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*Action-DENEB エリアA-7の山岳部を走る人影が一つ。 人影は辺りをキョロキョロと見回しながら、乾いた大地を蹴り、走り回る。 現在の時刻は深夜、少し肌寒い風が吹きあれ、太陽は沈み、辺りはすっかりと暗くなっている。 また、その人影もまた漆黒の色を帯び、周囲の色に同化していた。 人影の名はデネブ。 どことなく武蔵坊弁慶のような出で立ちで黒を基調としたボディ、カラスを連想させるような金色の顔を持った者だ。 勿論、デネブは人間ではない。 西暦2007年の世界にやって来た遠い未来の世界の住人、イマジンの一人。 イマジンは契約した人間の一番大事な思い出が眠る時代へ飛び、その歴史を改変する。 そして歴史を改変する事で過去と自分達の世界を繋げ、自分達に都合の良い世界を構築する事。 それがイマジンの目的であり、最優先事項。 だが、デネブにはそんな目的はない。 「侑斗~? どこに居るんだ!? 侑斗~~~?」 デネブはイマジンを束ねる存在、カイに対し反抗を行った一人の男に共感し、カイを裏切り、彼に協力する事を決めた。 その男の名は桜井、桜井侑斗。 桜井と契約したデネブは彼の頼みで、ゼロライナーという時代を駆ける列車に乗り、過去の時代へ跳んだ。 目的は過去の桜井侑斗と契約し、彼と共にイマジンの侵攻を止める事。 便宜上、本来の世界の桜井侑斗を桜井と呼び、過去の桜井侑斗を侑斗と呼んでいたデネブ。 そしてデネブは侑斗と共に迫り来るイマジンに対し、闘い続けた。 あるときは侑斗と肩を並べ闘い、またある時は侑斗と一体化し、デネブは闘った。 更にその闘いは未だ続いていた筈――――であった。 「はぁ、はぁ……ふぅ疲れた、ちょっと休憩。 確か、夕食を作ってたところだったんだけど、可笑しいな~~~? ここは一体……」 だが、今、デネブが直面している現実は違う。 突然、見知らぬ部屋で眼を覚ましたかと思うと、二人の男女が殺し合いを行えと言い、得体の知れないガスによって気を失った。 そして気がついてみればこんな見たこともない島に取り残され、眼に入ってきたのは悪趣味な映像。 まるで電王やゼロノスのように変身を行った二人の男女が破れ、灰となり地へ還っていく衝撃的な内容。 デネブにとって二人は見知らぬ人間ではあるが、彼ら二人がもうこの世には存在しない事には心を痛め、黙祷を行った。 そして、デネブはある決意を固めた。 それは絶対にこの殺し合いには乗らず、スマートブレイン社という組織の野望を潰す事。 デネブは必要以上に闘いを、ましてや命の取り合いなど当然したくはない。 また、スマートブレインという会社に入社など、デネブが望むものとは程遠い。 デネブが望むものは侑斗と共に闘い、時の運行を守る事。 その目的を、使命といっていいものを為すためにはここから脱出しなければならない。 そのためにデネブは行動を開始した。 先程、支給されたデイパックから名簿を取り出し、先ずは知り合いが居ないかと確認したデネブ。 其処に記されていた名前の中でデネブが知っている名前は彼自身のものを含めて、五つ。 信用できる名前は桜井侑斗、モモタロス、ハナの三人。 取り敢えずこの三人、特に侑斗との合流を達成するためにデネブは駆け出していた。 現在は一旦立ち止まり、少し息を激しくさせながら道端に座り込むデネブ。 だが、デネブにはどうしても解決できない疑問があった。 「しかし……なんで、この人の名前があるんだろうな……。 うぅん、全然わからない……」 両腕で頭を抱え込み、デネブは真剣に悩む。 自分が何故こんな場所にいるかという問題も勿論、わからない。 更にデネブは名簿に記された名前から、余計に謎を見つける羽目となっていた。 デネブの疑問の種となっている名前。 それは牙王という名前が名簿に存在している事について。 以前、デンライナーを奪い、神の路線を狙った牙王。 そんな牙王は既に侑斗の友達、野上良太郎こと電王によって倒されたはずである。 だが、先程デネブが確認した携帯の名簿にはしっかりと彼の名が記されており、もう一度確認してもやはり記載されていた。 これはどういうことなのだろう? もしや、牙王が生きていたのだろうか? 只でさえこんな所に連れて来られ、混乱気味だったデネブには全く見当が付かない。 「そ、それよりも今は侑斗との合流が先だ! ん? そういえば……」 頭をブンブンと振り、余計な事は考えずに今は侑斗との合流を目指そうと立ち上がるデネブ。 だが、デネブはふと何かを思い出したかのように動きを止めた。 やがてデネブはある方向へ視線を向ける。 デネブの視線が向かう先は彼が肩に担いでいた何も変哲のないデイバック。 もう一度腰を落とし、デネブは礼儀正しく地に正座し、デイバックをそそくさと漁り始める。 「確か、あの女の人はこの中に役に立つものが入っていると言ってたなぁ……」 この殺し合いのために、参加者にランダムで配られたと思われしき支給品。 デネブはその支給品の存在を思い出し、確認を行っておこうと考えた。 もしかすればバイクのように侑斗との合流が容易に行えるものが入っているかもしれない。 そんな、甘い考えを抱きながらデイバックを漁っていたデネブは遂に支給品を探し当てる。 同封されていた説明書を手に取り、熱心にデネブは読み始めた。 「ふむふむ……お、おおおぉ! こ!これはぁ!?」 両手で掴み、デネブは真っ暗な空に向けて探し当てた支給品を掲げる。 その動作、声質からしてさも嬉しそうな様子を醸し出すデネブ。 そう。実際デネブはとても嬉しがっていた。 この支給品なら直ぐにでも、侑斗と合流できる可能性がある。 いや、出来なかったとしても侑斗にとってプラスな事には間違いないだろう。 そんな事をデネブは満足げに確信していたから。 ◇  ◆  ◇ 「はぁ、はぁ、やっと着いた」 依然、両の脚をせわしなく動かし、走り続けるデネブ。 デネブが行う呼吸はかなり荒い。 恐らく、ここに来るまでかなりの速度で走り続けていたのだろう。 心なしかデネブに疲労の色がうっすらと見える程だ。 だが、デネブは立ち止まろうとはしない。 そのまま、目的の場所へ、下の景色がよく見下ろせる場所までデネブは自らの歩を進め続ける。 「よし! ここなら大丈夫だ!」 一旦立ち止まり、デネブは大声を上げる。 そんなデネブが居る場所はかなり高さがあるように見える。 ここから落ちる事になれば、死ぬ事はなさそうだが怪我は免れないだろう。 だが、デネブが浮かぶ表情は果てしなく明るい。 そう。デネブはとても喜んでいたので当然だ。 何故なら、デネブはここである事を行おうと思い、そのためにやってきたのだから。 ふと、デイパックを再び漁り始めるデネブ。 勿論、ほどなくしてデネブの両腕には先程確認した支給品が握られる事になった。 その支給品を右腕に持ち替え、デネブはそれを自分の口元に持っていき―― 「こんな夜遅くに申し訳ない! 」 大声を上げて、デネブは地上に向かって話を始めた。 「う~ん、ちゃんと聞こえてるかな? 聞こえてなかったらどうしよう……。 まぁいいか! あ、失礼失礼。申し訳ない」 その声の大きさは今までのデネブのそれに較べて格段に大きい。 答えはデネブが今現在、自分の口元に持ってきているものが示している。 デネブの支給品は音を拡張する機能を持つ物。 「俺の名前はデネブと言います! ほんの少しだけで良いから、俺の話を聞いて欲しい! ちょっとうるさいかもしれないけど、それは謝る。ごめん!」 そう。いうまでもなく拡声器であった。 デネブの大声が周囲に響き、そして木霊する。 そしてデネブは依然、喋り続ける。 「という事で皆、桜井侑斗という男の子を知らないか!? もし、これから侑斗に会った時は、デネブが此処で……エリアA-7で待っていると伝えて欲しい! ぶしつけなお願いだけど、どうかお願いします!!」 デネブは拡声器を使う事で侑斗の名前を出す事に決めた。 狙いは勿論、侑斗との合流を早める事。 拡声器を使う事では勿論、自分の声の響きやすさは変わるが声質事態が変わる事はない。 そのため、自分の声がもし侑斗の元へ届けばきっと真っ先に駆けつけてくれるだろう。 そして、デネブには未だ目的はあった。 「あ、そうだ。あと、侑斗のコトだけど……えーと、うーっと、ど、どう言えばいいのかな!? 椎茸が食べれなくて、いつも俺は侑斗にどうにか椎茸を食べてもらおうと細かく刻んだり、つくねの中に入れて頑張って……いや? これは関係ないかも。 兎に角、侑斗に会う時は注意してくれ!」 それは侑斗の事を他の参加者に知らせる事。 自分がいう桜井侑斗なる人物が、他の参加者にわからなければどうしようもないからだ。 だが、いざ侑斗の特徴を言う機会になって急にしどろもどろし始めるデネブ。 実の所、自分が話す内容はしっかりと考えずにデネブは行動を決行していた。 只、一刻も早く侑斗と合流しよう。 その強い思いのあまり、現在のデネブはあまり冷静な状態であるとはいえない。 兎に角、何も言わないのは不味いと思い、デネブは話を続ける。 「侑斗はとっても――――――お! おわぁ!? だ!誰!?モ、モガモガ…………」 『侑斗はとっても素直ではないので、侑斗が酷い事を言っても気を悪くしないで接して欲しい』。 そんな事を未だ知らぬ参加者にご丁寧にも伝えようとするデネブ。 だが、急にデネブの様子は一変し、彼の話は終わりを告げる。 それは何故か? 拡声器を思わず足元に落とし、必死に身体を動かそうと、声を出そうと悪戦苦闘するデネブ。 だが、後からがっちりといつの間にか近寄ってきた何者かに、身体を押さえられ、上手く行えない。 更にご丁寧な事に声が出ないように口元を手で押さえつけられている。 思わずデネブの身体に緊張が走る。 これからこの顔も名前も知らない人に自分は何をされるのだろうか? そんな事に思考を寄せていたデネブにふと誰かの声が響く。 「落ち着け! 俺は味方だ!」 声質からして、侑斗より年上、20代くらいといった青年がデネブに叫ぶ。 よく状況が掴めないが、どうやら先方は自分に用があるらしい事をデネブは焦りながら悟る。 「俺は加賀美新! 頼む、俺の話を聞いてくれ!」 加賀美新。 自分に話しかけた青年の名が加賀美新という名前である事を、デネブはようやく知る事になった。 ◇  ◆  ◇ 「そうか~確かに俺の行動は危険だったかもしれない。 いや~ありがとう~~~加賀美~! お前は優しい! お前のような人と出会えて俺はほんとーに嬉しい!!」 「いや、俺の方こそ手荒な真似をして悪かったよ、デネブ。 だからそれ以上、謝るなって! 別に俺は大した事はしていないから」 デネブと加賀美が腰を下ろし、互いに向き合い、話をしている。 簡潔に自己紹介は済ませており、互いの名前くらいはお互いもう知っている。 正座をしながら何度も何度も頭を下げるデネブ。 それは加賀美がデネブに拡声器による呼びかけを中断させた行為に対してのものだ。 この殺し合いにはどんな参加者が集められているかはわからない。 そもそも、殺し合いをさせようという目的で自分達は集められたのだ。 スマートブレインという奴らが、人を殺す事に快感を覚えるような凶暴な参加者をこの殺し合いに呼んでいてもおかしくはない。 そんな参加者が先程のデネブの声を聞いたらどうするか? きっと、良い獲物が居たとでも思い、デネブを襲いにくるかもしれない。 そのため、加賀美はデネブにあまり目立つような事はしないように説得し、デネブは彼の話に納得した。 元より、少し混乱気味だったデネブは加賀美に押さえつけられた事で、幸運にも少し落ち着く事も出来ている。 そのため、案外すんなりと加賀美の話に納得し、今はこうして加賀美にお礼を述べているといった感じだ。 依然、何度も頭を上げ下げしているデネブに、加賀美が立ち上がりながら彼に制止を呼びかける。 しかし、それでもデネブは一向にやめようとはしない。 やがて、数十秒が過ぎた後、やっとデネブはお辞儀を止め、ふと思い出したように口を開く。 「しかし、不思議だなぁ……ワームもZECTもマスクドライダーシステムもハイパーゼクターっていうのも聞いたコトない。 特にそのハイパーゼクターはそんなに凄いのに全く知らないぞぉ……。 それと、何より加賀美はこんなかわいい鍬形虫で変身できるなんて……。 おわぁ! ガタックゼクターが飛んだ!! お~い、戻って来て……イタタタタ! 頭をつつかないでくれ~~~結構痛いからやめてくれ~~~~~」 デネブと加賀美は既に互いの名前、知り合い、自分達の事について話し合っている。 そのため加賀美からワーム、ZECT、マスクドライダーシステム、ハイパーゼクターそして彼がガタックゼクターで変身を行える事を知った。 必要以上に相手を疑わない二人の性格も関係していたのだろう。 情報交換は驚くほどスムーズにいき、またデネブは加賀美にガタックゼクターを暫し抱かせて貰っていた。 勿論、先程のとてつもなく長いお辞儀の間も、デネブはずっとガタックゼクターを両手で握り締めていた。 ガッチリとデネブの無駄にゴツイ両手に長い間挟まれていたガタックゼクター。 お辞儀を止め、少し気と力が緩んだデネブ。 その隙をガタックゼクターは見逃すわけもなく、羽を羽ばたかせる駆動音を撒き散らし、一目散に上空へ飛翔。 今まで散々自分に苦渋を舐めさせてくれた、にっくきデネブに対し、ガタックゼクターが逞しいホーンで攻撃している。 思わず立ち上がり、頭を両手で隠し、その攻撃から慌てながら逃げ回るデネブ。 その様子を見て、加賀美は少し呆れ顔を浮かべ、笑い声を上げる。 「こっちもイマジンだとか、時の運行とか、ゼロライナーなんて知らないぜ。 それにその死んだはずの牙王ってヤツも気になるけど……まぁ、それは今考えても仕方ないさ。 それよりも……」 また、当然加賀美もデネブから彼の事について聞いた。 イマジン、時の運行、ゼロライナー等加賀美には全く覚えなどない。 デネブがそのイマジンの一人とわかったがいまいちイマジンがなんたるかを良く理解出来ていない加賀美。 だが、加賀美はあまり物事を深く考えるのは苦手の方で、考える暇があれば行動を決行するタイプ。 今もデネブの周りを飛び回るガタックゼクターを呼び戻し、加賀美はこれからの行動について思考を走らせる。 (それよりも今、俺がやるコトは……) 加賀美の脳裏に移るのは自分達に殺し合いをしろと言った二人の男女。 スマートブレインという聞いた事もない会社の人間と言っていた名も知らない女性、そして責任者と思われる村上峡児。 彼らは言っていた。 どんな奇跡でも、死者ですらも蘇らせる事が出来ると。 彼らの言葉が本当かどうかはわからないが、実際にデネブの話からすると牙王という男は確かに死に、そして名簿に載っていたという。 自分をいつの間にかあの会場に拉致した事も考えると、死者の蘇生も出来る程の技術力はあってもおかしくないかもしれない。 まさかとは思いたいが彼らの言葉を聞いて、褒美に釣られた参加者も少なからずいるだろう。 勿論、加賀美には彼らが言っていた褒美などには、スマートブレインの特別顧問という地位には興味はない。 他の人を殺してまで手に入れる価値などないから。 加賀美は己の欲望を叶えるために、力を――『戦いの神』と謳われる力を求めたわけではないからだ。 ガタックゼクターを呼び戻し、右手に収まったそれに視線を向け、加賀美は思う。 (あのスマートブレインを叩き潰す事だ……!もうあいつらは既に二人の人を殺した……、お前達は俺が絶対に許さない! 力のない人達を守り、天道達やデネブの仲間達と合流する。 そしてあいつらを倒す……これが、今、俺がやるべきコトのハズだ!) 先程、変身し、スマートブレインに立ち向かい、そして灰となって殺された二人の男女。 自分達、ZECT製のマスクドライダーシステム以外にもあんな変身機能があった事に加賀美は驚いたが、問題はそこではない。 重要なのは彼らが理不尽にもスマートブレインに殺された事。 あの凄惨な映像を見て、加賀美の決意は更に強まった。 一刻も早く、スマートブレインを叩き潰し、此処から脱出しなければならない。 勿論、殺し合いを望まない人々は一人でも保護する事も忘れずに。 だが、そのためには仲間が必要なのも事実。 配られた名簿を見て、自分の知り合い、天道総司、風間大介、影山瞬の三人を確認した加賀美。 影山とははっきりいって良好な関係ではないが、この状況ではきっと向こうも対立する気はないだろう。 恐らく協力を頼めそうなこの三人と合流を目的に加賀美はエリアA-7を探索していた。 そんな時、先程のデネブの声を聞き、何事かと思い、デネブに接触した。 一見人間ではなく、かといってワームのように生物的でもないデネブ。 異質とも言えるデネブの風貌に加賀美は少し接触を躊躇ったが、彼を見過ごすわけにもいかず、結局は接触。 結果的にデネブとのコンタクトは成功し、同行する事になったのは良い収穫だっただろう。 やがて、意を決したように加賀美は立ち上がり、ガタックゼクターの猛攻を逃れたデネブに声を掛ける。 「取り敢えず今は此処から離れるぜ、デネブ! 俺達の知り合い以外にもきっとこんなふざけた事に我慢できない人は居る! 一刻も早く、その人達と合流しよう!」 侑斗が先程のデネブの放送を聞き、此方へ来る可能性もあるかもしれない。 しかし、拡声器を使ったといっても、デネブが発する声がエリア全域にも届くわけなく、侑斗に先程の放送が伝わった可能性は恐らく低いだろう。 それに先程加賀美が考えたように危険人物がデネブを狙い、此処を襲撃する可能性もある。 よって加賀美は一先ず、此処は離れ、場所を変える事を考えた。 既にデネブの知り合いの名前は教えてもらっている。 その中でも桜井侑斗なる人物は特にデネブと仲が良いらしい。 侑斗の名前を深く心に留め、加賀美はデネブに手を差し伸べる。 「おお! 了解、加賀美! 一緒に頑張ろう!!」 差し伸べられた手に気づき、デネブが大声を上げながら加賀美に応える。 デネブも加賀美に悪い印象などはない。 また、碌に人を疑う事も知らないデネブは加賀美の手をしっかりと握り締め、彼に近寄る。 加賀美の間近で、彼の両眼を真っ直ぐ見つめるデネブ。 改めて見ると身長は加賀美よりも大きいデネブに、加賀美はいいようのない頼りがいを覚えた。 今までの言動からすると加賀美には、ちょっと抜けている感じはあるが、デネブが悪い人物には見えない。 (俺は運が良いな。デネブはどうやら頼りになる……この調子で仲間を集めていけば、絶対にスマートブレインを倒せる!) 初めて出会った参加者がデネブのような人物で、加賀美は己の幸運さをかみ締める。 心の中で希望という灯火を一段と燃やし、加賀美は大空に広がる暗い空に視線を滑らせる。 どこまでも続いていきそうで、果てしなく暗く、今にも吸い込まれそうな漆黒の空。 その大空を見て、お世辞にも気分が良くなるとは言えないだろう。 だが、その大空を見る事で加賀美の気が滅入る事はない。 何故なら、加賀美にはデネブという仲間が居るから。 「あ、そうだ。ちょっと待ってくれ、加賀美」 「? どうした?」 そう。何か言い忘れた事があるらしく、ごそごそと腹の辺りから――腹巻から何かを探しているデネブが居るからだ。 「えーと、確かここに……お! あったあった!!」 自分と同じくこの殺し合いに反発し、自分と共に闘うと決意したデネブが。 「はい! お近づきの印にデネブキャンディーだ! これからもよろしく♪」 「あ、ああ……ありがとう…………」 デネブが……居るから…………。 **状態表 【デネブ@仮面ライダー電王】 【1日目 深夜】 【現在地:少し大きな山の上A-7】 [時間軸]:28話開始時辺り(牙王戦終了辺り) [状態]:健康。 [装備]:拡声器 [道具]:基本支給品一式 不明支給品(未確認)0~2個 [思考・状況] 1:侑斗と合流し、この殺し合いを止め、スマートブレインを倒す。 2:一時此処を離れ、加賀美と共に行動する。 3:天道総司、風間大介、影山瞬、桜井侑斗、モモタロス、ハナ、そしてこの殺し合いに反発する仲間との合流。また、牙王に警戒。 4: 牙王の名前がある事に疑問 [備考] ※デネブの声は恐らく周囲一エリアに届いたと思われますが具体的な範囲は不明です ※能力発動時以外は指からは一切の銃弾類は出せません。また、その事に気づいていません ※これから具体的に何処へ行くかは後の方にお任せします。 ※デネブキャンディーは何故かスマートブレインに没収されませんでした。 【加賀美新@仮面ライダーカブト】 【1日目 深夜】 【現在地:少し大きな山の上A-7】 [時間軸]:34話終了後辺り [状態]:健康。 [装備]:ガタックゼクター、ライダーベルト(ガタック) [道具]:基本支給品一式 不明支給品(確認済み)1~3個。 [思考・状況] 1:この殺し合いを止め、スマートブレインを倒す 2:一時此処を離れ、デネブと共に行動する。 3:天道総司、風間大介、影山瞬、桜井侑斗、モモタロス、ハナ、そしてこの殺し合いに反発する仲間との合流。 また、牙王に警戒 4:天道総司、桜井侑斗との合流を特に心掛ける。 [備考] ※これから具体的に何処へ行くかは後の方にお任せします。 |007:[[流されやすい者達]]|投下順|009:[[それが仕事な人たち]]| |007:[[流されやすい者達]]|時系列順|009:[[それが仕事な人たち]]| ||[[デネブ]]|000:[[後の作品]]| ||[[加賀美新]]|000:[[後の作品]]|
*Action-DENEB エリアA-7の山岳部を走る人影が一つ。 人影は辺りをキョロキョロと見回しながら、乾いた大地を蹴り、走り回る。 現在の時刻は深夜、少し肌寒い風が吹きあれ、太陽は沈み、辺りはすっかりと暗くなっている。 また、その人影もまた漆黒の色を帯び、周囲の色に同化していた。 人影の名はデネブ。 どことなく武蔵坊弁慶のような出で立ちで黒を基調としたボディ、カラスを連想させるような金色の顔を持った者だ。 勿論、デネブは人間ではない。 西暦2007年の世界にやって来た遠い未来の世界の住人、イマジンの一人。 イマジンは契約した人間の一番大事な思い出が眠る時代へ飛び、その歴史を改変する。 そして歴史を改変する事で過去と自分達の世界を繋げ、自分達に都合の良い世界を構築する事。 それがイマジンの目的であり、最優先事項。 だが、デネブにはそんな目的はない。 「侑斗~? どこに居るんだ!? 侑斗~~~?」 デネブはイマジンを束ねる存在、カイに対し反抗を行った一人の男に共感し、カイを裏切り、彼に協力する事を決めた。 その男の名は桜井、桜井侑斗。 桜井と契約したデネブは彼の頼みで、ゼロライナーという時代を駆ける列車に乗り、過去の時代へ跳んだ。 目的は過去の桜井侑斗と契約し、彼と共にイマジンの侵攻を止める事。 便宜上、本来の世界の桜井侑斗を桜井と呼び、過去の桜井侑斗を侑斗と呼んでいたデネブ。 そしてデネブは侑斗と共に迫り来るイマジンに対し、闘い続けた。 あるときは侑斗と肩を並べ闘い、またある時は侑斗と一体化し、デネブは闘った。 更にその闘いは未だ続いていた筈――――であった。 「はぁ、はぁ……ふぅ疲れた、ちょっと休憩。 確か、夕食を作ってたところだったんだけど、可笑しいな~~~? ここは一体……」 だが、今、デネブが直面している現実は違う。 突然、見知らぬ部屋で眼を覚ましたかと思うと、二人の男女が殺し合いを行えと言い、得体の知れないガスによって気を失った。 そして気がついてみればこんな見たこともない島に取り残され、眼に入ってきたのは悪趣味な映像。 まるで電王やゼロノスのように変身を行った二人の男女が破れ、灰となり地へ還っていく衝撃的な内容。 デネブにとって二人は見知らぬ人間ではあるが、彼ら二人がもうこの世には存在しない事には心を痛め、黙祷を行った。 そして、デネブはある決意を固めた。 それは絶対にこの殺し合いには乗らず、スマートブレイン社という組織の野望を潰す事。 デネブは必要以上に闘いを、ましてや命の取り合いなど当然したくはない。 また、スマートブレインという会社に入社など、デネブが望むものとは程遠い。 デネブが望むものは侑斗と共に闘い、時の運行を守る事。 その目的を、使命といっていいものを為すためにはここから脱出しなければならない。 そのためにデネブは行動を開始した。 先程、支給されたデイパックから名簿を取り出し、先ずは知り合いが居ないかと確認したデネブ。 其処に記されていた名前の中でデネブが知っている名前は彼自身のものを含めて、五つ。 信用できる名前は桜井侑斗、モモタロス、ハナの三人。 取り敢えずこの三人、特に侑斗との合流を達成するためにデネブは駆け出していた。 現在は一旦立ち止まり、少し息を激しくさせながら道端に座り込むデネブ。 だが、デネブにはどうしても解決できない疑問があった。 「しかし……なんで、この人の名前があるんだろうな……。 うぅん、全然わからない……」 両腕で頭を抱え込み、デネブは真剣に悩む。 自分が何故こんな場所にいるかという問題も勿論、わからない。 更にデネブは名簿に記された名前から、余計に謎を見つける羽目となっていた。 デネブの疑問の種となっている名前。 それは牙王という名前が名簿に存在している事について。 以前、デンライナーを奪い、神の路線を狙った牙王。 そんな牙王は既に侑斗の友達、野上良太郎こと電王によって倒されたはずである。 だが、先程デネブが確認した携帯の名簿にはしっかりと彼の名が記されており、もう一度確認してもやはり記載されていた。 これはどういうことなのだろう? もしや、牙王が生きていたのだろうか? 只でさえこんな所に連れて来られ、混乱気味だったデネブには全く見当が付かない。 「そ、それよりも今は侑斗との合流が先だ! ん? そういえば……」 頭をブンブンと振り、余計な事は考えずに今は侑斗との合流を目指そうと立ち上がるデネブ。 だが、デネブはふと何かを思い出したかのように動きを止めた。 やがてデネブはある方向へ視線を向ける。 デネブの視線が向かう先は彼が肩に担いでいた何も変哲のないデイバック。 もう一度腰を落とし、デネブは礼儀正しく地に正座し、デイバックをそそくさと漁り始める。 「確か、あの女の人はこの中に役に立つものが入っていると言ってたなぁ……」 この殺し合いのために、参加者にランダムで配られたと思われしき支給品。 デネブはその支給品の存在を思い出し、確認を行っておこうと考えた。 もしかすればバイクのように侑斗との合流が容易に行えるものが入っているかもしれない。 そんな、甘い考えを抱きながらデイバックを漁っていたデネブは遂に支給品を探し当てる。 同封されていた説明書を手に取り、熱心にデネブは読み始めた。 「ふむふむ……お、おおおぉ! こ!これはぁ!?」 両手で掴み、デネブは真っ暗な空に向けて探し当てた支給品を掲げる。 その動作、声質からしてさも嬉しそうな様子を醸し出すデネブ。 そう。実際デネブはとても嬉しがっていた。 この支給品なら直ぐにでも、侑斗と合流できる可能性がある。 いや、出来なかったとしても侑斗にとってプラスな事には間違いないだろう。 そんな事をデネブは満足げに確信していたから。 ◇  ◆  ◇ 「はぁ、はぁ、やっと着いた」 依然、両の脚をせわしなく動かし、走り続けるデネブ。 デネブが行う呼吸はかなり荒い。 恐らく、ここに来るまでかなりの速度で走り続けていたのだろう。 心なしかデネブに疲労の色がうっすらと見える程だ。 だが、デネブは立ち止まろうとはしない。 そのまま、目的の場所へ、下の景色がよく見下ろせる場所までデネブは自らの歩を進め続ける。 「よし! ここなら大丈夫だ!」 一旦立ち止まり、デネブは大声を上げる。 そんなデネブが居る場所はかなり高さがあるように見える。 ここから落ちる事になれば、死ぬ事はなさそうだが怪我は免れないだろう。 だが、デネブが浮かぶ表情は果てしなく明るい。 そう。デネブはとても喜んでいたので当然だ。 何故なら、デネブはここである事を行おうと思い、そのためにやってきたのだから。 ふと、デイパックを再び漁り始めるデネブ。 勿論、ほどなくしてデネブの両腕には先程確認した支給品が握られる事になった。 その支給品を右腕に持ち替え、デネブはそれを自分の口元に持っていき―― 「こんな夜遅くに申し訳ない! 」 大声を上げて、デネブは地上に向かって話を始めた。 「う~ん、ちゃんと聞こえてるかな? 聞こえてなかったらどうしよう……。 まぁいいか! あ、失礼失礼。申し訳ない」 その声の大きさは今までのデネブのそれに較べて格段に大きい。 答えはデネブが今現在、自分の口元に持ってきているものが示している。 デネブの支給品は音を拡張する機能を持つ物。 「俺の名前はデネブと言います! ほんの少しだけで良いから、俺の話を聞いて欲しい! ちょっとうるさいかもしれないけど、それは謝る。ごめん!」 そう。いうまでもなく拡声器であった。 デネブの大声が周囲に響き、そして木霊する。 そしてデネブは依然、喋り続ける。 「という事で皆、桜井侑斗という男の子を知らないか!? もし、これから侑斗に会った時は、デネブが此処で……エリアA-7で待っていると伝えて欲しい! ぶしつけなお願いだけど、どうかお願いします!!」 デネブは拡声器を使う事で侑斗の名前を出す事に決めた。 狙いは勿論、侑斗との合流を早める事。 拡声器を使う事では勿論、自分の声の響きやすさは変わるが声質事態が変わる事はない。 そのため、自分の声がもし侑斗の元へ届けばきっと真っ先に駆けつけてくれるだろう。 そして、デネブには未だ目的はあった。 「あ、そうだ。あと、侑斗のコトだけど……えーと、うーっと、ど、どう言えばいいのかな!? 椎茸が食べれなくて、いつも俺は侑斗にどうにか椎茸を食べてもらおうと細かく刻んだり、つくねの中に入れて頑張って……いや? これは関係ないかも。 兎に角、侑斗に会う時は注意してくれ!」 それは侑斗の事を他の参加者に知らせる事。 自分がいう桜井侑斗なる人物が、他の参加者にわからなければどうしようもないからだ。 だが、いざ侑斗の特徴を言う機会になって急にしどろもどろし始めるデネブ。 実の所、自分が話す内容はしっかりと考えずにデネブは行動を決行していた。 只、一刻も早く侑斗と合流しよう。 その強い思いのあまり、現在のデネブはあまり冷静な状態であるとはいえない。 兎に角、何も言わないのは不味いと思い、デネブは話を続ける。 「侑斗はとっても――――――お! おわぁ!? だ!誰!?モ、モガモガ…………」 『侑斗はとっても素直ではないので、侑斗が酷い事を言っても気を悪くしないで接して欲しい』。 そんな事を未だ知らぬ参加者にご丁寧にも伝えようとするデネブ。 だが、急にデネブの様子は一変し、彼の話は終わりを告げる。 それは何故か? 拡声器を思わず足元に落とし、必死に身体を動かそうと、声を出そうと悪戦苦闘するデネブ。 だが、後からがっちりといつの間にか近寄ってきた何者かに、身体を押さえられ、上手く行えない。 更にご丁寧な事に声が出ないように口元を手で押さえつけられている。 思わずデネブの身体に緊張が走る。 これからこの顔も名前も知らない人に自分は何をされるのだろうか? そんな事に思考を寄せていたデネブにふと誰かの声が響く。 「落ち着け! 俺は味方だ!」 声質からして、侑斗より年上、20代くらいといった青年がデネブに叫ぶ。 よく状況が掴めないが、どうやら先方は自分に用があるらしい事をデネブは焦りながら悟る。 「俺は加賀美新! 頼む、俺の話を聞いてくれ!」 加賀美新。 自分に話しかけた青年の名が加賀美新という名前である事を、デネブはようやく知る事になった。 ◇  ◆  ◇ 「そうか~確かに俺の行動は危険だったかもしれない。 いや~ありがとう~~~加賀美~! お前は優しい! お前のような人と出会えて俺はほんとーに嬉しい!!」 「いや、俺の方こそ手荒な真似をして悪かったよ、デネブ。 だからそれ以上、謝るなって! 別に俺は大した事はしていないから」 デネブと加賀美が腰を下ろし、互いに向き合い、話をしている。 簡潔に自己紹介は済ませており、互いの名前くらいはお互いもう知っている。 正座をしながら何度も何度も頭を下げるデネブ。 それは加賀美がデネブに拡声器による呼びかけを中断させた行為に対してのものだ。 この殺し合いにはどんな参加者が集められているかはわからない。 そもそも、殺し合いをさせようという目的で自分達は集められたのだ。 スマートブレインという奴らが、人を殺す事に快感を覚えるような凶暴な参加者をこの殺し合いに呼んでいてもおかしくはない。 そんな参加者が先程のデネブの声を聞いたらどうするか? きっと、良い獲物が居たとでも思い、デネブを襲いにくるかもしれない。 そのため、加賀美はデネブにあまり目立つような事はしないように説得し、デネブは彼の話に納得した。 元より、少し混乱気味だったデネブは加賀美に押さえつけられた事で、幸運にも少し落ち着く事も出来ている。 そのため、案外すんなりと加賀美の話に納得し、今はこうして加賀美にお礼を述べているといった感じだ。 依然、何度も頭を上げ下げしているデネブに、加賀美が立ち上がりながら彼に制止を呼びかける。 しかし、それでもデネブは一向にやめようとはしない。 やがて、数十秒が過ぎた後、やっとデネブはお辞儀を止め、ふと思い出したように口を開く。 「しかし、不思議だなぁ……ワームもZECTもマスクドライダーシステムもハイパーゼクターっていうのも聞いたコトない。 特にそのハイパーゼクターはそんなに凄いのに全く知らないぞぉ……。 それと、何より加賀美はこんなかわいい鍬形虫で変身できるなんて……。 おわぁ! ガタックゼクターが飛んだ!! お~い、戻って来て……イタタタタ! 頭をつつかないでくれ~~~結構痛いからやめてくれ~~~~~」 デネブと加賀美は既に互いの名前、知り合い、自分達の事について話し合っている。 そのため加賀美からワーム、ZECT、マスクドライダーシステム、ハイパーゼクターそして彼がガタックゼクターで変身を行える事を知った。 必要以上に相手を疑わない二人の性格も関係していたのだろう。 情報交換は驚くほどスムーズにいき、またデネブは加賀美にガタックゼクターを暫し抱かせて貰っていた。 勿論、先程のとてつもなく長いお辞儀の間も、デネブはずっとガタックゼクターを両手で握り締めていた。 ガッチリとデネブの無駄にゴツイ両手に長い間挟まれていたガタックゼクター。 お辞儀を止め、少し気と力が緩んだデネブ。 その隙をガタックゼクターは見逃すわけもなく、羽を羽ばたかせる駆動音を撒き散らし、一目散に上空へ飛翔。 今まで散々自分に苦渋を舐めさせてくれた、にっくきデネブに対し、ガタックゼクターが逞しいホーンで攻撃している。 思わず立ち上がり、頭を両手で隠し、その攻撃から慌てながら逃げ回るデネブ。 その様子を見て、加賀美は少し呆れ顔を浮かべ、笑い声を上げる。 「こっちもイマジンだとか、時の運行とか、ゼロライナーなんて知らないぜ。 それにその死んだはずの牙王ってヤツも気になるけど……まぁ、それは今考えても仕方ないさ。 それよりも……」 また、当然加賀美もデネブから彼の事について聞いた。 イマジン、時の運行、ゼロライナー等加賀美には全く覚えなどない。 デネブがそのイマジンの一人とわかったがいまいちイマジンがなんたるかを良く理解出来ていない加賀美。 だが、加賀美はあまり物事を深く考えるのは苦手の方で、考える暇があれば行動を決行するタイプ。 今もデネブの周りを飛び回るガタックゼクターを呼び戻し、加賀美はこれからの行動について思考を走らせる。 (それよりも今、俺がやるコトは……) 加賀美の脳裏に移るのは自分達に殺し合いをしろと言った二人の男女。 スマートブレインという聞いた事もない会社の人間と言っていた名も知らない女性、そして責任者と思われる村上峡児。 彼らは言っていた。 どんな奇跡でも、死者ですらも蘇らせる事が出来ると。 彼らの言葉が本当かどうかはわからないが、実際にデネブの話からすると牙王という男は確かに死に、そして名簿に載っていたという。 自分をいつの間にかあの会場に拉致した事も考えると、死者の蘇生も出来る程の技術力はあってもおかしくないかもしれない。 まさかとは思いたいが彼らの言葉を聞いて、褒美に釣られた参加者も少なからずいるだろう。 勿論、加賀美には彼らが言っていた褒美などには、スマートブレインの特別顧問という地位には興味はない。 他の人を殺してまで手に入れる価値などないから。 加賀美は己の欲望を叶えるために、力を――『戦いの神』と謳われる力を求めたわけではないからだ。 ガタックゼクターを呼び戻し、右手に収まったそれに視線を向け、加賀美は思う。 (あのスマートブレインを叩き潰す事だ……!もうあいつらは既に二人の人を殺した……、お前達は俺が絶対に許さない! 力のない人達を守り、天道達やデネブの仲間達と合流する。 そしてあいつらを倒す……これが、今、俺がやるべきコトのハズだ!) 先程、変身し、スマートブレインに立ち向かい、そして灰となって殺された二人の男女。 自分達、ZECT製のマスクドライダーシステム以外にもあんな変身機能があった事に加賀美は驚いたが、問題はそこではない。 重要なのは彼らが理不尽にもスマートブレインに殺された事。 あの凄惨な映像を見て、加賀美の決意は更に強まった。 一刻も早く、スマートブレインを叩き潰し、此処から脱出しなければならない。 勿論、殺し合いを望まない人々は一人でも保護する事も忘れずに。 だが、そのためには仲間が必要なのも事実。 配られた名簿を見て、自分の知り合い、天道総司、風間大介、影山瞬の三人を確認した加賀美。 影山とははっきりいって良好な関係ではないが、この状況ではきっと向こうも対立する気はないだろう。 恐らく協力を頼めそうなこの三人と合流を目的に加賀美はエリアA-7を探索していた。 そんな時、先程のデネブの声を聞き、何事かと思い、デネブに接触した。 一見人間ではなく、かといってワームのように生物的でもないデネブ。 異質とも言えるデネブの風貌に加賀美は少し接触を躊躇ったが、彼を見過ごすわけにもいかず、結局は接触。 結果的にデネブとのコンタクトは成功し、同行する事になったのは良い収穫だっただろう。 やがて、意を決したように加賀美は立ち上がり、ガタックゼクターの猛攻を逃れたデネブに声を掛ける。 「取り敢えず今は此処から離れるぜ、デネブ! 俺達の知り合い以外にもきっとこんなふざけた事に我慢できない人は居る! 一刻も早く、その人達と合流しよう!」 侑斗が先程のデネブの放送を聞き、此方へ来る可能性もあるかもしれない。 しかし、拡声器を使ったといっても、デネブが発する声がエリア全域にも届くわけなく、侑斗に先程の放送が伝わった可能性は恐らく低いだろう。 それに先程加賀美が考えたように危険人物がデネブを狙い、此処を襲撃する可能性もある。 よって加賀美は一先ず、此処は離れ、場所を変える事を考えた。 既にデネブの知り合いの名前は教えてもらっている。 その中でも桜井侑斗なる人物は特にデネブと仲が良いらしい。 侑斗の名前を深く心に留め、加賀美はデネブに手を差し伸べる。 「おお! 了解、加賀美! 一緒に頑張ろう!!」 差し伸べられた手に気づき、デネブが大声を上げながら加賀美に応える。 デネブも加賀美に悪い印象などはない。 また、碌に人を疑う事も知らないデネブは加賀美の手をしっかりと握り締め、彼に近寄る。 加賀美の間近で、彼の両眼を真っ直ぐ見つめるデネブ。 改めて見ると身長は加賀美よりも大きいデネブに、加賀美はいいようのない頼りがいを覚えた。 今までの言動からすると加賀美には、ちょっと抜けている感じはあるが、デネブが悪い人物には見えない。 (俺は運が良いな。デネブはどうやら頼りになる……この調子で仲間を集めていけば、絶対にスマートブレインを倒せる!) 初めて出会った参加者がデネブのような人物で、加賀美は己の幸運さをかみ締める。 心の中で希望という灯火を一段と燃やし、加賀美は大空に広がる暗い空に視線を滑らせる。 どこまでも続いていきそうで、果てしなく暗く、今にも吸い込まれそうな漆黒の空。 その大空を見て、お世辞にも気分が良くなるとは言えないだろう。 だが、その大空を見る事で加賀美の気が滅入る事はない。 何故なら、加賀美にはデネブという仲間が居るから。 「あ、そうだ。ちょっと待ってくれ、加賀美」 「? どうした?」 そう。何か言い忘れた事があるらしく、ごそごそと腹の辺りから――腹巻から何かを探しているデネブが居るからだ。 「えーと、確かここに……お! あったあった!!」 自分と同じくこの殺し合いに反発し、自分と共に闘うと決意したデネブが。 「はい! お近づきの印にデネブキャンディーだ! これからもよろしく♪」 「あ、ああ……ありがとう…………」 デネブが……居るから…………。 **状態表 【デネブ@仮面ライダー電王】 【1日目 深夜】 【現在地:少し大きな山の上A-7】 [時間軸]:28話開始時辺り(牙王戦終了辺り) [状態]:健康。 [装備]:拡声器 [道具]:基本支給品一式 不明支給品(未確認)0~2個 [思考・状況] 1:侑斗と合流し、この殺し合いを止め、スマートブレインを倒す。 2:一時此処を離れ、加賀美と共に行動する。 3:天道総司、風間大介、影山瞬、桜井侑斗、モモタロス、ハナ、そしてこの殺し合いに反発する仲間との合流。また、牙王に警戒。 4: 牙王の名前がある事に疑問 [備考] ※デネブの声は恐らく周囲一エリアに届いたと思われますが具体的な範囲は不明です ※能力発動時以外は指からは一切の銃弾類は出せません。また、その事に気づいていません ※これから具体的に何処へ行くかは後の方にお任せします。 ※デネブキャンディーは何故かスマートブレインに没収されませんでした。 【加賀美新@仮面ライダーカブト】 【1日目 深夜】 【現在地:少し大きな山の上A-7】 [時間軸]:34話終了後辺り [状態]:健康。 [装備]:ガタックゼクター、ライダーベルト(ガタック) [道具]:基本支給品一式 不明支給品(確認済み)1~3個。 [思考・状況] 1:この殺し合いを止め、スマートブレインを倒す 2:一時此処を離れ、デネブと共に行動する。 3:天道総司、風間大介、影山瞬、桜井侑斗、モモタロス、ハナ、そしてこの殺し合いに反発する仲間との合流。 また、牙王に警戒 4:天道総司、桜井侑斗との合流を特に心掛ける。 [備考] ※これから具体的に何処へ行くかは後の方にお任せします。 |007:[[流されやすい者達]]|投下順|009:[[それが仕事な人たち]]| |007:[[流されやすい者達]]|時系列順|009:[[それが仕事な人たち]]| ||[[デネブ]]|033:[[ワインディング・ロード]]| ||[[加賀美新]]|033:[[ワインディング・ロード]]|

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