Past→Future6

    

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「ウェッジ・ウッド・・・」
成歩堂は今聞いたばかりの単語を口の中で繰り返した。
そして千尋の言葉を思い出す。
「自分のものはシンプルに。お客様には良いものを」
この事務所にあるものはほとんどが千尋が集めたものだ。当然、来客用のカップも。
ブランドに疎い成歩堂でも「ウェッジ・ウッド」くらいは知っている。
「そうだよぉ。あの御剣検事が手を滑らせるなんて・・・。ナルホドくん、いじめたんじゃないの?」
「そんな事するかよ」
否定はしたが、いたずらっぽい真宵の視線が良心に刺さる。


御剣が訪れた翌日、カップが一脚消失しているのに気づいた助手に説明を求められ、「御剣が手を滑らせて割ってしまった」とだけ言った。
何だか責任転嫁してしまったような気持ちもしたが、詳しく話す気にはなれなかった。
そして割れてしまったカップの正体を知った。
(いじめたわけじゃないけど・・・)
自分の一言が招いた結果であることは明白だった。
成歩堂には分からないが、御剣には恐らく価格が想像出来たのだろう。しつこいくらいに「弁償する」と申し出た理由が今なら分かる。
(まぁ・・・、そりゃ気にするよな)
御剣は、普段こそ何だか偉そうにしているがあれで中々物事を気にしすぎる一面もある。
もし彼が新しいカップを持ってやって来たら受け取るべきなのかどうか・・・。


二週間後、成歩堂の予感は的中した。
その日は春美も来ていて、真宵と三人で事務所を閉めてからの夕方の「おやつタイム」を過ごしていた。
成歩堂の携帯電話が特撮番組のテーマソングで着信を知らせる。
ディスプレイには「御剣怜侍」とあった。
「もしもし?」
二つの視線を感じながら電話に出る。
「今?事務所だけど・・・。うん、大丈夫だよ。・・・え?ちょ、ちょっと御剣!?あ・・・」
通話は一方的に切られた。
「どうしたの?」
真宵から、ごく当たり前な質問がなされる。
「御剣、来るって」
「え。これから?」
「うん」
「そう・・・」
真宵はほんの少し何かを考えてから、
「それじゃあ、あたし達は帰ろっか。はみちゃん」
「え?」
と、声をあげたのは成歩堂で。
「みつるぎ検事にはお会いにならないのですか?」
「はみちゃん、こういう時はね、気を利かせるもんなんだよ。男同士、積もる話もあるだろうからね」
真宵は春美に話しかけつつ、ちらりと成歩堂を見やった。
彼女は彼女で勘の鋭いところがあるので、成歩堂と御剣の間に何かがあったと感じたのかもしれなかった。
「別にいてもいいんだよ?」
成歩堂としてはその方が御剣と気まずくならずに済みそうで有り難いのだが、
「やだなぁ。あたし達は野暮な女じゃないんだよ」
「ナルホドくん、愛しい人の厚意は素直に受け取るべきです」
好き放題言ってくれる。
「・・・じゃあ、駅まで送ってくよ」
「え、いいよ。お客さんが来るんだし。それに今日ははみちゃんも一緒だから」
真宵に肩をたたかれて、春美は装束の袖を捲くった。
「そうですとも!真宵さまはわたくしがお守りいたします!」
その姿に、成歩堂はいつか喰らったパンチの重たさを思い出す。
「それじゃあ・・・、気をつけてね」
賑やかに事務所を去っていった二つの装束姿とは対照的に一人残った成歩堂はげんなりとして、それと同時に、何だかそわそわして落ち着かない気もしていた。










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