大正冒険篇非公式番外編SS

我威亜党が起こした災害から数年の月日が流れた。
帝都の復興も進み、ボランティアで忙しかった俺も余裕がでてきた。
そこで再び俺は探偵、そして冒険家として再スタートを始めることとなったのだ。

そしてその日、質素ながらも新しくなった事務所のドアーがノックされた。
久々のお客様だ。おそらく町の人のお手伝いの依頼だろうが、少しいい気分だ。
上機嫌で来客を中へ招き入れるため声を張り上げた。
「どうぞ、お入りください!」
「お入りくださいでやんす!!!」
彼は湯田くん。俺の相棒で友人の商人だ。
彼の商品で何度も助けられたが、彼本人が役に立ったことはあまり・・・いや、一度も無いんじゃないか?

ガチャリ。
「失礼する」
ドアから入ってきたのは、忍者の生き残りで剣の達人で美人な新聞記者、埼川珠子。
本人はタマちゃんと呼んで欲しいらしい。


「やぁタマちゃん、暫く振りじゃないか!いったい今日は何の用事なんだい?
君から来るだなんて、珍しいね」

「あぁ依頼があるのだ。
地域を転々と移り、山に籠もり村を荒らす輩がいるというのは知っているか?」

イスに腰掛けたタマちゃんに湯田くんがコーヒーを出した。

「すまない、コーヒーはあまり飲み慣れてなくてな。緑茶のような日本風の物をくれないか?」

せっかく奮発していいコーヒーを入れてやったのにでやんす!と湯田くんがブツブツ言いながらコーヒーを下げた。

「聞いたことがあるな。確か、火種か何かを投げたりするって奴だろう?
荒らすたびその場所で何故か落雷があるから、天候を見て襲っているとも聞いた。」

「そう、それだ。それを調査するため、現地に向かいたいのだが・・・」

「向かいたいけど?」

「・・・野生の動物が多いのだ。」

「あ、そっかタマちゃん動物苦手なんだっけ」

彼女は寝ている時に耳をネズミに噛まれて以来、動物が苦手だ。あれ、でも確か・・・

「でも確か、鈴音さんの所のその、タ、タマ・・・とじゃれあったりして克服してきたんじゃなかったの?」

鈴音さんとは木岡財閥の令嬢。見かけによらず、戦車用の武器を躊躇いなく人に発射する。
そしてタマは、その鈴音さんが買っている「ベンガルトラ」である。

「それはそうだが、どうしても数が多いと一人では、な。というわけだ。依頼を受けてくれないか?」

他ならぬタマちゃんの願いだ。断ったら怖いし、美人だし・・・そして何より・・・

俺は・・・・・・冒険家だ。

「行こうか、湯田くん!」

「ガッテンでやんす!あ、お飲み物どうぞでやんす。」

「おい!私に喧嘩をふっかけているのか!!何で日本酒なんだ!しかも一升瓶まるごとじゃないか!!」

~大正冒険篇非公式番外SS~

やつらが来たぞ!」「子供や女は逃げろ!お前たち行くぞ!」


「こ、子供達に手出しはさせないぞ!」

「食らいやがれ化け物!」

      • きゃはは!



「おばけだって?」

「あぁ、首をはねたのに、何度も何度も同じ者に襲われるらしい。」

「そ、そんなのあるわけないでやんす!きっと同じ顔の兄弟でやんす!」

顔中が腫れた湯田くんはキッチリとしばられている。

「いやまて、もしかしてそれって・・・」

「あぁ。カビンタ博士の研究が絡んでいるかもしれない。」

カビンタ博士とは、ゾンビの研究をしていた博士だ。自ら生み出した巨大ゾンビに食べられてしまった。

「大神に伝えたいところだが、彼も最近忙しいしからな。
関係ないかもしれないし、とりあえず今回は誰か霊能力が使える人を呼んで冒険に行こう、霊能力と言えば教祖の服部さんか・・・」

ガチャ!

「久しぶりー。暇やから遊びにきたでー」

「・・・巫女の詩乃ちゃんだね」

「?」


―難自衛村―

「それで、その山賊とは?」

「白髪で、恐ろしい妖術で襲ってくるんや。立ち向かったり追いだそうとした筋肉自慢ニキはみんなボコッボコでワロタ・・・」ブリュ

「いったい何人くらいでおそってくるんですか?」

「・・・一人なんや」ブッチッパ

「は?」

信じられないことにその山賊はたった一人で村の男達をなぎ倒し、食料を奪って去っていくらしい。
しかも更に信じられないのは・・・そいつが女の子だってことだ。

「女の子でやんすか・・・捕まえた暁にはお仕置きをするしかないでやんす!あんな事やこんなことを!
うおおお!燃えてきたでやんす!アンタら、頼むでやんすよ!」

湯田くんはキッチリ縛られ、引きずられてる。何か余計なことを言ったらしい。

時々出てくる野生の獣を処理しつつ俺達はその山賊のナワバリで向かった。


「ん・・・?おい!君たちどうしたんだ!?」
怪我をした村人を抱えた村人がいた。

「こいつが山賊ネキを採れたてきうりで倒そうとして失敗したらしいンゴ、ガイジかな、これ」ブリュ
けが人を抱えた村人は答えた。しかしこの村の人は目がデカくて飛び出しているな。

「ふむ、ナワバリに近づく者にも容赦しないというわけか。当然だろう。」

「君たち、その山賊は何の武器を使うんだ?」

「ワ・・・ワイは・・・刃物でやられた・・・ンゴ・・・とりあえず取り急ぎ・・・」ブリブリブリュリュリュリュ
けが人の村人が答えた。

「何!?相手も刀使いか!?ふふ、腕がなるぞ・・・!」

タマちゃんは何故か嬉しそうだ。
俺も実は久々の冒険でワクワクしている。相手にとって不足なしだろう。

「オイラ、もう帰りたくなったでやんす・・・」
いつの間にか湯田くんはロープから抜けだしていた。

「どれ、私が傷をみてやろう。」

「サ、サンキューモダンガールネキ」ブリッチョ

タマちゃんは傷口に手を伸ばした。タマちゃんの顔色が変わった。

(・・・!!この切り口・・・ま・・・まさか・・・)

慣れた手つきで応急処置をほどこした。

「これで大丈夫だ・・・おい、私は先に行っているぞ」

タマちゃんは形相を変え走りだした。
待ってくれと3人で追いかけたが、流石に元忍者。全く追いつかず置いて行かれてしまった。
まぁ、目的地はわかっているんだ、焦ることはないだろう。





「ところで詩乃ちゃん。」

「んー?どないしたん?よかった、忘れられたんかと思ったわ」

「あ、ご、ごめん・・・ところで、どう?幽霊の気配とかする?」

「やっと聞いてくれた・・・生き物じゃないもんの気配がすんねん」

「!!やっぱりゾンビか!」

「い、いや、ちゃうねん、なんというか・・・鬼のような・・・わからへん、こんなん・・・初めてやわ」

「鬼・・・?」

「ま、まさか、そんなの迷信でやんす、嘘っぱちでやんすー・・・やんす・・・」

俺も湯田くんのように青ざめた。

「・・・おいそこのお前、聞きたいことがある。」

木の上に居る白髪の女に、珠子が声をかける。
ゆらりとその女は立ち上がる。

「人のナワバリに勝手に入りよって、その態度はなんやろなぁ・・・」

こちらを向いた女の顔は、冷えた声とは裏腹に、にこやかだったのが、一層不気味だった。

「お前、元忍者だろう?あれは忍者が手加減して斬りつけた特有の傷跡だ。」

「なぁ、土足で上がり込んで失礼しますもごめんなさいもないんか?」

「質問に答えろ!」

ドゴッ!!珠子の2メートル程後ろにある木が砕けた。

「あんたが先やろ・・・キャハハッ!!」

ガサリと草をわけ進む音がした。

「おい、そこに居るのは誰だ!?」

相手が俺の声を聞き、驚いたように叫んだ。

「その声・・・まさかお前は!」

声を聞いた途端思わず俺の口からも全く同じセリフが飛び出しかけた。

「チキン男爵!!!まさかこの一件はお前たちの仕業だったのか?」

「コケケケ、久しぶりだな、名探偵!!その質問は半分正解、というところだろうか。」

この可笑しな笑い方をする男は、我威亜党の一員であるチキン男爵。
この男がダイヤを盗み出したことから、全ては始まった。

「一体今度は何を企んでいるんだ!答えろ!」

「嫌だね、ここで会ったが百年目!!覚悟しろ!」

チキン男爵が爆弾を投げた。詩乃ちゃんを庇いダメージを食らってしまったが、そのままチキン男爵にタックルする。
すっとばされた後ろに素早く移動した詩乃ちゃんが御神刀を振りかぶるも間一髪で避けられてしまった。
湯田くんからかったクスリで回復した俺は自動拳銃を数発打ち付けた。

右手に命中しチキン男爵はステッキを落す。

「いまだ、抑えろ!」

「くそ、捕まるものか!!」

煙幕が撒き散らされ、気が付くと彼は消えていた。

「逃した!?ぐぐぐぐぐぐ!!!ちくしょー!」

「地団駄踏んで子供みたいでやんす」

「くそー、今度はやつらの思い通りにはさせないぞ!!」




「ふーん、あんた彩華のこと知っとんかあの子生きとったんやなー良かったわ」

女の前でボロボロに傷ついた珠子が呻いていた。

「な、なんだ・・・お前は・・・いったい・・・切りつけても死なないばかり・・・か・・・火を・・・雷を・・・操るだと・・・!?」

「確かにあんたの言うとおりあたしは忍者もやっとったけど、ホンマはあたし、化けもんなんやわ。キャハハ」

「ふざけるな・・・そ、そんなものの・・・存在を・・・認めろと・・・!?」

「あたしの力みてまだ信じられへんのか。彩華と知り合いゆーからしとるかと思ったわ。」

女が珠子の傷口を意地悪く突き悲鳴を上げる珠子をキャハハと笑いながら見ていた。

「ぜ・・ったいに・・・お前・・・を・・・・」

珠子はもうまともに声を出せないほどボロボロだった。

「やめときやめとき、あんたじゃあたしにゃ勝てへん。ほな、ウチは彩華のこと探しにいくわ。あたしの事死んだおもて、
寂しがっとるかもしらんからな。あんたも探しとるんやったらまた会うかもしれんな。生きてたら会おうな。キャハハ」

「ま・・・て・・・・・・・・・・・・」

「あ!あれは!タマちゃん!大丈夫か!?タマちゃーん!!」



俺が駆けつけた時には山賊は居なかった。詩乃ちゃんが言うには、気配はすでにこの山からは離れて行っているそうだ。

一週間後目覚めたタマちゃんから話しを聞いたが、話がぶっ飛びすぎて正直納得できない。忍者?化け物?妖術?
でも、タマちゃんが嘘つくとも思えないよなぁ。

しばらくし、タマちゃんは軍隊をいざこざを起こし日本には戻ってこれなくなってしまった。
聞くと、今は海外で新聞記者をしながら魔物ハンターをしているらしい。

      • 本当に魔物なんて居るのかなぁ?しかし半信半疑だった俺だが、信じざるを得なくなった。


それはまた、別のお話。