PAST→FUTURE3

    

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数日後の午後の「成歩堂法律事務所」。
所長室から成歩堂が出てきた。手には書類が入っているらしい茶封筒を持っている。
「ちょっと裁判所行って来るね」
「うん?書類ならあたしが……」
「いや、ついでに調べたい資料があるから」
「そっか。行ってらっしゃい」
留守番頼んだよ、と言い残して事務所の主は外に出る。
春の日差しがデスクワーク漬けの目に眩しい。並木の桜は大方散ってしまっていて、それが少し寂しかった。
「あ。ついでに買い物も頼めばよかったよ」
真宵が一人ごちたのは、それから数分後のことだった。


裁判所の地下にある資料室を出たのは、成歩堂がそこを訪れてから二時間が経とうという頃だった。
(すっかり入り浸っちゃったな。早く帰らないと……)
自然と急ぎ足になる彼の歩みは、しかし、ロビーへと続く階段を上がりきる前に止まった。
(げっ……、あの遠目にも派手な赤いスーツは……)
今日は公判日だったのか、と成歩堂は苦い顔をする。
自分にとって、今一番会いたくない人物がそこにいた。
御剣怜侍。
例えばここで目が合ってしまえば、立ち話とまではいかなくとも、挨拶ぐらいはしなければならない。何しろ自分と彼は友人同士なのだから。しかし、成歩堂はそれを避けたかった。御剣本人に罪はないのだが。
友人として側にいることを選んだ。熱情は心の底にしまって鍵をかけた。
忘れようとしているのに、今言葉を交わせば、視線を合わせれば、また迷いに捕らわれそうで怖かった。
成歩堂は御剣の様子を見る。
数人の刑事らしい男に囲まれて何やら話し合っている。糸鋸刑事もいた。
幸い、こちらには気づいていないようだ。
(ここを出るなら今だな)
素早くエントランスへ向かう。
後ろが気になる。でも振り向いてはいけない。
早く外に出たい。けれど走るわけにはいかない。
そんなことで頭がいっぱいだった成歩堂は、だから勿論気づかなかった。その背中に注がれる、御剣の視線に。


「……んじ!御剣検事!」
隣に立つ刑事の声にはっとする。
「どうかしたんスか?」
「……いや、何でもない」
ちらりとエントランスを見やって、青い後姿が消えてしまったのを確認した。
「検事は働きすぎっス。疲れているっス!」
声の主を横目で睨んだ。
「ほう……、面白いジョークだな」
「あ、いや、あの……。すいませんっス……」
無論、本気で怒ったわけではない。この刑事がいつも自分の心配をしてくれていることは知っている。
ただ、他の事に気を取られた、とは言いたくなかった。
階段で一瞬、立ち止まった成歩堂に気づいた。それからロビーを横切る彼を見て、何となく、自分は避けられたんだと思った。
(被害妄想だな……)
成歩堂が自分に気づいたのは確かだ。声を掛けずに通り過ぎたのはこちらに気を使ってのことだろう。
(うム。普通に考えれば分かることだ)
気にする必要はない。
下らない思考は溜息で吹き飛ばした。
「署に戻るぞ。捜査会議だ」







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