第3話 屋根裏


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渚砂「私が編入したのは、とても歴史ある女子高。校舎も寮も何もかもが全部古くて、もしかしてそこには謎の隠し通路や秘密の部屋なんかあるんじゃないかなって。……まさか、そんなことあるわけないよね」

(タイトル:屋根裏)

(鐘の音)

渚砂「玉青ちゃん、早く早く!」

玉青「あわてなくても大丈夫ですわ」

渚砂「だってー」

玉青「お隣の子も誘ってますので、呼びますね」

渚砂「え? お隣?」

(ノックの音)

千早「あ、いちご舎探検の時間ね。今行きますね」

渚砂「あ、えっと。あ……私は……」

千早「知ってるわ。渚砂ちゃん。同じクラスなんだもの。私は竹村千早。千早って呼んでね? ふふ」

渚砂「はい、千早、ちゃん」

千早「玉青ちゃんから、土曜日に渚砂ちゃんにいちご舎を案内するって話しを聞いて私も参加させてって頼んだの。おもしろいところに案内してあげるわ。楽しみにしてて」

渚砂「はい」

千早「私も渚砂ちゃんとご一緒するのが楽しみだったのよ? 渚砂ちゃんって編入した日からみんなの話題の的だったでしょ?」

玉青「そうでしたわね」

渚砂「あ……へへへ」

千早「あ、そう。参加者はもう1名ね」

渚砂「もう1名?」

千早「ほーら?」

紀子「もー、痛いわよー」

千早「この子は水島」

紀子「よろしく……」

渚砂「よろしく!」

玉青「2階は全て1年生から4年生までの2人部屋で、5年生6年生用の個室や、談話室やら食堂などの公共の部屋はほとんど1階になってますわ」

渚砂「へー。

うわー、談話室って思ったより広いんだねー」

玉青「寮のイベントにも使いますしね」

千早「渚砂ちゃん、さっき言ってたおもしろい部屋、この後行ってみよっか?」

渚砂「行く行く!

千早ちゃんと水島さんって、4年間ずっと同室なんだ」

千早「この寮、申請しなきゃずっと同室なのよ」

紀子「しかも幼稚園からずっと同じクラス」

渚砂「幼稚園からって、えっとー」

玉青「12年ですね」

渚砂「12年!? もう2人は夫婦みたいだねー」

千早・紀子「え? ああ……うーん。ふふ」

千早「それじゃ渚砂ちゃんと玉青ちゃんは新婚さんね」

玉青「まあ、聞きました? 渚砂ちゃん! 私たちが新婚さんですって!」

渚砂「えー、何それー」

静馬「誰と誰が新婚さんですって?」

渚砂・玉青・千早・紀子「ああ?」

渚砂「し、しず……あ、えと、エトワールさまいつの間に。ていうか何でこんなところに……」

静馬「フフ。私は可愛い渚砂ちゃんのいるところなら、どこにでも現れてよ?」

渚砂「う? あ……」

渚砂(だめだ。やっぱりこの人に見つめられると、私……)

静馬「私の渚砂ちゃんがいつ誰にちょっかい出されるか、心配でたまらないの」

玉青「その言葉、そっくりそのままお返ししてあげたいですわ」

静馬「ん、何か聞こえたようだけど?」

渚砂「ん、んぁ……」

(静馬、渚砂の手を取り)

渚砂「ああ!」

瞳「居た?」

水穂「んーん」

渚砂・玉青・千早・紀子「フー」

静馬「ありがとう。助かったわ」

渚砂・玉青・千早・紀子「ああ……」

玉青「また、エトワール様のいつものご病気かしら」

千早「多分、明日の会の準備会議でもあるんでしょう」

渚砂「あー、びっくりしたー。静馬さまったらいきなりかくれんぼでもやろうって言い出すのかと」

紀子「もー。小学生じゃないのよ」

渚砂「そうだよね。えへへ。

ごーお、ろーく、しーち、はーち、きゅーう、じゅう! よーし!

えっへへ。

名探偵、蒼井渚砂! 登場!

うわー。

へー。

水島さんみーっけ!

玉青ちゃんみーっけ!

千早ちゃんみーっけ!」

紀子「かくれんぼって、何の意味があるの?」

渚砂「普通に回るだけより面白いじゃない」

千早「うんうん」

玉青「この後、どうします? 1階に戻りますけど、学習室を見ておきましょうか」

渚砂「うん! あ、次の鬼も私ね?」

玉青「うふふ」

千華留(土曜午後、いちご舎にて最終準備連絡会議開始。3校生徒会長、全員出席。エトワールさま、例によって欠席。予定通り。

ミアトル生徒会長六条さま、エトワール様欠席のまま会議の開会を宣言。式の説明に入る。これも予定通り。

スピカ生徒会長冬森さま、エトワールさま欠席に関してミアトル生徒会長に詰問開始。これも予定通り。

以下、ひたすら論争続く。全て予定通り。

制限時間が訪れて物別れのまま、今日の会が終了するまで……残り……はぁ、予定通りすぎて、もううんざり)

渚砂「はっ、はっ、はっ、はっ」

千華留「ん?」

(扉の開く音)

渚砂「名探偵蒼井渚砂、登場!

あ……ああ!」

千華留(あ……ちょっと、予定通りじゃないこと、発生)

紀子「どうやったらこの部屋と間違えるの?」

詩音「このままの状態が続くなら、早晩ミアトル生徒会長さまの責任にもなるということ、お忘れなく! くっ!」

(扉の閉じる音)

深雪「やれやれね」

渚砂「ごめんなさい。大事な会議、むちゃくちゃにしちゃって……」

深雪「それはあなたのせいじゃないわ」

渚砂「え、でも……」

深雪「とにかく、ドアを開ける前にはノックする。これは最低限のマナーですよ。分かったわね」

渚砂「はい」

(扉が開く音)

深雪「はぁ……」

渚砂「すみませんでした!」

(扉が閉じる音)

千華留「うっふふふ。六条さんの言う通り。ホント助かったわ」

渚砂「え?」

千華留「はじめまして、聖ル・リム女学校生徒会長、源千華留です」

(談話室)

渚砂「えー、静馬さまのせい?」

玉青「シー」

渚砂「じゃなくて、エトワールさまのせい?」

千華留「そう、静馬さまが今日の会議を欠席したことで、ずっと口論が続いていたの。渚砂ちゃんが入ってきてくれて、助かったわ。毎回毎回、口論が始まったら、あとは会議の時間が終わるまで、それが続くだけなんだもの」

渚砂「そんなことで口論に……」

千華留「だって静馬さま、このところエトワールさまのお努めに、全然参加されてないの」

渚砂「そういえば、この前も食事会の時に居ないって騒いでたかも」

千華留「でしょー。

ミアトル、スピカ、ル・リムの3校は、色んな行事を一緒にやる習慣があるの。当然、それを運営するための生徒会の活動や会議の行動、そういう、生徒達が中心となって行う全てのイベントで、3校全てをまとめて代表を行うのが、エトワールさまなの。だから、静馬さまが今みたいにずっとお努めに不参加なら、もう毎回毎回、全てのイベントがうまく進まないのよ」

渚砂「あ、でも生徒会があるじゃないですか。六条さんもスピカの人も千華留さんもだ居るんだし」

玉青「それが、生徒会だけだとうまくいかないらしんです」

渚砂「え?」

千華留「そうなのよねー。

一番古くからあって、伝統や昔からの格式を誇りにしているミアトルと、そのあとから出来て、学業やスポーツの優秀さを誇りにしているスピカは、お互い、とっても対抗意識が強いから、2校の生徒会が集まると、すぐにけんかになっちゃうの。それを収める意味でも、3校を代表される立場のエトワールさまの存在が大切なのよ。しかも静馬さまはミアトルの方なので、スピカとしては、静馬さまの欠席が続くことが、ミアトル側を攻撃するきっかけになるの。

と、まあ、そういう訳で、最近は集まるたびに口論、口論の繰り返し。はー」

渚砂「はー」

千華留「生徒会って、もう少し面白いことがあるかと期待したんだけど」

渚砂「あの、1つ質問が」

千華留「なに?」

渚砂「あの、ル・リムはその、対抗心とかけんかとか、そのそういうのないんですか?」

千華留「うっふふふ。うちは自由でのんびりした校風だから、そういうのとは無縁なの」

渚砂「そ、そうですか」

千華留「ふふ」

渚砂「綺麗で素敵な人……」

玉青「渚砂ちゃんも隅に置けませんねー」

渚砂「そうじゃなくて! すごいなーって。だって生徒会長なのにすっごく優しいし、それに何でも知ってるし」

玉青「ふふふ。慌てる渚砂ちゃんも、魅力的ですわ」

渚砂「もお、玉青ちゃん……」

(夜、フクロウの鳴き声)

玉青「渚砂ちゃん?」

渚砂「ん?」

玉青「何か、考えているんですか?」

渚砂「どうしても分からないことがあるの」

玉青「私に聞かせてくれます?」

渚砂「うん。あのね、千華留さんの話しを聞いてからずっと不思議だったんだ。どうして静馬さまはエトワールの仕事をさぼっているのかな、って。玉青ちゃん、言ってたよね。エトワールさまは3校で最も愛され、尊敬されている方だって。なのにどうして……。

玉青ちゃん?」

玉青「それは、私も分かりません」

渚砂「そう……」

(朝)

渚砂「ふえ? 新入寮生歓迎パーティー? 今日? いつ決まったの?」

玉青・千早・紀子「はは」

渚砂「4月28日午前10時より3校生徒会主催いちご舎入寮歓迎パーティー……」

紀子「ずっと前からここに貼ってあったのに」

渚砂「へへ。今日のイベントって、それなの。あ、新入寮生ってことは、私も歓迎される側?」

玉青「残念ですが、新入寮生というのは、新1年生ってことなんです」

千早「渚砂ちゃん、4年生からの編入だから……」

渚砂「そっか、1年生だけかー。そりゃそうねー」

千代「あっ!」

渚砂「大丈夫?」

千代「あ……。だ、大丈夫です。ありがとうございます」

渚砂「んーん。気をつけてね」

千代「はい」

千代の友人A「怪我はありませんでした?」

千代の友人B「ねえ、今日の歓迎パーティーって、エトワールさまも参加されるの?」

千代の友人A「もちろん、入寮者1人1人にエトワールさまがごあいさつされるって話しだわ」

千代の友人B「まー、本当? 楽しみねー」

玉青「毎年、このパーティが新入寮生とエトワールさまがお会いになる最初の日なんです」

千早「そうね、私だって1年生になってこのいちご舎に入寮になった時には、このパーティ楽しみにしてたもの」

紀子「でも、エトワールさまが居ないんじゃねー。ま、そういうこともあるよ」

渚砂「そんなのだめよ」

玉青「え?」

渚砂「だって、あんなにエトワールさまに会うことを楽しみにしている1年生達がいるのよ。なのにエトワールさまがそれを欠席されるなんて、絶対にダメ!」

玉青「渚砂ちゃん……」

紀子「だめってどうする気?」

渚砂「私、静馬さまを探してくる! そしてちゃんと歓迎パーティに出てくれるように言ってみる!」

千早「渚砂ちゃん!?」

紀子「ちょっとー」

千早「渚砂ちゃん!」

玉青「そうですわ。渚砂ちゃんの言うとおりですわ」

渚砂「うっ……」

千華留「面白いわ。でも、昨日だって東儀さんと狩野さんが静馬さまを探してたけど、全然見つからなかったのよ?」

渚砂「大丈夫です。私、昨日いちご舎を探検したばっかりなんです。見つけてみせます!」

千華留「あ? 分かったわ。私はエトワールさまが参加されてもいいよう、準備しておくわね」

渚砂「はい! みんな、行こう?」

玉青「はい」

千早・紀子「うん!」

千華留「ふふ」

渚砂「あとはこの部屋だけど……」

(ノックの音)

(扉が開く音)

渚砂「開いてる。ん?

空き部屋……。

2階なのに1人部屋?」

(窓を開ける音)

渚砂「あ!」

静馬「……!

渚砂ちゃん?」

渚砂「くっ。一緒に来てください!」

静馬「どうして?」

渚砂「みんなが待ってるんです! 来てください!」

静馬「誰に言われて来たの? 深雪? それとも」

渚砂「違うんです!」

静馬「私は誰が何と言おうと……」

渚砂「静馬さまはエトワールさまなんでしょう? エトワールさまはみんなに尊敬される方、みんなに愛される方だって。だったら、みんなを裏切っちゃだめです!」

静馬「あ……」

渚砂「あなたを待ってる1年生が……はっ!」

渚砂(忘れてた。私、この人に見つめられると)

渚砂「あ……」

静馬「どうして来たの? たった1人で。私と2人きりになるのよ?」

渚砂「あっ……ああ……。おねがい、します。私と一緒に」

静馬(この子)

渚砂「新入生が、エトワールさまを待っている人たちがいるんです!

お願い……あ……。

あ……。静馬、さま?」

静馬「あなたの勝ちよ。行きましょう」

渚砂「あ……ああ!」

(扉の開く音)

生徒達「あ……」

深雪(どういう風の吹き回し?)

静馬(エトワールの務めよ)

渚砂(よかったー)

渚砂「本当に素敵な歓迎会だったねー。あ、エトワールさま。

え?」

静馬「フッ」

渚砂「あぁ……」

静馬「蒼井渚砂さん、聖ミアトル女学園編入ならびにアストライア寮入寮おめでとう」

渚砂「ありがとうございます! よろしくお願いします、エトワールさま」

(拍手)

深雪「不思議な子。どうやって静馬を動かしたの」

千華留「ね? 絶対にこれから面白くなるわ」

詩音「フンッ。

鳳天音を、あの子を本気にさせるしかないわ。それ以外には……」

渚砂「へへへ」

(足音)

(窓を閉める音)

(紙を拾う音)

(扉の閉じる音)

(鍵が閉まる音)

(足音)


(次回予告)

渚砂「ねえ、玉青ちゃん、ここにはミアトル以外の学校もあるんだよね」

玉青「ええ、スピカとル・リムという学校があります。そういえば渚砂ちゃんはスピカの王子様のことはご存知ですか?」

渚砂「王子様? スピカって女子高じゃないの?」

玉青「もちろんです。でも王子様がいらっしゃるのです」

渚砂・玉青「次回、ストロベリーパニック 白馬の君」

玉青「白馬の王子様、女の子なら誰もが憧れる夢ですわ……」

渚砂「え? 私そんな夢見たことないよー」