アレフの迷宮挑戦録 4話


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 そうして再び、アレフはエルマと共に、迷宮へと挑戦する事になった。

「じゃあ行ってくるわね、グラベリア」

「ええお嬢様、お気をつけて」

 グラベリアは宿に待機して、2人を見送る。

「そういえば、グラベリアは一緒に来ないの?」

 エルマの護衛ならしいし戦闘能力はある筈なのに、どうして一緒に行かないのだろう。
 アレフはそんな事を思いながら、質問をする。

「あたしは、修行をする為に迷宮に潜っているの。
 グラベリアがいたら、あたしはどうしても心のどこかでグラベリアに甘えてしまうから、修行にならないのよ」

 エルマはそんな事を答える。
 しかしアレフには、エルマが甘えてしまう程にグラベリアが強いという言葉がしっくり来なかった。

「というか今更だけど、グラベリアって強いんだよね?」

「強そうに見えますかー?」

 グラベリアは、冗談めかしながらそんな事だけを答える。

「いやまあ、エルマの護衛だし、グランワイト人だし、強いんだろうけど……」

 なんだかぽわぽわした人だし、戦っている所がいまいち想像できないな。
 グラベリアに見送られながら、アレフはそんな事を思っていた。


____


 そしてアレフとエルマの2人は、再び迷宮へと到着し、入って行った。

 「この辺の敵はザコだから、先に進むわよ」

 エルマは入り口にいるスライム型モンスター達を、意にも解さないといった感じで蹴散らしながら先へと進んでいく。
 やっぱりエルマは凄いなと、アレフは改めてそんな事を思っていた。


 そして少し進めば、アレフが最初にこの迷宮に来た時に逃げ出してしまった、トカゲ型モンスターが現れた。

「あんた、そいつと一人で戦ってみなさい」

 エルマにそう言われて、アレフは一人でモンスターと戦う事にする。

 トカゲ型モンスターが、アレフへと向かって飛びかかってくる。  

 そのモンスターの動きを見たアレフは、あれ……? と思った。
 モンスターの動きが、記憶にあるものよりもずっと遅く見えたのだ。

 もちろん、そのモンスターの動きが遅くなった訳ではない。
 10日間の修行の中でmアレフはエルマの素早い動きを見慣れたので、それと比べたら遅く見えてしまったのだ。

 アレフは冷静にカウンターを合わせて、剣でトカゲ型モンスターを撃退する。
 アレフは魔術を中心として修行をしたが、剣の扱い方もそれなりにエルマから教わっていた。
 なのでアレフは、最初に迷宮に来た時のデタラメな振り方ではなく、エルマに教わったしっかりとした振り方で剣を振り下ろす。
 するとモンスターは簡単に両断されて、そして魔石だけが残るのだった。

「僕、凄く強くなってる……」

「当たり前じゃない、あたしが修行付けてあげたんだから。
 さ、先行くわよ」

「あ、待ってよ」

 アレフは道に落ちた魔石をちゃんと拾い、そしてカバンの中へと入れると、先に進むエルマに付いて行くのだった。


____


 モンスターが現れたら、まずはエルマが前で戦う。
 そしてエルマを補助する形で、後ろでアレフが魔術を撃って援護する。
 もし2体以上モンスターが現れた場合は、アレフも剣を取って個別に戦う。
 そんな陣形で、アレフとエルマはダンジョンを進んでいった。

 そうして、しばらくの時間が流れた。


 少しだけ開けた場所に出て、エルマはそこで足を止める。

「今日はこの辺で野宿ね」

 エルマはそう言って、そして石の上へと座る。

「あれ、もうそんな時間……?」

「そんな時間よ。
 あんたは迷宮に慣れてないからしょうがないけれど、迷宮の中じゃ時間が分からないから、冒険者ってのは体内時計も大切なのよ」

 そしてエルマは、そのまま疲れを取るためにリラックスし始める。

 この世界の迷宮とは、1日で奥まで行ける程短いものではない。
 なのでこの世界の迷宮探索は、野宿をしながら何日もかけて行うのが基本的なのだ。


 アレフとエルマは、カバンからコップを取り出し、水の魔術でその中に水を注ぐ。
 そしてカバンから食事を取り出し、火の魔術で簡単な調理を施し、食事を済ませた。

 そしてあとは、眠る時間になった。

「石がゴツゴツしてる……」

「文句言わない。
 食事くらいならまだしもベットなんて持ってくる訳にはいかないし、これに慣れないと迷宮探索なんて出来ないのよ」

 エルマはその場所に座り込んだまま、辺りを軽く見渡す。

「じゃああたしが起きてるから、あんたは寝てていいわよ」

「あれ? エルマも寝ないの?」

「あのね……、ここは迷宮なのよ。何時モンスターが出てくるか分からないとっても危険な場所なのよ。
 そんな場所で全員がすやすや寝てていいと思う?」

「あ、そっか……」

 エルマが自分よりも頼りになる事は分かっているので、アレフは指示に従って、素直に自分だけ寝させて貰う事にする。

「あれ? でもじゃあエルマは寝られないんじゃないの?」

「あたしは半分起きながら半分寝れるから大丈夫よ」

「え、そんな事出来るの?」

「まあ、普通の人には出来ないでしょうね」

 やっぱりエルマは凄いな。
 そんな事を思いながら、アレフは眠りに付くのだった。


____


 アレフとエルマは、迷宮の中でしばらくの時間を過ごした。

 そして2日と少し程度の時間が経った後、迷宮の外へと戻って来た。

 迷宮の外はまだ昼間で、アレフ達へと太陽の光が照りつける。

「うわ、明るい……」

「迷宮の中は暗いものね……」

 迷宮の中には龍脈エネルギーが漂っており、そして龍脈エネルギーは輝いて見えるので、迷宮の中では 最低限の光源は確保されている。
 しかし、状況を確認するのに不自由はしないという程度の薄暗い光しかないので、迷宮の外と比べたらやはり暗い。
 なのでエルマもまた、この感覚には慣れているので驚きこそしないものの、少しだけ目を細めていた。


____


 そして二人は道を歩き、また迷宮都市の城門を潜る。

 そして冒険者ギルドへと入り、今回取ってきた魔石を受付へと渡した。
 そしてしばらく待つと、小金貨4枚程度(現実の価値で言うと4万円程度)の金銭が支払われたのだった。

「凄い、小金貨4枚なんて……」

「いや、このくらい普通よ。
 というか、今回はあんたが迷宮になれる為に抑え気味にやってたから、むしろ少ないくらいよ」

「え、迷宮ってそんなに儲かるものなの……?」

 この世界の労働者の日当は、平均的には銀貨3枚(現実で言うと3千円程度)くらいだ。
 なので小金貨4枚(現実で言うと4万円程度)という金額は、かなり高かった。

「迷宮探索は命の危険がある事だし、それに誰にでも出来る事でもないから、その分魔石は高額で売れるのよ」

「ああ、なるほど……。
 けどそれでも、たった数日で小金貨が何枚も貰えるのは凄いなぁ」

「でもまあ、普通の冒険者はあたし程は稼げないわね」

「え、どうして?」

「だってあたし、冒険者の中でも上位の実力だもの。
 魔石は、強いモンスターを倒すほど価値の高いものが手に入るから、強い冒険者ほど沢山のお金を稼げるの。
 逆に言えば、弱くて入口近くのモンスターしか倒せないような人は、迷宮に行ってもそんなに稼げないのよ」

「そうなんだ……」

 アレフがエルマの知識に感心していると、エルマは近くのテーブルの席へと座った。
 そして今回稼いだ金を全て袋から出し、テーブルの上に広げて、それを半分に分けていく。

「何してるの?」

「何って、お金を分けてるのよ。報酬は山分けでいいわよね」

「え、半分も貰っていいの!?」

 アレフはエルマの補助をしているだけだったので、半分も貰えるとは思ってはいなかった。

「冒険者同士の報酬の分配は、山分けが基本なのよ」

「ありがと、エルマ」

「べ、別にいいわよ、お礼なんて……」

 こんな事で感謝されるとは思っていなかったエルマは、少しだけ照れていた。


____


 そしてそれから、更に3ヶ月程の時間が流れた。
 アレフは迷宮にも戦いにも更に慣れて、より的確な動きが出来るようになっていた。


 アレフとエルマが迷宮を歩いていると、熊型のモンスターが現れた。

 戦闘が始まる。
 まずはエルマが前へと出て、そしてアレフがエルマを盾にする形で後ろへと陣取る。
 これが、この2人が戦う時の基本的なフォーメーションだった。

 前に出たエルマは、熊型モンスターに向かって距離を詰める。
 そして剣の届く位置まで距離を詰めると、剣を振り下ろし、攻撃を加える。
 エルマの剣は、硬いものを叩いたように弾かれる。
 熊型モンスターは、手を振り上げてエルマへと反撃する。
 エルマはその攻撃を腕で受け止める。
 そして熊型モンスターの攻撃もまた、硬いものを叩いたように弾かれる。

 普通の人間がこの熊型モンスターの攻撃を受ければ、一撃で重症を負うだろう。
 しかしエルマには、その一撃だけではそこまでのダメージにはならない。
 何故ならエルマは、オーラという力を纏っているからだ。


 この世界には魔術と同じように、現実の世界にはない力として、オーラというものがある。
 オーラとは、一言で言えば生命エネルギーのようなものだ。

 人もモンスターも、生きているものは全て、このオーラという力を纏っている。
 オーラの力には生命力を活性化させるという機能があり、この世界の人々は通常ではありえないような力を出す事が出来る。
 そしてこのオーラの力は、魔力量と同じように、鍛える事によって増やす事が出来る。
 この世界にはこのオーラの力があるので、鍛えていれば女性でも超人的な運動能力を有する事が出来るのだ。

 そしてこのオーラには、生命力を活性化させる力の他に、もう一つの機能がある。
 それは、例えるなら緩衝材のような機能だ。
 オーラには、外部からの衝撃などを和らげる性質がある。
 なのでオーラを纏っていれば、強い衝撃を受けても体へのダメージを和らげる事が出来る。
 またオーラには、外部の環境から身を守るという機能もある。
 例えば激しい熱などを浴びせられた場合、オーラは防火服のような役割を果たす。
 なのでこの世界の生物は、オーラを纏っている限り、剣で切られてもいきなり切れる事はないし、火で燃やされてもいきなり燃えてしまう事もない。

 ただしオーラは、衝撃や熱などを浴びせられた場合、その分量に応じて減ってしまう。
 そしてオーラが薄くなってしまえば、鎧を剥ぎ取られたのと同じ状態になってしまうので、その時は衝撃に晒されれば無防備にダメージを受けてしまう。


 エルマは、熊型モンスターへと何度も剣で攻撃する。
 そしてその度に、エルマの攻撃は硬い物に当たったようにはじかれる。
 しかしこの行為は無駄な事ではなく、例えるならRPGゲームで敵のHPを削る作業のように、熊型モンスターのオーラを削るという意味があるのだ。

 そしてそれを後ろで見ているアレフもまた、熊型モンスターの隙を見ては、風の魔術による攻撃を浴びせていく。
 熊型モンスターは何度も風の刃に切り裂かれ、切り傷が付いていくが、オーラに守られているのでいきなり致命傷になる事はない。
 しかしその代わりに、熊型モンスターの纏っているオーラは、攻撃によって確実に削られていく。

 そうしてやがて、熊型モンスターの纏っているオーラはどんどん薄くなってゆき、攻撃を受ける事がダメージに直結していくようになっていく。
 また、オーラには生命力を活性化させている役割もあるので、熊型モンスターのオーラが減っていくのに従って、熊型モンスターの動きも鈍くなってゆく。

「はぁっ……!」

 そしてエルマは、頃合を見て渾身の一撃を加える。
 熊型モンスターは、薄くなったオーラではその攻撃に耐え切れず、一刀両断されてしまう。
 そして熊型モンスターは絶命し、魔石だけを残し消滅するのだった。


 エルマは一息を付き、アレフへと話しかける。

「あんた、大分戦えるようになってきたわね」

「そうなのかな……? 僕はエルマに守られててこそ戦えてるから、あんまり強くなった実感がないんだけれど」

「あたしに付いてこれてるだけで凄いのよ」

「エルマがそう言うなら、そうなのかな」

「正直あたしも、あんたがここまで役に立つとは思わなかったわ。
 あんた本当に、潜在能力はあったのね」

 アレフは知らないが、先ほどアレフとエルマが倒した熊型モンスターは、とても一般的な冒険者が倒せるようなレベルのモンスターではない。
 エルマは一般的な冒険者のレベルを超越しているが、それに付いていけるアレフもまた、既に一般的な冒険者のレベルは超越していたのだった。