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[東京 21日 ロイター] 一時国有化されている足利銀行(宇都宮市)の受け皿に野村ホールディングス(8604.T: 株価, ニュース, レポート)のコンソーシアムが選ばれたことで、今後、旧態依然とした地域金融機関の経営のあり方や、既存の業界秩序に変革を迫られることになりそうだ。

 野村は今回のディールを純投資と位置づけているが、地銀再生のノウハウを手に入れ、今後再編が加速すると予想される地銀業界で存在感を高めるのは間違いない。業界再編を見越して、すでに一部地銀の株主には海外の投資顧問やファンドが名を連ねており、投資ファンドが介在するかたちの再編加速に波及するとの見方もある。

 <オールジャパンの地銀連合が敗退、業界秩序にひび>

 「オールジャパンの地銀連合などという、もはやそういう時代じゃないでしょう」――。ある金融庁関係者は、足利銀行の受け皿が野村陣営に決まる直前、対抗軸として名乗りを上げていた地銀連合について、こう述べていた。

 足利銀の受け皿選定作業が始まるや否や、最有力候補だった地銀連合。横浜銀行(8332.T: 株価, ニュース, レポート)、千葉銀行(8331.T: 株価, ニュース, レポート)、群馬銀行(8334.T: 株価, ニュース, レポート)、茨城県の常陽銀行(8333.T: 株価, ニュース, レポート)、山梨中央銀行(8360.T: 株価, ニュース, レポート)、長野県の八十二銀行(8359.T: 株価, ニュース, レポート)、静岡銀行(8355.T: 株価, ニュース, レポート)、福島県の東邦銀行(8346.T: 株価, ニュース, レポート)など、栃木県の足利銀行を取り囲むように構成された有力地銀8行のグループに、資金の出し手として、日本生命や東京海上日動火災の大手生損保も加わった。まさに破たん銀行を救う「オールジャパン」の顔ぶれで、最終選考でも野村陣営より優勢だと見られていた。

 地銀連合の落選理由を金融庁は明らかにしていないが「地銀連合が受け皿になってしまっては、業界の競争が抑制的になってしまうのではないか。競争環境を整備し、収益力を高めるべきと考えている金融庁の方針にそぐわない」と、ある金融コンサルティング会社の首脳は分析する。実際、先の金融庁関係者も「地銀連合では、新生・足利銀が古い地銀の体質を引きずり、革新的な経営ができなくなる。大手地銀による植民地経営になる」との危ぐを示していた。

 <足利が積極経営を展開なら、北関東の広域再編も>

 野村グループの野村フィナンシャル・パートナーズは、産業再生機構出身者らが設立した再生ファンドのネクスト・キャピタル・パートナーズなどと共同で、足利銀の株式を100%保有する持ち株会社を設立する計画。野村とネクストは、その持ち株会社株の過半数を7月の株式譲渡後に保有する予定で、2010年3月期以降に東証に上場しエグジット(投資回収)を図る。この計画について野村HDは「まったくの純投資。自己資金投資の一環で、再生するのが狙い」(広報部)としている。

 野村に対して金融庁は「純投資」を認めつつ、地域密着経営を盛り込んだ3年間の事業計画の順守を求める。野村を選んだ理由も「金額」以外に明確な説明はないが、金融庁の内部では、証券会社グループの資本注入によって再生する足利銀に対し、事業計画で示された地域への配慮に加えて、新しいビジネスモデルによる競争力の強化に期待する声がある。野村グループの出資を通じて足利銀が積極経営を展開し、常陽銀行、群馬銀行など上位地銀による県ごとの秩序を脅かせば、北関東を中心に広域再編を促す可能性もある。

 <金融機能強化法が3月末に失効、地銀再編の機運高まる情勢に>

 予防的に公的資金を注入する時限立法の「金融機能強化法」が今年3月末に失効するため、地域金融機関にとっては、破たん処理以外での資金注入スキームがなくなり、救済型の合併・買収の活発化が予想される。

 これまで金融庁は、地域金融機関の収益性の監視を強めることで再編を後押ししてきた。2006年に山口銀行が広島県のもみじ銀行を買収して山口フィナンシャルグループ(8418.T: 株価, ニュース, レポート)を発足させたほか、2007年には福岡銀行(ふくおかフィナンシャルグループ(8354.T: 株価, ニュース, レポート))が、熊本ファミリー銀行、長崎県の親和銀行を相次ぎ傘下に入れて、県境を越えた広域地銀グループが誕生している。

ある大手証券関係者は、野村グループが足利銀の受け皿になったことは「地銀に自発的な再編を促す起爆剤になる可能性がある。これからは野村を中心に地銀戦国時代になる」とみる。「日本を知らない外資系ファンドでもなく、業界の秩序を乱されたくないという地銀連合とも違う野村が、足利をスーパーリージョナルバンクに育てる目的は何か。野村の戦略は、新足利銀のIPO後に、同銀を中心にM&A(合併・買収)を展開することではないか」とその大手証券関係者は読む。

 もっともM&Aの成功はトップ同士の調整・合意がカギを握ると言われ、再編が実際に進むかどうかは不透明だ。しかし、M&Aで足利の規模が拡大すれば「それに伴い業容も広がり、本部機能やシステム開発など営業コストを圧縮できる。地銀の上位5指に入るような成長ストーリーは描けるのではないか」(同)と予想。ある外資系証券のアナリストは、野村が「他の地銀再生案件の獲得や将来の再編で、一目置かれる存在となる可能性がある」と地銀再編の核になる可能性を指摘する。

 <海外ファンドの戦略と地銀の今後>

 海外の投資顧問や投資ファンドが地銀の株式を取得する動きも広がっている。大量保有報告書によると、今年に入り米投資顧問のドッチ・アンド・コックス(カリフォルニア州)は横浜銀株を5.07%から6.14%に買い増したほか、英投資顧問のシルチェスター・インターナショナル・インベスターズ(ロンドン)は滋賀銀株の5.05%を取得したと開示。

 東和銀行の株式は、米リバティー・スクェア・アセット・マネジメント(デラウェア州)が6.16%から7.30%に買い増した。リバティーは、サッポロホールディングス(2501.T: 株価, ニュース, レポート)に買収提案を行っているスティール・パートナーズと、他の銘柄でたびたび共同投資してきたファンドとして知られる。

 これらのファンドが地銀を買う目的はさまざまで、山陰合同銀行(8381.T: 株価, ニュース, レポート)を7.51%保有する米ブランデス・インベストメント・パートナーズ(カリフォルニア州)は「ポートフォリオ投資」としているが、岩手銀行(8345.T: 株価, ニュース, レポート)を6.09%まで買い増した英シルチェスターは「増配、自己株の買い入れ頻度または総量、金庫株の消却、その他の資本政策を要求することがある」として「モノ言う株主」に転じる可能性を示唆している。

 足利銀行の受け皿選定の過程で、地元・栃木県は「短期的利益を追求するような外資が支配的株主にならないこと」を要望し、金融庁は昨年9月に外資系グループを受け皿候補から外した経緯がある。ただ、受け皿選考を終えて金融庁は「3年間の事業計画が終了して上場を果たせば、株式の売買は制限されない」(監督局)として、野村グループが足利銀の投資を回収する際、仮に売却先が外資であっても妨げられないとの見解だ。ある幹部は、地銀の経営に「むしろ外資の力を積極的に借りるのもいい」と語っていた。

 (ロイター日本語ニュース 村井 令二記者 江本 恵美記者 編集:田巻 一彦)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-30939020080321


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