

ハラケン「あ……カンナ。なんて言ってるの?カンナ。そっちに行けばカンナの声が聞こえるの?すぐそっちに行くから、だから許して。カンナ!」

ヤサコ「ハラケン!応えて!……あ」

おばちゃん「来た!2.0だ

チッ。物理結界か

じゃ、互角だな」

猫目「玉子め。サッチーも物理結界に改造したのか」

おばちゃん「間に合ってくれ!」

ヤサコ「ああ?

ハラケン、待って。それはカンナじゃないわ。もうやめて!

あ……早く逃げるのよ!」

ハラケン「待って。ダメだよヤサコ。まだ、戻れないんだ」

ヤサコ「何言ってるの?

え?ケン?ケンイチ?ハラケンのことを言ってるの」

ハラケン「ヤサコ。カンナの声が」

ヤサコ「聞こえる。聞こえるわ

悲し、かった。ケンイチと喧嘩して、悲しかった、って言ってる。褒めて、もらえて、嬉しかった。一緒に、いて、楽しかった。ケンイチのことが。ハラケンのことが好きだった」

ハラケン「ぼくも。ぼくも好きだった。カンナ」

ヤサコ「さようなら、ケンイチ。もう、自分を責めないで」

カンナ「ヤサコ、ケンイチを、お願い。逃げて、ヤサコ」

ヤサコ「フォーマットの音だわ

ハラケン、これで戻れるわ」

ハラケン「ありがとう、ヤサコ」

ヤサコ「ハラケン、私、好きです。私、ハラケンのことが、好き」

おばちゃん「くっ……。ケンちゃん!?

やったのね、ヤサコ!

くそ、司令コードだけでも捕まえられれば

このままでは持たない。あいつを呼ぶしかない!

ポチ!

イサコ、コードナンバーを送ったわ」

イサコ「あ!」

おばちゃん「ヤサコ、まだか」

ヤサコ「はあはあ……ああっ

ああ……」

おばちゃん「内部は対象外なんだ。タマを改造しなくてよかった」

ハラケン「うう……」

ヤサコ「ハラケン!?」

おばちゃん「リンクを確認した。電脳体は間違いなく戻ってるわ」

ヤサコ「そう、よかった」

おばちゃん「猫目、なんとかカタがついたわ」

猫目「分かった。病院は任せてくれ

はい、残る手は、コイルスノードでしか。しかし、すでに絶滅しているのでは?最近接続した電脳体が?わかりました。その電脳体を探します。はい、世界が崩壊する前に必ず」

イサコ「おかしい。なんだこの違和感は。誰?」


ヤサコ「次回、電脳コイル 黒いオートマトン お楽しみに」