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駅で真宵を見送り、成歩堂は御剣の車に乗り込む。 「じゃあ悪いけど事務所まで」 「家までじゃなくていいのか?」 「うん。荷物置きっぱなしだし、自転車もあるしね」 御剣は、そうか、と言って車を発進させた。その横顔を見て先程まで見ていた光景を思い出し、成歩堂はくすりと笑った。 「なんだ?」 訝しげな視線が投げられる。 「いや、御剣にラーメン屋って似合わないなーって」 「まぁ・・・確かにあまり行かないな・・・」 「だよねー。あはは・・・ははは」 笑いが止まらない。 「何だ、ここで降りたいのか」 「すいません」 睨まれて姿勢を正す。 しかし成歩堂は内心安堵していた。 (案外、普通に話せるじゃないか) 避けていた自分が馬鹿みたいだ。意識すればするほど忘れられなくなるというのに。 やはり「友人」が一番自然な関係ということだ。 成歩堂の心の穴に何かがすとんと落ちてきて、ぴたりと当てはまった。 数分後、事務所が入っているビルの前に車が横付けされる。 「ここでいいか?」 「うん、ありがと。じゃあ・・・」 また、と言いかけて成歩堂は思い付いた。 「あのさ、よかったら少し寄っていかないか?」 御剣は一瞬考えて、すぐに、 「そうだな。たまには君とゆっくり話すのもいいか」 と言った。 「そこ座っててよ。今お茶淹れるから」 御剣に応接セットのソファを示して、自分は給湯室へと向かう。 棚から紅茶の茶葉が入った缶を取り出す。彼が紅茶党なのは知っていた。 お湯が沸くまでの間、給湯室から御剣の様子を窺うと、物珍しそうにキョロキョロしているのが見えた。そういえば御剣が成歩堂の事務所に来るのは初めてのことだ。二人で時間をとって語り合うのも。 どんな事を話そうかと考えると、自然と口元が綻んだ。 「はい。お待たせ」 御剣の前にカップを置いて、自分も彼の向かい側に座った。 「真宵くんは元気そうだな」 カップに口をつけながら御剣が言う。 「そうだね。最初は無理してる感じもあったけど・・・。いい子だよ。ぼくや春美ちゃんに心配かけないようにしてるんだ」 「そうか。・・・そういえば・・・」 御剣が視線をよこした。 「この前、裁判所にいたな」 「え?あ、ああ・・・」 ばれていたのか。 「いや、ほらお前、取り込み中だったみたいだからさ。話し掛けなかったんだけど・・・」 自分でも歯切れの悪い言い方になったと思ったが、御剣はふうん、と小さく言ったきりだった。 (ごまかせた・・・?) 成歩堂は身構えたが、相手はもう興味を無くしたようだ。 それから互いの近況や、法律談義、昔話をして、気づけば二人で話し始めてから三時間近く経ち、紅茶もすでに四杯目になっていた。 新しく淹れた紅い液体を一口飲み、成歩堂は何気なく聞いた。他意は無かった。御剣がそこまで動揺するとは思わなかった。 「ねぇお前ってさ、好きな人とかいるの?」 ガシャン。 御剣の手からカップが落ち、白い破片が散らばった。 「うわ、お前何やって・・・大丈夫か!?」 「貴様は何を・・・!」 彼は明らかに慌てていた。 成歩堂は給湯室へ布きんを取りに行く。 「火傷とかは?」 「・・・平気だ」 平静を取り戻した御剣はテーブルの上の欠片を集めている。 「すまない・・・」 「いいよ、どうせ安物だし。今新しいの淹れて・・・」 「いや、今日はもう失礼する。随分長居してしまったしな」 成歩堂が時計を見るとすでに十時を過ぎていた。明日も平日だし、確かにもう帰ったほうが良さそうだ。 カップを弁償すると何度も言う御剣を、気にするなと見送って、一人になった事務所で成歩堂は首を傾げた。 「そんなに聞いちゃいけないことだったか?」 [[戻る>逆転裁判]]
駅で真宵を見送り、成歩堂は御剣の車に乗り込む。 「じゃあ悪いけど事務所まで」 「家までじゃなくていいのか?」 「うん。荷物置きっぱなしだし、自転車もあるしね」 御剣は、そうか、と言って車を発進させた。その横顔を見て先程まで見ていた光景を思い出し、成歩堂はくすりと笑った。 「なんだ?」 訝しげな視線が投げられる。 「いや、御剣にラーメン屋って似合わないなーって」 「まぁ・・・確かにあまり行かないな・・・」 「だよねー。あはは・・・ははは」 笑いが止まらない。 「何だ、ここで降りたいのか」 「すいません」 睨まれて姿勢を正す。 しかし成歩堂は内心安堵していた。 (案外、普通に話せるじゃないか) 避けていた自分が馬鹿みたいだ。意識すればするほど忘れられなくなるというのに。 やはり「友人」が一番自然な関係ということだ。 成歩堂の心の穴に何かがすとんと落ちてきて、ぴたりと当てはまった。 数分後、事務所が入っているビルの前に車が横付けされる。 「ここでいいか?」 「うん、ありがと。じゃあ・・・」 また、と言いかけて成歩堂は思い付いた。 「あのさ、よかったら少し寄っていかないか?」 御剣は一瞬考えて、すぐに、 「そうだな。たまには君とゆっくり話すのもいいか」 と言った。 「そこ座っててよ。今お茶淹れるから」 御剣に応接セットのソファを示して、自分は給湯室へと向かう。 棚から紅茶の茶葉が入った缶を取り出す。彼が紅茶党なのは知っていた。 お湯が沸くまでの間、給湯室から御剣の様子を窺うと、物珍しそうにキョロキョロしているのが見えた。そういえば御剣が成歩堂の事務所に来るのは初めてのことだ。二人で時間をとって語り合うのも。 どんな事を話そうかと考えると、自然と口元が綻んだ。 「はい。お待たせ」 御剣の前にカップを置いて、自分も彼の向かい側に座った。 「真宵くんは元気そうだな」 カップに口をつけながら御剣が言う。 「そうだね。最初は無理してる感じもあったけど・・・。いい子だよ。ぼくや春美ちゃんに心配かけないようにしてるんだ」 「そうか。・・・そういえば・・・」 御剣が視線をよこした。 「この前、裁判所にいたな」 「え?あ、ああ・・・」 ばれていたのか。 「いや、ほらお前、取り込み中だったみたいだからさ。話し掛けなかったんだけど・・・」 自分でも歯切れの悪い言い方になったと思ったが、御剣はふうん、と小さく言ったきりだった。 (ごまかせた・・・?) 成歩堂は身構えたが、相手はもう興味を無くしたようだ。 それから互いの近況や、法律談義、昔話をして、気づけば二人で話し始めてから三時間近く経ち、紅茶もすでに四杯目になっていた。 新しく淹れた紅い液体を一口飲み、成歩堂は何気なく聞いた。他意は無かった。御剣がそこまで動揺するとは思わなかった。 「ねぇお前ってさ、好きな人とかいるの?」 ガシャン。 御剣の手からカップが落ち、白い破片が散らばった。 「うわ、お前何やって・・・大丈夫か!?」 「貴様は何を・・・!」 彼は明らかに慌てていた。 成歩堂は給湯室へ布きんを取りに行く。 「火傷とかは?」 「・・・平気だ」 平静を取り戻した御剣はテーブルの上の欠片を集めている。 「すまない・・・」 「いいよ、どうせ安物だし。今新しいの淹れて・・・」 「いや、今日はもう失礼する。随分長居してしまったしな」 成歩堂が時計を見るとすでに十時を過ぎていた。明日も平日だし、確かにもう帰ったほうが良さそうだ。 カップを弁償すると何度も言う御剣を、気にするなと見送って、一人になった事務所で成歩堂は首を傾げた。 「そんなに聞いちゃいけないことだったか?」 [[戻る>逆転裁判]] [[次へ>Past→Future6]]

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