歪んでいる時間の道

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歪んでいる時間の道


優れた軍人であることは、必ずしもこの戦場で生き残ることを意味しない。
彼は組織の中で生きることに適応していた。
逆に言えば、組織が無くなった時、彼は…どう、行動するのだろう。

あの船の中で何が行われているのか、彼は全く知らなかった。
胸ポケットに入れられた小さな小箱がけたたましく鳴っているのはわかったが、
彼はそれが何なのかわからなかった。それが「開く」ということさえ。
従って、彼はスマートレディの放送を『聞いていた』に過ぎない。

ゾル大佐‐彼は『軍人』である。
ショッカーという組織の『歯車』の中で生きることに適応した『部品』である。
従って、彼は「指揮系統」を必要としている。

今、彼には「指揮系統」がない。それが彼を、何よりも怯えさせている。
少なくとも、何人か「部下」が必要である。そして、「行動原理」も。

殺し合い‐当然である。
だが、何のために?
彼は混乱していた。状況が把握できなかったために。

隣で嗚咽している男がいる。何か光るものを見つめている。
それが先ほど鳴っていた小箱であることに気づく。
しかし、大佐はその男がなぜ嗚咽しているのかわからない。
(この男は…「それ」を使いこなしているのか…)
偶然である。隣の男は…橘朔也、であった。
(部下、になるのか?)
彼はこう考えた。
(この「小箱」の使い方を知る、という意味で、こいつは利用できる)

橘は混乱していた。
橘は状況を全て把握していた。把握していたが故に、混乱していた。
呼ばれたあと、うつろな目で立ち上がり、どこかへ‐それがどこか、彼自身にもわからない‐行こうとする。
築いたものがもろくも崩れ去った今、彼の脳内は恐怖のみが支配していた。
ニゲル
それだけが、今の彼の意思だった。
彼のタイムスタンプは2007年である。

ゾル大佐は彼の経験から、ある程度人を見る目を持っていた。
先ほどの男は研究員であろう。あまり戦闘力は持っていないようだ。
彼は情報を必要としていた。切実に。
この戦いが何なのか。ケイタイ、とは何か。
先ほどの男が教えてくれる、それは確信であった。

大佐は、身を潜めて「協力者」の候補を目で追う…
彼の目を引いたのは、先ほどの男であった。
放心状態であたりを見回す『協力者候補』を「確保」するのは、赤子の手をひねるようなものだった。

橘は背後の気配に気づく暇もなく、首筋をつかまれていることに気づいた。
「私がショッカーの大幹部ゾル大佐だ。私はこの戦いに勝利するために、貴様の知識を必要としている。
 逆らうなら首を折る。逆らわなければ命は助けよう」
橘は仕方なく首を縦に振る。今ここで死んでしまっては何にもならない。
「お前の名前は」
「橘 朔也だ」声が恐怖でかすれているが、何とか答える。
むしろ直接的な命の危険が、彼に判断力を少し取り戻させた。しかし、次の背後からの問いに、彼は言葉を失う。
「橘、ケイタイとは何だ」

……え?
「橘、ケイタイとは何だ」背後からの‐ゾル大佐の‐声は、あくまでも真面目だ。
携帯電話…を 知らない?
それと同時に、周囲を見回して、自分達がいかに無防備かを知る。砂浜だ。
「ここでは場所がまずい」そう、呟いた。
「なぜだ」
「蜂の巣だ」

ゾル大佐は焦っていた。無理も無い。軍人としての指揮系統-存在意義-を失っている彼には、いつもの彼と比べて冷静さが欠けていた。
ここでは場所がまずい…確かにそうだ。身を隠すものが何もない。
自分が捕らえた人間の判断力に、ほんの少し感心するとともに、自分が冷静さを失っていたことに気づく。
橘をつかんでいた手を離す。よく考えれば、この男以外に現在の『協力者候補』はいないのだ。
「身を隠す場所か…心当たりはあるのか?」
「コンビニなら、多分、大丈夫だろう」橘の息は荒い。
コンビニ‐またしても、大佐の知らない言葉だ。
「案内しろ」

橘は、ゾル大佐の膂力と身のこなしに恐怖を覚える。
しかし、同時にコンビニエンス・ストアも携帯電話も知らない彼に滑稽さも覚える。
そして、殺し合いの最中に、コンビニエンスストアへ2人でいく、という日常的な行動を取るというミスマッチさに苦笑する。
それが橘に冷静さを取り戻させる。まずは生き残ること。できれば、ゾル大佐と手を組むこと。
生き残ることが、2人の死を弔うこと。なんとなく、そう思う。
橘がコンビニを選んだのは、半ば本能的なものである。食料があり、水や飲料もある。

コンビニエンスストアの自動ドアが開く。大佐の驚く声が聞こえる。
(…なんだこいつ、いつの時代から来たんだ…)
ゾル大佐が自動ドアや店内の様子に混乱している最中に、橘は弁当コーナーへ行き、目的の物を2人分みつける。
目の前の光景が「店」であることを認識できないゾル大佐。
今なら、ギャレンに変身してゾル大佐を倒すことも出来るだろう。しかし…
彼は、こう、言った。
「あっちに寿司があった。ウニもあったぞ」

状態表

【G-2 倉庫街と水族館の間のコンビニエンスストア】

【橘朔也@仮面ライダー剣】
【時間軸:Missing Ace世界(詳細不明)】
状態:健康
装備:ギャレンバックル
道具:基本支給品一式(特殊支給品は未確認)
基本行動方針:とりあえず生き残る
1:寿司を食って、あとレトルト食品とかを確保しておく。
※ゾル大佐の体力に敬意を払っているとともに、コンビニや携帯を知らないことに不審感を覚えています。
※部下の死は、とりあえず眼前の状況に対処するために忘れています。

【ゾル大佐@仮面ライダー(初代)】
【時間軸:不明】
状態:健康、文明による精神的ショック。指揮系統がないための動揺(軍人として)。
装備:なし
道具:基本支給品一式(特殊支給品は未確認)
基本行動方針:未定
1:橘に『ケイタイ』や『コンビニ』について教えてもらう。
※基本支給品の携帯電話の使用方法を知りません(昭和の人ですので)。
 従って、名簿は確認していません。

004:闇の中で唯一光る 投下順 006:そういう・アスカ・腹黒え
004:闇の中で唯一光る 時系列順 007:流されやすい者達
000:さくらの花の咲くころに 橘朔也 028:それぞれの場合/NEXT STAGE
ゾル大佐 028:それぞれの場合/NEXT STAGE

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