『ドゥ・アース』

半分はシリアス、半分はおバカで出来たファンタジー長編!!!!!!!!!?

ドゥ・アース

これは、この広大な宇宙に存在するある惑星での物語。
その惑星には古代より地球人と酷似した生命体が繁殖し、生命の営みを続けていた。
地球人と酷似した生命体。分かりやすく人類と呼ぼう。その人類は、地球に繁殖する人類とは一つだけ事なる体質と性質を持っていた。
感情の力を増幅させ、それをさまざまな力に変えるものを持っているのだ。文明をもった古代人はその体質や性質を解明し、
古来より伝えられた架空の生命体になぞらえて精霊術と名付けた。
その精霊術は、先に述べたように感情の力を利用するのだが、それを意図的に増大させた上でコントロールするというもの。
感情を操作する行為事態、並大抵の精神力で出来るものではないし、最悪感情にまかせてそれを暴走させてしまいかねないものでもある。
古代人はこういう。神は不完全な我らに試練を課したのだ。と。
そんな古来より伝来する言い伝えを元に人類は精霊術の鍛錬(研究)を続けてきた。完全なる人類を目指さんが為に。
一つは、精霊術研究所といい、古来より栄える光の神(精霊)を崇めるルミナス教団が管理している。
一つは、エルミークの里。レイブリック王国とルミナス教団の国境に位置するエルミークの森にある小さな集落の事である。
その集落はそれぞれの領土から独立しており、現在はその昔マスターエレメンタルと呼ばれた年配の女性が族長を務めている。
ルミナス教団とは違い、古代人の術者から代々教えを請い、それを学ぶ世界から自立した場所である。
一つは、ゾア教団。一般的にゾア教団は邪教と呼ばれ、悪とされている。人の心の闇の部分であるダークサイドを崇める教団である。
彼らは禁とされる邪の力を研究し、崇め自らの欲望を満たすためにある集団である。
合成生命体を始め、人口生命体を作り出す古の技術を所有しており、私利私欲でそモンスターと呼ばれる化け物を野に放つ等、実践的な実験を行っている。
世に巣くうモンスターは自らの欲望のまま行動する為、膨大な精霊力を放出する。
今現在ではその活動は沈静化したものの、彼らの傍若無人なる行動を抑制する手立ては未だ見つかっていない。
そして最後、精ルミナス学園。ルミナス教団が管理する精霊術のエキスパートを生み出すために作られた施設だ。
今回は、この精ルミナス学園での物語。その学園がどういったものなのか。それは彼の生きざまを通して追々説明していこう。

彼の名前はレイ。コレといった特徴のない普通の少年でそれなりにスケベ、年齢は16歳。
もともと人里離れた山奥で鍛冶屋見習いとして、自らの師である養父と共に暮らしていた。
彼には特定の親はおらず、スラム街の片隅で生を受け、すさんだ世の中で12年間生活していた。
そのためか、時折野性的な鋭い眼光を見せるときがあり、彼の素性を知らない人間を驚かせる事もある。
親代わりはスラムの娼婦だった事もあった。親代わりはスラムで出合った兄貴分だったこともあった。
そんな時、彼は山奥から街に出てきていた鍛冶師の養父と出会った。
養父はそんな彼をただ引き取った。彼は未だにその真意をしらない。
しかし彼はそんな事はどうでも良かった、ただ飯が食う事ができ、フカフカのベッド寝られれば良いと短絡的な考えしかなかった。
それも仕方がない事なのかもしれない。毎日毎日をただ生き延びることだけを考えて12年もの間生きてきたのだから。
彼は養父と生活した4年間で世間を知った。自分が何もできない弱い人間である事も知った。
その時彼は初めて養父に恩を感じたのだ。必死に恩を返す努力をした。鍛冶屋の仕事も覚えようと努力した。
しかし、そんな彼の元に白羽の矢が立つことになった。
神の声と呼ばれる精ルミナス学園への強制入学制度である。
光の神を崇める者たちなど、一部では強制入学制度(推薦)で入学する事は自分の命よりも尊いものとされている。
レイは無信者だ。己の生きてきた道しか信じなかった。もちろん、その場で断った。
しかし、それを断れば家族と共に異端者扱いされてしまい、処罰されてしまうと言うのだ。
彼は迷った。尊敬する養父を見捨てて我が道を貫くのか、養父を守るため信者になるのか。
彼は決断した。愛する養父の為、生まれて初めての師弟愛を貫くため、精ルミナス学園に入学する決意を固めた。

656 名前:糞野郎 ◆KsPfRw61z.[sage] 投稿日:2011/12/16(金) 00:42:14.67 ID:Z/8U9e9Vo [3/9]
学園には沢山の生徒が存在する。その数は5000人を超える。
レイと同じくして決断を迫られて入信し入学したもの。
貴族のコネを使い、ステータスの為に入学したもの。
サラブレットになるために生まれてきたようなもの。
邪教に恨みを持つもの。
用はこの中から、邪教と一戦交える為の兵隊を選び生み出す為の施設なのだ。
これは公にも知らされている事で、みな道筋は違うものの目指す場所は一つなのだ。
そして、そのサラブレッドや実力者から選び出された真の精鋭だけが到達できる場所がある。
それが、ルミナス異端審問騎士団である。各地の査察を始め、
邪教がからむイザコザや小競り合いを諌める為に存在する教団が管理する自治区のお目付け役なのである。
トップにはカイザーと呼ばれる管理者が一名、その下には大地、水、火炎、大気をの主元素を代表する騎士団がおり、主たる構成員は団長と副団長の下に100人以上の精鋭が居る。
100人と聞くと少ないようにも思われるが、あくまでも少数精鋭なのである。
各元素の騎士団員の一人でレイブリック王国の一般兵士を100人以上相手に出来るとされている。
一般兵士と比べると10000人相当になる。副団長ともなれば一騎当千、団長ともなれば一騎当万。
数に換算すればとんでもない戦力にたとえられるのだ。
そして、そんな彼らは異端者とならぬ限り、彼らの血縁者、功労者に対し永遠の富と安らぎがもたらされると言われている。
つまり、レイはそこに目を付けたのだ。養父は決して血縁者ではないが功労者である。
ならば、稼ぎの少ない山奥の鍛冶屋を早々に引退させ、楽な暮らしをさせてやれる。恩返しができると考えたのだ。
そんな思いを裏腹に、彼の波乱万丈な学園生活が開始されるのでした・・・。

半年後──

半年にわたり、基礎知識と訓練を施されていく。その間に脱落し姿を消す生徒も少なくはなかった。
しかし、レイは持ち前のスラム根性でしがみつくようにして生き残っていた。

「えー、諸君らには今まで精霊論の基礎を学んできたと思う。基礎、それは勉学だ。心の育成だ。苦しんだものもいただろう
 しかし!そんな諸君らにもついに心の解放が待っているのだ!しかしながら──」

(ながったりぃ話だぜ・・・毎度毎度あのハゲは飽きねーのかよ)

「ごほん!レイ・名字!君はもう一度精霊論の基本からやり直すかね!?心が筒抜けなのですよ!」

(そんくれーしってっよ!特にあんたが俺と同じ怒りの力を主にしてるくらいな!)

頬杖をつきながら、はげ頭の中心を眺めていた視線を一度そらしてスラム時代に磨いた鋭い眼光で講師を睨みつける。

「ふんっ。まぁいい。明日、諸君らは【開心の間】に向かってもらう。そこですべてが露わになるであろう!レイ・名字」

(けっ!)

口論と腕力では勝負以前の問題だ。彼はまだまだ半人前以下である。
こういった言葉のやり取りでは相手が大人、いや、熟練者である事が窺える。感情の抑制制御こそが精霊術者の資質なのであるから。
講師である彼の本文は火炎の精霊術を扱う術者である。して、彼は怒りの感情を操作する事に長けている。
怒りの力を内に秘め、少しずつ蓄えていく。そして、いざ術を完成させる際にそれを調節しながら放出するのだ。
しかし、人間の本質はやはり感情である。術者本人が喜怒哀楽の感情で我を忘れてしまう可能性は誰にでも秘めている。
そこを巧みに抑え込む・・・というのが精霊術者の強みであり、【新人類】という名のステータスなのである。



精ルミナス学園
─男子寮─

「なぁ、レイ。明日【開心の間】だっていうのにさ、エロ本なんか見てていいのか?」

「いいの、いいの!エロスは炎の一部だって言うじゃねーか」

「そういう問題じゃないと思うけどな。・・・まぁ、その下着姿の女の乳がデカイ事だけは認めるがな」

「だろー?揉むならこれくらいじゃねぇとな!」

男2人の共同部屋では、下衆な会話が繰り広げられていた。
一方の男子生徒は一見クールに見えても、根幹に潜むエロスは多大なものだ。しかも、すこし曲がっている。

「なぁ、この乳の中には何が詰まっていると思う」

「なんだ、いきなり・・・・脂肪と乳腺だろ」

「お前は所詮ストレート馬鹿さ。知っているか、レイ。女の乳にはは、慈愛の心が込められているのだ」

「いやいや、あえてボケないっていうボケをやったのに、サム・エドワーズ!お前のソレは何なんだよ!」

ツッコめよ!そこは、夢と希望だろ!とでも言わんばかりの不満そうな顔を同室の男子生徒につきだす。

「まずは、メスの乳房について・・・から説明が必要なようだな」

同室の男子生徒は、まじめな顔をして哺乳類の乳房にまで時をさかのぼって思いのたけをレイへとぶつける。
レイは、はぁ・・・と大きいため息を付きながら、またかと呆れた顔をやってから、エロ本に意識を戻す。
横でうんちくと理解不能な性癖をのたまわれる同室の男子生徒、サム・エドワーズが邪魔をしてか、本の中の女の乳房をもう正常なエロスで見る事ができなくなってしまった。
平たく言えば、萎えたわけである。

「一般的に動物とされる雌の乳房と、人類とされる女性の乳房には決定的な違いがある──」

この話題はすでに2788回目である。要は人類の女性の乳房はなぜ膨らむのかと言いたいのだろう。

「はいはい、じゃあ牛の乳について教えてくれ・・・・あれも大きいぞ、人類より遥かに。あれも人類の腹を満たす慈愛の心なんじゃねーの?」

「なん・・・だと・・・?」

聞き飽きた。言い飽きたやりとりである。女性の体はエロいですね。そういえば良いものを、回りくどく哺乳類の誕生から説明されているのだからレイもたまったもんじゃない。

「はいはい、やめやめ!お前の所為で俺のたぎるエロスの炎が鎮火しちまうっての!」

サムはこれでも慈愛をつかさどる水の精霊適正があるのだからいささかまいってしまう。一体、どんな力が開心されるのか明日が楽しみでならないレイであった。
レイは、サムの自論を適当に聞き流して、いつも通りにエロ本を枕の下に挟み込んで寝についた。
その日、レイはおかしな夢を見た。

(あっあっあぁぁぁぁぁ!)

目の前にはぼんやりと、鍛えられた腹筋と胸板が見える。自分の視界はその筋肉の動きに合わせて揺れ動いていた。
えらくはっきりとした感覚に一瞬驚きを隠せなかったが、それ以上に身体の芯を貫くような刺激が脳天にまで打ちつけられる。

(はぁぁぁぁ!!)

女の喘ぐ声が聞こえてくる。その声は自分の頭蓋骨を通して聞こえるような不思議な感覚で、自分ではないのに自分のモノのように響く。
状況を理解しようにも、理性を下半身から突き上げてくる刺激に邪魔をされて平常を保てない。
すると、自分の視界にあった筋肉の塊からぐぅっと声が漏れてくる。そして、その塊が更に速さを増し、こちらの頭も白くしびれてくる。
言いようのない刺激が体中を駆け回り、脳がホワイトアウトしていく。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ──!」

筋肉の塊の動きが止まり、下半身に熱い何かが放出されている感覚に気付いた。
そして、俺の耳元でこう囁かれた。

「愛しているよ・・・レイ・・・」

「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

レイは世界が滅びるのかと思うほどの衝撃を受けて目を覚ます。
どうやら、夢の世界で性行為に及んでいたのだろうか。それが自分が筋肉の塊、いや男だったらよかったであろう。
夢の世界のレイはなぜか女性であったのだ。しかも、狂ったように喘ぎ、男の精子を受け入れた上、見知らぬ男に愛を告白されている。
こんな夢が悪夢でなくてなんというのだ。とてつもない脂汗で体中がびっしょりに濡れている。

「はぁ・・・はぁ・・・なん・・・なんだ・・・?」

いつも、エロい夢を見ようと枕の下にエロ本を敷いてねていたのに、そんな夢は一切みることはなかった。
そして、ついに見れたと思えば自分が女になっている?ちゃんちゃらおかしい。俺は男として女とセックスがしたいだけだ。

「わが偉大なる乳房よ!我に力をあたえたまえぇぇぇ!~~~むにゃむにゃ」

びっくぅ!とレイは大きく身体を震わせる。
サムの寝言だった。明日の開心の間を前に心が高ぶっているのだろうか、彼はすでに精霊術に開心している夢でも見ているのだろう。

「まったく!お前の所為で夢見も寝覚めも最悪だ!」

そう言って、枕の下に敷いてあったエロ本を取り出して、サムの顔をめがけて本を放り投げる。

「いってぇぇ!!~~~むにゃむにゃ」

レム睡眠であるはずのサムに本を当てても目覚める気配すらない。別に直接彼が悪いというわけではないのに、余計腹立たしくなってくる。

「俺・・・変な性癖に目覚めしまったのか・・・?このままエロスの炎に目覚めてプレイボーイってのもありだが・・・あれはありえねぇ・・・」

レイの脳裏に女の姿の自分自身を想像してみる。

「げぇっ!きめぇぇぇぇ!!」

想像できたのは今の自分自身が、女物のドレスを着飾っている姿である。早々に気持ちを切り替えようとしたが、時すでに遅し。
女装した自分の姿が頭の上をくるくると踊っている想像に脳の大半を取られ、朝まで眠れない夜が続いたのであった・・・。



翌日──開心の間にて

レイたちは、各々の適正に分けられ、大地、水、火炎、大気のそれぞれの間の前に並ばされていた。
レイの適正は火炎である。特に、スラムで培った怒りの力、鍛冶屋見習いだった所為か炎との付き合いも長かったのも理由である。
彼の目の前に並んでいた生徒たちは、次々と部屋の中に入っては出ていく。
中には満面の笑みや自信に満ちた顔で出ていく者も居れば、自らへの失望の念や、あきらめの顔を見せて出ていくものもいた。
以前より聞かされていた事だったが、これは、いわば適性検査なのである。これに通過しなかった生徒は、尻尾をまいて故郷に帰らなければならない。
あいつは良い所のボンボンや令嬢だ。という者。明らかに田舎の芋男芋娘と、貧富を問わない適性検査であった。
つまり、実力あるものが残れるシステムなのだ。それもそのはず、これは異端審問騎士団へ入団するための試験であるからだ。
そんな彼らを見送って行くうちに、レイの順番が回ってきた。


火炎の間にて

火炎の間に入ると、その部屋は赤と黄色を基調に整えられた内装になっており、心の中の燃える炎を増長させているように感じられた。
その、部屋の中にその内装に溶け込むかのように、椅子に腰かけ、艶めかしい足を組んで座る女性が一人いた。
水着のような露出の高い服装で、派手な装飾を肩や腕、腰、そして足の先まで施された、スイムドレスとでも言えるようなデザインの服を当然の様に着こなしていた。
そんな妖艶な服装をした大人の女性を目にして、レイのような血気盛んな少年が興奮しない理由などない。
レイは、自分の股間に血液が下りていくのを感じて、とっさに前かがみの体制になってしまった。

「あら、可愛い子。今まで色んな子を見てきたけど、ここまで俊敏な反応をしたのは何十年振りかしら」

何十年?あなたは何歳ですか?おばあさんですか?と考えそうになったが、心の中でそれを呟くのは禁句と判断した。
体中の穴と言う穴から、体中の体液が噴き出しそうになったからだ。

「良い子ね。さぁ、始めようかしら。私はあなたの力を開心させてあげるのが役目。今まで何十万、いえ、何千万という人の心を開いてきたわ」

妖艶な大人の女性は、話口調も妖艶で、すぐに吸い込まれてしまいそうになる。これが、噂に聞くエロスの炎なのだろうか。

「ふふ・・・それも炎ね。けれど、妖炎の魔女。って名前聞いた事ないかしら?」

妖炎の魔女。造語のような名前だ。そう、それはまさに彼女の為に造られた名前だった。
妖炎の魔女とは、まさに妖艶を絵にかいたような美貌を何十年と維持しており、さらにその色香に惑わされて命を散らした邪教徒共は計り知れない。
さらに、その妖艶が通じない相手には、妖炎で相手を瞬間的に灰にされ、大地へと還元させられるらしい。
そんな彼女は以前、異端審問騎士団、火炎の団の副団長だったとされている。

「良くできました。オツムの方はそれほど悪くなさそうね。でも、これはどうかしらっ!?」

妖炎の魔女はレイの適性を一瞬で見抜き、その適正を逆手にとって彼に試練を課そうというのか。
彼の目の前に、妖炎の魔女の裸体が浮かぶ。気がつかないうちに彼の周囲に張り巡らされた炎のバリケードに揺らめいて、その乳房もその陰毛もはっきり見えないでいる。
昨夜寝付けなかった事もあってか、熱気と煩悩で朦朧とした意識の中、夢にまで見た女性の乳房が陽炎のように揺らいでいる。
正確には夢には見えなかったのだが、現実は目の前にまで迫っていた。

(熱い・・・身体が熱い・・・けれど・・・見たい・・・あの身体が見たい!!!)

『見たい?見たいの?良いのよ?見ていいのよ?』

(熱い・・・身体が溶けてしまいそうだ・・・!あの炎を超えれば・・・あの身体にたどり着ける・・・!)

妖艶の力に魅せられ、レイの体は炎のバリケードに吸い込まれるように近づいていく。

『でも、良いのかしら?その炎、私の体にとかされる前に、あなた灰になるわよ・・・?』

(灰になる?灰になったらその豊満な乳に触れないじゃないか・・・!いや、そんな事どうでもいい!今すぐその乳に・・・触れたい!)

『あなたはどうしたいの?灰になる事をいとわず、私に触れに来るのかしら?あなたのお父さん。悲しむわね・・・ああ、私にもわかるわ、あぁ、悲しみの涙で私の炎が更に燃え上ってしまう!』

(ああああああああ!俺はどうしたらいい!どうしたらあの乳に触れるんだ!どうしたら!!)

俺の訴えに、妖炎の魔女は一言だけ優しげな声で俺に語りかけた。

『あなたの自身の心に問いかけなさい』

その瞬間、昨日見た夢がフラッシュバックする。

(そうか・・・俺が女になれば自分の乳を好きなだけ揉めるじゃないか!俺は何を考えていたんだ、妖炎の魔女の絶対灼熱に触れたら、魔女の乳を揉むとかそれ以前の問題じゃないか!)

一般的な解釈からしたら、明らかに可笑しな発想である。常軌を異している。しかし、彼の中にはそういったアブノーマルな感情が潜んでいたのだ。
妖炎の魔女はそれを彼から引き出そうとしていたのだ。まさに、自らが腹を痛めて産み落とした赤子が、初めてのハイハイを両手で迎える母のような気持ちで。

『さぁ、目覚めなさい!妖炎の力に!!』

(うぅっあああああ)

「ああああああああああああああああああああああああ・・・・・・・・!!」

レイの叫びが火炎の間にこだまする。そして、レイの肺からすべての空気が吐き出された頃、炎のバリケードが一瞬で消え去った。
レイの目の前に立っていたはずの全裸の妖炎の魔女は、落ち着いた様子で椅子に足を組んだまま腰かけたままだった。

「おめでとう、気分はどう?」

「えっ!?おめで・・・とう・・・?」

「そうよ、おめでとう。よ。それから、はじめまして。とも言っておこうかしら」

妖炎の魔女の表情は、母が赤子を見つめるかのようなそれで、レイはその顔に良い表す事の出来ないほどの安堵感を抱いた。

「はじ・・・めまして・・・あれ?」

ここで初めて自分の体の異変に気がついた。
自分の頭蓋骨を通して聞こえてくる声は、聞きなれた男の声ではなく、キンキン響くような女の声だった。
レイは、そこでもう一度昨日見た夢の内容がフラッシュバックする。
これで、やっと自分の体が『女体化』した事に気がついたのだった。

「なんでーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

「生まれてきてくれてありがとう。私の赤ちゃん(はぁと」

「俺はあかちゃんじゃねーーーーーーーーーーーーー!」

「あらあら、女の子がそんな言葉づかいをするなんてはしたないわっ」

「だからそうじゃなくてーーー!うわっぁぁぁぁぁぁん・・・・」

夢にまでみた妖炎の魔女の胸にすがりつくように彼は泣いた。
妖炎の魔女は彼の頭をヨシヨシと撫でているだけだ。

「よしよし、良い娘ね。合格よ。けれど、今までどおりの生活じゃダメになったみたいね」

「うえっ・・うえっ・・・」

「あらあら」

妖炎の魔女は思った。抑えきれなかった煩悩の炎をこのような形で術に返還させる力。どんな上級術師でも不可能な力だ。
彼が・・・彼女がここに呼び寄せられた理由。スラム育ちだった彼女を、拾って育てた養父である鍛冶屋の父。
自分の知らないどこかで、知らない何かが動きだそうとしているように思えた。
そして、自分に課せられた使命。それは、彼女の力を覚醒させ、教団の理想とする世界へ変革させる力へ加える事。
そうなってもらうため、彼女育てろと告げられているようだった。

「よしよし、でも、これからが大変なのよ」

妖炎の魔女の言葉のそれは、レイにとってこれからの生活に多大な苦労が待っている。
女として生きていくのだという事実を突きつけられているだけにも思えたが──

「妖炎の魔女さん・・・あんたは俺をどうしたいんだ・・・」

鈍感そうで鋭い感性。そういったレイの本質は消えることはなかった。
妖炎の魔女はそんなレイの答えに胸が躍った。この子ならやれると。

「決まってるじゃない、素敵なレディーにしてあげるわ」

こうして、レイの波乱万丈な学園生活が性的な意味でスタートした。

序章 
妖艶の炎
─完─


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最終更新:2012年01月12日 22:31
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